『僕の横で寝てるんですけど』
電話を切った後、その言葉を反芻してしまった。
僕が若い頃、そんなのは当たり前の光景だったのに、なんで動揺したんだろう?
僕も色んな仲間の部屋に泊まりに行ったし、仲間が泊にも来た。
ろくに鍵も掛けないで生活してたから、部屋に帰ると地方から上京した仲間が勝手に寝てた事も度々あった。
ある朝、目が覚めたら、仙ちゃんが僕の腕枕で寝ていたこともあった。
朝一番に至近距離で見た光景が仙ちゃんの寝顔、というのは精神的に結構きつくて、
その残像を振り切るために、その日の対局はもの凄い早指しで勝った。
長考したら、あの寝顔が浮かんでしまうと思って、とにかく心を無にして指した。
対局相手はベテランの先生だったけど、「郷〇君は鬼神に憑りつかれた様だった」と言って下さった。
仙ちゃんは、ある朝起きたら僕の足が顔に乗ってたから、頭に来て次の僕との対局で勝ったらしい。
僕たちはそうやって、切磋琢磨して来た。
金〇君も、夜中にトイレに行く斎〇王座に頭でも踏まれて奮起すればいいだけの話だよね。