なんだか、先生も僕にオコっぽい。
仕方ないので、得意の目くらまし戦法。
「先生の譲られたフィニッシュ・ムーブってどんなのですか?」
「ん~、僕の若い頃ね~」
年寄りの昔話キタ~!!!
「先輩棋士と兄弟子によくゲイバーに連れて行かれてね」
あら、ゲイバー。刺激的な単語が出ましたね。
「その先輩棋士がとんでもない美男子でね。気風も良くて。すごい人気で。」
ああ、あのMさん。師匠からお噂は聞いてます。
「で、ゲイバーのホステスさんって、辛い恋愛してる人が多くてね。
Mさんはそういう人の愚痴もちゃんと聞いてあげてねえ。
それで、ある時、恋人っていうか、ヒモだよね、そのヒモに本当にひどい扱いされて泣いてるおかまさんに、とっとと別れろって言ったんだけど、
おかまさんはやっぱりまだ惚れてるから別れられない、って。」
ああ、よくある駄目ンズ話ですね。
「そしたらMさんがねえ」
先生の表情が、Mさんへの懐かしさからかとても柔らかくなる。
「そのおかまさんの顎に手を添えて、くいっと自分の方に向けさせて、
『だったら俺に惚れなよ、俺ならあんたを泣かせたりしないよ』って。
もう店中みんなMさんに惚れちゃってね」
先生も惚れたんですか?
「当たり前だよ。あれに惚れなきゃ男じゃないよ!」
先生は少しムキになってる。
写真でしか存じ上げないけど、あのピカピカな男前のMさんがそのセリフ言ったら、そりゃ確かに惚れるかも。
「帰り道、Mさんが僕に『郷〇君にこのセリフ上げるから、これくらいサラっと言えるようになりな』って言って下さって。
僕が初タイトル取ったばかりの頃。」
へ~、へ~、へ~。
「あれから25年以上たつけど、一度も言うチャンスなかったねえ」
え~?そうなんだ?こんなにイケメンなのに?
「僕にはそんな器量が無くてね。だから、金〇君に献上した。多分彼ならアレンジして使えると思う。」
大慌てで謙遜して譲渡を断る金〇さんが目に浮かぶ。でも、確かに金〇さんなら、全く別な次元でそのセリフを使いこなせそう。
「僕じゃ駄目かな?僕なら君を泣かせるようなことしないよ…。」
うわ、あり得る!全然ありだ。男だけど濡れる…。惚れる…
え、でもそうしたら、僕のサンちゃんややっくんが、金〇さんに取られちゃう!
「どうせ大事にしてなかった玩具でしょ?またがせたのは君でしょ?」
今日の先生は意地悪。先生やっぱりオコなの?でも、またがせる?