やがて、三人は立ち上がった。
金〇さんは優しく微笑みながらやっくんの背中をさすり、サンちゃんの肩ををポンポンしてる。
いつもの優しい金〇さんじゃなくて、頼りがいのある先輩の顔だ。
二人の照れくさそうな横顔が、確認できた。笑顔だ!
良かった!僕の主張は通ったみたいだ!
また、楽しい日々が始まるね!
「先生、なんとか無事に終わりました」
二人を送り出した金〇さんはまっすぐ先生のもとに来る。
「お疲れさまでした」
先生もまっすぐに受け止める。受け止める、というより、抱きとめる。
勿論、本当に抱きとめるワケじゃないよ。でも、そんな感じ。
ちょっと二人が羨ましい。
「なんだ、フィニッシュ・ムーブ使わなかったじゃない」先生が拗ねる。
「説得力のある使い方はできると思ったんですけど…。
でも、心が弱ってる人に、自分が受け止められないとわかってて、そんなこと言うのは、やっぱりそれは嘘の言葉だから…。」
「金〇君らしいね」
先生が優しく頷く。
…きっと先生も、同じ理由でこのセリフ言えなかったんだろうな。
Mさんには絶対的な、誰に惚れられても動じない自信があった。
先生も金〇さんも、揺らぐ自分を自覚できた。
そして、その揺らぎが相手を傷付ける可能性があることも。
この二人、よく似てるんだな。