「じゃあ、僕たちはこれで」
どっこらしょっ、と言いながら先生が立ち上がる。
「僕たち」別名、We。重いわ~。
僕にとっての「僕たち」は二人だけじゃないし、その都度メンバーが変わる。
でも、この二人はずっと「僕たち」っていうユニットなんだろうな。
重さを引き受ける覚悟があるんだろうな。
僕にはたくさんのハニーがいるけど、まっすぐに走っていく相手はいない。
僕を抱き止めてくれる人もいない。
いるのかもしれないけど、それが誰だか今の僕にはわからない。
今日は、ちょっとそれが寂しい。
けど、だからといって重くなりたくもない。
先生と金〇さんは、秋の日差しの中をのんびりと歩いていく。
今日は二人の研究会の日だった。邪魔してごめんなさい。
先生が手をひらひらさせながら金〇さんに何か語り掛け、金〇さんが蕩けるような笑顔で先生に頷いている。
「僕たち」だけの眼差し。「僕たち」だけの笑顔。「僕たち」だけに通じる言葉。
いつか僕も、そんな相手が見つかるのかな。
その時には、重いとか重くないとか、どうでもよくなると良いな。

スマホのバイブが作動した。
やっくんとサンちゃんから。
僕にとって二人とも大事。選べない。
でも、今なら素直に言える。
「傷つけてしまってごめん」