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ヒント:5chスレのurlに http://xxxx.5chb.net/xxxx のようにbを入れるだけでここでスレ保存、閲覧できます。
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
現在当板の常駐荒らし「モリーゾ」の粘着被害に遭っております。
テンプレ無視や偽スレ立て、自演による自賛行為、職人さんのなりすまし、投下作を恣意的に改ざん、
外部作のコピペ、無関係なレスなど、更なる迷惑行為が続いております。
よって職人氏には荒らしのなりすまし回避のため、コテ及びトリップをつけることをお勧めします。
(成りすました場合 本物は コテ◆トリップ であるのが コテ◇トリップとなり一目瞭然です)
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。
前スレ
新人職人がSSを書いてみる 32ページ目
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1433946144/ まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫 Wiki
http://arte.wikiwiki.jp/ 新人スレアップローダー
http://ux.getuploader.com/shinjin/ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:669e095291445c5e5f700f06dfd84fd2) ■Q1 新人ですが本当に投下して大丈夫ですか?
■A1 ようこそ、お待ちしていました。全く問題ありません。
但しアドバイス、批評、感想のレスが付いた場合、最初は辛目の評価が多いです。
■Q2 △△と種、種死のクロスなんだけど投下してもいい?
■A2 ノンジャンルスレなので大丈夫です。
ただしクロス元を知らない読者が居る事も理解してください。
■Q3 00(ダブルオー)のSSなんだけど投下してもいい?
■A3 新シャアである限りガンダム関連であれば基本的には大丈夫なはずです。
取り扱い作品は旧シャアで取り扱われている過去作および過去作の関連作を除いた
SEED・SEED DESTINY・OO・劇OO・AGE・GB・GBF・GBFT・Gレコとなります。(H27.3現在)
■捕捉
エログロ系、801系などについては節度を持った創作をお願いします。
どうしても18禁になる場合はそれ系の板へどうぞ。新シャアではそもそも板違いです。
■Q4 ××スレがあるんだけれど、此処に移転して投下してもいい?
■A4 基本的に職人さんの自由ですが、移転元のスレに筋を通す事をお勧めしておきます。
理由無き移籍は此処に限らず荒れる元です。
■Q5 △△スレが出来たんで、其処に移転して投下してもいい?
■A5 基本的に職人さんの自由ですが、此処と移転先のスレへの挨拶は忘れずに。
■Q6 ○○さんの作品をまとめて読みたい
■A6 まとめサイトへどうぞ。気に入った作品にはレビューを付けると喜ばれます
■Q7 ○○さんのSSは、××スレの範囲なんじゃない?△△氏はどう見ても新人じゃねぇじゃん。
■A7 事情があって新人スレに投下している場合もあります。
■Q8 ○○さんの作品が気に入らない。
■A8 スルー汁。
■Q9 読者(作者)と雑談したい。意見を聞きたい。
■A9 現在模索中です。大変お待たせしておりますがもうしばらくお待ちください。
〜投稿の時に〜
■Q10 SS出来たんだけど、投下するのにどうしたら良い?
■A10 タイトルを書き、作者の名前と必要ならトリップ、長編であれば第何話であるのか、を書いた上で
投下してください。 分割して投稿する場合は名前欄か本文の最初に1/5、2/5、3/5……等と番号を振ると、
読者としては読みやすいです。
■補足 SS本文以外は必須ではありませんが、タイトル、作者名は位は入れた方が良いです。
■Q11 投稿制限を受けました(字数、改行)
■A11 新シャア板では四十八行、全角二千文字程度が限界です。
本文を圧縮、もしくは分割したうえで投稿して下さい。
またレスアンカー(
>>1)個数にも制限がありますが、一般的には知らなくとも困らないでしょう。
さらに、一行目が空行で長いレスの場合、レスが消えてしまうことがあるので注意してください。
■Q12 投稿制限を受けました(連投)
■A12 新シャア板の場合連続投稿は十回が限度です。
時間の経過か誰かの支援(書き込み)を待ってください。
■Q13 投稿制限を受けました(時間)
■A13 今の新シャア板の場合、投稿の間隔は忍法帖のLVによって異なります。時間を空けて投稿してください。
■Q14
今回のSSにはこんな舞台設定(の予定)なので、先に設定資料を投下した方が良いよね?
今回のSSにはこんな人物が登場する(予定)なので、人物設定も投下した方が良いよね?
今回のSSはこんな作品とクロスしているのですが、知らない人多そうだし先に説明した方が良いよね?
■A14 設定資料、人物紹介、クロス元の作品紹介は出来うる限り作品中で描写した方が良いです。
■補足
話が長くなったので、登場人物を整理して紹介します。
あるいは此処の説明を入れると話のテンポが悪くなるのでしませんでしたが実は――。
という場合なら読者に受け入れられる場合もありますが、設定のみを強調するのは
読者から見ると好ましくない。 と言う事実は頭に入れておきましょう。
どうしてもという場合は、人物紹介や設定披露の短編を一つ書いてしまう手もあります。
"読み物"として面白ければ良い、と言う事ですね。
■Q15 改行で注意されたんだけど、どういう事?
■A15 大体四十文字強から五十文字弱が改行の目安だと言われる事が多いです。
一般的にその程度の文字数で単語が切れない様に改行すると読みやすいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
↑が全角四十文字、
↓が全角五十文字です。読者の閲覧環境にもよります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あくまで読者が読みやすい環境の為、ではあるのですが
閲覧環境が様々ですので作者の意図しない改行などを防ぐ意味合いもあります。
また基本横書きである為、適宜空白行を入れた方が読みやすくて良いとも言われます。
以上はインターネットブラウザ等で閲覧する事を考慮した話です。
改行、空白行等は文章の根幹でもあります。自らの表現を追求する事も勿論"アリ"でしょうが
『読者』はインターネットブラウザ等で見ている事実はお忘れ無く。読者あっての作者、です。
■Q16 長い沈黙は「…………………」で表せるよな?
「―――――――――!!!」とかでスピード感を出したい。
空白行を十行位入れて、言葉に出来ない感情を表現したい。
■A16 三点リーダー『…』とダッシュ『―』は、基本的に偶数個ずつ使います。
『……』、『――』という感じです。 感嘆符「!」と疑問符「?」の後は一文字空白を入れます。
こんな! 感じぃ!? になります。
そして 記 号 や………………!!
“空 白 行”というものはっ――――――――!!!
まあ、思う程には強調効果が無いので使い方には注意しましょう。
■Q19 感想、批評を書きたいんだけどオレが/私が書いても良いの?
■A19 むしろ積極的に思った事を1行でも、「GJ」、「投下乙」の一言でも書いて下さい。
長い必要も、専門的である必要もないんです。 専門的に書きたいならそれも勿論OKです。
作者の仕込んだネタに気付いたよ、というサインを送っても良いと思われます。
■Q20 上手い文章を書くコツは? 教えて! エロイ人!!
■A20 上手い人かエロイ人に聞いてください。
>>4 ■Q18 第○話、ではなく凝った話数にしてみたい
A18 別に「PHASE-01」でも「第二地獄トロメア」でも「魔カルテ3」でも「同情できない四面楚歌」でも、
読者が分かれば問題ありません。でも逆に言うとどれだけ凝っても「第○話」としか認識されてません。
ただし長編では、読み手が混乱しない様に必要な情報でもあります。
サブタイトルも同様ですが作者によってはそれ自体が作品の一部でもあるでしょう。
いずれ表現は自由だと言うことではありま
投下開始
連合兵戦記 第5章 聖天使出撃
「情勢は不利だが、我々は勇気を失わずに死ぬ。」1941年7月ブレスト要塞のソ連兵の遺言
「くっ!連合め、今まで我々のみを攻撃し、郊外にいる部隊には手を出さなかったのは、我々の眼を誤魔化す為だったのか…」
敵のマットブラックに塗装されたパワードスーツ部隊からの攻撃を回避しながら、ケヴィンは歯噛みした。
彼のジンの後方用のモニターには、背後…郊外に立ち上る幾つもの黒煙が鈍色の空と共に鮮明に映されていた。
「中隊長!どうします!郊外の車両部隊が敵の襲撃を受けています!」ケヴィンの僚機を務めるジンのパイロットが言う。
郊外で待機していた車両部隊は、索敵車両と歩兵部隊を中核とする部隊で、
本来の作戦ではウーアマン中隊が市街地に突入し、市内の地球軍部隊に壊滅的打撃を与えた後にウーアマン中隊に代わって残敵掃討を行う予定だった。
だが、現実はケヴィンらの予測を完全に裏切り、彼らに壊滅的打撃を与えられ、この廃都を墓標に果てるはずだった地球連合軍部隊は、
未だに高い戦意を持ち、十分な戦闘能力を保持して激しく抵抗していた。
そして車両部隊は、比較的安全であると判断され、
最前線の間近に配置されていながら、手薄の状態に置かれていたのであった。
護衛についていたジン2機が市街地に対しての重突撃機銃による支援射撃を行うために
市内に接近した瞬間に潜伏していた地球連合軍部隊の襲撃を受け壊滅的打撃を逆に蒙ることとなったのであった。
更に中隊長であるケヴィン以下、ウーアマン中隊にとっては間の悪いことにこの車両部隊には、
索敵車両や歩兵部隊のみではなく、ウーアマン中隊のMSの整備、修理を行う為の前線用整備トラック、弾薬や燃料を搭載していた輸送車両、
そして市内で戦闘しているウーアマン中隊と後方のカッセル軽砲小隊との連絡を行う為の指揮車までが含まれていた。
前線で迅速に整備補給を行い、連絡を密にするための策が完全に裏目に出ていた。
これらが被害を受ければ、戦い続けることすら困難になる可能性があった。
不幸中の幸いは、車両部隊を2つに分けていたことで、カッセル軽砲小隊と合流していた部隊は、カッセル隊と同様に無傷であった。
しかし、指揮車と索敵車両が撃破されたことで、索敵用ドローンの索敵範囲は、
半分ほどにまで低下を余儀なくされていた。
このことにより、同士討ちを恐れたカッセル軽砲小隊は支援砲撃をやめてしまっていた。
「中隊長!ここは一度後退し、部隊を再編してから再度攻撃を駆けるべきです!」
「やむを得ん、全機後退!」
悔しげに口元を歪め、ケヴィンは、引金を引いた。
ウーアマン中隊の指揮官機のジンが、撤退信号弾を上空に撃ち上げた。
「後退信号!ここまで来て!」
20mm機銃で歩兵部隊を支援していたある装甲車の車長は、車内で叫んだ。
「後退だって!中隊長はこの状況が分かっているのか!?」
指揮下の歩兵部隊と数両の装甲車と共に公園跡で、
地球連合軍部隊に包囲されていた赤毛の女指揮官は、外の銃声と悲鳴に負けじとばかりの大声で叫んだ。
「後退だと?」
市内に潜伏する地球連合軍部隊の挑発の様なロケット弾と迫撃砲、対物ライフル等による嫌がらせ同然の攻撃に、
重突撃機銃で応戦していたジンのパイロットは、他の班の状況が分からなかったこともあり、怪訝そうに呟いた。
それぞれの兵士達の感情や事情など斟酌されることなく、ウーアマン中隊は、市内から撤退を余儀なくされた。
この混乱した状況で、全ての部隊が撤退出来たわけではなく、包囲された部隊や孤立を余儀なくされた部隊は、市内に取り残されることとなった。
「隊長!奴ら、逃げ出し始めましたぜ!」
「こちらアンジェリカ、敵部隊は撤退を開始した模様」
「…」ハンスは、部下からの通信で、市内に突入した敵部隊が撤退したことを知った。最初、彼と交戦していた指揮官機のジンが率いていた部隊が後退した時点で予感はしていたが、
市内の全部隊が後退するとまでは考えていなかった。
「各部隊は、防衛ラインを再編し、敵の再攻撃に備えろ」
「「了解!」」
「指揮官殿!一部敵部隊が市内に残っていますが、どうします?」防衛線の一つを指揮するガラント少尉が質問する。
彼の隊は、最初にザフト軍歩兵部隊と交戦した部隊で、隊の半分近くが死傷する損害を被っていた。
「敵にモビルスーツはいるか?」
「いえ、車両と歩兵部隊のみです。また一部脱出したモビルスーツパイロットを目撃したと、
ヒュセイン曹長の隊の報告がありますが、詳細は不明です」
「少数の部隊を監視に張り付けて放置しておけ。敵も奴らがいる限り、不用意には、砲撃できんし、
絶対にここにまた突っ込む必要があるんだからな」
「さて、次は何が来る…!」
通信を終えたハンスは、ザフトが次にどんな手を仕掛けてくるかを想像した。
<リヴィングストン> CIC………
「ウーアマン中隊より通信、市内に突入した部隊の内、モビルスーツ数機が損傷、
内2機を喪失、歩兵部隊の半数が打撃を受けた模様、また郊外の車両部隊が奇襲攻撃を受けたため
一時市外より後退するとのことです…」
オペレーターが報告を終えた時、楽観的空気が支配していたCICの雰囲気は一変した。
「ウーアマン中隊がここまで打撃を受けたのか?」
「無敵の我軍のモビルスーツ部隊が退いただと…?!」
エリクは、目の前のモニターに映し出される情報が信じられなかった。
そしてそれは、他のブリッジのクルーも同じだった。
各部隊合わせてモビルスーツが10体近くも撃破される等参加していたザフト部隊の指揮官にも、兵員にも初めての事であった。
無論、対する地球連合軍も相当の損害を被っており、ハンスや各部隊の指揮官も予想以上の損害に驚き、
多くの部隊の再編と再配置を余儀なくされていた。
だが、モビルスーツを複数有する部隊が、少なからず損害を受け、後退を余儀なくされたことは、ザフト兵に衝撃を与えていた。
敵が潜む都市は、要塞化されているのではないか、敵部隊はこの拠点以外にも地下シェルターなどで潜伏しており、この都市は、自分達を釘づけにして消耗させる為の陣地に過ぎないのではないか、そのように考える兵士もいた。
それは、最前線である廃棄された都市の兵士だけでなく、前線から離れた地点にいた<リヴィングストン>のブリッジにいる者たちも同じ状態になっていた。
もはや作戦開始当初の楽観ムードは消え失せ、地球連合軍の増援部隊が今にもここに襲い掛かってくるのではないかという考えさえ、彼らの一部の脳裏には浮かび上がっていた。
「か、艦砲射撃だ!都市は射程圏にある!」
エリクは狼狽気味に叫んだ。
友軍部隊がここまで打撃を受けた以上、艦砲射撃で市内の敵部隊に打撃を与える必要がある…そう彼は判断したのである。
「駄目です!」
その命令に異議を唱えたのは、隣に立つ金髪の美少女…アプフェルバウム隊指揮官 ノーマ・アプフェルバウムであった。
「ノーマ小隊長!なんのつもりだ!」
「市内には、まだ味方部隊が孤立しています!艦砲射撃をしては、味方を巻き込む危険性があります!」
「ではどうしろというんだ?」
エリクは自分が大隊指揮官であり、目の前に立つ少女が小隊指揮官に過ぎないということ等頭から抜け落ちていた。
「私が出撃します!地上戦の経験は十分にあります」
ノーマは自信に満ちた口調で言った。それは、まるで映画の主人公の様で、どこか
滑稽でもあった。
「なんだと?」
「敵の実数は、そう多くありません!断言できます。」
そう言い切ると、彼女は、背を向けて、軍靴の音を鳴らして、自動ドアへと向かった。間もなく、自動ドアが閉じる音が静かなブリッジ内に木霊した。
その音は、エリクら内部の人間には嫌に大きく聞こえていた。
「大隊長、どうします?アプフェルバウム小隊長の発進を許可しますか?」
「格納庫に連絡、アプフェルバウム小隊長が出撃する。整備班は準備に取り掛かれ」
「了解」
「ふう、これだから黄道同盟メンバーの関係者は困るな」冷静さをある程度取り戻したエリクは、軽くため息を吐いた。
この時期、プラント最高評議会議員の1人 ザフト内部にも強い影響力を持つ国防委員長 パトリック・ザラは、プラント最高評議会議員の子弟を集めた部隊を編制、
それをザフトの精鋭部隊として前線に投入する案を提案していた。
これは、一見すると多くの地域で、様々な形で行われてきた高貴なる者の義務≠フ一形態の様に見える。
しかしその裏には、遺伝子操作が能力の全てを決定し、それゆえに遺伝子操作を受けたコーディネイターは、
ナチュラルを能力で凌駕し、コーディネイター内部でも、資産家等、富裕層の子弟であり、高度な遺伝子操作を施された者…具体的に言うならば、
プラント最高評議会議員やプラント内部の企業の重役、技術者等の層は、他の層に優越する……という遺伝子カースト制とでも形容すべき考えが透け見えていた。
流石にこのような考えはプラント内部の社会を階層化させ、分裂させてしまいかねない為、誰も公的には肯定していない。
だが、プラントの社会の状況は之を肯定するかのような形態となっているのが、現実であった。
もし遺伝子で全てが決定されるのであれば、我々コーディネイターは、ブルーコスモスの野獣共が言う様に工業部品と何ら変わらない存在ではないか!
ふと沸き起こった憤りを彼は自制心で抑え付けた。
エリクは、ユーラシア連邦の勢力圏に位置する小国に新興富裕層の次男として生まれた。
新興富裕層と言っても潤沢な資金があるわけではなかったので、彼は、それ程遺伝子の調整を受けているわけではなかった。
12歳の頃、家族と映画館に行った際にブルーコスモスのテロに巻き込まれ、家族を全て失った。
その2年後、宇宙医学に関する学位を取得したのと同時に多くの地球出身のコーディネイターと同様に当時建設が進められていた
産業スペースコロニー群 プラントに入り、
以後宇宙での医療機器に関する技術者としてプラントの発展に寄与してきたのであった。
そして多くのプラントの人間と同様に、プラント理事国から課せられるノルマと
工場、研究施設として地球経済を牽引しているプラントへの成果に見合わない報酬に反発し、
プラントを独立させ、地球の国家と対等の地位にしようと主張する政治団体 黄道同盟に入党した。
黄道同盟のメンバーとなった彼は、その能力を生かして戦闘要員として幾つかの活動に従事した。駐留軍に対するテロ、
公園や工業施設に爆弾を仕掛けようとするブルーコスモスの民兵と銃撃戦を演じた経験もある。
ザフト入隊後、モビルスーツパイロットとしての適性は不適格とされたが、指揮官としての適性は、
黄道同盟時代に武闘派の戦闘員のリーダーをした経験もあって有りと判断された。
その後の戦功により、ザフト地上軍 ヨーロッパ方面軍所属ファーデン戦闘大隊指揮官として
レセップス級<リヴィングストン>の艦長に任命されるまでになった。
ノーマ・アプフェルバウム…つい先ほどまで彼の隣に立っていた少女は、彼と同じく黄道同盟時代からのメンバーでもあったが、
同時に評議会に名を連ねる者を父親とするプラントのエリートでもあった。
彼にとっては、ある意味で自分の生きてきた全てを否定されているかのような存在であった。
だが、皮肉なことに彼と彼の部下にとって彼女こそが現状を打開できる数少ない要素であった。
>>1乙です。
今日は此処までです。
文中のパトリックの提案は、本編でクルーゼ隊に評議会の子弟が多数在籍していたのは、評議会の意向がかなり
働いていたのではないか?と推測した結果です。
感想、アドバイスお願いします。
ユーラシア兵だけじゃなくて、このスレでほぼ全体に言える事だけど・・・
とにかく話が進まないのが問題。
延々戦闘を書いてるだけで、物語がどこに進むのか、結末がどこに進んでるのか
まったく見えないのがなんとも。
戦闘描写も大事だけど、物語が進まないと関心が薄れるのは否めない。
最終決戦がどこに落ち着くのか、最終目的は何なのか、きちんと「物語」として
テンプレが出来てない気がするんだよなぁ。
原作に甘えずに、ちゃんと物語の大筋を決めないと「読み物」として薄くなりますよ。
「傷は癒えたか少年?」
カミーユはこの艦で目を覚ました後、決まって彼の薄い唇と白い頬に魅せられる
最初は大嫌いなはずだった。その嘯く態度も、アーガマにいた大尉より遥かに傲慢で露骨な自意識も、妖しい紫色の眼も、全てがこの戦いを愉しんでいる様に見えて我慢ならなかったからだ
誤解には違いなかった
彼に対する怒りはカミーユの身体に蓄積された多数の傷跡を増幅させ、膨れ上がったサイコパワーの発現によって百式とキュベレイは機能不全に陥り、
先に半壊していたジオから脱出するシロッコに救われた。既に1週間前の事だ
「君の、な」
「え?」
「食べ物の好き嫌いがわかってきた」
カミーユの寝ているレクリエーションルームのベッドは、その身体よりずっと大きく作ってある
その横に置かれた夕食は3日前より半分ほど多く食べてあった
シロッコはその膳を見ながら言ったのだ
「毎晩あれじゃ、お腹だって空きますよ!
だいたい僕を殺すつもりじゃないなら、いい加減に…!…んっ……」
シロッコのキスは甘い。こうやって何人も口説いてきたんだ。そして死んでいった
カミーユはふつふつと蘇る怒りに耐え切れず、絡ませてきたこの男の舌に噛み付いてやった
「!!…」
シロッコの目に殺気が宿る。ほら見ろ、これがこいつの本性だ。ギリギリの命の狭間でさえ、他人を玩具にする事しか考えてない。理想からも想いからも遠い価値観。空虚なプライド
激昂したカミーユはさらに殴りかかった
拳はシロッコの端正な頬を打ち抜く
だがここまでだった。無理に体力を使った病み上りのカミーユの精神は急速に萎えて、また意識を失ってしまった
「目が覚めたか?」
カミーユは男の腕の中で目を覚ました
まただッ!
払いのけようとするカミーユだが、シロッコの繊細な抱擁はカミーユの堪らない場所を心得る
力が入らない
「これは感傷だな、カミーユ・ビダン…
私は親の顔を知らない。妹によく似て可愛かった少女も、私に縋ってジュピトリスへきた情念の女も死んだ」
「だから何だっていうんです?寂しいから、木星に帰る前に僕で憂さを晴らそうったって」
シロッコは間近のカミーユの額を、喉仏に当てるように抱きしめた
「そうだと言ったらどうする?私の側にいてくれるか?カミーユ」
シロッコの声は少し震えている
「なんで…」
「ふっ…他人に縋るのは初めてだ。だが、そうだな。まるで剥けた果実の様に危い君の魂の前では、私もパプテマス・シロッコで在る必要はないのかもしれない
そう思わせる君のような感性が、或いは世界を導くのかもしれんな」
再びシロッコの眼はカミーユに正対し、今度は頭ごとそっと自分の顔に引き寄せて唇を吸った
カミーユは抵抗しなかった。それはいつもの様に出来なかったのではなく、この男を少しだけ可哀想に思ったからだ
それに気付かないシロッコではないだろうが、彼はそういう自分を認めたがらないだろう
だからカミーユは一言も口を開かず、シロッコに抱かれた
有耶無耶になる理性の中でカミーユは必死に大人を演じたつもりだった
不意に警戒態勢を告げる音が艦内に鳴り響く
それは人を獰猛な戦士に駆り立てる催眠術と同じだ
艦内は騒然としてゆく
シロッコは口惜しそうにカミーユを覆っていた身体を起こすと、既に冷め切って久しい珈琲を一口だけ注ぐ
「あの艦にアーガマがいたら帰るか?カミーユ」
「…」
だが、シロッコがブリッジに向かおうとするずっと先にカミーユの鋭敏な感覚はジュピトリスを取り巻く思念の数々を把握していた
それはアーガマだけではない。既にジャミトフが死にティターンズを切り離した連邦正規軍はエゥーゴを合併し、侵攻するアクシズの艦隊と衝突しようとしているのだ
幸い、ミノフスキー粒子の濃い現宙域にあって会敵を知った時は何処の艦も殆ど同じだった
しかしカミーユがアーガマに帰るかと聞かれて返答に窮したのは、そうした状況のせいだけではない
「貴方一人で連邦軍とハマーンを倒すつもりですか?」
「決戦にはさせんよ。連中もそれを望む時ではあるまい。
私が囮をやって、ジュピトリスを引き離す。ハマーンが出てくるとなるとな、アーガマや連邦の連中もこの艦を追撃する余裕はもたんよ」
カミーユは言葉に詰まった
感情の発露だけで思春期を乗り越える少年の機微には、こんな場合のお手本や指針がない
だからひたすらに、焦ったり怒ったりするしか出来ないのだ
「嬉しいよ、カミーユ
心配してくれているのだろう。確かに、私のジオもまだ修理が万全とは言えんな」
カミーユはそれを聞いて、ようやく少し可笑しくなった
この男もまた素直じゃないのだ
それが妙に嬉しくもあり、そんな馴れ馴れしい自分に腹も立ったが
シロッコもここへ来て初めて見せるカミーユの笑みに、心が癒された気がした
「君は寝ていろ。私一人でいい」
「やめてくださいよ、無駄死は。まだ僕は貴方から聞きたい事もあるし、やらなきゃならない事もある」
やらなきゃならない事、という部分がシロッコには不思議だった
はて。この少年はきっと、死ぬまでこうなのだと思った。だがそれでいい
自らの知らなかった喜びは、こんなにも香ばしく暖かいのだと知れただけで、白い独裁者にはその無垢を守る意義が見出せる
「あの程度の攻撃で私は死なんよ。今度はこの艦から天才の戦い方を見ていたまえ」
シロッコは軽く笑って、カミーユも少し笑った
ブリッジは喧騒に包まれ、岩肌を抱えた様なジュピトリス独特の巨大なデッキにはティターンズのMSが発進の指示を待っていた
「各MS隊は母艦の防御に当たれ!
第一戦闘部隊は左舷上方、第二戦闘部隊は右舷下方、その他の動ける者はブリッジに近づく敵だけを狙え
全MSは戦闘宙域を脱出後は速やかに艦へ待機、私の指示があるまで動くなよ」
シロッコはクルー達に呼び掛けると、片腕を損傷し、また全てのメガ粒子砲が潰されたジオへ流れていく
「そういう事だ、頼むぞキャプテン」
「了解です。大尉もご武運を」
「やってみせるよ」
ノーマルスーツは着ない。昨日カミーユが食べ残した膳は、帰ってから私が片付けよう
いつものヘアバンドはカミーユの部屋に置いてきた
彼なりの責任だからだ
全てが終わったら、一度あの星へ戻ろう
巨大な引力とガスに形成された彼の故郷を思い出した
カミーユは何と言うかな…
「ジオ、発進するぞ」
神の意志を騙る欺瞞は三度、宇宙の暗闇に降りてゆく
カミーユは彼の温もりが残るヘアバンドを握りしめ、もう一度冷めた珈琲を飲んだ
END
エクレVSバナージ
過去のまとめが入る
バナージ「見せてやる・・・ユニコーンの力を!」
エクレ「これ以上お前につきあってる暇がない・・・ユキカゼを助けられなかったらその時点でアウトだ・・・さっさとキーをもらう・・・!」
エクレがバナージを切り飛ばしたシーン
エクレ「キ様はペラペラしゃべりすぎだ・・・今まで一度も切られたことが無いって顔してるよなお前w」
バナージ「そろそろ俺も本気を出させてもらう」
エクレ「上の階へ逃げた・・・だと?」
バナージがユニコーン人間状態用の大きな剣とトンファーを2本ずつ装備して降ってクリ、エクレに切りかかる
それを池止めるエクレ
バナージ「待たせたな、手足が自由に伸び縮むするならこっちの物だ!」
エクレ「くっ・・・!」
エクレが一方的に押されて切り飛ばされる
バナージ「さらに魔人脚『マグナム』!」
なんとか飛ぶ斬激を交わしたエクレだが
エクレ「ぐうあっ?!」
バナージ「マグナムは掠めただけでも傷を負う攻撃だ」
バナージ「一角砲!」
伸びた角に突き刺されるエクレ
エクレ(しまった・・・)
バナージ「まだだ・・・デスコーン!」
エクレを突き刺したまま地面に叩きつけまくるバナーjそしてなんとか抜け出したエクレ
バナージ「逃がすか!ユニトロイ!」
角で何度も突き刺す攻撃がエクレを襲う
今度は4本の刃物とユニコーンの角でエクレに連撃するバナージ
バナージ「どうした?受けるので精一杯か?」
エクレ「ぐあっ・・・」
受け切れなかった攻撃で着られるエクレ
バナージ「お前は死ぬべきだ・・・あの女と同様に!」
ユキカゼが生きたいと言ったシーンがうつる
エクレ「お前が5本流だろうが、ユニコーンの力が強くても・・・私に勝てる要素にはならん!!」
一瞬黒い化け物のオーラがバナージに見える
バナージ「何だ?・・・今こいつが三つ首狂犬(ケルベロス)に見えた・・・)
バナージ「まあいい子の最強のマグナムでとどめだ・・・」バナージが力をため始める
まわりにエネルギーの流れが起こるがエクレはまた黒紫のオーラでそれを消しさる」
エクレ「6島流・・・咆哮の(バーサーカー)・・・」
バナージ「マグナムフルバースト!!!」
エクレ「うおおおおおおおおおおおお!!」
その最強の斬劇を消すエクレそしてそのままバナージに突っ込む
エクレ「三つ首狂犬(ケルベロス)!!!!」
バナージが切りたいお擦れてユニコーン人間状態から人間に戻る
エクレ「・・・悪いな」
エクレ勝利
ガンプラバトル…それはガンプラ、すなわちガンダムのプラモを容易てバトルを行い、
お互いの技量やプラモの出来栄えを競い合うスポーツのようなもの。
組み立てたガンプラはプラフスキー量子によって具現化され、それを操ってバトルを行う。
バトルのダメージは実際のガンプラにも反映され、時には必死に作ったガンプラを壊すことだってある。
にも関わらず戦士たちはなぜ、自分の分身にも等しいガンプラを危険な戦いに駆り立てるのか?
そこにはきっと、戦士たちの意地やプライド、そしてガンプラへの愛が存在しているからなのだろう。
この物語は、そんな戦士たちの終わりなき戦いの物語である。
「へっへ、美味しそうなおやつ持ってんじゃねぇか」
午後5時を回ったところ、商店街の十字路で、小学校低学年くらいの少年と、大柄でぽっちゃり体型の30代くらいの親父が対面していた。
他の通行人は見て見ぬふり、中にはあたふたして連絡しようとしている人も居る。
「欲しかったら自分で買え!そこの駄菓子屋で売ってるぞ」
少年が目の前にある駄菓子屋を指さし、舌を出す。
「このガキャ、俺が誰だかわかってんのか?」
少年に殴りかかろうとした大人を見て、周りの大人が一斉に割ってはいろうとする。
しかし、大柄な中年の腕は、既に誰かによって抑えられていた。
振り上げた太い腕が、何者かの細い腕によって完全に縛られている。
「なんだてめぇ……、正義の味方気取りか?」
見た目はまだ10代といったところ、大柄な男よりもさらに高い背丈で、スマートな青年だった。
「か……かっこいい…。」
傍から見ていた女性の口からこぼれた。
女性の言うとおり、白く整った顔立ちで、世間一般で言われるイケメンそのものだった。
「言いたいことはそれだけか?」
青年の鋭い眼光によって、大柄の男の額から汗が溢れる。
「ええい放せ!この俺を誰だと思っていやがる!
俺は町内ガンプラバトル準優勝のえむびー様だぞ!」
大柄な男の発した言葉によって、ギャラリーがざわつきはじめる。
「えむびー?あの漆黒の破壊者……」
「そんな……引退したって聞いたけど」
「フハハハ、どうだ恐れをなしたか?」
「実力があるっていうんなら、言葉じゃなくてバトルで証明してみろよ」
微笑みながら口にした青年の言葉を聞いたえむびーは、歯ぎしりをしながら、顔面を真っ赤に紅潮させた。
「舐めやがってぇ!!いいだろう相手になってやる」
「漆黒の破壊者のバトルが見れるぞ!」
「あの兄ちゃん何者だ?」
「そんなことよりいつまで手を握ってんだよw」
「吠え面かくなよ!」
青年が筐体にガンプラをセットし、専用のコントローラーが現れる。
コントローラーは黄色に光る球体で、これを両手で操って操縦する。
両者のスクリーンに、荒廃した砂漠が表示される。
「えむびー、ダブルオークアンタ出るぞ!」
掛け声とともにカタパルトデッキから、ダブルオークアンタが飛び出す。
「どこだ……?一体奴はどこだ……?」
広大な砂漠に、ダブルオークアンタ姿だけが佇む。
「障害物も何もないフィールドで棒立ちとは、関心しないな!クラッシャー!」
「何ぃ!」
クアンタをビームサーベルが襲うが、ソードビットの遠隔シールドでそれを防ぐ。
「あれを防ぐとは、一応口だけではないようだな」
クアンタの眼前、モビルスーツの姿が顕になる。
「黒い……フリーダム?そしてミラージュコロイド……だと?」
「そう、これがフリーダムファントム、フリーダムをベースに改造した俺のガンプラだ」
腰のレールガンと翼のバラエーナを展開し、全ての砲門がダブルオークアンタを捉える。
「さ……させるかぁ……!」
全ての武装を展開したフリーダムに、ソードビットが四方から襲いかかる。
爆発の硝煙によって、フリーダムの姿が確認できない。
「やった!ハハハハハ!」
えむびーは勝利に浮かれていたが、バトルの終了を示すコールも表示も一切されずにいたのでようやく気がつく。
「まさか……まさかっ!」
硝煙が消え、そこには無傷の蒼き翼の黒きガンダム……フリーダムの姿があった。
左右には、バラエーナとクスィフィアスが滞空している。
「なぜ……なぜだっ!フリーダムにそのようなギミックはないはずだ」
「フリーダムにはな!だが俺の機体はフリーダムファントムにはある!
ドラグーンシステムを応用し、バラエーナとクスィフィアスの砲塔のみの自律稼働が可能になっている。」
「ばかなっ!」
フリーダムが真っ直ぐ、クアンタに向かって突っ込む。
「そして、これらのウェイトを失ったことにより、フリーダムはさらなる高機動戦闘が可能となる」
フリーダムの抜刀を見て防御の体制に入ろうと思ったえむびーだったが、反応が追いつかずにその機体はサーベルに両断され、一機から2つの残骸へと変わり果てていた。
BATTLE END
「認めない……こんな敗北……俺は認めねぇ!ファビョーン!!!お前は一体誰だ!」
「俺か?俺はガンプラ自警団「Gundam Summary Bulletin」通称GSMのリーダー、水口だ。」
「何?!水口だって?」
「水口といえばあの超一流大学東帝大学のガンプラ科1年にして学年首席の……?」
「なんだこんなとこにいるんだ?」
ギャラリーがさらにざわめく。
「水口だと?!くそっ覚えてやがれ」
えむびーが破壊されたクアンタを強引に手に取り、小便を漏らし、何度もずっこけながらその場を後にする。
まだギャラリーは騒いでるが、水口は気にも止めず、歩き出した。
「あいつ……これで大人しくなるかなぁ」
商店街の路地裏からひょっこり顔を出し、早歩きで水口の横に寄り添う少女。
「さぁな……また暴れ出したら止めるだけだ。何度でもな。」
「水口らしいね」
「俺は、ガンプラを使って悪さをする連中は許せない。」
「そっか。あ、そういえばこれ。」
今時珍しいぺろぺろキャンディーだ。
「何だ?」
「さっきの子から」
「そうか」
俺はキャンディーを手に取り、舐める。
「美味しい?」
「ああ」
第二話 GSB
「すいやせん、負けてしまいました」
えむびーが王座に座る男に向かって土下座している。
王座に座った男は顔を上げろと言い、言われるがままにえむびーは顔を上げた。
「今一度私めにチャンスをください手の内を知った以上負けはしません」
男は何も言わずに手で指示しえむびー下がらせた。
「GSBの水口か、是非我が戦力に加えたいものだ……。」
「1時間目はっと…げぇ〜ガンプラバトルかよ〜」
時間割を見ながらため息をつく俺の同級生の蛇島。
何かと俺についてきて文句を言う面倒くさいやつだ。
ビルダーとしてのセンスはあり、バトルの素質もそれなりのものなのだが、
バトルでガンプラを傷つけることを極端に嫌う。
そのため、上手いこと相手と自分のガンプラを傷つけないように戦い、自分がリングアウトすることで負けるのを繰り返している。
「外出する、蛇島、また代返頼む」
「ってちょっと待てよまたかよ!お前そんなんじゃ進級できないぜ?」
「そのために代返を頼むと言ってるんだが?」
「あーもうはいはいわかりましたよ」
悪態をつきながら教室を後にし、蛇島はガンプラバトル実習場へと向かった。
俺も教室を出て、閉じた校門をジャンプで飛び越え、校外へと出た。
向かう先は、学校の裏にある小さな山。
頂上には神社があった。
「逃げずにきたことは褒めてやろう」
鳥居の真下に、一人の男が仁王立ちをしていた。
サングラスとネックウォーマーを身に付けており、顔は確認できないが、そこそこ年を取った男だというのは声でわかる
「子分の敵討ち、というわけか」
「まぁそんなところだ」
「しかし、今の時代に果たし状とは、センスが無いな」
俺はその男が書いた果たし状をポケットから取り出して広げて見せた。
「私は電報というものが嫌いでね……。全く気持ちが伝わらない。」
「そうかい」
俺はガンプラを取り出し、くだらない話はいいからさっさと決着をつけようと促した。
「やれやれ……、せっかちだな君も」
彼も準備をし、ガンプラバトルがはじまった。
海のステージが表示される。
「おっと、君の機体にはミラージュコロイドが搭載されてるんだったね
それから……」
フリーダムファントムによるミラージュコロイドの奇襲を軽々とかわす。
相手の機体は……、リ・ガズィ。
大型の戦闘機形態が、海上を飛び回る。
「それから……そこっ!」
リ・ガズィの先端から放たれたメガビームキャノンが、姿を消したフリーダムを捉える。
アンチビームシールドがそれを受け止め、ミラージュコロイドを解除し姿を見せる。
「くっ……!」
「サイコフレームを有するニュータイプの前に、姿を消すだけの子供だましなんて無意味さ」
「だったら!」
分離したバラエーナ砲が、移動を続けるリ・ガズィの後ろに回りこむ。
「それもお見通しだよ」
リ・ガズィはMS形態へと、姿を変えて落下することでバラエーナの射線から間一髪逃れる。
この瞬間、俺は勝利を確信した。リ・ガズィは戦闘機形態から分離することでMS形態へと変わる可変機【もどき】だ。
一度MS形態になってしまえば、戻ることは出来ない。
今落下を続けているが、そのまま海へ沈み続け、そのままリングアウトだ。
だが…リ・ガズィはMS形態のまま、高度を上げていた。
SFS…分離したBWSを、下駄として運用しているのだ。
「驚いた?」
「面白い!」
全ての武装を自律稼働モードに切り替え、超高速戦闘モードに切り替え、リ・ガズィに向けて急接近する。
サーベルを抜刀し、リ・ガズィのコクピットを貫く。
機体は爆発し、フリーダムはその爆風に煽られる。
「チッ」
俺は大きく舌打ちをした。
俺がサーベルを抜刀し、斬りにかかるわずかな瞬間に、奴はダミーバルーンを射出し、身代わりにした。
それにこの爆発…奴はバルーンを展開しただけじゃなく、バルーンの中にグレネードの弾薬を仕込んでいやがる。
フェイズシフトじゃなければ、やられていた。
「駄目だよ」
この隙に海中から忍び寄らせたレールガンが、あっという間に潰されてしまう。
「万策尽きたかい?」
「いや……まだだぁ!」
キラキラバシューン!!
「種割れ……なるほど」
リ・ガズィの弾幕をかわし、背後へと周り、サーベルがリ・ガズィに迫る。
リ・ガズィもサーベルでそれを受け止め、鍔迫り合いが起こる。
衝突したビームの衝撃が、コクピットモニターで再現される。
「流石に早い……今のは小細工する暇もなく、受けるのが精一杯だったよ」
即座にシールドを投棄するフリーダム、もう片方の腕にもサーベルを手に取り、すかさず斬る。
リ・ガズィの左腕は見事に斬られ、SFSと化したBWSから落とされてしまう。
海を背に、落下を続けるリ・ガズィ、すかさずフリーダムが追撃する。
ダミーバルーンを射出し、頭部のバルカンやハンドグレネードを撃ち続け、必死に抵抗を続けるリ・ガズィだったが、
悪あがきでしかない。勝負はすでに決している。
一発のグレネードが、制御を失い、徐々に高度を落としているBWSに命中する。
大きな爆発が起こり、その爆発に、俺は一瞬気を取られる。
「今だ!」
急速に上昇したリ・ガズィが、フリーダムへと詰め寄る。
リ・ガズィのサーベルが、フリーダムのコクピットを貫く。
全く同時に、フリーダムのサーベルも、リ・ガズィのコクピットを貫く。
完全な相打ち、結果は引き分けとなった。
「いやいや見事だよ、水口くん」
「あのリ・ガズィ、SFSとして運用していたが再度MAに変形することだってできたはずだ。
本来使い捨てのはずのBWSをSFSとして使うことで、使い捨てではなく正真正銘の可変機として運用が可能
お前のリ・ガズィのコンセプトはこうだろう?何故変形しなかった?」
「そう怖い顔をしないでくれ水口くん、君は察しが良いな。その通りだよ。」
「……お前は、誰だ?」
「私かい?私はチームcancer cells、通称ccのメンバー柳田だよ」
柳田……そういえば元同級生に居たな。
高校を卒業して進学をせずに就職した超負け組。
高校の時はよく俺のことをいじめてたっけ、ガンプラバトルでは成敗してやる
ほんとに柳田は最低だよ
俺が日直でホワイトボード消しを後からやろうとしてただけなのに
水口くん日直だからホワイトボード消さないと、次の先生くるよだとか
うっせーんだよ後からやるんだよばーか
3話へ続く
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l''!,/⌒;;;''/\\
| |(;;゚;ё;゚;;)  ̄
\ 雑巾 ヽ
| ・ ・.| |
| .,,;,. | |
| i.uj |リ
第三話 遥
戦いを終えた俺は、教室へと戻った。
「あ、おはよう水口くん、また遅刻〜?」
隣の席の遥が、呆れたように挨拶をかけてくる。
「いや、9時にはちゃんと登校したんだけどな…ちょっと体調が悪くて」
「はぁ…8時40分にはもう皆実習場について準備しているんだからね…」
「悪い」
「あっそうだっ!今日の放課後、空いてる?ちょっと付き合って欲しいんだけど…」
「別に暇だし、構わないよ」
「遥〜、あんた教室でデートのお誘いとは度胸あるわね〜」
「このリア充めぇ!ジェネシスの内部で核爆発しちゃえ!」
「もぉ〜そんなんじゃないって〜」
からかいながら逃げる女生徒二人を追いかけながら一度止まり、俺に向かって優しく微笑み、再び女生徒との鬼ごっこをはじめた
「待ってよもう!違うんだってばもう!」
廊下に響き渡る遥の声が、遠ざかるにつれてだんだん小さくなっていく。
さっきの流れを見ていた周りの男子も騒ぎ始めるが、俺は相手にせずただ窓の外を眺めていた。
あのリ・ガズィのファイターは、かなりの腕だった。
にも関わらず、どことなく遊んでる雰囲気を醸し出していた。
目的は一体、何なんだ?
って…、考えても仕方ないな。奴が俺の前に現れればまた倒すだけだ。
あっという間に授業が終わり、放課後になった。
「ねぇ水口くん、さっきの約束なんだけど!」
「ああうん……えっと、何?」
「いいからついてきて!」
強引に俺の手を引く遥
廊下を走り、階段を駆け上がり、一つの教室の扉の前に立ち止まる。
「入って」
スライド式のドアを開き、薄暗い部屋へと案内される。
遥も続いて入り、証明のスイッチを押す。
そこには、何も入ってないショーケースと、直置きで積まれた大量のガンプラの箱
それから、デスクの上には大量のプラモ工具があった。
「ようこそ私のガンプラサークルへ、歓迎するわ。」
「サークル…?遥の?」
「はい!」
「いや……ここガンプラ科なんだから、わざわざサークル立ち上げなくても設備は揃っているし…」
「わかってないなぁ水口くんは!大学といえばサークルだよ、サークル!」
「ああ…まぁいい。で、メンバーは?」
「私と貴方しか居ないわね」
「じゃあまぁ、よろしく」
「あれ?拒否しないんだ?俺を仲間に入れたければ俺にバトルで勝ってからにしろー!とかそういうの期待してたのに」
「長い付き合いだから遥のことはよくわかっている。どうせ引き込まれるまで付きまとわれるんなら折れたほうが楽さ」
「話が早くて助かる〜」
こうして俺は新たなガンプラサークルへと加入した。
まずは乱雑に置かれた備品の片付けから、掃除。
気がつけば、6時を回っていた。
「今日はこのへんにしとくか」
椅子に腰掛け呑気にコーヒーを飲んでいる遥が頷く。
ほとんど動いてるのは俺だけで、こいつはほとんど休んでばかりだったがのだが。
「む〜〜……。」
帰る準備を始めた俺に、遥が膨れはじめる。
「何だ?まだ続けたかったのか?」
「違う!俺を仲間に入れたいのならバトルで勝ってからに〜って言われるのを期待して、
せっかくガンプラを作ったのに出番が無かったから拗ねてるだけ!」
「それは悪い事したな。ガンプラ、見せてみろよ。」
遥が頷き、ガンプラを取り出す。
女の子らしいピンクのカラーリングのガンダムタイプ。ストライクルージュだった。
「私、ガンダムはあまりわからないんだけど、このガンダムの色が、可愛かったから。」
「ストライクルージュか、ガンダムSEEDに登場するガンダム
地球連合軍が開発し、本編内では戦闘よりも、装備されたリペアツールでの修理を主とし、支援メカとして活躍する。」
「詳しいね」
「常識だけどね。けど、これ遥が作ったの?」
遥が頷く。よく出来ている。ゲート処理もしっかりされてるし、
シールも丁寧に貼られている。
「紙やすりの粗さは?」
「600番台と800番台」
「ちょっと粗いかな…、もう一つ目が細かい400番台を使うと、もうちょっと綺麗に仕上がるよ」
「そっか、だから中々面が綺麗にならなかったんだでも一目見ただけでわかっちゃうなんて凄い」
「まぁ……仕上げは最も重要な部分だからね」
とりあえず耐水ペーパーすら使った事がないニワカなのはよく判った
>本編内では戦闘よりも、装備されたリペアツールでの修理を主とし、支援メカとして活躍する
もうこの時点で「冥王星のガンダムSEEDですか?」とバカにされても文句言えないわけで
なんでまた駄文投下し始めたんだろ?
最初の方の感想レスでユーラシア氏を批判したレスがあったから
自分が投下したら褒めてもらえるとでも思ったのかねぇ
BFネタはただでさえ厨二臭くなるんだから、そのへん
考慮した方がいい。
もしアニメ化されるとして、30代のデブが失禁しながらブヒブヒ言いつつ
逃げるシーンなんて見たいかい?
前にも書いてたが、主人公=美形、敵=ブサイクならそもそも
戦う前から結果わかりきってるんでバトルすら無意味。
敵にも下っ端にも通行人にすら思い入れを持てないと物語なんて書けないよ。
首席どうたら言ってるけどさ、一年次でしかも授業期間中じゃGPAの結果出てないんだから首席なんか決めようがないし学生側は誰が首席か知りようなくね
自称大学生じゃなかったっけ溝口君?
「も〜早くバトルしようよ!」
「ああいいぞ」
俺は整理中に見つけたストライクダガーを手に取り、セットした。
地球連合軍の量産機、グレネード兼用ライフルにサーベル、バルカンといった標準的な武装を装備し、
シンプルで扱いやすい機体だ。
ただ、ナチュラル用に操作性を簡略、調整されてるために、反応に少しラグがある。
「水口、ストライクダガー出るぞ!」
「遥、ストライクルージュ行きますっ!」
スクリーンに表示される無重力空間。フリーダムに比べると動きが鈍い…。
ルージュを視認した俺は、すぐさま牽制射のビームライフルを撃つ。
「えっ」
放たれた三発のビームのうちの一発が、ルージュの左肩をかすめる。
ルージュの左肩がビームによって溶け、ピンクのフレームが黒へと変貌する。
「バカッ、今のは避けられる攻撃だ」
「そんなこと言われてもぉ!」
向きを変えずに距離を取るルージュ、リペアツールで肩を応急修理している。
リペアツールから出たスパークが、よく見える。
「今度はこっちの番!」
ルージュがライフルを連射する。
しかしビームはかすめることもなく、それてしまう。
停止したダガー、当たらないことに苛立ったルージュ、射撃を続けながら、徐々に詰め寄り続ける。
(射撃も回避も下手くそだな…)
「よく狙いをつけてから撃て!射撃ってのはこうするんだ」
高速に三連射されたビームが、全てルージュのシールドに命中する。
「そのシールドは耐ビームコーティングが施されている。上手く使え。」
「バトルなのに……これじゃ授業みたいじゃん!」
(さて、決着を着けることは容易いが、あのルージュを傷つけたくない。どうする?)
ルージュがサーベルを抜刀、すかさず俺もサーベルを抜き、サーベルとサーベルが激突する。
「遅い……、今の速度じゃカウンターで逆にコクピットが無くなってるぞ」
「このっ!」
ルージュのライフルが、ダガーに向けられる。
しかしチャージも許さぬまま、ダガーのキックがルージュの腕に直撃し、ライフルは宇宙空間を漂う。
すかさずサーベルで反撃しようとしたルージュだったが、ダガーの腕に掴まれ、阻まれる。
そして次の刹那、桃色のフレームは大きな音を立て、灰色のフレームへと変化する。
フェイズシフトダウン…。
戦闘で消費したENがとうとう底付き、その色を失った。
同時にサーベルも、柄のみの形となってしまう。
「そんな?!」
「勝負あったな」
「まだっ!」
灰色のルージュが、ダガーに急接近する。
ルージュのリペアツールが、ダガーのコクピットに届く。
「リペアツールだって、こう使えば!」
リペアツールのスパークが、コクピット内を襲う。
強烈な電気ショックにより、ダガーの電気系統を完全に奪ってしまう。
BATTLE END
「やった水口くんに勝てたぁ!」
「まさかあんな手で決められるとは、全く想像もしてなかったよ」
「とっさに思いついたんだよ、このPS装甲?の警告を見て、MSも電力で動いてるんだなって」
ガンダムSEEDに登場するMSは確かに電力で稼働している。
確かにそこをうまく付けば、機能を停止させられるかもしれない。
まぁ、動力が核のフリーダムには関係がないんだけどね。
「リペアツールを武器にする方法、このアイディアは良いと思う
うまく相手の意表をつけるからね。もうちょっと絞ってみたら?」
「うん!ありがとう!う〜んスッキリした。さ、帰ろ?」
さっさと、消灯、準備をし教室を後にする。
「ね〜遥の奴水口くんとあの教室に二人きりで入ったまままだ出てこないよ?何してるんだろ?」
「確かに長いわね…突入してみる?」
「お前ら…何してる?」
ドアの前にいる女子二人。
「って…水口くん?!」
動揺する二人の女子を見た遥もまた動揺する
「えっとぉ……これはその……」
「ごめん遥!絶対誰にも言わないから許して!」
大きく頭を下げ、走って逃げる二人
「あ〜もう違うのに……」
「何が?」
「何でもない!」
大きく怒鳴り、膨れながら早歩きをはじめる遥。
俺もそれに追従するようにその場を後にした。
4話で続く
「スパロボが本編!(キリッ」と言われても俺は驚かんw
脳足りんのアホの言う事には呆れ返るばかりだよ。
うわぁ…
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1461081380/867 867 名前:通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 2772-3Jvt)[] 投稿日:2016/05/04(水) 12:20:24.08 ID:oOO6lCOK0
Gレコよりも俺のSSの方がよくできてるしな
とりあえず駄文未満投下してる奴が暴れてるんでユーラシア氏以下SS書きの方々は
投下し辛いかもしれないけど、続き待ってます
>>11乙です
ザフト側の次の対応策が気になります
次スレは荒らし対策でIPありにした方がいいんかなあ
>>45 このスレはかなり前荒らし対策でIPが出るシベリアに移転して過疎ってるからそれが出来ないんだよ、残念ながら
とりあえずムカつくがNGでスルー推奨
投下開始
――――――――――<リヴィングストン>格納庫―――――――
ザフトのMS部隊の移動基地でもあるレセップス級の格納庫は、元々広かったが、殆どの搭載機が作戦に出撃している現在、
この<リヴィングストン>の格納庫は更に広く見えた。
ノーマは、自身の乗機へと向かった。
ノーマが足を止めたMSハンガーには、ザフトの最新鋭機 モビルスーツ シグーがその力強い鋼鉄製の巨体を屹立させていた。
シグーは、ザフトの主力MS ジンよりも精悍かつ細みのある外見をしていた。
そしてその精緻な動きを可能とする両腕には、兵器が保持されていた。
右には、ザフト軍のMS用主力火器である重突撃機銃が、左には中世ヨーロッパの騎士が使用していたものを
巨大化させた様な円形のシールドとそこからはみ出たガトリング砲の銃口が鈍い光沢を放っていた。
円形の特殊合金製シールドの裏側には、ガトリング砲の機関部と徹甲弾、他数種類の弾頭が装填された弾倉パックがある。
シールドに火器を搭載するというのは、限られたウェポンラックの有効活用という意味では、
合理性があったが、敵の攻撃を受けることを考えると衝撃による動作不良や誘爆の危険性を孕んでいた。
シグーは、ジン部隊の指揮官機として開発された機体で、飛行MS ディンのスラスターを改良した2基のメインスラスターによって
機動性がジンの2倍近く強化されていた。
ジンをあらゆる性能で上回るシグーは、主力機 ジンの後継機種としてエースパイロットや指揮官を中心に配備が進められていた。
ノーマにこの機体が引き渡されたことには、
彼女自身が、MA22機、戦闘機12機、装甲車両29両を撃破し、戦闘艦4隻、輸送艦3隻を撃沈したエースパイロットであることだけでなく、
彼女の父親であるヨハン・アプフェルバウムの存在もあった。
ユーラシア連邦 ドイツ州 ケルン出身の第1世代コーディネイターにして、黄道同盟創設メンバーの1人であるこの人物は、
現在、同志の大半と共にプラント最高評議会のメンバーに選出され、
現在、アプリリウス2の地区代表 プラント最高評議会議長補佐として活動していた。
新兵からエースになったとはいえ、まだ経験が少ないノーマにシグーが引き渡されたのには、
実力のみならず評議会議員の縁者子弟に最新鋭の機体を引き渡しておくことで、ザフト内部での立場を良くしておきたい、
と考える関係者の配慮が全く無かったとは言えなかった。
「ノーマ小隊長!出撃されるのですか?」
先程まで待機室にいたのであろう。彼女の部下の一人が尋ねた。
「ええ、そうよ」「修復が完了次第、我々も共に出撃します!」
数時間前に経験した地球連合側戦闘機部隊との戦闘で、ノーマのシグーは殆ど損傷を蒙らず、弾薬と推進剤を消費しただけで済んでいた。
だが彼女の部下の機体は損傷を蒙り、現在修理中であった。
「今回の戦闘は私だけで十分よ、貴方達は、この艦の直衛に付きなさい」
「小隊長1人で市内の地球軍と戦うんですか?」
「そこまで無謀なことを私が考えているわけがないでしょ?私は突破口を開くだけよ、安心して」
「…了解しました。」次に背後から整備班長が彼女に声をかける。
「小隊長、出撃されるのですか」「ええ、整備は?」
「シグーは、既に完了しています。」「グゥルは使用可能?」
「グゥルへの推進剤補給は既に完了しています」「ありがとう。」
そう言うとノーマは、ハンガーに駐機された愛機の元に向かった。
彼女は、シグーのコックピットに乗り込むと即座に計器類を起動させる。
シグーは、ハンガーから歩き出すと、リニアカタパルト上に置かれた物体の上に足を置いた。
そのエイを思わせる物体は、後部に推進器があった。
シグーは、ジンよりもスラスターの推力はあるものの、飛行モビルスーツ ディンの様に自力で飛行することは不可能であった。
その為、追加装備が必要となる。
それが、このサブフライトシステム グゥルであった。
民間向けに垂直離着陸輸送機として開発されていた機体をベースに開発したこの機体は、
MSを搭載し、戦場まで輸送させることを目的に開発された無人航空機である。
その高い推力により、限定的ながらモビルスーツに空戦能力すら持たせることができ、
少しの改造で、無人輸送機・爆撃機としての運用も可能な装備である。
現在、ファーデン戦闘大隊の指揮下のモビルスーツ部隊が、
地球連合軍の追撃にグゥルを使用していたこともあって、艦内格納庫には、グゥルは、1機しか残されていなかった。
このグゥルも機械故障で出撃不能となり、修理の為艦内に残されていたものであった。
ちなみにノーマ小隊が使用していたグゥルは現在補給と修理作業中であった。
「これより出撃する!進路は?」
「進路クリア、発進どうぞ!」
はきはきしたオペレーターの声が彼女の耳を打つ。
彼女は、機体のスロットルを最大にした。
グゥルに乗ったシグーが、リニアカタパルトの力を得て空へと射出される。
「ノーマ・アプフェルバウム シグー出撃する!」
巨大なバッテリー仕掛けの白銀の騎士は、鈍色の空へと駆け上がって行った。
聖天使出撃 終
今日は此処までです。感想、アドバイスお願いします
>>12 この都市の戦いの話の結末自体は執筆初期から決まっていますので後はそこに向かうだけです
後数回の投下で出来ればこの戦闘を終わらせられたらいいなと思ってます
では
投下乙でした
最新鋭機を与えられたエースパイロット、ついに参戦
彼女はこの機体で不利な戦況を挽回できるのか、それともあえなく討ち取られてしまうのか…
次回が待ち遠しいですね
ユーラシア兵氏乙です
もうすぐこの章は完結らしいですが、続きとかはあるんですか?
次の投下待ってます
>>48 wikiに書いてある内容そのままじゃなくて、もうちょっと自分風に捻ったりしたほうが良いと思う
というかMSの特徴にどれだけ文章使ってるんだよっていう話
ここは物語を投稿する場所であってMS図鑑じゃあない
MSを語りたいならそれに見合った場所に行くと良い
辛口になってすまんが、公式のノベライズですらそこまで触れないのでちょっと気になった
wikiの設定が全てってわけでもないからな
映像と設定にはやっぱり差異が生まれるから、そこを自分なりに列挙してみるとかのほうが、やっぱり創作としての面白みがある
>>54 wiki見たらほんと内容全く同じで吹いた
ていうかユーラシア氏、前スレを使いきってから新スレを使うっていう2chの一般的なルールくらいは守ってくれないだろうか
>>58 >>1の「容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。 」
てのがあるから、新スレ立て>投稿は次スレに以降と思ったんじゃね?
旧スレは落ちたら見えなくなるから、SSを読み返したいと思う人にとっては
新スレに投下してくれた方が有難いし、問題無いかと。
>>56 SSスレはとかく長文が多くなる、結果容量KBによるスレ落ちにより
「せっかく作ったSSが一目に触れなくなる」という結果がありうるんでコレでいい
なんかネット環境によってキロバイトの数値が違って見えてるらしいよ
>>61 そうなんだ、まぁ投下にはこっちを使って貰う方が良いのかな
現状、俺からの見かけは338kなんだよね
Jane Style Version 3.83
古びた木製の窓枠に積もった雪を、デュオは指ですくってみた。冷たい
真冬の、地球で言えば12月の日本に相当する気候に設定されたこのコロニーは、彼らの今回の作戦拠点であった
コロニーは活気に満ちている
安アパートの二階からコロニー公社が直々にツリーが備えられた広場と、そこに群れる家族連れや着ぐるみ、仕事を忘れたように談笑する警備兵、サラリーマン達の行き交う華やかなクリスマスの風景を遠巻きに見て、
もう少し広場に近い場所に住処を借りれば良かったと後悔した
無愛想で悉く世俗の何たるかに関心が示さない彼の相棒がデュオが気にいるプライベート空間を用意するはずもなかった
「やっぱよぉ、普通の暮らしってのに憧れるなぁ…俺は」
広場からは目を離さず、誰ともなくヒイロに聞こえる様に言う
デュオという男なりの照れ隠しでもある
意思の強さ、ただそれのみを秘めて人間である事を放棄しようとさえしてるかに見える瞳の少年が、ノートパソコンで送られるメールに隠された暗号を解いていく
「なぁ、聞いてんのか?ヒイロ」
広場からは目を離さないデュオだが、そう言って催促した
「正月も迎えず死にたくないと言ったのはお前だぞ」
「そりゃまぁ、そうだけどよ…」
こんな歩く度にミシミシと軋む板切の安アパートから賑やかな広場を見たら、限度ってモンがあるだろと溜息も出る
「ここで数日過ごすって言ったら、楽しみなんかこれしか無いもんな。ヒ、イ、ロ」
デュオは口惜しそうに窓辺から離れると、食卓の椅子に座りモニターに没頭するヒイロの背後に立つ
「工作員のメンタルケアも仕事のうちだぜ?」
デュオはヒイロのタンクトップを捲り上げて、括れた細い腰に手を回した
「任務中だぞ。広場の監視を怠るな」
「10分や20分ほっといても何もおきねーよ」
デュオは回した両手の位置を下げる
座っているヒイロの、ちょうど局部に当たる様に
「…はあ、…ん」
モニターを注視するヒイロの視線が乱れる
デュオは、ぴったりと下半身に張り付いたヒイロのスパッツの上から優しく揉み解すと、
ヒイロも仕事に没頭ばかりしてはいられなくなる
「息が荒くなってるぞ、ヒイロ。ちゃんと暗号解読進んでんのか?」
「なら、…それっ…やめ、んっ」
スパッツを穿いて欲情を煽られたヒイロの下半身は、テントの様に突き上げ窮屈に自己主張している
しかしデュオはそれを知って、意地悪に揶揄うのだ
「可愛いよな、ヒイロ」
緩急と触れる位置の微調整を繰り返して、デュオはヒイロを限界まで焚き付ける
「はっ…あ、あ、あ」
声にならないヒイロの感覚は、ぴったりしたスパッツを硬く持ち上げるソレが切ないくらいに代弁している
「あーあ、濡れてきやがった
これじゃ任務どころじゃないよな」
ちゃんと処理しないと、と言いながらデュオはふらふらと項垂れるヒイロを椅子から抱き起こす
「デュオ…イキたい」
こんな時だけだ。ヒイロが歳相応の美少年の顔をみせるのは
お前、ズルいよな。魔性っての?と思うデュオだが、興奮が先行するのはヒイロだけではない
デュオだって同じ15歳の多感で見目麗しい少年だった
こうしてる間にもデュオは愛撫をやめない
既にヒイロのスパッツは染み出してテント周辺が濃く変色している
しかし絶頂を迎えさせてもらえないヒイロ自身は、尚も息を乱して荒ぶるのだ
スパッツ越しに濡れた右手の指先をヒイロの左手に絡ませて口付けする
暖かい
この寒暖差が温もりを増して伝える様で病み付きだから、デュオは窓をよく開けっ放しにしてヒイロを抱く
「もう…イキたいよ…デュオので…デュオのでイキたいよ…」
火照った体、肌寒い風、理性の飛んだ姫、うららかな休日、安アパートの薄暗い居間、
死神が好きな条件は揃った
「ベッド行こうな、ヒイロ」
そうさ、俺は死神。瓦礫の中でも笑ってるんだ
たとえ今世界がめちゃくちゃになったとしても、お前を抱くのはやめねーぞ
デュオはそう思ったら無性に世界が憎らしくて、もう一度ヒイロの唇に吸いついた
>>68 えぇ〜、ボクのが1番楽しくないですか?
ボク自身も美少年だから、死んだら2ちゃんの損失ですよ。うへ
まぁお兄さんが構ってくれるなら…
>>46 それは立てた板に問題があっただけだろ?
新シャアで立てれば問題ないはずなのだが
ユーラシアとかが自演できなくなるから焦ってる感じ?
下記スレの勢い的に新シャアなら十分な勢い確保できるな
福田己津央&両澤千晶vs長井龍雪&岡田麿里302 [無断転載禁止]©2ch.net
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1461560536/ ガンダムまとめ速報&まとめ連邦軍を潰すスレ 17 [無断転載禁止]©2ch.net
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1462834188/ デス種の福田負債竹田森田下村を処断するスレ348 [無断転載禁止]©2ch.net
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1457318300/ 何故ユーラシア氏や他の職人さんが自演してるとか疑ってるの?
つか以前シベリアへの移転が半ばいきなり行われたせいで仕様変更は
しないみたいな話になってなかった?
新人スレ住民さん本人の発言を聞いてみないことには分からないけどさ
後、荒らしに関してはスルーが基本って数スレ前に決められたんじゃないの
ボクは自演なんてつまんない事してないよ
ただボクの中を見てほしいだけ
>>74 どうもご無沙汰しておりすみません、新人スレ住人です。
シベリア等への移転は一切考えておりませんが、他スレのワッチョイ導入などにより
またこちらで荒らし行為を行っているようです。
当スレでも次スレよりワッチョイ導入などを検討してもよいところですが、
(その場合には一定の期間を設けて投票など行って決めたいと思います)
内容的にも一目瞭然な荒らしです。
まずは住人の皆さんによる徹底スルー、意見やAAなどは該当する最悪スレなどに
書き込んでいただくことをご協力願いたいと考える所存です。
個人的にはワッチョイ導入に賛成。
今はワッチョイないと喜々としてここぞとばかりに荒らしに来るアホがいるからなぁ…
>>76 現状維持で
ID出ても荒らしは続いてるし、それに一々相手している奴も無くなってないからな
挙句職人さん達が自演してるとか誹謗中傷する奴まで出る始末
とりあえず
>>1に書いてる通り、住人が荒らしを徹底スルーすることを心がけるべきだよ
荒らしは基本構ってちゃんだから
「投稿」するのに不都合がないのならワッチョイ導入はおまかせします
「モリーゾ」がこのスレに来なくなるのでワッチョイ導入賛成
>>80 ID導入前、導入されたらケがここを荒らすことは無くなると言われた
だが、いまも奴はここで文字の羅列を投下したり職人を中傷したりやりたい放題を続けている
ケだけでなく、ケに構う奴がいるのも問題だよ
何故かまうのか?
投票ってIDだけのここじゃ意味ないだろ
ガンダムまとめ速報の管理人に頼んで記事を作ってコメント欄でとってもらったら間違いない
管理人側からIPや端末の確認ができるから、不正が出来ない
私も導入に賛成
否定的な意見もあるようですけど、まずは一度導入してみては?
とりあえず導入って
何のために時間かけてアンケとってると思ってるの?
そのとりあえず移転で失敗した過去がある以上慎重になる必要があるのに
どうにも臭うな
ワッチョイ導入は断念したほうがいいかも
曲がりなりにも作品投稿スレでIDIPを嫌がる理由がわからん。
IDIPを嫌がってるわけじゃないし
一度起きた失敗があるから慎重になってるだけだよ?
後学の為にも、その「一度起きた失敗」を具体的に詳しく教えていただきたいなー
とりあえず荒らしをスルー出来ない限りなにやっても無駄かもしれん
前スレでは基本荒らし無視できてたと思ったのに、何で現スレで荒らしが
駄文投下始めたら構うの?
>>87 かなり前モリーゾがこのスレに荒らし始めてそれが酷くなったからシベリア移転→過疎
になったことじゃないの
あの頃は、ペルデスさんに粘着したり、延々AA荒らし始めたりと今以上に酷かったからなぁ
>>86 ワッチョイを入れる事によって、悪い事が起こり得るのか?
スレ立てる都度設定するんだから1回導入して失敗したと思ったらもう1度投票して真を問えばいいじゃんね
IP出しにした後でそういうことを言う奴が現れるかどうか知らんけど
>>88 スレに人が増えてくればどうしても構ってしまう人が出てきてしまうものですよ
誰も彼もが我慢強いわけじゃないし、我慢強い人でも時と場合によってはタガが外れてしまうことがある
こればかりはどうしようもないことです
何か対策するの考えるのもいいけど、荒らしスルーすることも忘れないでくれよ
毎回スルーしろって言っても無視して構う奴が出るのはもう嫌だからな
モリーゾだろうが、溝口だろうが文字の羅列投下してきたらIDNGにして見ない、構わない
>>92 それはわかるけどな、今回とか数スレ前とかは荒らしが荒らすことに反応するのを
楽しんでる奴らがいるとしか思えないんだよな
そういうのは、荒らしと変わらんよ正直
>>87 何度も言われてることだけど
シベリアに移転した際にレス数が圧倒的に減って落ちたって失敗な
誘導はしっかりしてたんだから、板が問題ってわけじゃなくて
IP表示に問題があったとしか思えないのだが
しかし荒らしはどうしてこのスレに文字の羅列投下するんだろうな?
構ってほしいだけだと予想してるんだけど、いささか異常すぎる
>>96 作者が投下したSSに皆が和気藹々と感想を付けて仲良くやってるのが気に入らないんじゃないかな?
そんで、そういう環境をぶち壊しにして今みたいな殺伐とした流れにして悦に入りたいんだろう。
つくづく腐って曲がった根性したクソッタレ野郎だよ。
こんばんは、新人スレ住人です。
とりあえず次スレまでまだ時間がありますので、
ワッチョイ導入はスレ終盤で決定するとして、
以後議論は前スレ32ページ目の埋めでお願いいたします。
また、当スレには自分の管理する
職人さん住人さんのための交流掲示板が既にあります。
IPなどはこちらで把握できますので、
自演などを危惧するのであれば、こちらでの投票も可能です。
そのため、他サイトさんのお手を煩わせる必要は最初からありません。
個人的な意見ではありますが、シベリア移転が失敗に終わったのは
IP表示の問題ではないと考えております。
このスレも33ページ目を迎え、度々荒らし行為に遭いながらも
数多の職人さんとの出会いがあり、SS作品を掲載してきました。
その愛着があるというのが最も大きな一つ。
シベリアではSSが人目に触れにくい、というのも一つ。
また、移転したスレでの、荒らしをあからさまに取り扱ったSSを投下するなど
荒らし同様の行為があったことも一つ。
そのような悪ふざけが職人の名の下に公然と行われるスレで
まともなSSを投下する気が起きるでしょうか?というのも一つ。
旧来の住人の反対意見を無視し、半ば強行的にスレを増設した
というのが最後の一つ。
当スレは新シャアのSSを書きたいという職人さんと、読みたいという読者さんの為に
存在するスレだと思います。
荒らしに対抗し、構うスレは別にあります。
ワッチョイIPつけときゃ荒らしはよってこないという確証は無い。
が、荒らしはIPを晒されるのを極端に嫌うというのも事実であろう。
反対意見もあるのに無視しようとする傲慢な奴も居るから見送ったほうがいいかもね
>>99 その点は誘導をしっかりしていたし、住民も把握してたはずなのだが…
ガンダムBFのSS、読ませていただきました
主の知識量は膨大で、極度のガンダム、ガンプラマニアと見ました
一度主と酒を交わしたいものです
>>73 自演じゃない証明をする為にも導入で良いんじゃないですかね
導入されて困る様な事も無さそうだし
自演じゃ無ければ
とりあえず皆
>>99にある様に次スレについての議論は前スレでやるべきでは
やる気があるやつが留年するなんておかしい世の中だわ
生徒指導の老害うざいし
一流大学生の管理人と中卒富野信者
なぜここまで差がついた
8割の出席が進級の条件なら
1周間に1度さぼってもいいってことだろ何も間違ってないのにな
そうやって正論言っただけでブチ切れる教員とか人格破綻者だろ
2割の欠席は認められるんだろ
だから金曜を毎週休んで毎週が3連休
そうやって合理的な理由も説明した上で毎週金曜休むって事前に報告までしてるのに
なんで怒られなきゃならんのだ
こんな世の中舐めてる奴が大学も卒業して今も現役で働いてる富野を叩いてると思うと
意味不明な荒しが始まったのでワッチョイ導入推進します。
教員「休みすみだゴラァ出席日数が8割切ったらアウトだぞわかってんのか」
私「だったら2割は休んでいいってことですよね?(完全論破)」
教員「アホかお前ぐちぐちぐちぐちぐち」
孫がいる年齢なのに青臭い10代に論破されて発狂とか頭悪すぎるwwww
ガイジ特有の屁理屈
サボるために出席日数や単位規定してるわけじゃねーんだよ
やる気があると自負する人間は学校サボらないしましてや留年なんかしねぇよ
荒らしはスルーって
>>1に書いてるの読んでよ
ヲチは別のスレで
これじゃ仮にワッチョイ導入しても同じように構う奴等が荒らしと一緒に暴れるだけだと思ってしまう
宇宙世紀ってガバガバなんだよな
連邦将官「近々行われる作戦の前にできる限り戦力を削いでほしい」
連邦士官「近々行われる作戦というのは噂されているオデッサ作戦のことですか?」
連邦将官「君たちにそれを知る必要がない」
味方なのに情報の開示も行わないってアホじゃね?
当時俺はBSイレブンでガンダムシードを見ていた
アニマックスでゼットガンダムを見ているという同級生が居たのでシードをすすめた
そしたらOPのおっぱいがエロいと言われ
クラス中にスケベなアニメを見ているとレッテルを貼られいじられ続けた
そしてここから俺達の逆襲ーヴェンデッターがはじまった
教員(8割切りそうだからそう言ってるのに、言ってる事が分からない…
イカれてるのか?留年しそうなこの状況で?)
先生に叱られているうちが花、何も言わなくなったら完全アウトやで。
事実に気づいて泣きついても無駄だから。
こうやって最悪の馬鹿が餌を与えてスレを荒らすのか
これで自分達を荒らしと戦う常識人みたいに思ってそうだから悪意持った荒らしより手に負えない
>>127 同意
最悪のカス共はワッチョイガーIPガーと火病起こす前に鏡を見て自分達がいかに荒らしと同じかを自覚すべし
荒らしはスルーって
>>1を読んでよ
荒らしを叩き潰すと称して荒らしを悦ばせる行為はやめましょう
話をまとめるとワッチョウ導入はなしということでよろしいな
ワッチョイ導入するくらいならいっそのこと2ch外で創作小説投稿型の掲示板にしないか?
荒らしは完全に弾けるし、落ちる心配もないし
ガンダムまとめ速報&まとめ連邦軍を潰すスレを潰す [無断転載禁止]©2ch.net
1 名前:通常の名無しさんの3倍 2016/06/02(木) 19:01:18.29 ID:lK76Ktei0
潰そうぜ
はいはい、導入導入。
なんで?
何の害もないコミュニティブログを潰そうっていう狂った奴らだから
それを潰そうってのは普通だろ?
今日も三者面談くらったからってイライラしてんの?
http://hissi.org/read.php/shar/20160602/bEs3Nkt0ZWkw.html http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1464861678/25 > 25 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/02(木) 20:38:30.61 ID:lK76Ktei0
> 冨信さえいなければ俺は留年しなかった
自分語り+ガンダムまとめ速報=ID:lK76Ktei0=ID:y30/icyc0=ID:u1AIAo4z0というわけか
俺の名前はイオリ・タケシ
妻と子を持つ普通のお父さん
職業は模型屋店主だが、今はガンプラバトルの審判として各地を飛び回っている
そんな俺は過去の第二回ガンプラバトル世界大会で準優勝を果たしてるんだぜ
そして俺の息子イオリ・セイも、今やガンプラバトル世界大会の決勝トーナメントにまで勝ち登った
こうなりゃ俺が果たせなかった優勝を、息子に託そう
息子の応援と仕事にやってた俺は愛しのリンちゃんとの再開を果たす
しかしリンちゃんときたら俺を放置してセイの同級生と、アイラという少女と寝るという
未だ若々しく、年齢不詳のリンちゃんとの再開に、俺のメガバズーカランチャーのチャージがどんどん溜まっていく
が…
「ああ〜リンちゃぁん!」
俺はしょうがなくセイとレイジ君が泊まってる部屋に、泊まっている
セイは疲れているのか、既に熟睡
レイジ君はお腹がすいたと夜の街に出かけた
「もぉレイジぃ……またシールド壊してくれて、僕が何度シールドなおしたことか…すやすや…」
セイの寝言、そして寝顔…。
セイのやつ、ほんとにリンちゃんに似てきたな。
若いころのリンちゃんにそっくりだ……。ゴクリ……。
って、イカンイカン、セイは俺の子供で、男の子なんだ。
何欲情してんだ?俺……落ち着け……
「俺……父さんみたいなファイターに……」
セイ……。
「くそ…キスくらい、いいよな?」
目を閉じ、セイの柔らかい唇に、俺の唇が重なった。
「ふぅ…」
長い沈黙を終え、目を開けると……まるで怪獣でも見たかのような顔で、俺を見つめるセイの顔があった
「ななななななな何やってるんだよ父さん!」
「あ…いやこれはその…」
「いくら母さんとイチャイチャできないからって僕となんて!駄目だよ!」
あー最悪だ……
だが、だとしても!
「セイ、これは俺の、、、せめてもの罪滅ぼしなんだ」
「うるさい!最悪だよこんなの!ずっと尊敬していたのに…こんな……」
セイの目から涙が溢れる
「聞いてくれセイ」
「聞きたくないよ!出てってよもう」
涙が溢れ、目を手でこするセイ
俺は…俺は…
「すまないセイ」
「もういいよ早く出てって!」
「聞くんだ!」
俺の出せる限界の声量で叫ぶと、ジタバタするセイは静止した。
「俺は今まで世界を飛び回り…、お前のことはリンちゃんに任せっきりで、何もしてやれなかった
父親らしいことも、愛でることも、叱ることも、一緒に笑い合うことも…
だからこれは、申し訳ないと感じた俺の愛情表現、そしてこれまでの罪滅ぼしなんだ」
「父さん……?」
「セイ……わかってくれるか?」
「僕の方こそごめん。でも、やる前に言ってよね」
「それは悪かった」
「父さん、大好きだ……」
目を背け、照れながら気持ちをぶつけてくるセイ
「俺も、好きだよ」
その日、俺とセイは、一つになった
もう離さない、誰にも渡さない。
セイは、俺だけのものだ
完
これ別の場所にも貼ってたな
こんな駄文、マジで目障りだわ
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
161 名前:通常の名無しさんの3倍 :2016/06/09(木) 07:03:57.33 ID:lWDdAbon0
軍くつのバルツァーつまらんわ
旧式のマスケット銃から軍国式ライフルに装備を変えただけで戦力アップとかありえん
普通に考えて兵士にまで新型の武装を施す必要がなく
一騎当千の指揮官のみに新型ライフル与えて雑魚は囮の横列陣形でいいだろ
そうだねこっちにしとくか?
http://hissi.org/read.php/shar/20160609/bFdEZEFib24w.html http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1464861678/169-170 169 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 19:27:25.19 ID:lWDdAbon0
これ描いてる奴絶対戦闘ってもんを理解してないだろ
170 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 19:33:07.85 ID:lWDdAbon0
しかもこいつ、アホ丸出しだろ
小学生でも50mを数秒で移動するぞ?
100mでも20秒を軽く切るだろ
なのに100m1分ってwww
あwwwたwwっwまwwwwわっるwwwwwwww
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1464861678/185 185 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 22:16:24.28 ID:lWDdAbon0
つまり連結式ライフル作れよって話だな
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1464861678/188 188 :通常の名無しさんの3倍[]:2016/06/09(木) 23:07:58.29 ID:lWDdAbon0
ロロナのグリフォンは種のグリフォンのパクリだろ
荒らしはともかく構う奴はなんなの?
>>1に荒らしはスルーって書いてるのに
未だに前スレ埋まってないのってなんなの?
もう何度も話題に上がってるのに
新人職人がSSを書いてみる 32ページ目
http://echo.2ch.net/test/read.cgi/shar/1433946144/ 投下開始
「自動小銃が欲しい!三八じゃだめだ。自動小銃があったら、メリケン野郎に負けるもんか」ガダルカナル戦のある日本兵 最期の言葉
連合兵戦記 第6章 猛攻
グゥルに乗ったノーマのシグーは、途中までは地を這う様な低空飛行で、
市内が見えてきてからは少し高度を上昇させて、敵部隊の潜伏する放棄された都市に接近した。
都市から少し離れた場所には後退してきたウーアマン中隊の姿が確認できた。
先程まで激しい戦闘が繰り広げられていた市内は、銃声一つしない静寂を保っていた。
だが、市内の建築物に開いた大穴や各所からあがる黒煙は、
そこが先程まで戦場であったことを雄弁に見る者に教えていた。
また内部には、孤立しているザフト部隊がいたが、
それらを地球連合軍は殲滅することなく、放置しているようであった。
並みの部隊なら孤立している部隊を運用可能な戦力の全力をもって
叩き潰すところだろうが、ノーマ達ザフト軍と戦っているこの部隊の指揮官は、
孤立させた敵部隊の戦力を殲滅せず、最小限の戦力で監視、包囲することに留めて
敵の支援砲撃や空爆を防ぐための盾として利用していた。
相手の指揮官の有能さに彼女は思わず舌を巻いた。
「…」
ノーマはシグーを市内へと向かわせた。
「酷いものね…」
搭乗者たる金髪の美少女は、自機の正面モニターに映る光景を一瞥して言った。
旧世紀に第二次世界大戦を引き起こし、ヨーロッパ全土を地獄に変えたナチス・ドイツの独裁者 アドルフ・ヒトラーと
その腹心の部下で公私ともに交流のあった建築家 軍需大臣 アルベルト・シュペーアは、古代ギリシャ・ローマ建築の様に第三帝国が滅亡した遥か未来に廃墟となった後
も建造物が美しい姿を留めていられるように、廃墟価値理論というものを考え、
それをナチス政権の建設計画での建築物設計に適用した。
今のノーマには、それが痛いほど理解できた。
ギリシャの古代文明の栄華を残すパルテノン神殿やジャングルに呑み込まれても尚、美しさを保つ
カンボジアのアンコール・ワットが、ロシア正教の伝説にある、死してなお芳香を放ち、不朽を保つ聖人の遺体とするならば、
眼の前の放棄された都市は、雑菌と外気に蝕まれ、悪臭を放つ醜い腐乱死体と形容出来た。
目の前の廃墟が、恐らく身体的、精神衛生的にも人の居住には適さないであろうことは明白であった。
ノーマが都市内に展開する地球連合部隊が大規模ではないと推測したのも、都市のインフラが大量の人員の生活に耐えうる状態ではないことを知っていたからである。
墓標の如く聳え立つ灰色の高層建築の中へとグゥルに乗ったノーマのシグーが侵入を図った。
「(どこに敵がいるの…)」
「!!」
彼女が周囲に視線を巡らせようとした次の瞬間、ミサイルアラートがコックピットに響き渡った。
「たった1機で突っ込んでくるとは大した自信の持ち主だ!大歓迎してやれ!ミサイル班、引き寄せてから撃て」
ゲーレンの部隊は、ノーマのシグーの直進ルート上の廃墟に展開していた。
この部隊は、ウーアマン中隊が市内に突入する少し前、航空攻撃を仕掛ける為に先行して低空を進撃していた
ディン6機を有する対地攻撃部隊エレノア襲撃中隊を、ディン1機を除く全機撃墜という大戦果を挙げていた。
指揮官であるゲーレンはたった1機で向かって来るそのシグーを指揮下の部隊の火力を出来る限り叩き付けて撃破するつもりであった。
「全ミサイル斑ミサイル発射!」
指揮官を務めるゲーレン中尉の声が有線通信機を通じて、各所に潜伏していたミサイル斑に伝達された。
そしてミサイル斑は、命令を実行した。
彼らの部隊は、ミサイルの多くを航空兵力対策に温存していた。
その為ミサイルは、ウーアマン中隊との戦闘後も半数以上が発射可能であった。
廃墟の各地に隠蔽配置されていたミサイル陣地から一斉に、
正面から向かって来るたった1機のシグーに向けて数十発のミサイルが発射された。
その中には、対空用ではなく、装甲車両用のミサイルもあった。
白煙を上げて蛇の群れの如くシグーに向かうミサイル群…一見すると1機のモビルスーツを標的にしているものとしては過剰に見える。
しかしこれはゲーレン中尉とその部下が、航空兵力の脅威を正しく認識していたからである。
ノーマのシグーを包み込むように迫るミサイル、全弾を受ければ、シグーと言えど、
先程匍匐飛行中にMLRSのロケット弾の雨を受けたエレノア襲撃中隊の所属機の二の舞になるであろうことは間違いなかった。
「!」
ノーマは、自機が確実に回避出来ないミサイルのみを重突撃機銃で撃墜する。
ノーマのシグーは、ビルが森林の木々の様に林立する市内に突入した。
「なんだと!」
ゲーレンは思わず叫んだ。彼の予想では、グゥルに乗ったままでの市内への突入は、危険だと判断してグゥルを放棄して地上に着地するか、
ミサイルを迎撃後、高度を上げると考えていたのである。
そしてシグーのパイロットが前者の選択を取った場合は、少し後方にいる機甲歩兵部隊に援護要請を出し、
先程撃破してきたザフトの部隊やモビルスーツと同様に市内でじっくり料理してやるつもりだった。
逆に後者の選択、高度を上げる方を選択した場合は、貴重な航空機用の対空ミサイルやビルに仕掛けられている無人ミサイル陣地の集中攻撃で叩く、
というのが彼の作戦だったのである。
「早すぎる!」
「なんて奴だ!」
ミサイル斑の兵士が、驚愕の余り叫んだ。
ビルの合間から次々とミサイルが、ノーマのシグーに向けて放たれる。
グゥルに乗ったシグーは、ビルの間という航空兵器の動きが制限される状況でも機体の動きを傾けたり、
シールドガトリングの弾幕でミサイルを撃墜するといった方法で突破する。
少しでも操作を間違えれば、周囲の廃墟に衝突して大破することは間違い無かった。
「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。
「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、
同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼が覗くミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。
「食らえ!宇宙の化け物!」
陣地から対戦車ミサイルが発射されたのと同時に、シグーから放たれた砲弾数発が直撃した。
「わずかな間に…しかも傷一つつけられないだと!」
巧妙に市内に設営されていたミサイル陣地は、その殆どが壊滅していた。
残されていたのは、指揮官であるゲーレンの陣地のみだった…
ミスで一部の文章が飛んでしまいました申し訳ありません
「消えなさい!」
グゥルの下部に搭載された対地ミサイルが発射され、ノーマのシグーの下に存在していたミサイル陣地の1つに着弾した。
対地ミサイルのサーモバリック弾頭が炸裂し、オレンジ色の灼熱の炎が中にいた人員を瞬間的に黒焦げの炭化物に変換した。
火柱の様な弾頭の爆発を背後に、ノーマのシグーは更に激しい攻撃を叩き付ける。
「そこ!」ノーマがトリガーを引く。
シグーが、ミサイルの発射された方向に向け、シールドガトリングを連射した。
ガトリング掃射を受け、廃墟に潜伏していたミサイル陣地が3つ破壊された。
ノーマのシグーは、右手の重突撃機銃と左腕のシールドガトリング、両腕にマウントされた火器で、
順調に廃墟に設営されたミサイル陣地を撃破していった。
「撤収!ここに残っててもいい的だ。」
一部の陣地は、人員が恐怖の余り逃亡した。
「貴様らは逃げろ!早くしろ!」
第21号陣地と呼称されていたその陣地の班長を務める下士官は、同じ陣地にいる部下、その年齢と容貌は、兵士というよりも学生に近い…を、銃を振りかざして追い出すと自分だけで陣地内のランチャーを操作した。
彼がのぞくミサイルランチャーの赤外線誘導装置のモニターの向こうには、両腕の火器を熱で真っ赤に染めた鋼鉄の悪魔が戦友に暴威を振るっていた。
「食らえ!宇宙の化け物!」
陣地から対戦車ミサイルが発射されたのと同時に、シグーから放たれた砲弾数発が直撃した。
「わずかな間に…しかも傷一つつけられないだと!」
巧妙に市内に設営されていたミサイル陣地は、その殆どが壊滅していた。
残されていたのは、指揮官であるゲーレンの陣地のみだった…
「化け物かよ!」
自らのいる建物へと向かって来るシグーを見据え、彼は、肩に背負う対戦車ミサイルのトリガーに指をかけた。
「遅い!」
それよりも早く、シグーの右腕の重突撃機銃が火を噴いた。重突撃機銃より発射された76mm弾が大気を引き裂く轟音が、彼が知覚した最後の音であった。
ゲーレンが指揮所としていたビルの12階のフロアの一つに着弾した76mm弾は、そこにいた人間達を纏めて吹き飛ばした。
辛うじて残っていた窓ガラスは、粉々に砕け、オレンジの爆光の中で、さながら夜の星の様に束の間の間、煌いた。
そこにいた者達は、死体すら残らなかった。
僅かに焦げたタンパク質が、建造物にこびり付いていたのみであった。
同じ頃、地球連合側の指揮官であるハンスは部下の機甲兵部隊と共に着用しているパワードスーツ ゴライアスの補給作業が完了した時であった。
パワードスーツは、一般的に歩兵同様に余り電力を消費しないと見られているが、それでも電力で動いている。
パワードスーツを動かすモーター、パワードスーツの繊細な動きを可能とする、全身に張り巡らされた人工筋肉、
装着者の健康状態を一定に保ち、内部の環境を快適な状態にしておくことで継戦時間を延ばす生命維持装置やそしてそれらに装着者の意志を伝達する操作機器も電力を消費する。
ちなみにパワードスーツがエネルギー切れになった場合は、自動的に着脱モードに移行して直ぐに脱げるようになっている。
災害救助や後方での建設作業等では、部隊に所属する機甲兵の一部のパワードスーツに小型バッテリーを背負わせたタンカー役にすることが出来たが、
戦場でそれをやるのは無謀すぎた。
またパワードスーツを着用している人間の問題もある。
かつて再構築戦争期の最後の核≠フ直後には、放射能汚染された地域でも活動可能なように鉛の板や放射能遮蔽装置等が装備され、装着者は、高温と生理的不快感に耐えることになるような
人間工学を鑑みないパワードスーツが試作されたこともあった。
それらは、運用時間が、2時間が限度であるということと鈍重さが問題視され、採用されることは無かった。
流石にゴライアスを含め、現在のパワードスーツの大半は、軍用、民間用問わず宇宙服に採用されている生命維持装置と同じものが搭載されている。
それによりスーツ内の着用者は、寒波吹き荒れるシベリアの様な極寒の大地でも、灼熱と砂嵐が吹き荒れる北アフリカの砂漠でも、蒸し暑いジャングルでも、毒ガス兵器や細菌兵器が散布され、死者の街と化した市街地でも、
全てのインフラが破壊された都市の様な場所でも快適な状態を維持して戦うことができる。
しかしそれでも数時間にわたって着用し続けるのには限度がある。
その為、こうして整備、補給の際には、着脱している兵士も少なくなかった。
ハンスは、補給作業が完了するまでの数分間、ヘルメットを外しただけで、カロリーバーとイオン飲料を間食として摂取する時も、着用し続けていた。
いつ敵が現れてもおかしくないからである。
幸いパワードスーツ ゴライアスのマニュピュレーターは、人間の生身の腕と遜色ないと言われる程の精密な動きとパワーの調節を可能にしていたので、
彼がカロリーバーを握りつぶすとかイオン飲料のプラスチック製容器を粉砕するといった事態は起こらなかった。
「ハンス大尉!」
通信部隊から報告が入った。その若い通信兵の声には狼狽と恐怖が感じられた。
「市内に侵入したシグーはどうなった?」
部下と共に補給作業中だったハンスは、偵察隊からシグーが1機だけで突入してくるという報告と、その直後にゲーレン中尉の部隊が迎撃に出たという報告を受けていただけで、
その後の戦闘の結果は、まだ知らなかったのである。
敵を撃墜するのは、無理だろうが、短時間で撃破されることはまず無い…そう彼は考えていた。
だが、同時に彼は、戦場に絶対などというものは無いということを彼は知っていた。
そしてその考えの正しさは、今この時実証されたのである。
「…ゲーレン中尉の第1特別防空隊は戦力の過半数を喪失、ゲーレン中尉は戦死したとのことです。」
「…」
ヴォルフラム・ゲーレン中尉、大西洋連邦軍が残存部隊を再編してユーラシアの戦場で臨時編成した第1特別防空隊の指揮官となっていたこの男は、
整った顔立ちと目の覚めるような金髪が特徴的で、任務以外の時も、共に酒場に繰り出したり、トランプゲームを楽しんだこともある掛け替えのない戦友の一人であった。
そしてたった今、彼は、死者の列にその名を連ねた。
深い悲しみがハンスの心を一瞬支配した。しかし死者を弔うのは、戦いが終わってからである。
兵士として訓練を受けたハンスは、戦友を突如として喪失した悲しみに沈むよりも、戦友の敵を討つことを選択した。
「!!短期間にゲーレンの部隊を壊滅させるとは…奴はエースパイロットだな」
ハンスは直感した。この敵は、先程までとは違う、都市に仕掛けられたトラップや潜伏した歩兵等では対処できる相手ではないと…
「そろそろ潮時かもしれんな…」
ハンスは、ゴライアスの正面モニターのタイマーの時刻を見ると、部隊の脚である輸送トラック部隊に撤退の準備を命じた。
これで、彼が撤退命令を下せば、いつでも脱出が出来るようになるはずであった。古今東西の歴史をひも解いても、戦争で最も損害を出すのは、撤退戦の時である。
このことは、歴史が記録される以前の石器時代の人骨からも判明していることであった。
いかに壊走ではなく、部隊を統制と戦闘能力を維持した状態で退却させるかは、部隊を率いる指揮官の優秀さに掛かっていた。
「どうしますか。隊長!」
「…トゥームストン≠ナいく。まず、その為には、12地区に誘い込む」
「…やってくれるな、ディエゴ曹長」
ディエゴ曹長の率いる機甲兵部隊は、中隊内では、指揮官であるハンスの部隊に匹敵する技量を持つ小隊であった。
「やってやりますよ!隊長殿!」
ディエゴ曹長は、笑顔で答える。
まるで、彼の好きなチームが出るベースボールの試合を観戦しに行くときの様に。
先程の戦闘で、市内の下水道を利用して郊外に展開していたザフト軍の車両部隊を襲撃、
大損害を与えて帰還した彼の機甲歩兵部隊は、ハンスの部隊とは別の地下の補給施設で補給作業を受け、それが完了したばかりであった。
ディエゴ曹長率いる機甲歩兵部隊と地球連合軍部隊は、防衛陣に入り込んだシグーを撃破すべく、行動を開始した。
今日は此処までです。リアルではイギリスのEU離脱など我々の生活にも
ダメージが来る可能性があるヤバい出来事が起きてますが、なるべく速く投稿できるように
頑張りたいです。
では感想、アドバイスの方お願いします。
投下乙です
MSは凄まじい兵器であり当時のザフトの恐ろしさがどれ程か窺わせるのは容易な事である
トラップの効果が見込めない強敵相手にどう撤退戦を繰り広げるか楽しみにしております
投下乙
さぁ燃える展開きましたよコレ。
古来より様々なドラマを生んできた(撤退戦)というステージ
どんなドラマが生まれるのか非常に楽しみです。
投下乙
エースパイロットの操るモビルスーツの恐ろしさが分かる戦闘シーンでした
それと主人公が補給を受けているシーンも個人的にリアリティがあって良かったです
軍くつのバルツァーつまらんわ
旧式のマスケット銃から軍国式ライフルに装備を変えただけで戦力アップとかありえん
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とノ 彡⌒ミ. |│\____\
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(⌒::::::::::;;;;;:-=*=┃-=*=)←ウンコ臭いゴミガイジ豚 https://twitter.com/marikun444
};::::::::::::;:.::(;;*:.*::;):.:)←孤独死するだけの虚しい人生なのに他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
(~;;;;('';:;;;:∴;;)3(;;:∴::)<今日も朝から床ウンチョブリブリ!アボジ、オモニ、片付けるニダあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
\;;;;;ヽ:::::::::;;;;;;;;;;;;;;;:::;;ノ←いい歳して親のスネかじりの社会不適合者
\;;;;;ヽ;;::;;,;;,,,.;;::;,;ノー、←都市伝説レベルの屑
r―‐~こここここここ)' 々i←結婚どころか女も出来たことない生まれついての負け犬
! メ  ̄`. ´  ̄` .ノ←親からも粗大ゴミ扱いのうんこ製造機
.'- .ィ 吹上寝糞豚 「 ,←他人に迷惑を掛け続ける最低最悪の生き物
. | :。:: メ :。:: ! i←誰にも共感されないし必要ともされてない価値の無いリアルでもネットでも負け犬の社会のゴミ未満の存在
ノ # メ ヽ、←無能だから働けない発達障害者
, ' ヽ :::;;;;;;:::: , ' ヽ←触れる全てのものを不幸にする全ての元凶
(( .{ _.ト、 Y;;;;;Y # ,イ .} ))
'、 .>ト. ':;*;;. ' イノ ノ
' .,,_ ___ ノ-^-`、 ___.... - '
,l゙:.:.'i ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!
__. ,-'''"::;::;;:‘----,,,,、 ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!
,i´ :.:o。;゚;ё;゚;.:.:.:.:.:。゚。.:.`'.
゙''¬---――''''''゙゙゙''―-┘ (グロ注意)
( ^ω^)マジでいい加減殺処分されろやこのヒトモドキ
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ノーマは、建物の影に潜伏していたゲーレン隊の残存である対空ミサイル車両を重突撃機銃で狙撃した。
その攻撃は、正確に対空ミサイル車両の車体側面を撃ち抜いた。
海外派遣時に輸送機での輸送を考慮に入れた設計による高機動化、軽量化によって
一般車両とほとんど変わらない重量と装甲だったその対空ミサイル車両は、木端微塵に吹き飛んだ。
「化け物め!」別の車両が対空ミサイルを発射した。
先程までは、指揮官であるゲーレン中尉の命令で、ミサイルを温存していた。
だが、指揮官以下部隊の大半が戦死し、敵が襲来しつつある状況ではそんなことを言っていられる状況ではなかった。
ミサイルが発射されるのを確認すると同時にノーマのシグーは即座に低空飛行に移行、砲撃で歪に変形したビルの影に隠れる。
「そこよっ」
ビルの影から飛び出すと同時に重突撃機銃を叩き込む。
対空ミサイル車両は、戦車をも撃ち砕く高速徹甲弾に車体をズタズタに引き裂かれて炎上した。
ゲーレン隊が保有していた対空ミサイル車両は、1両残さず、燃え盛るスクラップに変換された。
「食らえ!」
廃墟の影に隠れた歩兵が携帯型対空ミサイルを発射した。
「被弾した!」
ノーマは、咄嗟に回避しようとしたが、間に合わず、
ミサイルは、グゥルの左エンジンに命中した。
ミサイルはグゥルのエンジンに突き刺さると同時に弾頭を炸裂させ、燃料タンクに誘爆したグゥルは数秒で火球と化した。
ノーマのシグーは寸前でグゥルから飛び降り、ボロボロのコンクリートの地面に着地した。
「やった!」グゥルが爆散するのを見た若い兵士は、満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「お返しよ。」
ノーマのシグーは、着地と同時に重突撃機銃を叩き込み、歩兵を吹き飛ばした。
地面に降り立ったシグーに廃墟からミサイルや砲弾が浴びせられた。
攻撃を行う地球連合部隊は、ディエゴ曹長率いる機甲歩兵部隊を中核としていた。
「食らえ!」ディエゴ曹長のゴライアスは、左手に握った20mmチェーンガンを乱射する。
だがシグーの装甲には、牽制にもならない。
「作戦通りにいくぞ!」
「「「「了解!」」」」
ディエゴ以下、ゴライアスを装着した機甲兵達は、決められた作戦通りに脚部のローラーを駆使して都市の奥へと撤退を開始した。
「引いていく…逃がさない!」それを見たノーマのシグーもそれを追う。
先程の戦闘で機甲兵部隊にモビルスーツを含むザフト部隊が苦しめられていることをノーマは認識していた…
だからこそ彼女は、あえてそれを追撃したのである。
推進剤を節約するため、ノーマのシグーは、スラスターを使わず走行することで追撃した。
対するゴライアスの数機は、白い煙幕を展開した。だが、シグーは、ディエゴ率いる機甲兵部隊を追撃した。
お互いに移動中の相手を銃撃することは無い。弾薬を無駄にしないためである。
廃墟の建物の間を駆け抜けるディエゴ曹長の機甲兵部隊のゴライアス6機とノーマのシグーは、都市の中心部の付近にまで到達していた。
その場所には、かつてのこの都市の中心部に隣接していたこともあって高層ビルが林立していた。
1年前には、多くの人々が中で労働していたのであろうそれらの高層建築物は、砲撃の影響によって荒廃し、
チーズの様に穴だらけになっていた。
「全機、身を低くしろ!」ディエゴがそういうと同時に、6機のゴライアスが姿勢を低くした。
「…」ノーマは、その動きを見て怪訝な表情をした。
次に彼女の眼に一瞬だが、進路上に、廃墟の間を横切る白い線の様な物が見えた。
「ワイヤー?」
ノーマは、その正体を即座に推測した。そして、敵の意図も……ノーマの優れた動体視力、判断力だけでなく、指揮官用として設計され、
ジンよりも高性能なシグーの高解像度のモノアイがなければ、彼女は、ワイヤートラップに気付くことは無かっただろう。
全長が約2〜3mのゴライアスは、接触することは無い。だが約18mにも及ぶシグーの巨体では、腰の部分で接触することになる。
ノーマは、そのワイヤーは、ワイヤーに反応して爆弾が炸裂するタイプのトラップであると推測していた。もし無視して通過すれば、
ノーマのシグーは、爆弾の爆発に巻き込まれることになる。
「ワイヤートラップなんて単純な手で!」ノーマは、シグーを寸前でジャンプさせることで、
張り巡らされていたワイヤーを回避した。
ノーマのシグーがワイヤーを避けて移動した次の瞬間、その廃墟は爆発し、ノーマのシグーの背後の空間を瓦礫が占領した。
「追い詰めたわよ…」ノーマがそう言った直後、再び爆発音が響いた。
それは、ノーマのシグーでも、ディエゴ曹長率いる機甲兵部隊によるものでもなく、ノーマのシグーの真上で起ったものだった。
咄嗟にノーマは上を見た。
シグーの直上、廃墟の中でも比較的原型をとどめる高層建築の影が聳えるそこには、
オレンジ色の爆発の華が咲き、高層建築を構成していたコンクリートの瓦礫が今にも地面に向かって落下しようとしていた。
つい数十秒前までビルを形成していた巨大なコンクリートの塊がシグーに襲い掛かった。
「よし!掛かったな」
ゴライアスを着用したディエゴ曹長は、笑みを浮かべて言った。
彼の目の前で、ビルの瓦礫は、彼の想定通りに真下に落下した。そしてその落下点には、ノーマのシグーが立っていた。
「!!」ノーマは、相手の真の意図にようやく気付いた。
機甲兵部隊で、敵のMSを誘導し、爆弾で動きを止めてから、隣接するビルの上層階を爆破、
敵のMSを降り注ぐビルの残骸の下敷きにすることで止めを刺す。
先程のワイヤートラップは、本命であるこの瓦礫のトラップに対する囮だけでなく、退路を断つという目的があったのである。
「くっ!」
トゥームストン………その巨大な墓石は、地面にいるノーマとシグーに向けて轟音を立てて落下した。
少なく見積もって数十トン近い質量を有するその物体の直撃を受ければ、モビルスーツさえも破壊されることは間違いなかった。
「そんな単純なトラップで!」
ノーマは、シグーの背部のスラスターを全開にした。
ディエゴ曹長のゴライアス部隊は、シグーの動きを止めるべくチェーンガンや対戦車ミサイルを乱射する。
ノーマは、左腕のシールドを投げつける。投げつけられたシールドは、一瞬銃弾の火花を浴びて真っ赤に染まり、
止めとばかりに撃ち込まれたピルム対戦車誘導弾が大穴を開けた。タンデム成型炸薬弾頭を搭載したミサイルの一撃は
シールドの裏に装着されたガトリング砲の基部を破壊し、弾倉が爆発したシールドは砕け散った。
シールドのミサイルによって空いた穴を起点に爆発が起こり、爆風が砕け散るシールドを覆った。
同時に爆風の中からシグーが飛び出す。
コンクリートの豪雨がシグーを打ち砕く寸前、シグーは、離脱に成功した。
爆風から現れたシグーは、すれ違いざまに右腕の重斬刀を振るう。
近くにいたゴライアスが切り捨てられる。
シグーは、ゴライアス隊の前に着地した。シグーが地面に着地する轟音が、
ディエゴ曹長の耳には、やけに大きく聞こえた。
同時に背後のコンクリートの瓦礫の山がはじけ飛んだ。中に仕掛けられていた爆薬が爆発したのである。
本来ならビルの下敷きになったシグーに対する止めとなるはずだった爆薬は、コンクリートの瓦礫を砕いただけに終わった。
次の瞬間、シグーの左腕に握られていた重突撃機銃が、ディエゴ曹長率いるゴライアス部隊に浴びせられた。
「畜生!」そう叫んだディエゴ曹長の視界は炎に呑まれた。
廃墟の一角で、毒々しい色の爆炎が吹き上がった。
「…」ノーマはそれを一瞥して、次の敵を叩き潰すべく歩みを再開した。
「ディエゴ曹長戦死!」
「そんな……ディエゴ曹長の隊がやられました。」
その報告は、直ぐにパドリオの操縦するガンビートルの通信システムを介して指揮官であるハンス大尉に伝えられた。
更に、ディエゴ曹長の隊の支援に向かっていたユーラシア軍所属の歩兵部隊がシグーによって全滅させられていた。
「ディエゴ……我々の隊で迎撃するぞ!」ハンスは、即座に決断を下す。
「指揮官自らですか?」
その通信は、ユーラシア歩兵部隊の残余を率いるガラント少尉からであった。
「ああ、これ以上防衛線の内側であの怪物を飼うわけにはいかんからな!」
「第22歩兵小隊、第24歩兵小隊壊滅!」
「まずいぞ…このままでは、外のザフト部隊まで…」
「!!」ハンスの言葉は、直ぐに現実となった。
市内の地球連合軍の防衛線が崩壊しつつあるということは、郊外に待機していたザフト軍部隊の眼にも明らかであった。
そして、それを見逃す程彼らは、無能でも、お人よしでも無かった。
「ノーマ小隊長がやってくれたぞ!全軍進撃開始、この機を逃すな!ザフトの為に!」
ウーアマン中隊が進撃を再開した。
「俺達も突撃するぞ、ナチュラル共を叩き潰せ!」
カッセル軽砲小隊も突入を開始した。
「!支援砲撃を任務とする我々が市内に突入するのですか?」部下の1人は、指揮官であるカッセル小隊長に質問した。
「ドローンによる射撃管制が半分機能していない今、まともに支援砲撃が出来ると思うな!」
「了解!」
更に先程まで<リヴィングストン>と共に後方に展開していた車両部隊も、
ウーアマン隊と合流し、都市の地球連合軍を叩き潰すべく市内に突入し始めた。
「畜生!支えきれんぞ」
「こちら第3小隊!後退許可を!」
度重なるザフト軍との戦闘、特に単機で防衛部隊を幾つも壊滅させたノーマのシグーによって
防衛線が大打撃を受けていた地球連合軍側には、それを押しとどめる手段はもはや残されていなかった。
「お前ら!車には乗ったな!味方と合流するぞ!」
包囲されていたザフト軍 アンリエッタ歩兵中隊も行動を開始した。
指揮官のアンリエッタ・エルノー中隊長は、包囲していた敵の戦力が低下しているのを見て、友軍部隊との合流を決意したのである。
この中隊は、先程の戦闘で、機甲歩兵部隊の猛攻をうけ、既に半数以上の兵員と装備を喪失し、
歩兵小隊レベルにまでその戦力を低下させていたが、
ノーマの活躍によって包囲陣が弱体化した為、突入を開始したザフトの車両部隊との合流に成功した。
「ハンス隊長!」
「支えきれないぞ!」
「後退!後退!」
市内の地球連合軍部隊は、各所で退却を余儀なくされ、一部の部隊は逃げ遅れて全滅した。
もし、退却準備を事前に指示していなければ、更に被害は拡大していた可能性があったことを考えると、まだマシであった。
公園に配置されていたロングノーズボブは、友軍部隊の放つ信号弾に従い、援護の砲撃を行っていたが、弾薬切れとなったことでそれも行えなくなった。
「弾切れです!」
「ここまでか…」
ダン以下砲兵隊員は、ロングノーズボブを放棄した。
その直後ザウート部隊の砲撃を受けてロングノーズボブは、スクラップに変換された。
ザフトが廃墟となった都市に侵攻を開始したのと同じ頃、ハンス率いる連合部隊は、ノーマのシグーと交戦状態に突入していた。
「ミサイル発射!」スラスターを全開にして突入してきたシグー目がけ、ハンス率いる機甲兵部隊が一斉に対戦車ミサイルを発射した。
ゴライアスが、肩に背負った対戦車ミサイルランチャーを発射し、白い噴射煙が、ゴライアスのマットブラックのボディを包みこむ。
同時に周囲の廃墟と化したビルからも銃撃やミサイルが浴びせられる。ノーマのシグーは、3方向からのそれらの攻撃を回避した。
NJ下で誘導装置の信頼性が低下していることを考慮しても驚異的な回避能力である。
「なんて動きだ!」
シグーの回避運動を見たゴライアスを装着する連合兵の一人は悲鳴を上げた。
「当たれよ!」
廃墟に隠れた歩兵が、携帯型対戦車ミサイルを発射した。
だがシグーは、そのミサイルも回避するか、撃墜してしまう。
ハンスと部下の多くは、サブフライトシステム グゥルを破壊したことで、シグーの機動性を減殺できたと考えていた……
しかし、シグーは、地上に足を付けてからの方が更に素早く動いていた。
この廃墟を縦横無尽に駆けまわり、その巨体を時折、廃墟の影を利用することでこちらから見えなくすることさえやってのける、
このシグーは、巨大な幽霊とでも形容できた。
また1機、廃墟の影に隠れようとした部下のゴライアスが撃墜された。
シグーの重突撃機銃によるもので、旧式の戦車砲弾並みの口径の砲弾を受けたそのゴライアスはバラバラに砕け散っていた。
それは、シグーの重突撃機銃によるもので、旧式の戦車砲弾並みの口径の砲弾を受けたそのゴライアスはバラバラに砕け散っていた。
シグーの隣のビルから遠隔操作でミサイルが発射される。
それを見たハンスは、元工兵隊の貢献を思った。
撤退時に取り残された彼らに、ハンスは部隊の指揮官として、
都市内のトラップ設置、防御陣地の設営への協力を要請…事実上は命令…をした。
ハンスは、それがどれほどの重労働となるか、認識したうえでその決断を下した。
そうしなくては、戦いでの自軍の犠牲を減らすことはできず、自軍の被害を減らす為の策を怠ることは、
指揮官として失格である、と考えていたからである。
最初、ハンスは、工兵隊指揮官のライオネル・タイソン中尉を含む工兵たちから相当の反発を買うと推測していた。
だが、彼らは、文句一つ言うどころか、満足に銃も扱えない自分達がザフトのブリキ人形に一矢報いるチャンスをくれたと、
喜んで、汗みずくになって防衛ラインの構築に貢献してくれた。
もし工兵である彼らがその技術と経験を最大限に活かしてくれなかったら、ここまで防衛することができたかは疑わしかった。
またシグーの死角である位置から発射されたミサイルが、シグーに迫る。
だが、ノーマのシグーは、それを回避し、更にハンスの機甲兵部隊の攻撃も回避し、ハンス達機甲兵部隊の前に立ち塞がった。
着地と同時にシグーがミサイルの発射された方向に重突撃機銃を叩き込む。
その右腕には、重突撃機銃が、左腕には、重斬刀が握られている。
「此処までなのか…」ハンスがそう呟いた瞬間、彼の視界の片隅に小さく動く影が現れた。
シグーの背後の廃墟……
「…!」
そこには、損傷したディエゴ曹長のゴライアスが、ピルム対戦車誘導弾を構えていた。
「ハンス隊長…皆!」
先程彼は、ノーマのシグーによって部隊を壊滅させられたが、
彼自身は、部下のゴライアスと廃墟が盾になる形で、難を逃れていたのであった。
このピルム対戦車誘導弾は、大西洋連邦のある軍事企業が開発した対戦車火器である。
この対戦車ミサイルが開発された頃は、大容量バッテリーの開発、モーターの高出力化、素材の改良による
軽量化に伴う装甲車両の重装甲化が進んでいた時期であった。
戦車の装甲、防御力は、一種の最高点に達し、
大口径のリニアガンでなければ、貫通不可能な程にまでなっていた。
各国は、敵の重装甲化した戦車に対抗する為、新型戦車、陸戦用MAの開発を進めると共に、
遥かに安価な歩兵や機甲兵でも撃破できる様、携帯式対戦車火器の改良も進めていたのである。
このピルム対戦車誘導弾は、通常の機械化歩兵では1人での操作は難しかったが、機甲歩兵にとっては、片手で運用可能な火器である。
機甲歩兵や機械化歩兵の火力でも装甲車両を撃破できるようにと設計された特徴的な大型のタンデム式の成型炸薬弾頭は、
ザフトの最新鋭機であるシグーを撃破することも可能な威力を持っていた。
タンデム成型炸薬弾頭を背後から受けて撃破されるシグーの姿をハンスと彼の部下は幻視した。
だが、そのシグーは、背中に眼があるかの如き素早さで反転、右腕の重斬刀を横薙ぎに振るった。
その一撃は、装着者のディエゴ曹長をゴライアスごと両断した。
叩き斬られたゴライアスは、投げ出され、空中で破片を撒き散らして爆発した。
周囲にオイルと血液が飛び散り、真横の灰色のビルの壁をグロテスクな色に染め上げた。
「ディエゴ!」
シグーは、再び、ハンスらの方に向き直った。
シグーの頭部の赤い単眼が彼らを睥睨する。
「くっ…」
ハンスは、血に染まった様なその赤い機械の眼を凝視した。
こいつには、勝てない…ザフト軍のモビルスーツや戦闘機、戦闘車両とこれまで交戦し、
部下と共にそれらをことごとくスクラップに変換してきた彼にとって、
それは開戦以来の初めての経験であった。
「もう駄目だ!」
部下の一人が悲鳴を上げた。
その直後、爆発が付近の廃墟に立ち上った。
「爆撃!?」
「…始まったか……!」
それは、予定されていた地球連合空軍戦略爆撃部隊の空爆の始まりを告げるものであった。
今日は此処までです。
次辺りでひとまずこの戦闘の話は終了します。
では、感想、アドバイスお願いします。
投下乙です
戦略爆撃機と聞いて連想するのは最近映画:シンゴジラで活躍したB−2スピリット
しかしシンゴジラ然り、ガンダム世界然りその他の兵器はやられメカなのが常である(B−2の値段知って撃墜シーン見たら悲鳴が上がるぞ!)
そしてその他兵器扱い故に「コズミックイラの戦略爆撃機ってどんな感じだろ」
まぁ次回をお楽しみに!なんですけどね
投下
「爆撃だと!ナチュラルめ味方を攻撃する気か…」
目の前で友軍の車両が爆弾を受けて爆砕したのを見てカッセルは、驚愕した。
この時彼は、再編成を終えた旗下の部隊と共に既に市内のかなりの部分にまで突入していた。彼のザウートの手前のコンクリートの地面に爆弾が落ち、大穴が開いた。
その横でザフト軍に鹵獲され、オリーブドラブに再塗装されたユーラシア連邦製の装甲車が爆弾の直撃を受けて爆砕する。
巻き起こる紅蓮の炎が虫を食らうカメレオンの舌の様に周囲の兵士を呑み込み、爆風の衝撃で跳ね飛ばされたザフト兵がコンクリートの壁に激突した。
「総員!市外へ退避しろ!急げ!」
カッセルは、残存する指揮下の兵士に撤退命令を下した。
しかし郊外すら安全地帯と言えるのか微妙なところであった。
カッセルとてそれを十分に認識していた。だが、現状でそれ以外、部下を安心させる方法は彼の選択肢には残されていなかった。
「空爆!?」
空爆…それもザフト側航空兵力の迎撃範囲外である高高度からの絨毯爆撃であった。
ディンやインフェストゥス等現在、のザフト軍の航空戦力は、殆どが制空権確保、地上部隊支援を主眼に設計されており、
地球連合軍の保有する高高度を飛行する戦略爆撃機を攻撃することは出来なかった。
NJ以前に、これらの戦略爆撃機等を撃墜するのに有効とされた高高度対空ミサイル等は、NJによってその信頼性を著しく低下させていた。
この時期の地球連合軍は、地上のザフトの手の届かない上空から爆撃を行う戦術で、ザフトのMSを主体とする侵攻作戦に対抗しようとしていた。
命中率の低さは、予め爆撃機が爆撃する地点を設定し、爆撃機の数と搭載爆弾の数を限界まで増やすことで、カバーする。
ハンスの部隊が廃墟と化した都市に陣地を構築していたのも、
ザフト軍の部隊をこの近辺になるべく足止めするという目的があったのである。
ハンスの部隊だけでなく、この近辺の撤退作戦に参加した部隊は、
空を飛ぶ戦闘機部隊や戦闘爆撃機部隊、攻撃ヘリ部隊から機甲師団まで、その為に活動していた。
そして、ハンスが撤退する時間の設定とその準備を部下に整えさせていたのも、
友軍の行うこの爆弾の豪雨に巻き込まれることを避ける為のものだった。
ザフト軍にユーラシア連邦の戦車師団が大損害を受けた等、多大な被害を受け、多くの都市や拠点を失ったイベリア半島での戦線で初めて使用されたこの戦術は、
戦闘爆撃機やヘリ部隊、機甲師団による攻撃と異なり、反撃を受けずにザフト軍MS部隊に打撃を与えることのできる唯一の戦術であった。
湯水の如き大量の爆弾の消費と避難民や友軍を巻き込む危険性と引き換えに……
爆弾が次々と鉛色の雲を引き裂き、大地に突き刺さる。
大地に次々と火柱が生まれ、それまでの戦闘で痛めつけられていた都市の建物が轟音を立てて崩れ落ちる。
「全部隊撤退!!後は宇宙飛行士≠ヌもに任せろ!」
ハンスは、即座に撤退用の信号弾を放った。
ハンスは、既に有線通信もこの状況では機能していまいと考えていた。
宇宙飛行士…………それは、安全圏の宇宙空間すれすれの高空から敵味方お構いなしに薙ぎ払う無差別爆撃を行う爆撃機部隊
に対して地上の地球連合軍の兵士が付けた蔑称であった。
パワードスーツ用キャリアーと兵員を乗せたトラックや車両が撤退を開始、残存のゴライアスもそれに続く。
ハンスの部隊もシグーを撒くために煙幕を展開すると、退却した。
ノーマのシグーは彼らを追撃しようとしたが、目の前に爆弾が落下し、後退を余儀なくされた。
もし少しでも進んでいたら確実にシグーは、爆弾の直撃で破壊されていたであろう。
降り注ぐ爆弾を迎撃すべく、シグーは、重突撃機銃を上空に向けて撃ちまくった。
爆弾のいくつかが空中で撃墜され、爆発した。
空中爆発の炎がシグーの白い装甲をオレンジに染める。だがさらに爆弾は降り注ぐ。
シグーは、もはや追撃どころではなく、空から雹の様に降り注ぐ爆弾の雨を回避するので精一杯だった。
「爆撃!友軍ごと!」
ノーマは、味方のいる市内に爆弾を叩き込む地球連合空軍の戦法に驚愕した。
それは、地球連合軍が敵である彼女等ザフトだけでなく、市内に展開している地球連合軍部隊、つまり友軍ごと攻撃していることにであった。
郊外に展開していた部隊にも爆撃の被害は及んだ。
市内に砲撃を行っていたザウート1個小隊に弾薬を供給していた輸送車両が爆弾を受けて大爆発する。
ザウートが徹甲爆弾の直撃を受けて砕け散る。僚機の同型が錯乱気味に背部の大型砲を上空に乱射したが、
雲海の高みを飛ぶ爆撃機には届かず、付近のビルの一つに着弾した。
直後、その僚機の頭上でクラスター爆弾が炸裂し、破片の豪雨が降り注ぐ。
その煽りを受けて、廃棄されていた事故車の車列が、次々と鼠花火の様に爆発した。
絨毯爆撃を受けた都市は、無機質な灰色の景色の中で鮮やかなオレンジの炎に沈んでいった。
同じ頃、<リヴィングストン>を擁するファーデン戦闘大隊にも地球連合軍の攻撃は及んでいた。
「全機突撃!デカ物を狙うぞ」
<リヴィングストン>と車両部隊を強襲したのは、イシュトバーン・バラージュ少佐率いる第34航空中隊であった。
ユーラシア連邦空軍を主体とするこの飛行隊は、スピアヘッド12機で編成されていた。
「いい機体だ。武装、加速性、操縦性…どれも最高だぜ」
ユーラシア連邦の空軍パイロットのイシュトバーン少佐は、スピアヘッドの性能に惚れ込んでいた。
かつての乗機であったユーラシア連邦軍の戦闘機……スパーダ、エクレール、プファイル、ツヴァイハンダー…
のどれよりも高性能であったからである。
しかし、このスピアヘッドでさえ、ザフトの有するモビルスーツの相手をするには、不足であった。
対するザフト航空戦力は、アプフェルバウム隊所属のディン2機、インフェストゥス6機だった。
アプフェルバウム隊のディンは、先程修理が完了したばかりであった。
「きやがった!」
「隊長はこのことを予想していたのか?」
2機のディンは、突撃して来るスピアヘッド部隊を迎撃する。
対空散弾銃を受け、スピアヘッドが1機爆散した。インフェストゥス部隊も2倍近い敵機を前に積極的に攻撃を仕掛ける。
インフェストスは、高い運動性で、スピアヘッドを翻弄しようとした。
対するスピアヘッドは、加速性能と火力でインフェストゥスを撃墜しようとする。
<リヴィングストン>と周囲の車両部隊も対空砲火で向かって来る敵機を阻もうとする。
スピアヘッドの1機は、翼下にマウントされていた誘導爆弾を投下した。
対空戦車がその爆風を受けて横転した。
対空戦車の機銃弾をエンジンに受けたスピアヘッドが燃料を誘爆させ、上空で火球と化した。
<リヴィングストン>にも爆弾やミサイルが着弾し、その灰色の巨体に幾つもの爆発が起こり、黒煙が上がった。
「このリヴィングストンは陸上戦艦なんだ。戦艦が簡単に沈んで堪るかよ!」
部下達の動揺を抑える為、司令官であるエリクは内心の怯えを押し殺してCIC全体に聞こえるような大声で叫ぶ。
都市にいたザフトを含むザフトの多くの部隊を統括する司令部を兼ねていた<リヴィングストン>の上空が魔女の宴の如き混乱状態となったことは、
空爆を受けていた廃墟での戦闘に影響を与えた。
その隙に第22機甲兵中隊以下地球連合軍部隊は、廃墟から退却することに成功した。
辛うじて脱出できた第22機甲兵中隊とその指揮下にいた地球連合軍部隊の残余は、
離れた地点で、火炎地獄へと変貌しつつある都市を眺めていた。
指揮官のハンスは、他の機甲兵同様にゴライアスを着脱し、他の兵士同様に輸送トラックに乗り込んでいた。
ハンスは、輸送トラックの荷台の部下達が、1か所に集まっているのをみとめた。
周囲の部下達の間から、横たわっている部下の両脚が見えた。
「誰がやられた?」
ハンスは、部下達を半ば押しのける形で、その横たわる部下に向かった。
「…」
横たわっていた部下、マックス軍曹は腹部から出血しており、助からないのは誰の眼にも明らかだった。
彼は、撤退時に部下を庇った際、爆弾の破片を腹部に受け重傷を負ったのであった。
「マックス、死ぬな!」ハンスは、思わず叫んでいた。
「隊長、すみません畜生!!!モビルスーツさえ モビルスーツさえ俺達にもあれば…」
間もなく彼は、静かに事切れた。
「くっ…!!」
モビルスーツさえあれば……その言葉は、現在の地球連合兵士の心を代弁したものであった。
こちらにもモビルスーツがあれば、数で劣るザフトには地球連合は決して負けない………
「この借りは、必ず返す!」
ハンスは、拳を握り、怒りに燃える東洋の怪物…赤鬼の様に顔を真っ赤に染め、唇を噛み締めた。
裂けた唇から赤い血がポタポタと零れ落ちた。
それを見た部下達は声も上げることが出来なかった。
その遥か背後では、ザフトがいる都市に向けて空爆が行われており、爆撃の炎が都市全体を覆い尽くさんとしていた。
オレンジの炎が天を焦がし、辺りを不気味に照らし出している。
ザフトも無用な損害を被ってまで半壊した部隊を追撃する愚を犯したくないのか、
残存部隊を追撃してくる気配はなかった。
その遥か高空で、その単調で退屈な任務を終えた爆撃機部隊は、地上の惨劇を全く気にも留めず、空になった弾薬庫の蓋を閉じた。
そして今までの任務と同様の予定通りに猛禽の嘴に似た鋭角的な機首を上にあげ、高度を稼ぎつつ、
勝利の旋回を雲一つ存在しない蒼穹に刻みながら、着陸地であるグリーンランドの空軍基地への帰路についた。
このヨーロッパ戦線の片隅で行われた撤退支援作戦は、グリーンランド ヘブンズベース基地に付属する飛行場より発進した
爆撃部隊と第22機甲兵中隊を初めとする殿部隊の奮戦もあって主力の撤退に成功すると共にザフト軍に打撃を与えるという地球連合側の戦略的勝利に終わった。
だがそれは、将兵の祝杯の打ち鳴らされる音と軍楽隊の音楽が高らかに鳴り響く様な華々しい勝利とは程遠いものであった。
なぜならば、その為に払われた地球連合軍の将兵の犠牲は、敗軍であるザフトよりも甚大なものだったからである。
この作戦に従事した部隊は、いずれも壊滅的打撃を蒙り、第22機甲兵中隊も、約半数の兵員を失い、事実上の全滅を喫した。
だが、この損害ですら当時の地球連合軍の機甲兵部隊の平均損耗率から考えれば、善戦した方であったのである。
比較としてこの20日前にイベリア半島 マドリード近郊で行われたエブロ川防衛戦で、戦車師団の支援の為に出撃したユーラシア連邦陸軍の機甲兵大隊、
グティ380機の内無事に帰投できたのは、15名、パワードスーツを着脱して脱出できた乗員は、20名というものであった。
前言ったようにこの戦闘の話は、ひとまず終了です。
続きの話は、かなり先に投下すると思います。
では続きの話お楽しみください
>>175 この時点での爆撃機の扱いは、数少ない連合側のMSに対抗できる戦力という扱いです
但し、運用には問題や制限もあり、ザフト軍の侵攻を防ぐには通常戦力では足りない状況で、
更にザフトも対抗手段を編み出していくことになります。
>>182 なるほどー
背景を鑑みるに味方ごと爆破も止むを得ず
かつ絶対に撃墜される危険のない状況でしか使えないな
それに本来制空権を確保してるのはザフト側だし一度手札を晒したら対策されないワケがないと
モビルスーツがあれば、血涙を流して絞り出す悲鳴だ
投下乙
爆撃機で味方ごと爆破なんて・・・爆撃機のクルーがどう思っているのかが気になる
最後の連合兵の台詞がなんとも悲しいです
続きの話も期待しております。
[マスカレイド]
汗が目に入って、喉の奥から嗚咽も漏れる
背筋を伝う太く無配慮な指が、ゾッとする軌跡を描いた
「はっ…ん…はっ…あ」
白い肌の弾力を愉しむ様に、悪魔は尚も指も舌も身体中全てで少年を舐め回す
まるでそう… これは、蛞蝓だった
あいつから逃げて、荒んだ日々を生き抜き、自由を求めたのにまたあの場所に堕ちていく
ボクには光を浴びる勇気も才能も無かったのかもしれない
ーそうして私は…
「アンジェロ、聞こえているか?」
はっと我を取り戻した少年は、そこに自分が守るべき大佐がいて、その自分がベッドに寝ている体たらくに気付くと
先程の夢や身体の不調より先に、大佐であるフロンタルに手を煩わせたであろう経緯をまず後悔した
「セルジュの奴が珍しく血相を変えてたぞ
何でも先の暴動で被害にあった民家の修復に若い兵達を充てていたそうだな」
「申し訳ありません、大佐に話を通すべきでした」
アンジェロは病室に飾られた人口の花と同じ紫色の瞳に涙を溜め、羞恥と後悔に震える
それがアンジェロという青年だった
「構わんよ。平時の新兵の管轄は親衛隊に一任してある。そうした表向きの点数稼ぎも我々の仕事さ」
アンジェロにとってフロンタルは神も同じだ
愚かな体制を唾棄し、次の世界を創るべき棄民達の王。それはアンジェロでなくとも、この水も空気もない漆黒に生まれ子供達には似た様な存在だった
だが、不安になる…
自分ごときがおこがましい事ではあれど、それでも不意にあまりにも冷静な神の配慮を見せらると、
実体の無い物に乗っている様な不安定さを自覚してしまう
だがやはりそれは、アンジェロには許し難い事だった
「こういう言い方は恥ずかしいのだがな…」
「え?」
「どうも私は部下とのスキンシップが苦手らしい。付き合いの長い部下をそれで何度か死なせている」
「そ…それは決して大佐の責任では!」
「いや親衛隊やネオジオンの兵達の話ではない。もっと昔の事さ」
アンジェロは目を丸くした
「大佐の、昔…ですか?」
「意外か?私だって軍人だ。劣等感や思い出もある」
(れ…劣等感?!思い出?!)
「いけません!!!貴方は棄民の王です!そんな世俗の世迷言を!」
「世迷言か。言ってくれるな
私だって怒る時もあるし、泣く事もある」
「なっ…?」
フロンタルは仮面のまま、いつもと同じようにアンジェロの唇を奪う
その時のフロンタルの力は尋常ではない。軍人だからではない。人間の力ではないのだ
だが、それがまたアンジェロを酔わせる
「大佐…」
劣等感や思い出などあろうはずがない。フロンタルは青年が描きうる中で最高の神だった
人には人の、神には神の使命がある
だが、(どうしてこんなに辛いのだろう)
今日のフロンタルの前のアンジェロは、いつもに増して涙が枯れなかった
>>186 こういうのって
「味方は一人残らず壊滅した」とか
「○○地点は完全に敵に占領された」とか
「俺達ごと爆撃しろ、敵に嬲り殺しにされるよりマシだ(マジで現実にあった話)」とか
一番定番なのは
「俺達は○○地点に爆撃しろ、という命令しか受けてない、まさか味方がいただなんて・・・」
という感じで情報のほとんどが伏せられるとか
>>189 3番目はベトナムでのエピかな
この話だと予め予定されてたらしいから爆撃機パイロットも知ってるはず
多分、下には味方もういないよな?みたいな感じで爆撃してた可能性も
皆さん新年初の投下となります
連合兵戦記の新章開始です。
戦争はフットボールの試合ではないのだ、49対51での勝ちなど勝ちではない。
抵抗できない赤ん坊をメリケンサックをつけて殴る、それが理想的な戦争の戦い方だ。
ジョーンズ米陸軍中佐
12月10日 西ヨーロッパ戦線の戦況は、ザフト軍の圧倒的優勢となっていた。11月下旬にフランス州の全域を制圧したザフト軍は、南北中央の3つに部隊を分け、進軍を再開、
北部の部隊は、オランダ州とかつてのユーラシア連邦首都 ブリュッセルが存在するベルギー州の制圧を目的としていた。
北部の部隊は、12月1日に人口が開戦前の半分までに減ったブリュッセルを無血占領した。
中央の部隊は、ユーラシア連邦有数の兵器工場が存在し、また同時に西ヨーロッパ最大の重工業地帯が存在するドイツ州に侵攻、12月7日にフランクフルトとハンブルクを制圧、
12月14日には、一部部隊は、隣接するポーランド州近郊にまで迫った。
南部の部隊は、輸送機と軌道上からの降下により、補給を受けた後イタリア北部に向けて進軍を開始、11月下旬、イタリア半島南端に上陸した部隊との合流を図った。
ユーラシア連邦軍を中核とする地球連合軍は、唯一ザフト軍の迎撃を受けない爆撃機による高高度無差別爆撃、物量作戦と機甲兵部隊による遅滞戦闘を展開して、
MSを擁するザフト軍の猛威を少しでも押しとどめようとしていた。
また大西洋連邦領 グレートブリテン島とヨーロッパ大陸を繋ぐドーバー海峡横断トンネルは、
ザフト軍の侵攻を防ぐ為、トルコ州に存在したボスポラス海峡トンネルの後を追う様にして地球連合軍により爆破された。
ザフトは、こうして再び大陸と切り離され、孤島となったグレートブリテン島の地球連合軍の補給を遮断し、
無力化する為にボズゴロフ級潜水空母と艦載MS部隊を用いた海上封鎖作戦<オペレーション リング・オブ・アンフィスバエナ>を発動した。
対する地球連合軍は、封鎖を突破する為、大西洋連邦は、本土であるアメリカ西海岸と西インド諸島より護衛空母を中核とする護衛を含む輸送船団と大型輸送機の編隊を派遣した。
またレアメタル等の戦略物資や電子機器、科学者や高級将校を交換輸送する目的でこの時代では、もはや旧式化しつつあった非原子力動力型の潜水艦が少数派遣された。
ユーラシア連邦も西ヨーロッパの大半をザフトに制圧され、東欧戦線でも苦戦を余儀なくされている中、スカンジナビア王国領付近の都市より、艦隊と航空部隊による支援作戦を開始した。
この作戦では、再構築戦争以来、ユーラシア連邦軍が開発・配備してきた地面効果翼機も少数用いられた。地面効果翼機とは、
西暦期にソビエト連邦が開発した航空機の一種で、航空機の高速性と船舶の輸送量を両立できるという利点を有していた。
ユーラシア連邦は、輸送機として地面効果翼機を数百機近く保有しており、輸送作戦に活用した。これら奇怪な形状の航空機は、輸送船を上回る速度と小型船舶並みの物資搭載量
で少数ながら大西洋連邦、ユーラシア連邦間の輸送に貢献した。
高速性と迷彩塗装と相まって地面効果翼機の生残性は、通常艦艇よりも高く、整備性の問題を無視すれば、哨戒網を突破するのに有効であった。
第7章 新たなる短剣
その一方、通常船舶で構成される輸送船団は、ボズゴロフ級と水中モビルスーツ部隊によって打撃を受け、引き返す船団や壊滅状態に陥るものも出ていた。
空からの輸送ルートである輸送機部隊は、ボズゴロフ級潜水空母の艦載機であるディンやインフェストゥスの上昇限界高度よりも上の高度を飛行でき、安全に輸送が出来たが、
着陸できる滑走路が限られていた。
滑走路を必要としない垂直離着陸機もあるにはあったが、数が限られていたのである。
同様に長距離滑走路を必要とする爆撃機部隊の存在もあり、軍の基地はパンク寸前であった。
また民間の空港もエープリルフール・クライシス当日の時の航空事故でその多くが未だに使用不能に陥っていた。
太平洋と北海をのたうつ双頭の海蛇は、地球連合軍の血と鉄を呑み込みつつあった。
大西洋連邦領 グリーンランド ヘブンズベース基地
現在、グリーンランドは、4月1日にザフトが引き起こしたNJ災害の影響で、最大の都市 ヌークを初めとする都市の
都市機能やインフラは完全に停止し、民間人の殆どは、餓死、凍死するか
地球連合軍の手によってエネルギー事情と生存環境がマシな北米へ避難していた。
現在、この地にいるのは、野生動物を除けば、地球連合軍の軍人か彼らの活動に関わる職業に従事している軍属の民間人のみであった。
そして前者のかなりの割合が、西ヨーロッパ戦線より敗走してきた地球連合軍が占めていた。
港湾には、ダニロフ級やタラワ級強襲揚陸艦を初めとする軍艦が停泊していた。
浅く白い雪の積もる海岸の高台に一人の軍服姿の男がいた。
彼、旧第22機甲兵中隊指揮官 ハンス・ブラウン少佐は、海岸近くの崖に座っていた。
海岸には、テトラポットに似た奇怪なコンクリートの構造物がいくつも置かれている。それらの、一見すると現代アートの作品の様なコンクリートの塊は、
対戦車障害物、対モビルスーツ障害物という正式名称が与えられていた。
ヘブンズベース基地の防衛部隊は、この基地を攻略する為にザフトが上陸作戦を展開した際、
これらの障害物を海岸に多数配置してザフト側の車両やモビルスーツの上陸を遅滞、阻止し、
海岸で動きを止めた所を後方に展開する砲兵陣地や航空部隊、水上艦隊による支援砲撃で叩く予定であった。
だが、モビルスーツの進撃を阻止するのに有効な障害物の配置、形状は、
未だに研究中で、前線では従来の障害物を設置することしか出来なかった。
その男は、虚ろな目で、それらの奇怪なコンクリートの構造物が林立する寒々しい砂浜を見下ろしていた。
だが、彼は、視線の先にあるもの等、意識の埒外に置いていた。
彼が考えていたのは、ヨーロッパでの撤退戦の記憶、その最終段階で、
彼と彼の部下達を完膚なきまでに打ちのめしたシグーのことである。
あの戦闘から既に1か月以上が経過し、その後も彼と彼の指揮した第22機甲兵中隊は、西ヨーロッパ戦線において激闘を繰り広げてきた。
マース川の戦い…産卵期の鮭さながらに海から川を遡上してきた小型兵員輸送潜水艦に搭載された特殊部隊と護衛機のジン・ワスプから後方の補給所を防衛した。
アントワープ近郊の撤退戦、あの時は、戦車部隊と共に避難民の盾となって戦う羽目になった。
そして、イギリスへの撤退、輸送機部隊を護衛する戦闘機部隊は、数的にも、質的にも不十分で、
輸送機はザフトのディンやインフェストゥスを避けるために低空飛行するか、高高度飛行するかのどちらかしかなかった。
更に目的地に着いた後も安全ではなく、沿岸の飛行場は、
ザフト潜水艦隊のミサイルと艦載機による攻撃の危険性があった。
………これだけの激闘を経験した後の今でさえ、彼の心には、
あのシグーとの遭遇戦のことが、白い壁に染みついたタールの様に強く残っていた。
いかなる作戦も、共に戦ってきた戦友たちとの連携も、あのシグーのパイロットには通じなかった……あの死神は、今もヨーロッパの戦場で地球連合兵士の命を吸っているのだろう。
奴を倒す術等もはや存在していないのかもしれない…
「少佐殿!少佐殿!」背後からの彼を呼ぶ声が、彼を現実へと引き戻した。
「テイラー三等兵か。どうした?」ハンスは、振り返ると、声の主である若い褐色肌の兵士に言った。
「ロジャース少将殿が、お呼びです。」
サミー・テイラー三等兵は、開戦後に志願した大西洋連邦出身の兵士で、この戦争が始まる前は、ニューヨークでアフリカの民族料理店の皿洗いをしていた。
「…わかった(部隊の再編成に関する事だろうか…)」ハンスは立ち上がると、その場を立ち去った。
10分後、テイラー三等兵に案内されたハンスは、ロジャース少将のいる部屋の扉の前に立っていた。
「少佐殿のみを入れる様に言われています。」
「わかったテイラー三等兵、案内ごくろうだった。
ハンス・ブラウン少佐、到着しました。」
「入っていいぞ」
部屋には、家具の類は殆ど無く、木製の机と椅子が置かれているだけであった。
ハンスの目の前の机には、濃い金髪の頭髪を角刈りにした長身の初老の男が立っていた。
この部屋の主であるクレイトン・ロジャース少将は、大西洋連邦が介入した数々の武力紛争にも参加した歴戦の将校だった。
「よく来てくれた。ハンス・ブラウン少佐。単刀直入に話すことになるが、貴官には、大西洋連邦が開発を進めている
新兵器≠フ試験部隊の指揮官の任に就いてもらう」
ハンスの目の前に座る白い軍服の将官は、新兵器≠ニいう語句を強調して言った。
「新兵器でありますか?それは、どのような?」ハンスは一瞬呆気に取られ、新兵器について尋ねた。
新型のパワードスーツかモビルアーマーだろうか?まあ機甲兵の1指揮官に過ぎない自分が任されるような新兵器等碌なものではないな…
とハンスは、心の中で思った。
機甲兵…パワードスーツは、今でこそザフト軍のモビルスーツの活躍によってその存在が一気にクローズアップされているが、
それ以前はモビルアーマー、装甲車両に機動性、火力、装甲が劣っている上、コスト面では、従来の機械化歩兵に劣るという、
歩兵よりもマシ≠ネ兵科と見做されていた。
「…これから分かる。私が案内する。付いて来い。
決して貴官を失望させることはないと約束できる。」
「はっ」
その後、ロジャース中将とハンスは、部屋を立ち去った。
硝子片の様に透明で白い雪が容赦なく降り積もる中、防寒服を着用した2人の軍人は、目的の場所へと歩んでいった。
基地施設の中心部に近いその地区には、四角形の格納庫が、いくつも林立していた。
だが、それら格納庫の多くの中には、本来存在している筈の大砲や戦闘機や戦車といった兵器の姿は、全くない。
これら空っぽの格納庫には、戦力が実際よりも多いと見せかけ、ザフトにここへの侵攻を躊躇させる目的があった。
集団墓地の墓標の様な格納庫の羅列を超え、2人は、目的地についた。
2人がたどり着いたのは、格納庫の一つであった。車両の通行用と思われる入口には、閉ざされた鉄扉が鈍色に光っていた。
格納庫の扉の左右には、ゴライアス装甲服を着用した機甲兵が20mmチェーンガンを持って立っていた。
「!!(機甲兵!一体何があるっていうんだ?)」それを見たハンスは思わず驚愕し、眼を瞠った。
周囲に機甲兵が配置されるというのは、核弾頭並みの警備の厳重さである。
呆然とする彼を尻目にロジャースは、ポケットから銀色に光る物体を取り出す。それは、カードキーであった。
ロジャースは、右眼をドアのモニターに近付け、網膜認証を解除した。
次に右手の薬指をモニター横の指紋認証装置に押し付け、そしてドアに開いた小さな穴にカードキーを差し込む。
幾重にも張り巡らされたセキュリティが解除され、鋼鉄製のドアが開いた。
ドアの向こう側…格納庫内部の大半は、電力節約の為、闇が支配していた。
ロジャースは、その暗闇の中へと入って行った。セキュリティの厳重さに戸惑いつつもハンスは、その後に続く。
非常灯だけが点灯した格納庫の中は、他の格納庫と同様に空っぽだった。
だが、その奥には、地下へと続く階段があった。
ロジャースとハンスは、その階段を静かに降りていった。
階段の足元には、照明が付けられ、それが唯一の光源だった。
やがて階段が途切れ、2人の前に鋼鉄の扉が姿を現した。
ハンスの前に立つ白い軍服の将官は、右手で扉脇のテンキーにパスワードを入力していった。
パスワードの入力が完了し、警備システムを統括するコンピュータが承認すると同時に鋼鉄の扉が開いた。
「ここに新兵器≠ェある」
ロジャースが静かにそう言い終えると、照明が、地下格納庫を照らした。
暗闇の中に暫くいたことでそれになれてしまっていたハンスは一瞬照明の眩しさに目が眩んだ。
やがて、視力が回復すると、彼は、驚愕した…目の前に立つ新兵器≠フ姿に。
「見給え、ハンス少佐」
「…これは!」
そこにあったのは、鋼鉄で出来た巨人、人間が技術の粋を集めて作り上げた機動兵器………
現在、地球圏最強の兵器である人型機動兵器 モビルスーツであった。
そしてそれは、今までハンスとその部下達を苦しめてきたいずれの機種とも違う形状をしていた。
ザフトの主力MS ジンとは異なり、頭部のセンサーは、魔眼のようなモノアイではなく、
北アフリカ方面のユーラシア連邦軍の兵士が着用している防塵バイザーに似た形状をしていた。
さらにそのボディは、ジンより、幾分かスマートで人間に近い外見をしていた。
そしてその手には、アサルトライフルを巨大化させた様な火器を握られていた。
「…モビルスーツ?!」それは、誘導兵器と物量に支えられた世界のパワーバランスを一変させ、
宇宙戦艦による大艦巨砲主義を粉砕した兵器、人類史上初のコーディネイター国家 プラントの軍事組織 ザフトのみが運用し、
その開発、生産能力を有しているとされている人型機動兵器であった。
そして今の地球連合に所属する兵員が士官学校を首席卒業した歴戦の老将軍から、開戦後に召集された若い新兵に至るまで実用化、戦力化を望んでいる兵器であった。
「驚いたかね…正式名称は、グラディウスという。ローマ軍団が用いた接近戦用の剣の名前だ。現在月基地と、とあるコロニーで開発中の別のタイプと共に戦力化が進められている。
この機体は、量産化も視野に入れている機体だ。」
「……!」
大西洋連邦……いや地球連合は、来たるべき反撃の日に向けて早くも
量産も視野に入れたモビルスーツ開発を推進し、戦力の再編を進めている……あの戦い以来、久しく失われかけていた闘志が蘇り、己の身体が奮い立つのを彼は感じた。
それを見たロジャースは、満足げに笑みを浮かべた。
「武装は、頭部イーゲルシュテルンとビームライフル、ビームサーベル………まず、
イーゲルシュテルン…これは、近接防御兵器として海軍の艦艇や宇宙艦艇に採用されているタイプと同一のものだ。
ジンの装甲を打ち破るのは困難だが、牽制には使える。次のビームライフルは、現在開発途中だが、
完成すれば現状存在する全てのザフトモビルスーツを破壊することが可能だ。」
「ビーム…ですか」
MS用のビーム兵器は、既にザフトのバルルス改特火重粒子砲が存在していたが、
実用性では稼働時間や冷却等の問題があり、更に地上では、重量増加と大気で威力が減衰するという問題から殆ど使用されていなかった。
だが、真空の宇宙空間では、レールガンやミサイルを上回る威力を持つ必殺の威力を誇る兵器として宇宙艦艇や宇宙要塞を初めとする
宇宙兵器での主力兵装の地位を確立していた。
欠点としては、実用的な威力のビームを生み出す電力が必要であること、
ビームの高熱に耐えられる砲身、ビームの熱を即座に冷却する為の冷却装置が必要なため、レールガンやミサイル等の実弾兵器と異なり、複雑化、大型化するという点がある。
ちなみに地球連合軍も、モビルアーマーへの搭載も一部の試験機レベルながら成功していた。
この様にこれまでは、ビーム兵器は、機動兵器に搭載する様な兵器ではないと見做されていたのである。
…そうこれまでは……
「そうだ。威力は戦艦の艦砲には流石に劣るが、現状のザフトのモビルスーツを一撃で撃破可能だ。これのエネルギーは、
機体のジェネレーターから直接供給される。」
「一撃で…」
ハンスは、噛み締める様に言った。
その脳裏をよぎるのは、これまでの苦闘の記憶…機甲歩兵部隊と砲兵、歩兵を用いた攪乱戦法、モビルスーツを撃破する為、重砲弾や対戦車地雷を複数重ねたトラップ…設置中には、危険があり、予想進路上にトラップを設置する等完全に運頼みのものまであった。
だが、目の前のMSの主兵装は、一撃でザフト側のMSを破壊することが可能な威力を有している。
これが、量産され、前線に纏まった数で配備されたら……連合は、この戦争に勝利できる。
あの死神を、仲間を殺したシグーのパイロットを倒すことができる!
期待感に胸を膨らませるハンスをよそに傍らに立つ白い軍服の将官は、説明を続ける。
「最後の兵装は、ビームサーベル 威力の面では最大の武装だ。だが、近接戦闘にしか使えない。
…ハンス少佐には、このグラディウスで編成される試験部隊の指揮官の任についてもらう。
貴官は、優れた部隊指揮官であると同時に機甲歩兵だ。パワードスーツの拡大型であるモビルスーツの操縦にも直ぐに適応できる筈だと、本国の技術士官達も期待している。
現在、モビルスーツを乗りこなせるのは、あの空の化け物共と同じ、遺伝子操作を受けたコーディネイターか、
それに匹敵する身体能力を持つ者達だけという状況なのは知っているな」
「はい、ですが、私に操縦できる能力が備わっているでしょうか?」
そう言ったハンスは、興奮する脳髄に氷塊を押し当てられた様な錯覚を感じた。
モビルスーツは、コーディネイターしか乗りこなせない…それは、このCE70年の常識である。
地球連合軍のモビルスーツ開発と実戦投入の最大の課題だった。
ハンスは、自身が優れた機甲歩兵であると自負していた。
だが、生身の能力がコーディネイター並みであるとは考えていなかった。
「貴官の懸念も解る。全軍の兵士にコーディネイター並みの身体能力を求めるのは、不可能だ。
このグラディウスは、試験段階だが、いずれ正式採用される機体は、ナチュラルでも操縦できる操縦性を有しているという前提だ。
君には、それを開発する為にこのグラディウスに搭乗し、機体の改善の為に戦ってほしい。
グラディウスの操縦性改善の為に技術者達も奮闘している。
貴官も、現状モビルスーツを持たないままでは、敵に勝つことはできないと解っている筈だ。
そして、祖国の為、地球の為、市民の為に戦う覚悟を持っている筈だ。」
「はっ」
ハンスは、敬礼した。
それは、新兵だった頃、教官と背後にはためく祖国の国旗に返した敬礼と同じものであった。
少将も敬礼を返した。
直後、2人は、格納庫を去った。
「(格納庫の機体が、実は、強化プラスチックで作ったレプリカだということを少佐に言うのを忘れてしまったな…)」
ふと、ロジャース少将は、ハンスに言うべきことを忘れていたことを思い出した。
新たなる希望が、静かに胎動を始めていた。
今日は此処までです。
スターウォーズストーリー ローグワン見ました。特殊部隊の活躍やEP4のタイトルに新しい
意味が加わるという素晴らしい話でしたよ
連合兵戦記は、これからIFものに近いストーリー展開となって行きます
皆さん感想、アドバイスお願いします
乙です。
最後の文章を見るに実機は、まだ未完成でパイロット候補スカウトって段階だろうか?
主人公以外の部隊の生き残りの運命が気になります
やっとこのスレが動いたよ・・・長い停滞であった、乙。
実験兵器っつーとどうしてもIGLOOを思い出してしまうけど
さてはて、このMSはどういう運命をたどるやら、続き期待してます。
久方ぶりにスレをのぞいてみたら投下がある!
投下乙です、まぁ本来のプロトタイプってとにかく動かせるかどうか試す物だろうから装甲は期待できないよね
最近はハーメルンとかに投稿されてるのかな
主人公がテム・レイの上司の技術将校で
ジャミトフから予算貰ってきてガンダムとジムを開発する話は面白かった
>>206 交流掲示板偶然見てわかったんだけど、ユーラシア兵さん暁に連合兵戦記
投稿してたよ
内容は基本的に同じだけど、ちょっと文章が増えてたり、誤字とか修正されてる
投下開始します。この話は、本編の補完話に当る話です 箸休めと思って読んでいただけたら幸いです
間章 ドラゴンレディ 地球連合戦略爆撃隊
C.E 70年 11月中旬 グリーンランド ヘブンズベース基地 第22宿舎
ヘブンズベース基地の北地区に位置するこの建物には、
ユーラシア連邦第77戦略爆撃機師団と大西洋連邦第5戦略爆撃軍団を主力とする地球連合軍空軍部隊のパイロット達が居住していた。
彼らの任務は、ヨーロッパ戦線の地球連合軍地上軍の航空支援である。宿舎の部屋の1つ、
最低限の家具が置かれた部屋の片隅には、三角形の物体…目覚まし時計が置かれている。
設定された時間の到来と同時にその装置は、1分1秒の遅れも無くその機能を発揮した。
「う〜時間か。」
けたたましい電子音で男は目を覚ました。つい数分前まで深い眠りに就いていたその髭面の男は、
冬眠から目覚めたばかりの熊の様にゆっくりとベッドから立ち上がった。
彼の名は、ホセ・ロドリゲス大尉 ユーラシア連邦軍第778爆撃機中隊の指揮官である。
ロドリゲスは、洗面台で顔を洗い、日課のうがいと歯磨きを手短に終えると、駆け足で爆撃機部隊員の待機室へと向かった。
彼がドアを開けて通路に出ると周囲の部屋から出てきた彼の同僚たちの姿があった。
彼は、その内の一人に声をかけた。
「よう!マックス、お前はよく眠れたか?」
「!ホセか。お前と同じだよ」
ロドリゲスの同僚の一人 第665爆撃機中隊の指揮官 マックス・ベルクマン大尉は、寝ぼけ眼を擦りながら言った。
「こりゃ、お互い出撃前にコーヒーをもらうべきだろうな」
「同感だ」
彼らは軽口を叩きつつ、宿舎に隣接する建物にある会議室へと向かった。
30分のブリーフィングの後、彼ら、爆撃機部隊の隊員達は宿舎から出た。
今日の作戦に参加する爆撃機中隊の指揮官達と、
その指揮下にある爆撃機の乗員達は、宿舎を出ると、滑走路に向かうための交通手段の待つ場所へと向かった。
宿舎と爆撃機乗り達を乗機が並ぶ飛行場へと運ぶ為のバスが待機していた。
「…」
ロドリゲスが宿舎前のバス停に辿り着いた時、バス停は空軍のパイロットスーツを着用した男女で満たされていた。
この空軍パイロットを滑走路まで届けるバスは、いつも必要分、ぎりぎりの数しか用意されていなかった。
「全く、いつもうんざりさせられる。」
ロドリゲスは、この風景をみる度に宿舎を滑走路に隣接した場所に建てればいいのに…という感想を抱いていた。
この様に送迎バスが用意されるのには理由がある。
第778爆撃機中隊を含む第22宿舎を利用している爆撃機部隊の機材が置かれている滑走路は、
元々民間飛行場を接収、改装したもので、滑走路以外の設備は、その規模も小規模だったのである。
この様な理由からこの第22宿舎の爆撃機パイロット達は離れた場所からバスで運ばれることになっていたのである。
「ちっ……ガキの時に乗ったスクールバスよりボロいぜ。」
ロドリゲスの隣にいた、黒髪を短く切り揃えた士官が愚痴を言う。
空軍のパイロット達は、次々とバスに乗り込んでいく。満員になったバスかノなったバスから滑走路に向けて走り出していった。
民間で使われていたバスをそのまま利用したその輸送バスの乗り心地は悪くは無かった。
5分後、バスは目的地である滑走路に到着した。
遠くから見るとそこは、子供の手で、灰色一色で塗りつぶされたキャンパスの様だった。
滑走路用の耐熱コンクリートの灰色に混じって陽光を浴びて白銀に輝くのは、
現代の産業技術の粋を集めて作られた鋼鉄の翼竜だった。
バスが滑走路近くに停車する。
ドアが開放され、爆撃機部隊の隊員達がコンクリートで舗装された地面に降り立つ。
彼らの視界の向こう………コンクリートの平原に点々と並んでいるのは、彼らの乗機であり、棺桶になるかもしれない爆撃機である。
ロドリゲス大尉ら、第788爆撃中隊の隊員達も、バスから降りるとそれぞれの乗機へと乗り込んでいく。
この部隊が使用しているのは、ユーラシア連邦軍が正式採用した戦略爆撃機 UB-99 モルニアである。
モルニア高速爆撃機……最大搭載量30tのこの大型爆撃機は、
ユーラシア連邦空軍で戦略、戦術爆撃のみならず、対艦攻撃や沿岸哨戒にも使用されている。
ロドリゲスは、滑走路に待機している自身の乗機に乗り込む。
2分後、彼の隣の席に副操縦士のセバスティアーノ少尉が腰かけた。
「大西洋の奴らは?」
ロドリゲスは、隣に座る副操縦士に同盟国の部隊のことを尋ねた。
「俺達の5分後に出撃するそうです。あのブーメラン、B-7は整備に手間がかかりますから」
「そうか。流石金満国家の機体は違うな」
ヘブンズベース基地には、2個航空軍団が配備され、その内半数が長距離攻撃の可能な大型爆撃機である。
他にもアイスランドのレイキャビク飛行場にも1個航空軍団が展開している。
これらの爆撃機部隊は、西ヨーロッパの地球連合軍の航空支援と、大西洋の哨戒任務に従事していた。
それらの任務で最も多いのが、西ヨーロッパへの航空支援任務である。
ヘブンズベースを発進した爆撃機部隊は、ヨーロッパ戦線の地球連合軍への支援の為に西ヨーロッパの各地へと向かっていった。
今回の任務は、戦線後方のザフト拠点に対する空爆作戦である。
それは、ロドリゲス以下爆撃機部隊のクルーの半分以上にとっての祖国 ユーラシア連邦の領土を爆撃することを意味していた。
「管制塔より、発進可能とのことです。」
「よし!」
ジェットエンジンが作動すると同時に機内を力強い轟音が満たす。爆撃機パイロットとしての経験が長いロドリゲスは、
この音を聞く度に安心感と警戒心が入り混じったような複雑な感情を抱くようになっていた。
ロドリゲスは、エンジンが作動するのを確認すると、筋肉の発達した両腕で、操縦桿を握りしめ、機体を進ませた。
指揮官機である彼の機体が地上から離れ、天空への上昇を始める。
その後ろには、彼の部下の操縦するモルニア爆撃機の機影があった。
隣の滑走路からも次々と爆撃機が飛び立つ。それから暫くの間、滑走路の上空はジェットエンジンの爆音で満たされた。
ロドリゲスの率いる第778爆撃機中隊の爆撃目標は、イベリア半島 スペイン州 サンタンデール
ユーラシア連邦の港湾都市だったこの都市は、現在、ザフトの占領下に置かれている。
1時間後、彼らは、爆撃目標 サンタンデール上空に到着した。市内の半分は、
戦闘によって大きいものでは瓦礫へと変換され、小さい物でもインフラ機能の停止といった被害を受けていた。
爆撃隊の攻撃目標は、ザフトの艦艇が停泊する港である。
港湾内には、コンテナを山積みにした貨物船と鯨の様なボズゴロフ級潜水空母が1隻停泊していた。
その周囲には、連合から接収した小型のサメ類を思わせる鋭い船首を持つミサイル艇
や漁船と相違ないサイズの沿岸警備用の無人哨戒艇が約10隻浮かんでいる。
「貨物船…北アフリカからの奴だな」
情報部からの報告では、現状のザフトが保有している海軍兵力は、潜水艦だけで、水上艦艇は無いとの話だったので、
親ザフト勢力の人間が操作しているのだろうと彼は推測した。彼の予想通り、
その貨物船は、ザフト軍の所属ではなく、北アフリカ共同体の所属であった。船員は、その殆どが北アフリカ共同体の人間である。
ザフト側が、廃墟となった市内や郊外の自然公園や広場に配置した対空砲やミサイルをはるか上空の敵機に向けて乱射する。
それらは、見た目には派手だが、実際の効果はそれと反比例する様に低い。
対空砲は、射程が足りず、ミサイルは、4月1日以来地球では、その信頼性を大きく失っていた。
爆撃隊は、1機も欠けることなく、目標の上空に到着した。
「爆弾を投下しろ!」
ロドリゲスは、旗下の爆撃機に対して指示を出す。
「投下!」
「いけー」
爆撃手の声に副操縦士の声が重なる。モルニア爆撃機は、本来なら操縦士と爆弾手が統合されているが、レーダー誘導装置が信頼できない、
または使用できない状況では、爆撃手を同乗させることになっていた。
例えば、ザフトが投下したニュートロンジャマーの影響で、レーダーが使用不能となっているCE71年の地球の様な状況下の様に…
爆撃機部隊が爆弾を投下したのとボズゴロフ級が潜航を開始したのは、ほぼ同時だった。
爆弾槽から解き放たれた航空爆弾は、地球の引力に従って地表へのダイブを開始した。
これらの航空爆弾は、どれもコンピュータ制御の誘導装置や目標へと落下する為の動翼等持たない無誘導爆弾である。
地上より遥かに遠い高空より投下された爆弾は、風により翻弄されながらも地上へと落下していった。
それらの爆弾の多くは、湾内を取り囲む廃墟に着弾した。
それでも少なくない数の爆弾が湾内に落下する。
爆弾が水面に激突し、海中で爆発した爆弾が海を沸騰させ、無数の水柱が生まれる。
貨物船は、船体の中央部に爆弾を2発受けた。
コンテナや船体上部構造物の破片を派手に撒き散らしながら、貨物船は、数秒間湾内を迷走した挙句、搭載していた弾薬が誘爆して爆沈した。
真っ二つになった貨物船の残骸は、炎と黒煙を吹き上げ、海中へと沈没していった。
他にも係留されていた無人哨戒艇が6隻破壊された。元々海上での救助活動やテロリストや犯罪組織の不審船対策用に開発され、
装甲も碌にないそれらの船にとっては、小型爆弾1発でも十分致命傷である。
「鯨は?」
下を一瞥し、ロドリゲスは、通信機で後方を飛ぶ部下の機体に尋ねる。
「こちら、21番機、潜水艦と思しき残骸、油膜は確認できず」
「こちら22番機!駄目です。海底に逃げちまったみたいです。」
「まあいい、港は叩いたんだ。」
そして、彼らが最も撃沈を狙っていたボズゴロフ級は、葬れなかった。だが、港湾機能を大幅に低下させたのは、作戦成功といえる。
「よし!とっととずらかるぞ!」
ふと彼は港の片隅で瞬くオレンジの閃光を見た…そこでは、港で物資の搬入作業を行っていたのであろう、
ジンが重突撃機銃を空中に向かって乱射しているのが確認できた。
「無駄なことを…」
地上支援の急降下爆撃や機銃掃射の為に低高度に降りてくる戦闘爆撃機ならともかく、ジンの保有火器では
遥か高高度を悠然と飛行する爆撃機部隊を傷つけることは不可能であった。
地上の様子には、目もくれず、爆撃隊は、ヘブンズベースへの帰路に就いた。
「全く、スマート機雷を散布すればよかっただろうに…」
白い雲が散乱する青空を見つめ、ロドリゲスは、任務の度に心身に蓄積される憤懣と共に言葉を吐き捨てた。
今や機雷は、種類によっては、戦闘機や無人航空機からでも投下できる。この爆撃機も種類によっては、機雷を68個搭載可能である。
沿岸都市を無誘導爆弾で絨毯空爆するよりも湾内に航空機で機雷をばら撒いた方が、効率もいいし、市街地や市民への被害も少ない。
上官と同意見らしく、ロドリゲスの隣にいるセバスティアーノも頷く。
ユーラシア軍人である彼らにとって同胞の生活している自国の領土を空爆するのには葛藤があった。
彼らは知らなかったが、この時期の地球連合側は、機雷のストックが少なかった。
地球連合に加盟した国家の中で最も軍事力を有する3か国、大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国では、機雷はあくまで補助的兵器として位置づけられていた。
大西洋連邦は、機雷よりもミサイルや水上艦艇、航空機の装備する兵器を優先し、
大西洋連邦以外の2国は敵国に自国領海に機雷を散布されることは、想定しても敵地に散布することは想定していなかった。
この様な事情もあって地球連合海軍における機雷の保有数は、決して多くは無かった。更に沿岸の基地にあった機雷のストックは、ザフト軍の地上侵攻が始まると、
地域ごと占領下に置かれ、あるいは兵器庫ごとザフト軍の潜水艦やMS、ミサイルによって爆破されてしまっていた。
その為、機雷封鎖に利用できる機雷の余裕は無かった。
現状、地球連合軍が保有する機雷の過半数は、ボズゴロフ級や水中MSから沿岸を防衛する機雷堰を形成する為に利用された。
地球連合軍が、開戦初期の地上戦線でザフトの占領下にある港湾に対する機雷封鎖を行わなかったのは、この様な事情があったのである。
2週間後、地球連合軍は、ヨーロッパのザフト軍最大の拠点 ジブラルタル基地への大規模空爆作戦 バックステージ0025を発動させた。
ジブラルタルに打撃を与えることは、ヨーロッパ戦線でモビルスーツの猛威に曝されながらも、
苦闘を続ける地球連合陸軍への支援になるだけでなく、
地上のザフト軍に打撃を与え、地球における戦況を好転させることにも繋がる。
この作戦には、イギリス南部の空軍基地とグリーンランド ヘブンズベース基地を拠点とする爆撃機部隊の半数以上が投入され、
その中には、ロドリゲス大尉を指揮官とする第778爆撃機中隊もいた。
「凄いですね!隊長」
第778爆撃機中隊の隊員の1人 9番機のパイロットを務めるヨゼフ・ランスキー中尉は、滑走路を埋め尽くす爆撃機の列を右手で指差して叫ぶ。
その顔には驚愕と喜びが映し出されていた。
「ああ」
感激する部下の声に応えるその声は、どこか上の空だった。この時、ロドリゲスは、目の前の現実に戸惑っていたのである。
彼の目の前で繰り広げられる光景を見れば、それも無理のない話と言える。ヘブンズベースの主な飛行場には、
ユーラシア連邦空軍のモルニア爆撃機と大西洋連邦空軍のB-7 ストラトバトルシップ戦略爆撃機が所狭しと並んでいた。
その上空には、ザフトの奇襲に備えて防空隊のスピアヘッド戦闘機の編隊が乱舞している。
ザフトとの戦闘だけでなく、NJ災害によって発生した治安の悪化や電力不足、インフラの崩壊とも向き合わなければならない
地球連合に戦力の余裕はないことを考えれば、これはある意味で異常な光景である。
地球連合軍は、今回の作戦に相当の戦力を注入していた。
彼らの攻撃目標であるジブラルタル基地は、ヨーロッパにおけるユーラシア連邦海軍の一大拠点で、開戦後は、地球に侵攻したザフトの潜水艦隊によって制圧され、
現在では、オーストラリアのカーペンタリア基地と並び、地上のザフト軍の一大拠点となっていた。
海軍基地と隣接する宇宙港には、連日宇宙からHLV(垂直打ち上げロケット)や輸送シャトル、降下カプセルにより戦略物資や兵員、兵器が投下され、
大西洋連邦に対抗する為に整備されていた海軍基地は、大西洋〜地中海、北海方面を行動するザフト潜水艦隊の泊地にもなっている。
ジブラルタル基地への攻撃は、これまで長距離弾道弾による攻撃が数回行われただけであった。
核弾頭が無用の長物と化し、GPSやレーダーが使用不可能になるか性能を低下させている現状では、射程距離だけ長い無誘導兵器でしかない。
地球連合軍も、それを十分に認識しており、実際の戦果よりも宣伝効果、嫌がらせの為に行った面が大きかった。
だが、その攻撃ですら1週間前に取りやめられている。
弾道弾の1発が、ジブラルタル基地の付近に隣接する難民キャンプを粉々にしたことによって。
地球連合軍は、ジブラルタル基地の周囲に難民キャンプが存在していることを認識してはいなかった。だが、そのことは、事態が発生した後では、何の意味も持たない。
この事件をザフトは、地球連合を攻撃するプロパガンダに利用した。地球連合は勝利の為ならば市民すらも犠牲にする。
ハッキングされたユーラシア連邦の災害対策通信の周波数に乗ってザフトの放送は伝えられた。
更にザフトは、被害を受けた難民キャンプ、ロケット燃料と高性能爆薬で黒焦げになったバラックの列、手足を失った子供、等の着弾点の写真を連日、
無人偵察機やグゥルを利用して地球連合側の都市や占領下の地域にばら撒いたのである。
この事件を受けた地球連合は、直ちに放送で難民キャンプの生存者に謝罪し、ジブラルタルに対する弾道弾攻撃を取りやめた。
ただでさえ、前線での無差別空爆で占領下の地域に被害を出している地球連合としては、この様な割に合わない攻撃を続ける意味は無かったのである。
「壮観な光景ですね…隊長」
今度は、副操縦士のセバスティアーノが言う。
「そうだな。これならザフトの奴らをぺしゃんこにしてやれる」
笑みを浮かべ、彼は部下を鼓舞する様に言った。各爆撃機部隊には、それぞれ、目標が設定されていた。
例えば、第778部隊の所属機の場合、目標は、ジブラルタル基地の潜水艦ドック………分厚い鉄筋コンクリートで覆われたその人工の海触洞。
開戦前地球における海の王者であった原子力潜水艦の巣となっていたその場所は、現在では、ザフトの主要海上戦力である潜水艦隊の停泊地となっている。
地球連合は、モビルスーツを主力とするザフトの電撃的な侵攻の前に、北アフリカの大半を制圧され、
ユーラシア連邦の産業、文化の中心の1つである西ヨーロッパにおいても苦戦を強いられ、相次ぐ後退を余儀なくされていた。
この状況で、ザフトの2大拠点の1つに打撃を与えるということは、各戦線で戦っている味方兵士の士気を大いに高めるだけでなく、
戦況を大きく好転させることにも繋がるのは確実であった。
この作戦は、地球連合 戦略航空軍始まって以来の大規模作戦であった。
ロドリゲスは、いつもと同じ様に自身の乗機に乗り込んだ。整備と安全確認が完了し、発進準備が整った地球連合軍爆撃機部隊は、
次々と、滑走路から次々と離陸していく。
最後の地球連合の爆撃機が大地を離れた時、ヘブンズベースの上空には、無数の機影が浮かんでいた。
その数は、200機以上いた。200機を超える爆撃機は、鳥の群れの様に梯団を形成した。
基地の管制塔で、大空に飛び立っていく、作戦参加機を眺める者達がいた。
「閣下、壮観ですな。」
「ああ」
地球連合軍第4航空軍団司令官のギャヴィン・オーウェル中将は、ヘブンズベース上空を覆わんばかりの機影を見て、傍らの副官に応える。
再構築戦争後、これほど大規模な爆撃機を運用した作戦は、片手で数える程しかない。
その作戦に参加できることにこの中年の将軍は、心躍るのを感じていた。
今回の作戦に向けて、地球連合空軍は、ヘブンズベース基地に多種多様な航空爆弾を輸送した。地下施設を破壊する為の特殊合金製の弾頭を搭載した地中貫通爆弾、
滑走路に槍の様に突き刺さり、爆発によりクレーターを形成、使用不能に陥らせる滑走路破壊爆弾、
地上部隊の上空で無数の子爆弾を撒き散らすクラスター爆弾、炭素繊維のワイヤーを散布することにより、送電施設を機能不全に陥らせる停電爆弾、
熱と圧力で効果範囲のあらゆるものを粉砕するサーモバリック爆弾……
誘導方式もハイテクのAI、GPS、レーザー誘導、レーダー、熱紋式から無誘導のものまで、さながら地球連合の航空爆弾の展覧会の様だった。
発進していく彼らの姿は、既にザフトに察知されていた。高高度偵察機等ではなく、地上から遥かに離れた衛星軌道上に浮かぶ、偵察衛星によってである。
ザフトは、地球連合軍の地上の拠点を偵察する為の偵察衛星を多数撃ち上げていた。
地球連合軍も、小規模な艦隊や軌道防空部隊と呼ばれる衛星攻撃用ミサイルや
軍用シャトルを有する部隊でこれらの偵察衛星を軌道上の塵に変えていたが、それでも限界があった。
「ジブラルタルに居座ってる宇宙人共を灰にしてやろうぜ!皆!!」
ロドリゲスは、通信機に向かって大声で叫ぶ。
「了解です!」
「やってやりましょう!」
「蒼き清浄なる世界の為に」
部下達もそれぞれ大声を張り上げて己の勇気を奮い立たせる。同様の光景は、別の爆撃機部隊でも繰り広げられていた。
無線封鎖域は、まだ遠いとはいえ、これは軍の規律を乱す行為とも取られかねなかった。だが、指揮官クラスでもそれを咎める者はいなかった。
いつ死ぬかわからない状況では、この様に兵員の士気を高める行為は、必要だった。
己を、仲間を奮い立たせる咆哮を上げながら、鋼鉄の翼竜達は、獲物の待つ空へと向かっていった。
彼らは、その途中で何が待ち受けているのかということを知らない。
だが、兵士である彼らは、命令に従うしかなかった。
―――――――――――ユーラシア連邦領海 ビスケー湾上空――――――――――
梯団を組んだ地球連合爆撃機部隊は、間もなくジブラルタル基地の存在するイベリア半島にたどり着こうとしていた。
「陸地が見えて来たな…」
ロドリゲスは、前方に広がる陸地―――――イベリア半島北部海岸を見つめて言う。
この海域は、地球上で最も鯨やイルカ類が生息している海域であり、遥か昔には、バスク人を初めとする様々な民族が捕鯨活動を行ったことでも知られている。
C.E 70年現在、この海には、別の種類の鯨も存在していた。その鯨は、血肉ではなく、鋼鉄の体を有していた。
「前方の海域に敵艦確認!艦種は、…ザフト野郎のクジラ≠ナす」
ロドリゲスの操縦するモルニアの搭載レーダーは、海上に浮かぶ敵を発見した。これは、NJによる電波障害が覆っている地球では奇跡に近いことだった。
「例の潜水空母か…」
眼下の海には、ザフト潜水艦隊の主力戦力であるボズゴロフ級潜水空母がその巨体を海上に浮かべていた。海上のボズゴロフ級は、1隻だけでなく、2隻存在していた。
また前の方の1隻は通常型と異なり、発射台の様な物体を甲板に載せていた。
対照的に後ろの方は、通常型である。2隻の上空には、ザフトの航空戦力の中核をなす飛行MS ディンが12機V字編隊を組んで飛んでいる。
「その2000m上にげた履きもいます。カメラ野郎≠ナす。」
副操縦士のセバスティアーノ少尉が報告した。
その報告の通り、ディン部隊の更に上空には、グゥルに乗ったジン長距離強行偵察複座型が滞空していた。VTOL機であるグゥルは、
大量に燃料を消費する代わりにヘリコブターの様に空中をホバリングすることが可能であった。
そのジン長距離強行偵察複座型は、通常の任務で携行している重突撃機銃やスナイパーライフルではなく、奇妙な箱型の装置を両腕で抱えていた。
その装置は、銃器というよりもビデオカメラに近い形状で、先端には、無数の赤く光る小型センサーが装着されていた。その形状は、昆虫の複眼を想起させる。
そして装置の先端は、遥か碧空を飛ぶ地球連合軍爆撃機部隊に向けられていた。
「物資輸送の途中か何かだろうな…向こうも攻撃できないだろうが、俺達もこの高高度じゃ、爆弾の無駄だな」
「ディンは潜水艦の護衛なんでしょうが、あのげた履きは何のために浮かんでるんでしょうね?」
「俺達の監視の為だろう」
「ECM強度を最大にしておけよ。ミサイルでも食らったらシャレにならん」
「了解!」
セバスティアーノは、搭載されている電子妨害装置の出力を最大に引き上げた。他の爆撃機も同様の行動をとった。
次の瞬間、全てを一変させる異変が起こった。それは、空中ではなく、遥か下界…海上にて起きた出来事であった。
前方にいたボズゴロフ級で爆発が発生したのである。オレンジ色の鮮やかな炎が、ボズゴロフ級の艦体を包み込み、一時的にその姿を隠した。
「!?何だ?自爆か!」
突如海上で発生した爆発を目撃したロドリゲスは唖然とした。上空の爆撃機部隊のパイロット達は、それぞれその光景を目撃した。
彼らの思考はそこで中断された…不運な一部は、永遠に… 海上での爆発の直後、新たな爆発が生まれたからだ。
それは、ボズゴロフ級が浮かぶ海上から遥かに離れた高高度………爆撃梯団の右端にいた編隊で起こった。
「第33中隊がやられた!」
「指揮官機被弾!!」
爆撃梯団の中で、悲鳴のような通信が飛び交った。
「何が起こった!?」
ロドリゲスは、突然の悲劇に驚きつつ、後方警戒用のカメラからの映像が表示されたモニターを見た。
そこからは、大西洋連邦軍のB-7爆撃機3機が、燃え盛るブーメランとなって地上に落下していくのが見えた。
間髪入れず、第2の爆発が空気の薄い高高度で炸裂し、今度は、ユーラシア連邦空軍のモルニアが6機、撃墜された。
「………対空砲弾による攻撃と思われる!」
通信機から僚機のどれかから拾われた電波が音声化されてコックピットに響いた。
「対空砲弾…」
それらの対空砲弾は、海上のボズゴロフ級潜水空母から発射されたのは明白であった。
「艦載式の電磁対空砲だと!」
敵の兵器の正体に気付いたロドリゲスは、思わず叫んだ。電磁対空砲……旧世紀の高射砲のレールガン版とでもいうべきこの兵器は、
誘導性能こそミサイルに劣るが、コストパフォーマンスでは勝っていた。
また電磁加速された砲弾は、ECM等の妨害や迎撃を受ける可能性のあるミサイルや大気による威力の減衰という欠点があるレーザーやビーム等の光学兵器と比べ、一度発射してしまえば、
運動エネルギーを喪うまでは直進(誤差の範囲ではあるが、地球の重力による影響もある)するという利点があった。
開戦前は主要な軍事基地には電磁対空砲陣地が配置され、開戦後でも3月8日のビクトリア基地攻防戦でも、軌道上から降下してきたザフトの降下部隊に大損害を与えている。
だが、4月1日にザフトが地球に撃ち込んだニュートロンジャマーで原子力発電が無力化され、
軌道上の発電衛星も艦隊戦の結果、宇宙の藻屑と化した現在のエネルギー事情では、
レールガンを対空火器として運用するのは、ミサイルやレーザーと同等か、それ以上に割に合わないと考えられていた。
その兵器を、ザフトは、高高度を飛行する地球連合軍爆撃機部隊の迎撃に転用したのである。
ジブラルタルを目指していた地球連合軍爆撃機部隊の前に立ち塞がったボズゴロフ級は、
通常型ではなく、対空型に改造された改造型ボズゴロフ級であった。
この艦は、ローラシア級の主砲である450mm単装レールガンをベースに開発された対空レールガン AALG-22 ジルニトラを装備していたのである。
このボズゴロフ級潜水空母の戦力の大半の源泉ともいえるリニアカタパルトを潰して設置された
この大蛇の様なレールガンの射程は、ロケット加速式誘導弾頭との併用で高度3万メートルにも及ぶ。
反面貫徹力では、ジンの装甲にすら弾かれるほど威力が大幅に低下していたが、薄紙同然の装甲しかない爆撃機相手にそれは必要なかった。
またエネルギーの問題に関しては、バッテリーの役割を果たす補給潜水艦を随伴させることで解決していた。
「あのカメラ野郎が誘導してるんだな!」
そして、NJ下の戦場で最大の問題となる命中率の問題は、モビルスーツに観測機材を搭載し、観測機とすることによって解決していた。ロドリゲスは、
相手がどの様にこの高高度にいる爆撃機に対して正確に砲弾を浴びせているのかのカラクリも正確に予想していた。
だが、彼の優れた洞察力もこの状況では何の助けにもならなかった。
ジンから送信される観測データを元にボズゴロフ級は、天空に向けて魔弾を送り込み続けた。電磁加速された砲弾が高高度で炸裂する度に青空に爆発の華が咲く。
誘導砲弾の破片をエンジンに受けたモルニアが黒煙を吹き上げながら高速で落下を開始する。
爆弾槽に被弾し、搭載爆弾が誘爆した機体は、大音響と共に空中で大爆発した。
飛び散った無数の破片が、密集体形を組んでいた僚機を襲い、更に被害を拡大させる。炎の塊に呑み込まれた後続機が後を追う様に爆発する。
「畜生!」
ロドリゲスの目の前で、爆撃機部隊は、次々と火の手を上げ、天空から墜落していく。
一部の爆撃機が、一矢報いんとばかりに海上の改造ボズゴロフ級に向けて爆弾を投下した。
だが、それらは、浴槽に浮かぶ針に遥か上から砂粒を当てる様なものである。
投下された爆弾は、その全てが、吹き荒れる風と大気の温度変化、湿度と言った様々な要素に翻弄され、
ボズゴロフ級から離れた海面に幾つもの水柱を空しく生み出しただけに終わった。
一部の機体は、低空に降りて海上のボズゴロフ級に襲い掛かろうとした。
「頼むぞ…」
ロドリゲスの第778部隊を含む梯団の爆撃機は、旋回してその空域に留まる。周囲を見ると他の爆撃機部隊の多くも、
彼と同じ様に低空に降りた仲間が、海上の脅威を排除して進撃を再開できることを期待した。
ユーラシア連邦空軍の保有する戦略爆撃機 モルニア爆撃機は、戦略爆撃だけでなく低空での対艦攻撃も可能な運動性を有している。
低空からボズゴロフ級に迫るモルニアの編隊にボズゴロフ級の護衛を務める飛行MS ディンの部隊が迎え撃つ。
爆撃機に過ぎないモルニアは、加速性能はともかく、運動性能でディンに大幅に劣っていた。
戦いは、一方的なものとなった。重突撃機銃をエンジンに受けたモルニアが爆散し、コックピットに散弾を食らった機体は、
パイロットの肉片と強化防弾ガラスの破片を撒き散らしながら海に突っ込む。
ザフトの飛行モビルスーツは、その後数分間に渡って低空を飛ぶ鋼鉄の巨鳥を狩ることを楽しんだ。
次々と対空散弾銃や重突撃機銃を受けて三角翼の白い機体が、撃墜されていった。
1機のディンが、モルニアの上から急降下、すれ違い様に右腕に握った重斬刀を突き刺す。
コックピットの真後ろに楔を打ち込まれた白い鉄の鳥は、その巨体をよたつかせ、海面に激突し、四散する。
低空に降りた爆撃機は、1機残らず、ボズゴロフ級を護衛するディンによって撃墜された。
そして、ボズゴロフ級は、2隻とも無傷であった。
「こちら、ビッグブーメラン%P退する。」
最後尾を飛んでいたB-7部隊が反転した。これ以上の進撃は不可能と判断し、ヘブンズベースに向けての撤退を始めたのだろう。
彼らを皮切りに梯団を形成していた爆撃機部隊が次々と回頭を開始した。
「全機回頭…ヘブンズベースに帰還するぞ」
部下の命を預かる指揮官としてロドリゲスは、判断を下した。
「撤退するんですか?!」
セバスティアーノは、思わず相手が上官であることも忘れて叫んでいた。
「馬鹿野郎!これ以上ここに留まってどうなる!先に落とされた奴らの後追いでもしたいのか!」
高空にいれば、対空レールガンの餌食になるだけ…かといって低空に降りれば、
護衛のディンに撃墜される…これ以上この空域に留まるのは危険だった。
「……すみません、隊長…」
怒鳴り返され、我に返ったセバスティアーノは、操縦士であり、指揮官のロドリゲスに謝罪した。
「…改めて言う!全機撤退!あのレールガンの射程から逃れるぞ」
「了解」
先程の戦意に溢れた声とは対照的な声で部下達は応答した。
指揮官機のモルニアを先頭に第778爆撃機中隊の機体は、ヘブンズベースへと針路をとった。
「…セバスティアーノ」
「…」
「お前の気持ちは分かる…だが、今の俺達じゃあ無駄死にするだけだ。」
「…はい」
「いつか奴らの本拠地に爆弾を叩き込む日が必ず来る!それまで俺達は生き延びて任務をこなすんだ…」
「はい!」
その後、一部の機体が強行突破を図ったが、その全てが、ジルニトラの砲撃を受けて叩き落され、生き残ったものはいなかった。
その意味では、ロドリゲスの第778爆撃中隊以下の針路を変針した部隊が、強行突破しなかったのは、正解と言えた。
なお、レイキャビク等、アイスランドの基地より出撃した別動隊は、
ジブラルタル基地の上空に達する寸前で、ジブラルタル基地外周に設置されたジルニトラの地上設置型
リントヴルムを12基有する対空陣地によって迎撃を受け、半数が撃墜され、退却を余儀なくされた。
この時、アイスランド方面から進撃した爆撃部隊は、ステルス爆撃機 B-7を主力としていたが、上空の観測機からの視覚情報によって
誘導される対空レールガンの前には、その高いステルス性能も無意味であった。
爆撃作戦 バックステージ0025は、無残な失敗に終わった。数日後、地球連合欧州方面軍司令部は、
爆撃部隊が十分に補充されるまで、爆撃機戦力を温存するという方針を決定した。
これにより、航空支援が減少したヨーロッパ戦線の地球連合地上軍は更なる苦闘を強いられることとなる。
今日はここまでです。
この話は、拙作 連合兵戦記における地球連合の戦略爆撃とザフトの対抗手段を描いた作品です。
ちなみに本編で現れた戦略爆撃機部隊は、レイキャビクの部隊です。
感想、アドバイスお待ちしております
乙
なんだろう、モビルスーツ出てないのに中々面白い
お待ちしてましたー・・・長い停滞だったなぁ、このスレ。
爆撃機VS高射砲の戦い、太平洋戦争のB29戦を彷彿とさせますね
あっちは爆撃側の無双でしたが。
こんにちは
突然ですけど一つ相談させてください
私は今ガンダムSEEDの2次創作をしたいなと思っているのですけど、なにぶん初めてなこともあって題材に悩んでいます。
候補は4つあり、
@ゾイドシリーズとのクロスオーバー
Aぼくのかんがえたさいきょーの劇場版SEED
B艦これとのクロスオーバー(ただしゲーム未プレイ)
Cいっそ本編から数百年後のオリジナルストーリー
このどれかを表現してみたいなぁと漠然に思ってます。SSを書くのは初めてなので、身勝手ながらここで勇気を貰えればなと。
誰かしらレスポンスお願い致します。
長文失礼しました
>>231 おはよう
個人的な意見だけど
@
>>1のガンクロで見たことがあるような気がするから、それを読んで隙間があるか、かぶらないか考えるのもいいかも
A元ネタがないから(冬ソナ的なという案を除けば)完結させるのが難しそうだけど、やりがいはあると思う
Bゲーム未プレイだと、ゲームの設定に詳しい人からツッコミがはいるかもしれない
Cよくある意見では、「数百年後ならもうSEEDである必要なくね?」ってのを見る。ダメとは思わないけど
他の人の意見ももらえるといいね
大丈夫、ここのスレは基本みんな親切だし
投稿しながらアドバイスを貰っていけば話ごとにクオリティも
上がっていくと思う、俺もそうだったし。
ひとつ余計な世話を焼くなら、開始から完結までの流れというか
クライマックスやラストシーンをしっかり構想しておくと
途中で飽きずに書ききれると思う。
>>232 @のゾイドとのクロスオーバーは見てみたいな
お三方意見ありがとうございます
まだ何も決まっていませんが、近いうちにここに何かしら投下させてもらおうと思います。その時はよろしくお願い致します。
こんにちは
>>231だった者です。
勢い任せで決心して書けたものができたので、今日の23時頃に投下しようと思います。
色々と意見をくれると嬉しいです。
今回は、>>234氏には申し訳ないですけどゾイド主題のものは諦めました。
でもゾイドは好きなので、いつか作中でそのネタを書きたいと思ってます。
夢。
夢を見ていた、そんなような気がする。
それは白く、昏い夢。どこか懐かしく安心する温もりの中で、なぜだかどうしようもなく哀しくて痛い、誰かの悲痛な叫びをただ受け止め続けるだけで。そして全てがごちゃ混ぜになって霧散する、そんな夢。
そんな夢を見ていたのかもしれないと思い、果たしてそれは一体どんな心理状況なのだろうと疑問に思い、そもそも自分は何故夢を見ていたのだろうと一頻りに頭を悩ませて。
そろそろ目覚めなければならないと、青年は思った。
目覚めなければ。
脅迫的なニュアンスを含む、至極通常のその思考。それに抗うことなく、青年は次第に覚醒する意識を自覚して、流れに乗るように努めた。
眼を開く。
薄ぼんやりとする意識に、薄ぼんやりとした視覚情報を入力する。
夢を忘れ、現実を認識する。
セカイに目覚める
そして、
「……、ここ、は」
どこだと、知らない天井を見つけた寝ぼけ眼の青年は独りごちた。
紫晶色の瞳をしばたたせ、彼はそれ以上のアクションを起こせないでいた。
ひどく身体が重い。気怠く、指先一つ動かすことすら億劫な目覚めは、まるで目覚めるという行為に全ての気力を使い果たしてしまったのではないかと思える程の最悪で。
更には頭も重く、霞がかった思考は自分が今まで何をしていたのか、何故今まで眠っていたのかを瞬時に判断できない程のものになっていた。
故に彼は、目を開けて、声を出す、それ以上ができない。
そのままボーッと、天井を見つめ続ける。
その視線の先には。
老朽化の進んだ木組みの天井と、古ぼけた蛍光灯があった。真っ白なカーテン越しの陽光に照らされた、ノスタルジックな雰囲気を醸すそれは、青年の知らない視覚情報だった。
どこかからやってきた潮の薫りとさざ波の音に満たされた、ここは知らない空間だと一目で理解した。ついで、彼は自分がベッドに寝かされていたのだと知る。
ここはどこだろう。
軽く視線だけで周囲を見渡してみると、ここは沢山のベッドを収容した大きな部屋で、青年はその隅の窓際を陣取っていた。
ベッドは10床、等間隔に並べられいずれも清潔そうな白いシーツが敷かれているのを確認したところでほのかに鼻を擽る消毒薬の臭いに気づき、おそらく医療関係の施設ではないかと思い当たった。
しかし、それにしては人類が宇宙で暮らして半世紀以上の現代で、今時天然物の木材で建築された病院などあるのだろうか。他に人がいるような気配もなく、ならここはド田舎の保健室……のようなものなのかもしれない。
何故自分はここにいる?
ここに至るまで、自分は何をしていた? そう、そうだ……たしか、大変なことがあったような、そんな気がするのに。
(どうしようもない何かが、あったハズなのに)
そこから先が思い出せない。
いつのまにか眠気はすっかり引いていて、自分が何者なのかは、どんな人生を送ってきたのかは明確にわかるようになっていた。なのに直近のことだけが、どうしてか直近のことだけが、未だ思い出せない。
そうして彼は、幾つもの疑問に頭を占拠されてしまう。思考の海に溺れさせてしまう。そう、何かが違うハズと脳が全力で叫んでいるんだ。
だって、連続性がないのだ――今自分がこのようになっているのは酷く不自然なことなのだと、理由はわからないのにそう思えるのだ。これはなんだかおかしいんだ。
『情報』が欲しい。
自分にとって身近な情報を見つけられないのは、苦しい。
「なんなんだ、これは……?」
この状況に、わけもなく困惑するばかりの現状に、ひどい不安を覚えて再びぽつりと独り言。
眼を細め、それに応える声はないと知りながら、彼は声を世界に出力した。
だから、
「……удивился」
「え……わっ!?」
まさしく自分の真横から発せられたその『声』に驚いて。青年は思いっきり、大袈裟なほどにビクッと身体を引き攣らせてたのだった。
機動戦士ガンダムSEED×艦隊これくしょん ――艦これSEED 響応の星海――
《第0話:終わりの先にあるもの》
「……あぁ、すまない。こっちが驚かしてしまったようだね」
それは鈴のような、透明感のある幼い少女の声で。
どこかに苦笑いのエッセンスを含めた謝罪の台詞が――青年の左側、ベッド脇の簡素なサイドボードの位置から――飛んできた。
「タイミングが悪かったかな。私もまさか起きるとは思わなかったから」
一瞬、正直、幽霊かと思った。
ほんの少しだけとはいえちゃんと部屋を見渡して、誰もいないと判断したのだ。なのにいきなりこんな近くに音もなく現れて、それはもう幽霊だろう。
しかし彼は常々幽霊なんぞいないと思ってる類いの人間で、むしろ意外にも幽霊が苦手だった部下をからかうポジションの男だった。幽霊なんてオカルトはありえない。
なので、つまり、もちろん、この声は幽霊なんて非現実的で非科学的なものでは断じてないのだ。絶対に。
小さな声なのに、よく響いて通るその『声』に、吃驚しただけなのだ、単に。
そう瞬時に思考を流した青年は、流した冷や汗を知らないフリしつつ脈打つ心臓を落ち着かせるよう努めた。
確かめなければならない。
二重の意味でひっそり覚悟を固めた青年は、ゆっくり頭を傾け、声の主を視認しようとした。視て認めようとした。
視る。
そこにあったものは、
「……」
まるで満点の青空の蒼を映した氷のようだと、思った。
蒼く白い少女がいた。
ただ冷たいのではなく、優しい――勝手な妄想かもしれないけど、そんな内面が透けて見えそうな蒼い瞳が、とても印象的。
蒼銀をそのまま鋳溶かしたかのように輝き、ふわふわクルリと広がって綿雪のように少女を彩る長い銀髪と相まって、物語の世界からそのまま飛び出してきた氷のお姫様みたいだと一瞬、呆けた頭でそう思ってしまっていた。
「……氷のお姫様?」
「え?」
「あ……え、えと。うん、何でもないよ……変なこと言って、ごめんね」
「? あなたが謝る必要は、ないと思うけどね」
言葉を使って話ができる人間がいた。
(聴かれてない、よね? 小さく呟いただけのはずだ)
うっかり思考が口から漏れ出てしまっていたのか、相当恥ずかしい単語を口走ってしまっていた。なんだそのロマンティック全開な言い回し。願わくは彼女の耳に届いていないように――と、密かに青年は祈る。
そんな男の小さな願いなど露ともしらない小さな白い娘は、小さな頭をわずかに傾けただ青年を見つめるだけだった。銀髪がふわりと揺れた。
歳は大体10才頃……いや、もう少し上だろうか。
どこか眠たげな可愛らしい顔立ちと、先ほどからの妙にクールで大人びた言葉遣いというギャップが、彼女の年齢を妙にわかりにくくさせるカモフラージュの役割を果たしていると思えた。
でも、それが悪意や邪気を孕んだものの産物ではないと感じさせるのは、きっと彼女が自然体だからだろう。真紅のタイが似合うセーラー服に身を包んで黒い帽子を目深にかぶる、そんな少女だ。
青年は安堵する。何もかもが不明なこの状況に、一つの光がみえた気がした。
会話ができる。
会話とは情報の交換だ。彼女なら自分が知りたいことを何か、知っているかもしれない。
勝手な期待だと知りながらも、けれどこのままではいられない青年は、ちゃんと少女と会話をするために漸く身体を起こす。
「ねぇ、君。君は……っ、あ、あれ……?」
「Осторожно……無理しちゃ駄目だよ。四日も眠ってたんだ、あなたは」
「……、……そんなに」
「ああ」
起こそうとして、結局できたことは上半身を少し持ち上げるだけの行為だった。
痛みはなく、ただただ身体が重いだけ。目覚めてからずっと付きまとっていた正体不明の気怠さは、想像以上に身体の自由を奪っていたのだ。身体は再びベッドに沈み、なんてことのない運動に息を切らせる。
四日……四日も寝っぱなしでいれば、こうもなるのだろうか? 少し悲しくなった。
少女はサイドボードに置いていた、水をなみなみに張った洗面器から一枚のタオルを取り出して、ギュッと固く絞りながら言う。
あまり表情が豊かな方ではないのだろうか、眠たそうにも澄ましているようにも見えるその顔に小さな変化すら顕さないまま、淡々と。
「浜辺に倒れていたのを発見したのが四日前の朝。通りがかった遠征隊がこの鎮守府まで連れてきたんだ」
けっこうな騒ぎだったんだよ、とどこか懐かしむようなイントネーションで少女は濡れタオルを青年の額に乗せた。
ヒヤリとほどよい冷気が、いつのまにか気持ち悪い油汗を滲ませていた青年の頭を優しく癒やす。
しかし。
青年は、しばし無言のまま少女の顔を凝視した。ありがとうと言いかけて、今の台詞の中に、重要な意味を持つ単語が紛れていたことに気づいたのだ。
「な、なにかな」
「……チンジュフ?」
「そうだよ。佐世保の……」
「ここは、日本の軍の施設なの?」
鎮守府。
たしか、そう・・・ユーラシアの島国、極東の地。オーブ連合首長国のルーツである、ジャパン――日本国では、軍施設をそのような名称で呼ぶこともあると、そう聞いたことがある。
遠い記憶、いやいや参加した座学で得た知識だ。
それに、と青年は思考を加速する。
思えば自分たちは先ほどからオーブ公用語を、つまりは日本語を自然に使っていた。
バイリンガルが当たり前のご時世で、しかも彼女は時々ロシア語を使っているから断言こそできないが、その流暢な言葉の流れ、全体的なイントネーションは日本人のものだ。
極めつけは少女の服装で、まさかこんな年端もいかない女の子が水兵であるわけもなし、今この世界でセーラー服を学生服として重用しているのは彼の国だけだ。
であればここは日本国なのか。
もし本当にそうであれば。思いの外あっさりと、この情報のない現状から脱せられるかもしれない。
そう考え、期待して、発した質問は。
「……Да。ここは日本の佐世保鎮守府で間違いないよ」
「……そう、か」
明確な肯定として、青年に光を与えた。
まったく思わぬ展開で、思わぬところから転がり出た待望の『情報』に、彼は浮かれた。
そう、自分は軍属の人間なのだ。知りたいことは、軍から訊ける。探す手間が省けたというものだと。
世界の今、己の現状、いまいちよく思い出せないそれらは、自分の立場を使えば簡単に解るのだと。
だから、青年は会話を続ける。
目の前にあるかもしれない答えを得ようと、言葉を続ける。
「教えてくれて、ありがとう――タオルも。君のおかげで……助かったよ」
「気にしなくていい。この世の中だ。こうなることだってあるさ」
「そうかな。……なら君に一つ、お願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」
「Ладно」
「うん。僕は君に――っと。そういえば、名前がまだだったね」
なんか君って言い続けるのもイヤだし、まずは此方から名乗るよと喋る青年は、気づかない。
ここが軍だとすれば何故、こんな学生の少女がここにいるのか。何故、こんな木組みの古めかしい建物なんて使っているのか。何故、この自分がここに連れられたのか。
その全てに意味があることに。
まだ気づくことができないまま、青年は進んだ。
それらのことに全く考えがいきつかないまま、焦燥感に駆られるままに。
このセカイが、どういうものなのか、知らないままに。
「僕は、キラ。キラ・ヒビキ。新地球統合政府直属宇宙軍第一機動部隊の、隊長をやってるんだ。……もしできたら、ここの責任者に会わせてもらえないかな」
かつて最強のパイロットと謳われた青年は、新たな戦いの海へと進む。
以上です
ペースは不定期になると思いますがよろしくお願いします
投稿乙でした。
0話ということで評価は難しいけど、話の「入り」は良かったと思います。
本当の評価はここからですよ、次以降も期待してます。
久々に書きたくなってきたな・・・
「判決、被告を敵前逃亡、並びに利敵行為の罪状により、本日12:00、銃殺刑に処す」
壇上の男がそう言い放った瞬間、その法廷、つまりルナツー第4会議室は悲痛な空気に包まれる。
肩を落とす者、すすり泣く女性、理不尽さに怒りを震わせる者、そこにいる誰もが
その判決を受け入れられずにいた。そう、判決を読み終えた裁判長さえも・・・
「ふざけんじゃねぇぞワッケイン!!」
傍聴席の隅から壇上に向けて絶叫が飛ぶ、若い男の声。
「なんだその判決は!結論ありきじゃねぇか、認められるかそんなもん!!」
周囲の者に取り押さえられながらもさらに吠える。
その基地の司令官に、また軍法会議の裁判長に対する暴言、本来なら被告とまとめて
銃殺刑でも不思議ではないその絶叫も、誰も咎めはしない。
「馬鹿かお前は!!!」
咎められた・・・死刑判決を受けた被告本人に。
「場所をわきまえろ!そもそも誰にそんな口をきいておるか、ジャック・フィリップス軍曹!!」
前を向いたまま、後ろの愛弟子を叱りつける。被告人ヒデキ・サメジマ中尉。
ため息をつき、裁判長に向き直った彼はこうフォローする。
「申し訳ありません指令、いかんせんまだまだ子供のようです、もう少し厳しく躾けるべきでした、
非は上官たる私にあります、彼には寛大な・・・」
「かまわんよ、本当のことだ。」
そのワッケインの発言に会場がどよめき、そして悟る。
この軍法会議は彼より上からの結論ありきで降りてきた「儀式」なのだと。
宇宙世紀0079、この年初頭に勃発した独立戦争は、年半ばまで独立側、つまりジオン公国に
有利に展開してきた。
モビルスーツ・ザクを初めとする様々な新兵器、独立という高い国民意識を掲げた意思統一
そしてコロニー落としに代表される容赦ない攻勢、連邦軍が各所で敗走を続ける中
このルナツー基地だけは基地としての体裁を保ち、その勢力を維持してきた。
それは地球を挟んでジオンと正反対の位置にあるという立地が大きかったが、
その基地内の人間のたゆまぬ努力の成果でもあった。
その中にあって、その男、ヒデキ・サメジマの名前を知らぬ者は無かった。
強靱そうな肉体と人当たりの良い陽気な性格、そしてあらゆる事柄に高いモチベーションと
行動力を持って、多くの者に慕われてきた好漢、若者たちは彼を「サメジマの兄貴」と呼んでいた。
コロニー落としで家族全てを失い、絶望と憎悪に塗りつぶされていた若者ジャック・フィリップスも
彼に救われた一人だった。
「・・・隊長、サメジマの兄貴・・・すいません、俺が、俺がよけいなことをしたばっかりに・・・」
両脇を抱えられたまま、下を向いてぼろぼろと涙をこぼながらそう話すジャック。
「なんでお前のせいになるんだよ、馬鹿言ってんじゃねぇ、指揮官は俺だぞ。」
「でも、俺が・・・あんなペイントしてなけりゃ、こんな事には・・・」
「それを許可したのも俺だ、いやむしろ嬉々として推奨してたじゃねぇか、
気にするな、責任は誰かがとらにゃならねぇ、いつかお前にもその番が来る、それが組織ってもんだ。」
上半身を後ろに向けて、笑顔で答えるサメジマ。そこには、いつもの「兄貴」がいた。
これから処刑される男の小ささや儚さは微塵も感じさせない、頼もしさをオーラのように纏った男。
それは2時間後、その命を失うまで、微塵も欠けることは無かった。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第一話 軍法会議にて。
見切り発車ではありますが、「顎朽ちるまで」スタートです。
イグルー内で「チンピラ」「ヒャッハー」などと評される
連邦軍兵士の側から見たお話です、感想もらえるとありがたいです。
乙です
一度に二つも新しいのが来るとは思わんかった
楽しみが増えるね
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第二話 軍人の言葉
−霊安室にて−
一人の男が横たわっている、穏やかな、そして精悍な顔で。
周囲には数々の花束、記念の品、葬る言葉を記したカード、まもなく彼は宇宙へと葬される。
軍律違反で銃殺刑にかけられた男は、その失態に似合わぬ悼まれ方でその時を待っていた。
弔問客はすでに退席を命じられ、部屋に残っている者は2人、
サメジマの小隊の隊員であったエディ・スコットとジャック・フィリップス。
未だに嗚咽を止めないジャックに対して、エディはずっと黙祷を続けている。
同僚のジャックより5歳年上なことが、彼に大人の態度を取らせてはいる、しかし泣きたいのは彼も同じだった。
「ねぇ兄貴、俺は一体・・・」
一息おいてから、言葉をつなげるジャック
「誰を、褒めればいいんですか!」
彼は邂逅する、この尊敬すべき兄貴に教わった、宝物のような言葉を・・・
今年の新年、17歳のジャックは休暇を地球の祖父の家で過ごしていた。
サイド2の工場でメカニックとして働いていた彼は、クリスマス休暇から新年までは
この青い星に降りるのが恒例になっていた。
自分へのご褒美、そして優しい祖父や祖母、使用人や旧友との年に一度の再会。
年が明けて1月3日、全宇宙にに電撃的なニュースが走る
−ジオン公国、地球連邦に宣戦布告−
地球に長居は出来なくなった。ジオンと連邦が戦争になれば、その間にあるコロニーは
軒並み巻き込まれることになる、会社の同僚や近所の友人達も気になる、片思いの彼女も・・・
1月5日、シャトルで宇宙へ、貨客船に乗り換えた時点で船内の全員に告げられる、
サイド2がジオンの進行を受け、占領下に陥ったこと、当船は連邦政府の指示により
ジオンと反対側の連邦軍基地、ルナツー近海の宇宙で待機を指示されたこと。
−遅かった−
みんなは無事だろうか、あの娘は大丈夫かな、ジオンの軍人にたぶらかされたりしてないかな。
そんな心配は杞憂であることを、程なく彼は知ることになる、より悪い、最悪の方向で
1月7日、その馬鹿馬鹿しいB級映画のようなシーンが全宇宙に配信される、ほぼ生中継に近いタイミングで。
−サイド2のコロニー「アイランド・フィッシュ」地球へ落着−
そのたちの悪い冗談のような悪夢は、ジャックにとってさらなる悲劇をもたらす。
−連邦軍の抵抗により、コロニーは破壊され3つに分断、最大の破片はオーストラリア、シドニーに落下−
彼が2日前までいた地の名前、祖父母が、旧友がいた地、そこが人類史上最悪の人災によって消滅した。
自分の居場所、帰る故郷、ジャックはこのふたつをこの日、同時に失った。
政治と軍人の都合によって、彼はこの宇宙にたったひとりぼっちで投げ出されてしまったのだ
家族も、友人も、仲間も、口うるさい上司も、恋心を抱いていた少女も・・・自分が生きてきたすべての「縁」を
この世から消し去られてしまった、まるで消しゴムで文字を消すように。
宇宙での待機は長かった、ルナツーには軍事関係の戦艦や空母が優先して入港し、しかも付近の宙域にも
続々と押し寄せている。来るべきジオンとの決戦に備え、戦力を結集していたのだ。
その膨大な戦力は、ジオンの凶人を鎧袖一触で叩きのめすと誰にも思わせた。
悪夢は続く。
−ルウム戦役において、連邦軍は惨敗を喫す−
ジャック・フィリップスにとって、この世はもう絶望でしか無かった。
まるで運命という神に虐められているような理不尽の連続、俺ばかりを不幸にし、
張本人のジオンを贔屓する、なぜ!どうして!
やり馬の無い悲しみが憎悪へ向かうのは自然な流れだった。
ジオンを殺す!ジオンを潰す!ジオンを消す!俺から全てを奪った奴等に同じ思いをさせてやる!!
混乱の続くルナツーで、彼は処遇に軍属への参入を申請した。
もともと寄せ集めに近いこのルナツーでは、人材不足は深刻な問題だった。開戦の混乱から
この基地に避難してきた住民の中からでも使える人材は必要だった、それが彼の申請を通した。
モビルポッド・ボールの整備員、および緊急時のパイロット資格、それが彼に与えられた仕事だった。
「・・・なんだ、こりゃ!」
その機械を見たとき、ジャックはただただ呆れ果てていた。無理も無い、作業用ポッドに砲塔を乗せた、ただそれだけの機械。
メカニックのジャックにとって、それは馴染み深い作業機械であり、そして酷いとしか言いようのない兵器?だった。
これではまるでユンボ(パワーショベル)で戦車と戦えと言ってるようなものだ。
メカニックとしてモビルスーツの存在は知っていた、コロニー落としやルウムの映像から見てその優秀さも知っている
それに対して使うのがそのお粗末すぎる機械となれば、搭乗者には死んでこいといってるようなものだ。
「こんなので・・・ジオンと戦えっていうのか?」
「いいねぇいいねぇ、任務は難しい方が燃えるってもんだ、なぁ整備士クンよ!」
ポンと肩を叩かれる、ジャックより頭一つは背の高い、肩幅の広い軍人、ニヤリと歯を見せ、笑う。
「し、失礼しました!」
慌ててなれない敬礼をするジャック、何故「失礼しました」と言ってしまったのかは分からない
ただ、その男の態度が不思議とそう言わせていた、それは咎めるのでは無く「まぁ見ていろ」と
言われた気がしたから、そんな気にさせる。
「ヒデキ・サメジマ少尉、この部隊の小隊長だ、よろしくな。」
「ジャック・フィリップス軍曹です、この部隊の整備担当です。」
敬礼の後握手をし、後ろにいるもう一人の軍人を指さす。
「俺の部下のエディ・スコットだ。ついでによろしくな。」
「隊長、アタマ殴っていいですか?」
笑い合う二人、ジャックはそれを見て暗い感情に襲われる、こんな奴等にジオンをぶち殺せるのか・・・?
戦争を分かってない、それがもたらす悲劇を理解していない、そうとしか思えなかった、軍人のくせに!
しかし、このルナツーにいる軍人は多かれ少なかれ、彼の求める資質を欠いてるようにしか見えなかった。
宇宙がほぼジオンの制圧下にある中、息を潜めて事なかれ主義で日々を過ごしているようにさえ思えた。
佐官であるワッケインが指令であることを考えても、この基地はまっとうな人事体制ができていない、
もっとも、そんな場所だから避難民であるジャックが軍属になれたのだが・・・
「砲塔のバランス悪いんだ、もうちょい重心を後ろにならないか?」
赴任して3日後、サメジマにそう問われる、無茶を言う人だ、と思った。
どんな急造兵器でも、生産ラインに乗ってしまえば大がかりな改造はこんなドックじゃ不可能だ。
一応その旨伝えると、思ったよりあっさりと納得してくれた、その件に関しては。
「砲塔のマガジンをマニピュレーターで自己付け替えできないかな?」
「スラスターの出力がピーキーすぎる、やんわりと方向転換したいんだが。」
「電池切れが早くてな、大容量のバックパック開発できんか?」
連日連日、彼はジャックに無理難題を持ち込んだ。もちろん対応できるのもあったが
大抵は少し考えれば不可能なのが分かりそうなものだが・・・極めつけはコレだった。
「戦艦の主砲とっぱらってボールを艦載できねぇかな?」
・・・一体、整備士を何だと思ってるんだこの人は。
連日連日ツッコミを上司に入れる日々が続いた。そしてその後、サメジマは決まってボールでテスト飛行に出て行く
ああ、また何か思いついて無理難題を言われるのか。
あれ?
思えばこの基地でボールのパイロットは相当数いる。しかし皆、2〜3日に1回、短い訓練をすればいいほうで
彼のように戦時下にふさわしく、いやそれ以上に熱心にテスト飛行を繰り返している人は誰もいない、
不思議に思ったジャックは数人のパイロットに聴き、事情を知った。
ルウム以降、モビルスーツの必要性は連邦軍全体の課題となっている。
本国では一刻も早いモビルスーツの実戦投入目指して開発が進んでいる、しかし機械だけで戦争は出来ない
それを操る人間がいてはじめてその兵器は効果を発揮するのは当然だ。
そんなパイロットの候補生たち、いわばモビルスーツパイロットのプールがこのルナツーのボールパイロットなのだと。
となれば、適性試験に合格すればやがてザクをも上回るモビルスーツに乗ることが出来る、
それなのに何を好んで、この大砲を担いだ作業用機械で訓練などしなければならないのか、幸いここはジオンの
攻勢もそうはない、大人しくしてればもっとマシな状況が訪れる、つまりはそういうことだ。
「あの人だけは別だがな。」
エディ・スコットがそう語る。サメジマが注文をつけていたのは何もジャックだけでは無かった
戦闘におけるフォーメーションや戦術、敵モビルスーツ・ザクの研究データの流用、新たな兵器の開発から
地球本国との連携、ジオンが攻勢をかけてきた時のシュミレーション、上は指令から下は下士官まで
連日精力的に取り組み、周囲を巻き込んで奔走していた。そのモチベーションの高さはどこから来るのか・・・
「ま、何事も真剣にやらなきゃ気が済まないタチでな。」
ワイルドな笑顔を見せ、楽しそうに仕事に取り組むサメジマ、そんな彼の行動力に、ルナツー全体が
熱を当てられ始めていた。
8月に入ると、そうした熱気が実績になって現れてきていた。
サメジマによって確立されたボールの戦法、運用は、ルナツー近海での小競り合いにおいて
画期的な効果を発揮しはじめていた。
対モビルスーツ戦はもとより、艦隊運用におけるボールの使用法、敵索や先制攻撃から撤退の殿の戦い方
細かに改良された機体のセンサーや動力向上、着艦から再発進までの時間の短縮
そしてとうとう、一部のサラミスにボールの艦載機械が乗っかるに至る頃には、彼は「兄貴」と呼ばれるのが
自然なほどの信頼を得ていた。
それは同時に、ジャックにも新たな居場所、そして「縁」を与えてくれていた。
サメジマを中心としたルナツーの「輪」そこにジャックの居場所は確かにあった。
彼は少しだけ、ジオンに対する憎悪を忘れていた。
そして9月末、新たな転機が訪れる。連邦制モビルスーツ、ジムのルナツーへの実戦配備。
これにより多くのボールパイロットが引き抜かれ、連日ジムのテストプレイに明けることとなる、
必然的にサメジマのような熟練のパイロットは、現場を維持するためにジムへの移籍は後まわしとなり
抜けた部隊の分も働くことが要求された、10月末にはメカニック兼補充パイロットのジャックもついにお呼びがかかる・・・
ジャックは戦場に出ることで思い出していた。いや、思い出そうとしていた。ジオンにされた仕打ちを、憎悪を。
彼はあえて上司にそれを告げる。ジオンへの恨みを、故郷を失った悲しみを、奴等を地獄の業火で焼き尽くしてやりたいと。
サメジマの返礼、それは鉄拳だった。強烈な右フックが彼をマネキンのように吹き飛ばす。
痛みより驚きに固まるジャックの胸ぐらを掴んで怒鳴るサメジマ。
「一般人みたいなコト言ってんじゃねぇよ、ジャック・フィリップス!てめぇ軍人だろうが!!」
兄貴の初めて見た激情、それは怒り。軍人としての教育ではなく、教師が生徒に諭すでもなく
1個人ヒデキ・サメジマがジャック・フィリップスに向けた、彼に教えるべき大切なこと。
「お前はこれから戦争に行くんだ!敵を殺すんだ!その敵に家族がいないと思ってるのか!?」
ジャックはその言葉に血の気が引く思いを味わった。そんなジャックを見てサメジマも手を離す。
「・・・いいかジャック、仮に俺やエディが殺されても敵を憎むんじゃねぇ、それは軍人のすることじゃねぇよ」
「そんな!」
サメジマの兄貴が死ぬ、エディさんが死ぬ、また自分の居場所が無くなる・・・そんな、嫌だ、そんなこと!
「そん時は敵を褒めるんだよ、あのサメジマを倒すとはたいした敵だ、ってな。
そしてお前がその敵を倒して『奴は強かったぜ』って武勇伝にするんだ。それが殺された仲間や敵に対する敬意ってもんだ。」
「敵を・・・褒める・・・」
そんな発想は微塵も無かった。ただジャックの胸中深く、その言葉が染み込んでいった。
「俺たちは所詮、駒だ。コロニーを落とした連中も、上から命令されてやったにすぎん。
そんな奴等をいちいち憎んでいたらキリがねぇだろ、むしろ辛い任務をよくやったと褒めてやれ
戦場でもし、そいつらに出会ったら、お前の手で過去の罪を精算してやればいい。」
ジャックの中で何かが変わった、敵は憎まなくてもいい、憎くも無い敵を殺さなけりゃならない、それが軍人。
そしてその軍人ジャック・フィリップスが迎える初の出撃、それが新たな悲劇の第一歩だった・・・。
以上、二話終了です。
文章のダイエットしすぎると単なるドキュメントになってしまうし
全部詰め込むととても完結しそうにないし・・・難しいっす。
乙です。
えらく漢前な兄貴分だというのに亡くなるとは惜しいものです
まったくダイエットできない自分も投下します
――艦これSEED 響応の星海――
「僕は、キラ。キラ・ヒビキ。新地球統合政府直属宇宙軍第一機動部隊の、隊長をやってるんだ。……もしできたら、ここの責任者に会わせてもらえないかな」
ずいぶんと酷い、大人のやり口だと。汚い言い方だと、キラ・ヒビキを名乗る青年――キラ・ヤマトは自虐した。考え無しでこんな台詞が言える奴は、きっと性根から腐っているに違いない。
キラ・ヒビキ中将。
その名は、二度の戦争を戦い抜いた英雄、世界を救ったフリーダムのパイロットとして知られている。
【紅蓮の剣】たるシン・アスカ、【閃光の楯】たるアスラン・ザラと肩を並べる最強のモビルスーツパイロット。
【蒼天の翼】――それがユニウス戦役終結後のC.E. 74に成立・発足した『新地球統合政府』によって喧伝されている、青年の肩書きだった。
かなり偏向・誇張されたものであるものの、今やどんな子どもだって知っているモノであることは彼自身もよく認知していた。
この名を持ち出せば、どんな事情があろうと自分に便宜を計らってくれると、知っているからこそできる物言いだった。こんな大人にはなりたくなかったのにと、青年は内心ため息をつく。
ヒビキの性は、彼の育ての親であるヤマト夫妻を世間から護るため、オーブのアスハ家の血縁であることや旧地球連合のヤマト少尉であった過去を隠すために名乗り始めたものではあるが、
それこそがかつてキラ・ヤマトと呼ばれた彼の今だ。むしろ、禁忌の扉を開いてしまったユーレン・ヒビキとヴィア・ヒビキの息子として、これ以上相応しい名前もないように思えた。
政治的都合と自己否定から生まれたその名は、否が応にも強い影響力を持つ文字列なのだ。
それはどこであろうと変わらない。
「……」
「……?」
変わらない、筈なのだが。
キラが、なにか様子がおかしいと感じ取ったのは、自己紹介してからきっかり五回ほど秒針が揺れてからだった。
自己紹介された側である少女が、先ほどから打てば響くように応えてくれていた無表情の少女が、沈黙を保っているのだ。それも、少し困ったように眉根を寄せて。
驚いているわけじゃなく、呆然としているわけでもなく。
その反応は明らかにおかしいと、彼は怪訝に思う。想定していた、今まで経験してきたリアクションとは全く異なる、この人は一体何を言っているのだろうという、異物を見るような顔だ。
この少女が何者であろうと、この世界でそのような反応をする者なんていない筈なのに。
しかし、いつだって世界は無情である。
彼女は「そのような反応」をするのが当然の人物だった。
「……すまない。私はあなたがなんて言っているのか、解らない」
「……、……え?」
「新地球統合政府、宇宙軍……そして機動部隊。私はそれを知らない」
「な……」
絶句するしかなかった。
(ちょっと、待ってくれ。いくらなんでも、それは)
知らないだなんて、ありえるのだろうか。
地球連合とプラントにオーブ、汎ムスリム会議やアフリカ共同体その他多くの独立国家を含む、全地球規模の国際組織を知らないとは、どういうことだ。そこには当然、この日本国も含まれているのに。
ユグドラシル・プランのもとに、多くの超巨大公共事業計画が実行に移し、世界を復興させようとする組織だというのに。いくらマイペース気質と言われがちな日本の民とはいえ、そんなことが。
だが。
帽子の鍔をつまんで、申し訳なさそうに無表情を歪ませる少女に、キラはなにも言えなくなってしまった。
きっと彼女は本当に知らないのだ。青年にできることは、あまりにも悪意や邪気がない彼女からそう確信することだけだった。
何故だか、罪悪感が湧いてきた。間違っているのは自分のほうなのだ、勝手な理屈を振りかざすなよと、言外にそう言われているような被害妄想すらやってくる。
もしかしたらこれは、こんな幼い少女を利用しようとした罰、なのかもしれない。己の身分を持ち出してお願いを聞いてもらうとする狡い大人になってしまったから、世界はこの少女を自分のもとに遣わせたのかもしれない。
「なんでもそう上手くいくと思うなよ」と。
そうやって自分勝手に自己嫌悪してどんより落ち込むキラを哀れに思ったのか、少女は「けど」と前置きをして続ける。
「ただ、あなたを司令官に、ここの責任者に会わせることはできるよ」
「そう、なの?」
「Да。司令官もあなたと会いたがっているから」
どうも彼女はキラが思っている以上に、ずっと聡い人間であるようだ。
知らない単語や組織の羅列に惑わされることなく、得体の知れない身元不明の男のお願いの本質にきっちり応える彼女は、それだけで一般の少女とは違う思考回路を持っていると判断できる。
「どうやら悪い人でもないようだしね」
「……ありがとう」
しかしこうなると、また別の疑問が頭をもたげてくる。
この娘は本当に何者なのだろう。
悪い子ではないようだ。吃驚するほど世間知らずだけど、きっと何かしらのやむを得ない事情があるのかもしれない。けれど、どうもこの基地の責任者とは顔見知りで、しかも会わせることができるときた。
どうにもチグハグである。
思えば、少女自身が民間人なのか、それとも軍に籍を置く者なのかすらもハッキリしない。そもそも今までどこにいたのかも、名前すらも。
つまり全てが謎に包まれていた。自然体で何も隠そうとしないからこそ、その謎は更に色を濃くしている。
そうしてキラは、目覚めてから何度目かも解らない疑問符を、いい加減それ以外の言葉を喋れないのかとウンザリするほど繰り返してきた、質問の言葉を投げかけた。
「君は、いったい……」
その言葉は、突如鳴り響いたけたたましいサイレン音にかき消された。
《第1話:二つの世界、二人の見解》
「な、なに!?」
「……っ!」
キラは狼狽え、少女は顔に緊張を走らせる。
大音量で鳴りやまないサイレンは、青年にとっては聞き慣れないものではあった。しかしその経験上、これは「ただ事ではない」と本能的に察知する。これは避難警報だ。天災、若しくは敵襲、そういう類のもの。
危機なナニカがこの地にやってきた。
警告を促すサイレンは、更にその音量を増していく。
逃げろ、対応しろと呼びかけてくる。
『哨戒中の暁より入電。鎮守府正面近海にて深海棲艦を発見。第一種戦闘配備、第二艦隊は直ちに出撃、迎撃してください』
アナウンス。女性の声が、敵襲であると告げた。
第一種戦闘配備――明確な敵意を持ったモノが、ここに接近しているのだ。
しかし、
(シンカイセイカン? 聞いたことない……テロ組織の名前? それに艦隊って、モビルスーツはないのか?)
近海であるのなら、MS空母は必要ないだろう。【GAT-04 ウィンダム】であれば悠々行動できる距離だ。なにより、世界中の主要基地には新型の【GRMF-03F セガール】が配備されている筈なのに。
つまり、敵はMS空母の艦隊が必要なほどに強大なのか、それともMSがいないかのどちらかだ。
日本の軍事事情はよく知らないが、どうにも自分の知る常識がここにはないと、キラは判断した。
ともあれ。
これに対応するのは軍の仕事だ。
キラは成すべきことをと思い、少女は空を仰ぐ。
成り行きで軍属になった身ではあったが、今ではその身が持つ使命を十二分に認識している。なにより青年は、護るべきものがあれば自ら動くタイプだ。いつどんなときだって、その根は変わらなかった。
軍属である自分が、軍の代表的身分である自分が、動かなければ。
この目の前の、無表情でいようとしても尚恐怖感を滲ませてしまっている少女だけでも、安全な場所に逃がさなければ。
そうでなければ、ならないのに。
「くそ……! なんでっ!?」
身体は依然として動かない。
たとえ戦えなくても、なにかしなくてはと思うのに。
いくら気合いを入れて起きようとしても、重過ぎる肉体からどんどん力が抜けていくようだ。
ここに至って青年は、自分の身体に大変な異常が起こっていると認識することができた。たかが四日寝込んだだけでこうなるものか。モビルスーツの爆発に二度巻き込まれようと、こんなことになることはなかった。
全身不随。
そんな単語が、ぞわりと脳裏を掠める。
「Не беспокойся」
青年の思考を読んだかのようなタイミングで、少女。
「身体に異常はないらしいよ。今動けないのは【マッチング】が上手くいってないからかもと、先生は言っていた。いずれ元に戻るとも」
「何を……」
「あなたは、私たちが護る」
だから、安心してと。
何かを決意したかのような、何かを押し込めたような表情でそう言い切り、少女はクルリと振り返った。銀髪が緩やかに宙を舞い、少女を隠す。
「しばらく眠ったほうがいい。そうすればきっと、身体が動くようになると思う」
「ま、まって! ちょっとまって!!」
何もかも解らない、置いてきぼりなキラは、早足で部屋を出て行こうとする少女を必死に呼び止めた。体中を汗塗れにして混乱するしかなく、そうすることしかできなかった。
訊きたいことは増えてく一方で、解らないことはその倍のペースで増えていっている。彼女が何を言っているのか、何を知っているのか、何をしようとしているのか、理解も想像もできない。
身体が動かないという恐怖感も相まって、もはや容量一杯まで追い込まれていた。
「護るって……そんなのアベコベだ! 逃げなきゃダメだ、君は!」
それでも彼が一番に案じたのは、少女の身の安全だった。
護るだなんて、まるで君が、何かと戦いに行くかのようじゃないか。なんで身体は回復すると言い切れるのか、そんなことは置いといて。ただただ、その単語はひどく不穏だった。
キラはヒビキとして、曲がりなりにも軍隊の将官として、これまで沢山の兵士を見てきた。中には無表情な者もいた。そんな彼らの内面を伺う術を、必要に迫られて身につけた。だから感じ取れてしまうのだ。
顔が見えなくたって、解るのだ。
君みたいな子が、そんな顔をして何かに立ち向かうなんて、あってはならないのだと。
「だからっ、僕が戦わなくちゃダメなんだ。君は――」
「響だよ」
「――、え……?」
少女は再び振り返る。
「特三型駆逐艦二番艦の、響。それが名前」
「……響?」
「名前が同じというのは少し、恥ずかしいな?」
少女は、響と名乗った女の子は、不敵な笑みを浮かべていた。
「沈まんさ、私は。あんな奴らにやられる程ヤワじゃないし、やられるつもりもない。……あなたは私たちを信じていればいい」
「……」
「帰ったら司令官を紹介しよう。私はもう行かないといけないから、指切りはできないけど。約束しよう」
なにかが吹っ切れたような、それは戦士の顔だった。
全身に力を漲らせ、集中力を研ぎ澄ませた、青年が見慣れた種類の人間の姿。嘘偽りなく、上っ面ではなく、どこまでも説得力と自負に溢れた、それは兵士のモノだった。
こうなればもうキラに響を止めることはできない。彼女を信じる以外の選択肢がなくなった。彼女の選択を侮辱したくはなかった。
なれば、青年は選択する。消去法ではなく己の意思で、なにがなんだかわからないけど、とにかく、彼女を信頼するという道を。自ら進んで無理矢理にでも全面的に信じると決めた。
「……わかった。響、君を信じるよ。――気をつけて」
「Спасибо。行ってくるよ」
そうして響は、今度こそ部屋を出て行った。
◇
(氷のお姫様、か)
響は、ギシギシ軋む身体に鞭打ちながら、走る。
『あの日』から今日で丁度一週間、それからずっと続くヤツらの攻勢に、身体はもうボロボロだった。
いや、少女だけではない。みんな限界なのだ。堅牢を誇ったこの佐世保鎮守府が陥落するのも、時間の問題だ。
それでも、少女は走る。
(なかなか可愛らしいな。寝ぼけていたのだろうけど)
先ほど会話を交わした青年の言葉を、思い出す。
つかの間の休息だった。敵の攻撃の手が緩み、今のうちに休んでこい寧ろ休めと、無理矢理に医務室に放り込まれたのが約4時間前のこと。
交代休憩なのだからせめて2時間後には起きなくてはとセットした目覚まし時計は、「コイツは没収だ」と書かれたメモを残して行方不明になっていた。
そうしてうっかり4時間も寝てしまった少女は、ふと、そういえばあの遭難者はどうなったのだろうと思い立ち、出動する前に顔を見ておこうとしたのだ。
見ておこうとして、足を縺れさせ転んだ。
痛かった。こういうのは電の役割だろうと思った。
何処かから「失礼なのです!」と聞こえてきそうだとも思い、しばらく突っ伏して床の冷たさを堪能してから立ち上がろうとすると――きっと転んだ音で目覚めたのだろう、青年がここはどこだと呟いたのだった。
(新地球統合政府直属宇宙軍第一機動部隊の、キラ・ヒビキ……ね)
少女にとっては、いや、現地球人類にはまったく馴染みのない名前だった。知っているのが当然といったニュアンスで発せられた、どこぞのアニメ漫画でしか出てこないであろうキーワードの羅列。
それを言ってしまったら自分たちも似たようなものだったが、兎も角、新地球統合政府や宇宙軍なんてものはこの世界に存在しないのは確実なのだ。
いや、もしかしたら【深海棲艦】みたいな侵略者が宇宙にも実はいて。彼はそれと密かに戦う戦士なのかもしれないとも思ったが、そもそも密かに戦う意味がわからないのでその線はないだろう。
ないのだが。
響は漠然と、その言葉に嘘はないのだろうと思っていた。
あの青年は、ただの遭難者ではない。彼と一緒に発見されたモノについても、彼の特殊な体質についても、全てが謎に包まれていて、その事実が彼の言葉に真実味を持たせていた。
少なくとも現代科学ではとても解明できない謎の塊だ。まず間違いなくこの世界の常識から外れている。
(いったい、どんな人なんだろう)
なにはともあれ、響は彼を信頼できる人だと評した。
一見して、のんびりしてそうで、微笑んだ顔は一瞬女性のようにも見える優しそうな風貌。でも自分に正直で、少し強引そう。たぶんそういう人なのだろうと、直接会話してみて感じた。
素性はわからないが、嘘をつける器用さまでは持ってなさそうだった。
だからこそ思う。
彼もまた、こちらのことは何も知らないのだろうと。
今時、鎮守府にいる女性がどういうモノであるかなんて、世界中の常識なのだ。そんな女性であるところの少女に「逃げろ、自分が戦うから」と言える人間なんて、とっくに絶滅している筈なのだ。
てんでわかってない常識知らず。
しかし彼は、再び戦うために産まれたこの身を、本気で案じているようだった。そりゃ、少女は武装さえしなければ見た目はただの非力そうな女の子に過ぎないのだから、知らなければ無理もないのだが。
(私は響。特三型駆逐艦二番艦の響、艦娘だ)
再び戦うために産まれた、超常の力を持つ存在。
少女は【艦娘】と称される、現人類の最大戦力の一人だった。
だからこうして、少女は戦うために走っている。
でも。
でも、そんな自分をただの子ども扱いして「逃げろ」と叫んだその気遣いは、存外心地よいものだった。
「自分が戦うんだ」と、動けない身体なんか問題じゃないとばかりに放たれた言葉は、はじめてのものだった。
戦えと言われるより、ずっと勇気が湧いた。
この本当にどうしようもない絶望に立ち向かう覚悟が、痩せ我慢から約束になった。
(本当にアベコベだよ。同じ名をもつ君)
なればこそ、走る。
その想いには、応えなくてはならない。
「Извините。すまない、遅れた」
「な、ちょっ、響!? なんで!?」
「瑞鳳。こんな状況で一人だけおちおち寝てはいられないさ」
そうして響がたどり着いた先は、すっかり寂れてしまった軍港だった。
かつて多くの人で賑わっていた面影もなく、機械や建物の残骸が手つかずのまま放置されている、物悲しい場所。
そこには既に三人の少女が集っていて、今まさに出撃準備を終えようとしていたところであった。
なんとか間に合ったようだと、響は内心安堵する。
「そうだけどっ。でもまだ完治してないのに……ねぇ木曾、時雨が代わりに来るんじゃ?」
「いや。時雨は、だめだそうだ。艤装のダメージが思っていた以上にヤバいと連絡が来た。当分出られねぇだろうってな」
彼女らは誰も彼もがみな、まるで統一感のない奇妙な格好をしていた。たった今響が話しかけた少女は、袴をショートにした松葉色の弓道着で、その隣には黒い眼帯とマントを装備した白と浅葱色のセーラー服。
そして極めつけに、大胆なミニにカスタマイズした紅白の巫女服がいた。
名をそれぞれ、瑞鳳、木曾、榛名という。
まるで場末のコスプレ大会決勝戦のような現実離れした格好の集団だったが、奇妙なのはなにもその個性大爆発な服装だけではない。
彼女らのシルエットは、通常の人間のソレとは大きく逸脱していた。
彼女らは全員、艦艇の砲塔や艦首等を模した、見るからに重そうで大きい金属製のパーツを背負っているのだ。
個々の服装なんか全く問題にしない、まるで我輩こそが船であるとアピールするようなその奇妙で巨大な装備は、華奢そうな少女達に軽々しく背負われているくせにその実、筋肉もりもりマッチョマンの集団ですら数cm持ち上げるのがやっとという恐ろしい重量を持つ。
勿論、これは伊達や酔狂で作られた筋トレ兼コスプレ用セットなどではなく、備え付けられた大ぶりな砲塔や魚雷はちゃんとモノを破壊できる、歴とした【本物】である。
これこそが【艤装】。
人間よりもずっと優れた、化物じみた能力を持つ【艦娘】専用の、海よりいずる人類の敵たる【深海棲艦】を討つことができる武器だった。
「そんな……じゃあ動ける駆逐艦は響だけってこと……?」
「……相手には例の新型もいる。なら駆逐艦の速力は不可欠だ。悔しいが、オレ達だけではな……確かに、手負いだろうとお前の力は必要だ」
一見して奇妙にも思える彼女達は、まぎれもなく艦娘と称される存在であった。
いつの間にかその背に大きな艤装を装着していた響は、未だ痛む節々をおくびにも出さずに無表情を貫き、言う。
「私も戦う。許可を」
その言葉は、ミニ巫女服を纏い黒の長髪を潮風にたなびかせる、長身流麗な女性――これまで沈黙を保ち、水平線の彼方を見つめていた榛名に向かって放たれた。瑞鳳と木曾もつられて、彼女を注目する。
響を含めてもたった四人だけになってしまった【第二艦隊】のリーダー、金剛型戦艦三番艦の榛名。
わけあって鎮守府の最高責任者が不在なこの現状、主力の【第一艦隊】すら未帰還な今では、彼女が一番の責任者だった。一つの判断が、戦局全てを左右する、そんな立場だ。
活発でお転婆な大和撫子と評されることもある彼女は、その面影もなく沈鬱な顔を伏し、考えを纏める。
現場指揮官としての、思考を流す。
これからの戦闘に駆逐艦はいてほしい。しかし響は相当の実力者とはいえ万全ではない。瑞鳳の言うとおり無理はさせられない。だが木曾の言うとおり代わりになる人材はもはやいない。当然敵は待ってはくれない。
正直、答えは一つしかない。
一つだから、決めるのが怖かった。
榛名は、非常時であるとはいえソレを決断するのが己であるという事実と、その恐怖と戦わねばならなかった。
しかして、彼女もまた歴戦の戦士であった。
「……そう、ですね。それしかないですね」
やがて榛名は深く深呼吸をして、凜と。響の瞳をまっすぐ見つめ返し最後の確認をとる。
静かに、けれどその一語一語に大きな力を込めてその覚悟の程を、この中で最も小さな少女に問う。
「響さん……本当に、大丈夫なのね?」
それに対して響は間を置かず、簡潔に「もちろん」と応えたのだった。
「不死鳥の名は伊達じゃないさ」
必ず生きて帰る。約束を守る。
そう心に決めて迷いなく。
そして、できればもう一度話をしてみたい。その時は「氷のお姫様」発言をネタにしてからかってやろうと、響は思っていた。
◇
キラが再び目を覚ました頃には、すっかり夜の帳が下りていた。
少女の言うとおりに一回寝たら、何故か本当にすこぶる快調になっていて、そんな彼は辿り着いた無人の軍港にポツネンと座り込んでいた。律儀にも体育座りで、満点の星空を見上げる。
「……はぁ」
ため息。
吐き出された二酸化炭素は白く煙って、消えた。
日本は冬だった。
身を引き裂くような寒気の中で独り、防寒性能など欠片もない検査衣のまま、じっと座る。
彼は、何かに驚くのも疑問に思うのも、嫌になって疲れ果てていた。これが夢なら楽でいいのにと恨み言をいう気力もなく、胡乱な瞳で星見をする。
そもそも「これが夢なら」なんてのは絶対にあり得ないのだとキラはその経験から熟知しているのだ。なにがあっても現実は現実でしかない。
もういい加減、認めねばならないのだろうと、キラは瞳を閉じる。これ以上何かに驚くのも疑問に思うのも、時間と体力の無駄なのだ。認めて、これからを考えなくてはならない。
「もしかしたら、過去の地球、なのかな。ここは」
結論を言葉にしてみる。
そう。
夜になって歩けるようになり、星降る空を目にしてみたら。
その空は己の知るものではないのだと思い知らされた。
そこには、綺麗な月と星しかなかったのだ。
軌道間全方位戦略砲『レクイエム』によって深く傷つけられた筈の月表面に、その疵痕はなかった。
L5宙域にある筈の砂時計型コロニー群『プラント』が影もなく消えていた。
ユグドラシル・プランのもとに建造された、オービタルリング型自律型惑星防衛機構『ノルン』すらどこにもなかった。
南の空に輝くオリオン座には、超新星爆発を経て消滅した筈のベテルギウスが元気に光っていた。
全てがキラの常識を否定するもので、キラが異端であると宣告するファクターだ。
誰かに説明されるよりずっと鮮明に、この世界を表現する光景だ。
ここはきっと過去の地球。タイムスリップしたと考えれば、辻褄は合うような気がした。
「なんだかな」
無性に誰かと話をしたい気分になる。
現実逃避がしたいわけじゃない。この突拍子のないことを、言葉という形で誰かと共有したかった。いや、誰かなんて遠回りな言い方はやめよう。
キラはやはり、あの響という少女に会いたかった。
ここで初めて会ったのが彼女だから、なんてのは理由になるだろうか。あんな10才前後の幼い少女を心の拠所にしている恥ずかしさは、この際現実と一緒に受け入れてやろうと開き直るには少々大きすぎるが。
あの打てば響くように応えてくれていた声が、とにかく恋しい。
一人でいるには『ここ』は少し寒すぎる。
「大丈夫かな」
そんな彼女がいなくなってから、どれくらいの時間が経ったろうか。
この近海に、シンカイセイカンなる敵が来て、彼女はそれと戦いにいった。どうやって戦うのかは知らない。オペレーターなのかもしれないし、技師なのかもしれない。パイロットはあり得ないだろう。
なんにせよ命をかけた戦いをしている、そう雰囲気で察せた。彼女はまだ戦っているのだろうか。
それが心配なこともあって、キラはこの港を訪れ、今の今まで座り続けているのだ。
遠くから潮風にのって、僅かだが砲撃音と爆発音が聞こえる。音からして火薬式実体弾とミサイルか、彼の戦場の主役は。ビーム兵器の独特な音は聞こえない。
港に来てから二時間。
キラが再び眠った頃からだとしたら、延べ六時間程か。
砲撃音は途切れない。戦争は終わらない。
いつまで続くのか――
「……? ……誰だ?」
ふと、視線を感じた。
感傷に耽っていた思考が、瞬く間に現実に呼び戻される。
ハっとして辺りを見渡すと――いつのまにか、キラの前方50mほどあたりに人影があった。
人がいた。
一目見て、響ではないことは解った。その体格は大人のものだ。
ぽつんと、此方をむいてダラリと立っている。
見落としていたのか、突然現れたのか、さっきまで誰もいなかったのにとキラは呆気にとられる。なんだろう、過去の人はテレポーテーションが使えるのだろうか。
(? なん、だ。あの人)
突拍子のないこと続きで、遂に思考回路までナチュラルに吹っ飛んだかと自虐し、いやそもそも人はどこにいたって不思議でもなんでもないと思いながら立ち上がりろうとして――その人と目が合った。
そして、そして。決定的に、その人は何かが間違っていると感じた。
音が消える。
世界が切り取られたように思えた。知らず、ドッと嫌な汗が噴き出す。
目を凝らす。
雲一つない満点の星空、月明かりに照らされて、細部までよく見える。
その人は女性のようだった。
その人の肌は嫌に白かった。
その人はずぶ濡れでボロボロだった。
左腕が、肘から先が千切れてなくなっている。青とも黒ともつかない液体が、全身の切り傷から溢れている。右目が虚空であった。
右腕になにか、巨大な黒い金属のパーツをつけている。
その人は、遠く、ただ突っ立っている――
「……え――」
――否。ソイツは、既に目の前までに迫っていた。
「――ガ、バッ!!??」
衝撃。
瞬間。キラの身体はいとも簡単に、紙切れの如く吹き飛ばされ、遙か後方30mにあった建物に突っ込んでいた。
「…………ぁ!!!!!!」
赤レンガの建物に背中から叩きつけられ、呼吸困難に陥る。
肺から全ての空気が押し出されたのだ。
遅れて、激痛。
もうそれは激痛としか表現できなかった。
ごぽりと粘着質な音がして、血塊が口から溢れる。後頭部が鈍い痛みを訴える。殴られた瞬間にメキャリと嫌な音を立てた腹部がどうなったかは、考えたくなかった。つまり、それらをひっくるめて。
殴り飛ばされたということだけが、今キラに把握できる全てだった。
「ぅ、ぐぁ……げほっ、げふ!?」
全身が燃えるように熱い。
死ぬ。これは死ぬ。
どんな人間だろうと死ぬ、間違いなくそんな一撃だった。
(……生き、てる……? まだ僕は)
それでもキラは、思考を硬直させずにただただ回転させた。
キラ・ヒビキは二度の戦争を戦い抜いた英雄、世界を救ったフリーダムのパイロット。かなり偏向・誇張されたものであるものの、それはなにも空虚な作り物ではない。
鍛え抜かれた戦士としての思考が、彼に空白を赦さなかった。
(コイツは敵だ)
誰が敵で味方か、とか。どんな思想の陣営か、とか。そういうのではなく。
コイツは人類の天敵だ。
この化物はそういう存在であるということが、感覚的に本能的に、理解できて受け入れることができた。何故だろう。
それはきっと、殴りつけた姿勢のまま停止しているアイツから、邪気のない敵意までもぶつけられたからだ。
このままでは悪意なく殺される。当然のように踏みつぶされる。そう確信をもって言える。
そんなのは。
(認められるか……!)
抵抗しなければならない。今を生きるモノとして。
キラはその『敵』を睨み付ける。
まだ、何故か、運が良かったのか、一発喰らったら普通死ぬような一撃を受けて生きている。
ノーバウンドで壁にたたきつけられても尚、生きている。
死ぬほど痛いけど、まったく身動きができないけど。
もう一回殴られたら今度こそ死ぬかもしれないけど。
だから抵抗するのだと、キラは睨んだ。
「こんなので、死ねるか……!!」
息も荒く叫ぶ。
それに反応したのか、ソイツはぐるりと体勢を立て直した。
そして、
ソイツは、その敵は、【深海棲艦】と称されるその存在は。
手負いの獲物に対して、容赦なく再び飛びかかった。
命が終わるまで、あと一秒。
以上です。
とりあえずこんなノリと分量で続いていくと思います。
もうちょっと減らした方が良いのでしょうか?
乙ですー。クロスオーバー作品の最初の見せ場、世界観のすり合わせいいですねー。
文章は十分読みやすいし適量だと思いますよ。
盛り上げていきましょう。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第三話 青い閃光
「そんじゃ6時間後に出発だ、準備が出来たらよく休んでおけよ。」
サメジマにそう言われ、自室に引っ込む彼を見送って、ジャックは思う。
休めと言われても気分が高揚して寝られそうに無い、それでなんとか寝付いて
寝過ごしたら大事だ。
とはいえ準備は全て済んでいる、それは小隊はもとより母艦のサラミスの搭乗員全員がそうだった。
地球軌道周辺のパトロール任務、定期的な任務のため支度はルーチンワーク的に行われる。
今更特別なことがあるわけでもない。
つまりヒマだ。
母艦に搭載されている愛機ボールを見上げる、サラミスの主砲部を取っ払ってボールの架台を装着した艦、
まさか兄貴のあの案が採用されるとは、何事も常識にとらわれずに言ってみるもんだ。
しかし異形ともいえる主砲無しの巡洋艦に比べて、何かが物足りない、
そう、ボールがあまりにも普通すぎるのだ。もちろん開発当初に比べれば十分なバージョンアップは果たしているし
兄貴の注文に応じてガン・カメラやアクティブスラスター、内部のCPUには敵戦艦やモビルスーツのデータと
それに対応した照準システムを備えた、この「オハイオ小隊」スペシャルのボール。
しかしそれにしては外見があまりにも寂しい、このボールなら何か特別を感じさせる外観があってもいいはずだ。
・・・待てよ、兄貴の「サメジマ」って名前、確か日本語で「shark islaid」っていう意味だったな。
海洋生物の中で最も危険な魚、古来の戦闘機にはエンブレムやペイントにも使われた生物・・・
彼の中であるアイデアがひらめいた、メカニックの彼が最も得意としていた仕事のひとつ。
「あと6時間・・・間に合うか?」
疑問を口にしながらも行動に出るジャック、生き死にを賭ける戦場への初出撃前、
思い立ったことはなんでもやっておいて損は無い、後悔という損は。
艦周辺のドックにサイレンが鳴る、発進30分前、各人員が慌ただしく行動を開始する。
サメジマやエディも自室から起き出して、ノーマルスーツとヘルメットを小脇に抱え、愛機に乗り込・・・
「なんじゃこりゃあぁぁぁっ!」
思わず絶叫するサメジマ、事情を知っている周囲の人員がくすくす笑う。さすが兄貴、いいリアクションだ。
彼らが乗る3機のボールには、その正面にデカデカとサメの顔がペイントしてあった。
一見凶悪そうな、しかしよく見ると愛嬌もあるその面構えにサメジマは大笑いし、エディは頭を抱える。
「お前の仕業・・・以外にありえんか、ジャック。」
未だ作業着で、全身にスプレーの吹き返しでカラフルに染まったジャックを見て言う。
「気に入らなければ剥がせますよ、ものの3分で。」
正確にはペイントシール、極薄のフイルムをボールに貼り付け、その上にペイントする。
ボールの形状に合わせた修正プログラムを組み、元絵をインストールしてペイント構成を決める
かつてサイド2でメカニックの師匠に教えて貰ったペイント方法、普通は自家用車に使うモノだが
兵器に使うのは多分初めてだろう。
「ダメだダメだ、はがすなよ絶対!これ俺たちの専用ペイントに採用決定だ!」
絶賛するサメジマ、最初の「ダメだ」が不採用で無いことにため息をつくエディ、周囲に拍手と口笛が鳴り響く。
「サラミス級シルバー・シンプソン、発艦!」
艦長の号令一下、1隻のパトロール艦がルナツーを起つ、所属のオハイオ小隊と共に。
ジャックにとっては最初の、サメジマにとっては最後の出撃に・・・。
会敵は意外に早く訪れた。地球軌道を周回しはじめてまもなく、ジオン軍の補給艦を捕らえるサラミス。
おそらく連邦軍の裏をかくためにあえてルナツーに近い宙域を航路に選んだのだろう、だが
狙いは良かったが運は無かった。本来ならミノフスキー粒子によって隠密行動がかなったのかもしれないが
丁度その航路上でパトロール艦と鉢合わせては意味が無い。
「敵艦捕捉!オハイオ小隊はすみやかに配置に付け!」
艦内にサイレンとアナウンスが鳴り響く、その中をノーマルスーツを装着しヘルメットを抱えた3名が
愛機に向かう、サメジマ以下2名。
ボールのハッチは宇宙船外にある。本来は主砲のメンテナンスのためのハッチから外に出る3人
ボールにつながるワイヤーを取り、自分の体を愛機に引き寄せる。ただ今日はいつもと違い
その愛機には勇ましい、そしてちょっと愛嬌のあるペイントがある。思わずニヤけるサメジマ。
古来よりこういうペイントは決して遊び心だけではない、搭乗者の士気を上げ、敵の戦意を削ぐ
その効果に一番便乗しているのがほかならぬサメジマ隊長だった。
「敵補給艦、定期急行便、エスコート無し・・・カモだ!」
ボールに乗り込み、敵輸送船をレーダーに捕らえながらそううそぶくサメジマ。
シャークマスクに当てられたか、ワルっぽい口調で状況を復唱する。そんないつもと違う隊長の口ぶりに
ジャックはノリがいいなぁ、と苦笑い。
しかしサメジマには別の真意があリ、エディもそれを理解していた。おそらくこの戦闘はほぼ
一方的な虐殺になる。そんな殺戮に初陣のジャックが付いてこられるか一抹の不安があった。
目前の補給艦は地球に進行したジオン軍が、占領下から略奪した物資や鉱物等をジオン本国に持ち帰るための部隊、
当然逃がすわけにはいかない、連邦にとって彼らは地球という家に押し入った強盗であり、持ち去られた物資は
やがて自分たちを攻撃する兵器や兵士の腹の足しになるのだ。
少し前なら威嚇攻撃で投降させ、拿捕するという戦法もとれただろう、輸送船の武装などたかが知れている
しかし今はモビルスーツがある、もしあの輸送船にザクが多数搭載されていたなら、たちまち立場は逆転する、
非情なようだが、初弾で致命傷を与え、モビルスーツを使う前に撃沈せしめる、それが自分たちを殺さない最良の作戦。
しかしボール1機に人員は1人、敵補給艦には100人前後もの人員が詰めている、だからこの戦闘は少数による大量虐殺になる
もし自分がそんな躊躇を見せれば、部下の士気にも影響する。特に初陣のジャックには。
「オハイオ小隊、出撃する!ブリッジ、舫いを解け!!」
その声を合図にサラミスから打ち出される3機のサメ顔ボール、顎は放たれた。
敵モビルスーツが発艦する前に初弾を打ち込めるかが勝負だ、迷わず一直線に輸送船に突入する。
それを知った輸送船は散開行動を取る、すなわちモビルスーツを搭載していないか、もしくは発進準備が出来ていない証拠、
サメジマは、そしてエディはこの戦闘の勝利を確信した、あとはあの坊やに引き金を引けるかだ。
彼を誘導するべく、サメジマはさらに芝居がかった口調で続ける。
「ふっ!散ったか、手遅れだ、ルナツーに近づきすぎた罪は重い!!」
照準器が輸送船を捕らえる、初段命中疑いなし!
その瞬間、サメジマのモニターに光の線が走った、エディやジャックのモニターにも同様に。
高速で、とてつもない高速で何かが機動している。ミサイル?いや違う。それは意思を持って
縦横無尽に動き回っていた、サメジマの背中に冷や汗が走る、ザクか?
すでに発艦してこちらを引き込んで迎撃するつもりか!・・・それも違う、それにしては輸送船を危険にさらしすぎる。
そこで思考を中断し、ザク用に開発した照準システムを起動する、詮索は後だ、とにかくザクを倒すことが最優先だ。
ザクの速力、姿勢により移動しようとする方向を追尾するようにプログラムされた照準が敵モビルスーツを捕らえる
が、ロックオンしたその瞬間、敵はすさまじい加速でその照準をぶっちぎる。こいつは・・・ザクじゃない!
「な、なんだ!?」
「まさか・・・ジオンの新型モビルスーツか!」
その青い閃光はすさまじい速力で機動し、ボールを翻弄する。相手も3機、しかし速力は完全にウサギとカメだった
勝ち目は無い、サメジマとエディはすぐさま悟った、この戦の敗北と、次に成すべきコトを。
「隊長!母艦を狙われる恐れが!」
「分かっている、撤退するぞ!!」
エディの声にサメジマが応える、そして合流、幸い初陣のジャックもこの状況に恐れずに集結できた。
3機は一目散にサラミスに向かう。敗走では無い、戦略的撤退。敵と味方の戦力差を見れば当然のことだし
母艦のサラミスを落とされるわけにはいかない、オハイオ小隊は3人だが、サラミスには120人から乗っているのだ。
加えてあれが敵の新型モビルスーツなら、この映像は貴重な資料となる。解析し、新たな対抗兵器やシステムを確立する
その為にも彼らはなんとしても生きて帰還する必要があったのだ。
「ようお疲れ。どうだった?戦場は。」
サラミス艦内の休憩室、サメジマの声に応える余裕も無く、青い顔で震えているジャック。
無理も無い、戦場は楽勝から絶対絶命へと急転直下した舞台、新型モビルスーツに殺される恐怖心に襲われ
仲間の足を引っ張らないようにするのが精一杯だっただろう。
「さぁて、帰ったら忙しくなるぞ。あの機体の分析して対応策を練らなきゃな。」
そう声をかけ、彼にドリンクを手渡す。自室に引っ込むサメジマはしかし、ひとつの疑問を振り払えないでいた。
−なぜだ、なぜあの速力の差で、俺たちは逃げおおせたー
第三話でした、ようやくイグルー本編と合流です。
まぁ隊長の名前でバレバレだったとは思いますがW
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第四話 英雄退場
その後は特に会敵も無く、順調に2日間のパトロール任務を終ようとしていた。、
しかし悲劇はここから始まる・・・
ルナツーのドックに入港し、下船のための準備を整えるオハイオ小隊の3名、
しかしすぐに3人が違和感に気づく、どこかルナツーの空気が違う。物質的な話ではもちろんない、
船の中からでも、ドック内で働く作業員の視線や表情が明らかに固い、一体何があったのか?
「・・・あ、ワッケイン指令、珍しいな。」
ジャックが言う、この基地の指令であるワッケインがドック内にいるのは珍しい。
しかも下船の通路デッキの先にいる、まるで誰かが下船してくるのを待ち構えているように・・・
サメジマは違和感を感じながらも、先頭を切って船を下り、デッキをまっすぐ歩いて行く
顔を見合わせながらエディとジャックがそれに続く。
「指令自らのお迎えとは光栄ですな、シルバー・シンプソン所属オハイオ小隊、只今帰還しました。
やや固い笑顔を見せ敬礼をする、しかしワッケインは手を後ろに回したまま返礼をしなかった、
顔を伏せ、目線すら合わせようとしない。
「ヒデキ・サメジマ中尉、ならびに小隊所属の二名、このまま司令室に出頭のこと。」
そう言って背中を向けて歩き出す、要するに付いてこいという意味だろう。しかし一体何事か・・・
司令室で見た物、それは彼ら3人にとって血の気が引く映像であった。
−おめでとう連邦軍の諸君!我々はついに諸君もモビルスーツの開発に成功したという情報を入手した−
−しかし、喜びに沸く諸君らに、我々は悲しむべき事実を伝えねばならない!−
−兵器局発表!我々は主力モビルスーツ「ザク」を遙かに上回る新型機の開発に成功した!−
−EMS-10「ヅダ」である−
それはジオンのプロパガンダであった、そしてそこにある機体を3人は知っている。
今回の出撃で遭遇した、恐るべき機動力を誇る青い新型機!
−現在このヅダは、ジャン・リュック・デュバル少佐指揮のもと、最終試験を実施中である!−
−さぁ、この新型機の量産も間近だ!−
そこまで見て、一度映像を止めるワッケイン。
「・・・どう思う?」
「我々はこれと遭遇しました。敵のプロパガンダを認めたくはありませんが、これは事実です。」
サメジマが答える、今後はザクではなく、このヅダを相手にせねばならぬことを伝える。
「そうか。」
それ以上何も言わない、そしてワッケインは録画の続きを再生させる。
その後の映像を見たとき、彼らはこのルナツーに漂う空気の正体を知った。
−これは、先日の遭遇線の際、わが軍の「ヅダ」が行った戦闘映像である−
それ以上の解説は無かった、また必要なかったとも言える。それはヅダとジオンの使用する観測ポッドの映像。
3機のヅダと、オハイオ小隊の戦闘、それは捕捉修正の無い、客観的な映像だった。それがさらに事態を悪化させる。
縦横無尽に飛び回るヅダに手も足も出ないボール、しかもそのボールはまるで3流アニメの悪役のような
サメの顔が描かれている、無力な輸送船を襲おうとした凶悪なサメと、それを蹴散らす青い騎士。
そして手も足も出ずに、すごすごと逃げ出す3匹のサメ、
誰がどう見てもこの映像における英雄はヅダであり、チープな悪役はオハイオ小隊であった。
ボールが逃走したあと、ヅダは虚空に向けてシュツルムファウストを発射する、それは信号弾。
つまりこの時ヅダは、実弾を持っていなかったのだ、それがオハイオが逃げたとき追撃がなかった理由。
「この映像が配信されたのは昨日のことだ、そして今日の朝一番に連邦政府から通達が来た、
この映像の事実確認をし、しかるべき処置をせよと。」
その言葉の意味をサメジマは、そしてエディは噛み締めていた。
−軍法会議−
今年初頭に始まったこの戦争、それは連邦にとって「悪のジオンを打ち倒す為の正義の聖戦」に他ならなかった。
コロニー落としによる大量殺戮、進行作戦による占領、略奪、治安の悪化、物資の欠如、インフラの低下
全てはジオンによって仕掛けられ、もたらされた悲劇であると。
「正義を持って悪のジオンを打倒せよ!」これは連邦全体のスローガンとして軍民問わず叫ばれていた。
だが、このプロパガンダはそんな風刺を一蹴しかねない、連邦はまだしもジオン国民がこれを見て
自らの戦意を高揚させるのは誰にでも想像が付く。
「敵前逃亡、利敵行為、それが罪状だ。ヒデキ・サメジマ中尉。」
あえてサメジマにだけそう伝える。それは処刑する人員を最小限に抑えようとするワッケインの配慮だった。
「承知、いたしました。」
敬礼を返すサメジマ。エディは唇を噛み、ジャックは思わず身を乗り出し、叫ぼうとする。
「そんな!あれは逃亡なん・・・」
「黙れ!」
サメジマがそれを一喝する、せっかくのワッケインの配慮を無駄にはさせられない。
それにこの映像は決定的だ、少なくとも安全なジャブローあたりであぐらをかいている政治屋どもにとって
自らの主張宣伝の妨げになると、綱紀粛正をヒステリックにわめきちらすのは容易に想像できる、
サメジマは、自分の命運が尽きたことを悟った。
−こうしてルナツーの英雄は、1本のプロバガンダによって命を落とした−
『そん時は敵を褒めるんだよ、あのサメジマを倒すとはたいした敵だ、ってな。』
軍人である以上、死は受け入れるべきもの、殺し合いが軍人の仕事なのだから。
しかし彼は強敵に殺されたわけではない、画期的な新兵器の餌食になったわけでもない、
政治家の都合と、敵の政治宣伝によって味方に殺されたのだ。
それでも、その死に顔に無念さは伺えなかった。
「ねぇ兄貴、俺は一体・・・誰を、褒めればいいんですか・・・」
第四話でした。
イグルーの小説で603のプロホノウ艦長が「誰も傷付けず、誰も傷つかず勝つ」
と言っていたのが印象的だったので思いついたエピソードです。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第五話 新たな顎
サメジマを葬った後、エディとジャックは同じ部屋に軟禁された。
エディはサメジマを悼み、ジャックは呆然と運命の非常さを噛み締めている、
何故、こんなにも俺にばかり理不尽が起こる。いや、俺の周りの人間が、か。
自分はひょっとして死神の類じゃないのか、そんな妄想までよぎる。
ふと、軟禁部屋に設置されている連絡用のモニターが写る、何事かと振り返るエディ
呆然とモニターの明かりで顔を照らすジャック。
−ジオンの皆さん、いつも素敵な放送をありがとう、さて、今回のお話は・・・−
連邦軍のプロパガンダだった。その内容はチープで馬鹿馬鹿しく、彼ら二人にとっては
子供だましにも見えない低レベルな「言い訳」だった。
−かつてこのヅダはザクTとの正式化競争に敗北してるというのです−
−しかし改良とは名ばかり、実は中身は全然変わってないというのです、ヤレヤレ、こんな機体が新型とは−
ジオンが流したヅダの優位性を見せる放送、それを否定するためにわざわざ作ったのか、このチープな放送。
呆れるばかりだ、ヅダがザクTより劣る?そんなことはありえない、実際に戦ってその強さを見てきた二人にとって
その放送があまりに間違ってることは疑いなかった。いくら自分たちの正義や優位をイメージさせるとはいえ
この子供の言い訳のような説得力の無い、しかも先日のジオン放送に即反応してこのお粗末さ、
そうまでして前の自分たちの戦いを無かったことにしたいのか!
−まぁオデッサの戦いが連邦の勝利に決した今−
その一言が二人を覚醒させた。オデッサといえばジオンの地球最大の拠点、そこに詰めている人員は
数万じゃきかない、そこがもし本当に落ちたのなら・・・
ドア前に詰め寄るエディとジャック。
「おい、見張り!本当か、オデッサを陥落させたってのは。」
ドアの向こうにいる見張りに声をかける。
「ああ、この基地静かだろ。さっきみんな出撃したよ。脱出した敵も相当数いるようだしな、七面鳥狩りさ。」
宇宙へ緊急脱出するならHLVと呼ばれるカプセルで打ち上げられるのが基本だ、詰めれば百人以上が乗れるそれは
悲しいかな地球軌道への脱出しか出来ない。
無抵抗の彼らの元に、ジオン印のタクシーが迎えに来るか、連邦印の狼の群れが来るか、全ては時間との闘いだ。
ジャックは思う。ジオンの将兵は確かに憎い、しかし抵抗も出来ないカプセルに乗った彼らを撃つことは
戦闘ではなく虐殺ではないのか?兄貴と同様、自分の死に誇りさえ持てない、恐怖と阿鼻叫喚に包まれた死。
むろん彼も分かっている、もし数万の将兵を見逃せば、彼らは再びジオン兵として自分たちを殺しに来る、
ただでさえ兵力数で優位な連邦がここで数万のジオン兵を叩けば、今後の戦争は一気に連邦側に有利になるだろう。
それでも・・・コロニー落とし、プロパガンダによる兄貴の死、そしてこの七面鳥撃ち、ジャックは改めて
戦争の非常さに身震いした。
思えば兄貴があれだけ精力的に動いてたのは、そんな戦争の非常さをよく分かっていたからじゃなかったのか・・・
3日後、軟禁を解かれ司令室に連行される二人。そこで受けた命令はやや意外なものだった。
「エディ・スコット、並びにジャック・フィリップス、両名は本日付をもって任務に復帰、
モビルスーツ、ジムのパイロットとして訓練を受けた後、しかるべき所属に当てる。」
ワッケインから言い渡されたのは罰則ではなく厚遇だった。なぜ、と聞く前に指令が続ける。
「あの青い奴、ヅダとか言ったな。オデッサに急行した4個小隊が、わずか3機のヅダに全滅させられた。
その中にはジム2個小隊も含まれている。」
ああ、そういうことか、と思う二人。あんなプロバガンダを打った連邦の愚かさは、当然の報いを受けたわけだ。
あれを見てヅダを舐めてかかった者もいるだろう、そうでなくてもザク相手のマニュアルでの戦闘じゃ
とても歯が立つ相手じゃない、火消しに慌てた宣伝は逆に火の粉をあおっただけだった。
「オデッサの脱出兵は9割ジオンに持って行かれた、千載一遇のチャンスを逃したわけだ。
当然、こちらとしてもモビルスーツを操る精鋭は一人でも多く欲しい、そういうことだ。」
ワッケインは最後にこう言い添える、それは二人にとって救いだった。
「サメジマがいたら・・・良かったんだがな。俺が言うことじゃないがな。」
それは故人に対する悼みでもあり、彼らに対する期待の表れでもあった、サメジマの意思を継ぐ者として。
翌日から彼らのジムパイロットとしての訓練が始まった。基本動作の習得、武器の使い方、加減速、方向転換など
しかしそれは思っていたより遙かに簡単な操縦だった、下手をするとボールより扱いやすいのではないか・・・
その理由は3日目からの実践練習で明らかになった。2対2のジム同士での実践形式、成績は10戦全敗だった。
とにかく思うように動いてくれない、操作が簡単な反面、出来ることが異様に少ないのだ。
モビルスーツを巨人のイメージで操作していたらジムはまともに言うことを聞かない、内部にプログラムされた
動作をルーチンワークのように組み合わせることによって初めてまともに戦闘できる。
整備員やパイロットを問い詰めて、二人はその原因を突き止めた。
このジム内に入っている動きのルーチンは、「RX-78ガンダム」というジムの上位互換機が実践の中で
学習してきたプログラムだったのだ。
ザクの脅威に合わせて開発されたモビルスーツは、何より「操作の簡単さ」がまず求められた。
事実、鹵獲したザクは調べてみると、その操縦の難しさに誰もが驚いた。
逆にそこに連邦軍の開発部は活路を見いだした、性能は互角でも、より操縦しやすい機体を作れば
短期間で実践に耐えうるモビルスーツとなる、その為にまずザクに圧勝できる強力なモビルスーツ
すなわち「ガンダム」を作り、その実践データを流用、量産期に使えるデータのみを抜き出し搭載する
これが連邦軍のモビルスーツ量産作戦「V作戦」の骨子だったのだ。
しかし現実にはそううまくいくものではない。ガンダムとジムでは出力が数倍違う、同じように重力下を走っても
ガンダムではスムーズに走ってもジムではぎこちない走りになる。
全身強靱なルナチタニウム合金のガンダムと、盾だけルナチタニウム合金のジムでは防御の姿勢も違ってくる
ガンダムなら盾で半身を隠していればいい状況でも、ジムなら全身を縮めてすっぽり盾に隠さねばならない。
「どうやら、俺たちのやることは決まったようだな。」
「ええ、何しろ俺たちはオハイオ小隊、あの兄貴の部下なのですから。」
エディの提案にジャックが答える、やるべきコト、兄貴が生きていたならこうしたであろうコト。
翌日から、ルナツーのメカニックは二人の無理難題に悩まされる日々が始まった・・・
乙です
ヅダはいい機体ですから仕方ない面もあるでしょう
ジオニックの陰謀さえなければ…
投下します
――艦これSEED 響応の星海――
左肩脱臼。
死を覚悟した追撃が、たったそれだけで済んだのは一重に、運が良かったからに他ならない。
不気味なまでに肌が白いその女――文字通り「血の気がない」その化物――は、それこそ人間のものとは思えないスピードで獲物にとどめをささんと飛び掛かり、対するキラは咄嗟に左手で掴んだ石を盾にした。
化物が隻腕で、バランスを崩していたのも幸いだったのだろう。化物のパンチをまともに受け止めた、子どもの頭部ほどの大きさだった石は粉々に砕かれ、衝撃で左肩が脱臼した上に背にしていた赤レンガの壁が崩壊、
キラは化物もろとも建物内にゴロゴロ転がり込んでいった。
だが、なんとか直撃だけは免れることができた。
「ぐ……、くっそ……!」
死ぬかと思ったが、まだ生きている。
ならまだやれることがある。
立ち上がれ。
「げ、ぅッ!?」
だが、幸運はそれで使い果たしてしまったようだ。むしろ負債を抱えてしまったとも言える。
甘かった。
いち早く戦闘態勢に復帰した化物が、今度はキラの腹部を思いっきり蹴っ飛ばした。
キラはサッカーボールのように、大型トラックに跳ね飛ばされたマネキンのように一直線にぶっ飛び、厚い壁を突き破って建物外に追い出される。まるでアニメ漫画のような、冗談みたいな一幕。
何度も何度もコンクリート製の大地に身体を打ち付けながら跳ね飛び、回転し、とある【何か】にぶつかってようやく止まった頃には、キラは全身血塗れになっていた。
鮮血の赤が、月明かりに照らされた無機質なコンクリートを点々と彩る。
「……が……ぁ、っうぁ……」
虫の息。
理不尽な暴力に晒され、これといった抵抗もできないまま大の字でくたばった青年は、まさに死に体だ。かつて最強のパイロットと謳われた人間は一瞬で、完全に敗北した。
なにもできない。なにも考えられない。もうなにも動かせない。逃げるという生命の根本的な気力さえ、潰されていた。生命体としてのスペックが桁違い――いや、別次元だった。
ミジンコは人間に勝てない。勝負を挑もうとも考えられない。そういう次元。
腹部から大量の血が流れ出し、あっという間に血だまりが出来上がる。
あとは息の根を止められるのを待つだけだ。
攻撃に反応し、今の今まで意識を保ち続けていたことこそが奇跡だったのだ。
(……いや、これは、おかしい)
そう、まだキラは意識を保っている。
保ててしまっている。
(もうとっくに、死んでなきゃおかしい)
奴の襲撃から既に十秒が経っていた。
そもそも普通の人間なら初撃で、少なくとも蹴り飛ばされた時点で意識を失い、順当に死んでなきゃおかしい。戦士としての勘がそう告げている。状況がひどく矛盾している。
人工子宮生まれの最高のコーディネイターだからとか、ここ最近はまじめに鍛えているとか関係ない。人間、何十メートルもぶっ飛ばされるような打撃を喰らって生きていられるほど頑丈には出来ていないのだ。
眼差しの先に広がる、美しい星の海を見上げて、空恐ろしいまでの冷静さで自問する。
であれば、今生きている「自分」はなんだ?
もう絶対に動けないと思っていたのに、なのに膝を震えさせながらも立ち上がることができている「自分」はなんだ?
人間ではないのかもしれないなと、自答した。
(まだ死なない。まだ死ねない……!)
だからどうしたと、再び自問。
今を生きている、それ以上になにかが必要あるのか。
なにかにつけて誰もが納得する正当な理由がなければならない必要があるのか。
生きているのなら、生きなければならない。
生きのびると言うこと。どこかチクリと痛むその単語は、たとえミジンコであろうと追求し続けなければならないものだから。
だから人は、戦う力を捨てられないのだ。
「……【おまえ】がなんでこんな所にいるのか、僕は知らない。でも、ここにあるのなら」
戦う為の力。
キラにとっての【ソレ】は、今や彼の背にあった。
空を見上げて偶然発見した【ソレ】は、この現実を打開できる唯一のもの。知り尽くしていて、絶対的な信頼を寄せるもの。
こいつがあれば戦えると、一目見た瞬間に確信した。あの化物に、あの人類の天敵に抵抗できると。
咳き込みながら、自力で立つこともままならない身体を支えるために背中を預けていた【ソレ】は、港に鎮座していた巨大な鉄灰色の巨人だった。あまりにも見慣れた、ここに在ることがどこまでも不自然なその機体。
過去かもしれないこの世界に在ってはならないもの。
構うもんかと呟く。
そして。
遠く、化物がのそのそと建物から這い出てくる様を、霞む瞳で見つめながらキラは物言わぬ機体に語りかけた。
血反吐を吐きながら、願う。
かつて戦うことを恐れ否定し、それを乗り越え世界の為に戦い続けていく覚悟を誓った青年は、生きたいと願う。
「僕に力を貸してくれ」
それに応えるように。
一対の角のようなアンテナと人間のようなデュアルアイ、意図的にヒロイックな形状にデザインされた装甲を纏い大ぶりなライフルとシールドを懸架した18mの機械人形――【GAT-X105 ストライク】が、微かな光を放っ
たように思えた。
偶然にしては出来すぎている。
わからないことは後回しに。
できること、やれることをするだけだ。
その為には。
「僕は、生きる」
どこまでも膨れ上がる『生』への強い渇望。
それだけを支えにキラは、「右手に握った大型ライフル」を化物に向け、トリガーを引いた。
《第2話:ヒトデナシ達の三重奏》
「まずは、礼を言わせて頂きたい。昨日は、深海棲艦を撃退してくれて、ありがとう。おかげで命拾いしたよ我々は」
「いやそんな……僕はただ死にたくなくて、無我夢中で……」
一晩明けて、翌日のお昼。
全身を包帯でグルグル巻きにされた青年キラ・ヒビキは、同じく包帯グルグル巻きの壮齢の男性と面会していた。
昨夜の修羅場を辛くも生き延び、つい今し方に昨日と同じベッドで目覚めたキラは、昨日見たものと同じ天井と熱っぽい身体を認識して溜息をついた。今回もなんとか生きてるけど、こんなズタボロ状態で目覚めるのは三度
目だしもう勘弁してほしいと思う。イージスが自爆したりインパルスに貫かれたり、そして化物にボコられたり、むしろこれでよく五体満足でいられるものだ。
そう他人事のように感心して頷いていた時にその男はやってきて、こう言った。
「私は二階堂大河少将だ。この佐世保鎮守府を取りまとめる提督――つまり最高責任者だな、ここの」
短く切り揃え逆立てた黒髪に、日焼けした精悍な顔つきが凜々しい筋肉質の男。いかにも歴戦の軍人といった頼
もしい様子で、渋いバリトンボイスで深々と礼を述べるこの人物が、キラが会いたがっていた責任者のようだった。
そう、軍属のキラが自分の「今」を手早く知る為にコンタクトを取りたがっていた、響が紹介してくれると約束した軍のお偉いさんである。
しかし、その目的は既に半分以上瓦解していることは理解しており、いまここで「僕キラ・ヒビキなんですけど、ちょっと近況教えてくれますか」と言ってもむしろ混乱を招くだけだろう。ここは正真正銘本当の意味で「ここ
はどこなんですか」と訊かなければならない場面だった。
ここは己の知る地球ではなく、己は異邦人であると嫌でも実感したからだ。
「傷はまだ痛むかね?」
「……あ。えぇ、はい。……まぁなんとか」
「そうか。……しかし、護衛の一人もつけずにいたのは此方の落ち度だ。すまなかった」
「そんなの。僕が勝手に出歩いたのがいけないんですから……。……其方も、大丈夫なんですか?」
提督を名乗る二階堂少将も、キラに負けず劣らず傷だらけであった。
ぱっと見、右腕と左脚を骨折しているらしい。真っ白のギブスと松葉杖が痛々しく、検査服から覗く胸板にも包帯が巻かれていた。出歩くのも辛そうな重体だ。
それでも男は嫌な顔ひとつも見せず、頭を振って応える。
「いやなに、見た目は派手だがそう大したものではない。ただまぁ強引に病院に担ぎ込まれてな。……そのタイミングで攻めてくるのだから、敵もなかなかにやるものだ」
「……なにが、あったんですか」
「空爆だよ。深海棲艦のな」
ズタボロになるのは男の勲章とは思わないかねと冗談めかして笑ったのち、傷に障ったのか顔を引き攣らせたその男は、損壊し倒壊した建物の下敷きになったのだという。昨夜ようやく退院(後に聞いたことだが、強引に抜
け出してきたらしい)できたとのことだ。
「……」
「……」
沈鬱な沈黙が場を支配する。
男の発言と状況からして、この佐世保鎮守府という基地は相当に劣勢な立場にいるのだろうなと、キラは推測した。軍事施設だというのに妙に人がいないのも、全体的にボロボロなのも、その深海棲艦とかいう敵に押されて
いるからだと、言外に匂わせていた。
深海棲艦。
昨夜戦った――いや、一方的にボコボコにしてくれたあの化物が、そうなのだろうか。
個なのか組織なのかは不明だが、あのとんでもない化物を、とても人の手によるものとは思えないアレを、この提督は認知している。そして昨日のアナウンスの内容からしても、この基地があの化物相手に戦っていることは
明白だ。
アレはいったい、なんだ?
「さて、では事情聴取と情報交換を始めよう。君のことは響からも報告を受けているが、直接一から説明してくれるとありがたい」
「響……そうだ。あの娘は? どこにいるんですか?」
ゴホン、と咳払いして続けられた提督の台詞に、キラは「彼女は無事なのか」と今更ながらに心細くなった。
あんな化物相手に立ち向かって、無事でいられる筈がない。改めてキラは彼女の言葉と選択の重さを悟る。彼女を信じると決めたからって、敵を知ってしまえばもうその気持ちは揺らいでしまっていた。
今起きたのだから仕方がないとはいえ、まだ顔を見ていない。気になって仕方がなかった。
早く会いたいと、切に思う。
「それも含めて、だ」
提督は、思わず前のめりになっていたキラを制する。
「彼女が今どうしているか。それは未来人、若しくは異世界人かもしれない君が、此方の常識を知らんことには
説明できないものだ。同様に我々が、君がなにをどこまで知っているのかも知らなければ。これはそういう問題だ」
二人はほぼ同一の結論に辿り着いていたようだった。
つまり、キラは18m級の巨大ロボット兵器とこの世界にやってきた、異邦人であるのだと。そう判断するには充分すぎるほどのヒントはそこかしこにあったのだ。
キラにとってのそれは星空と化物であったし、提督にとってのそれはキラと一緒に発見されたロボットと彼の発言そのもの。
この目で見たモノしか信じないと豪語する主義者も納得の物的証拠だった。
同じ日本語で会話できているとしても、同じ日本という国家が存在しているとも限らない。二人を取り巻くそれぞれの世界は全く異なり、共通する常識なんてものは多くないと考えるのは極当然のこと。
提督は、響はお互いに共通する常識では語れない存在であるのだと告げていた。
物事には順序がある。彼女は後ろの方だと。
この世界の男がそう言うなら、異邦人であるところのキラは従うほかなかった。
「知りたいこと、訊きたいことは互いにある。私としても君のロボットに興味津々なのでね。……だが、そうだな。まず一つ言うが……とりあえず彼女は無事だ。だから安心なさい」
常識を知る為に、世界を知ろう。
◇
「ッくしゅん!」
「ん? 風邪か?」
「いや……」
提督とキラが情報交換を始めたのと同じ頃。
響は木曾と共に哨戒任務につき、海上の人となっていた。
艤装を装着した彼女達は、まるでスケートでもしているかのように、すいすいと生身のまま海上を滑走する。
荒れ狂う灰色の海もなんのその、慣れた体裁きで当然のように支配下に置き、サーフボードも使わず二本の脚のみで成す様はまさに魔法のよう。
この水上を沈むことなく進める超常的能力は、艦娘が生まれつき備える基本能力の一つだった。
セーラー服と黒マントは20ノットの巡航速度で周囲の警戒にあたる。
「とりあえず、もうこの辺りは大丈夫そうだね。やっぱり昨日のアレが敵主力だったみたいだ」
「なら少なくとも半日は凌げるか。しかし――チッ、こうも電波障害が酷いとな。この海域はもう解放したろうが」
「だから私達が出てるのさ」
「九州一帯を覆う新たな磁気異常。明石が言うことが本当なら、オレ達の敵は深海棲艦だけじゃねぇのかもしれないな」
磁場が乱れている海域には【敵】がいる。
それが今や子どもでさえ知っている、この世界の常識である。
そう。
ことの始まりは六年前。世界中の海が突然に、原因不明の凄まじい電波障害に襲われた。
海上においてあらゆる長距離レーダー・センサーが妨害され、人類の発展に大きく関与してきた電波通信や電波航法といったものが悉く使用不可になった。
あまりにも唐突な出来事であり、当時海上に在った船や飛行機のほぼ全てが消息不明になったという。
海を越えるには昔ながらの海図と星を用いた航法が必要不可欠となり、通信と貿易と移動は陸上のモノのみに制限、人類の文明は大きく後退することになる。世界は海によって分割され、有線通信で辛うじて繋がりながら安
全地帯となった陸だけの生活を余儀なくされたのだ。
そしてその一年後、つまりは五年前。
海よりいずる異形の化物――後に【深海棲艦】と呼称される『人類の天敵』の存在が確認されたのは、戦争が始まったのはその時だった。
「Что это значит?」
「……すまない、ロシア語はさっぱりなんだ」
「長い付き合いじゃないか。そろそろ覚えてくれても。……どういうことだいって意味だよ」
「あー……。……ヤツらに制圧されていないのに電波障害が――しかも陸にまで出てるってことは、原因は別にあるんじゃないかって」
「例の隕石?」
「タイミング的にはな」
「新しい敵なんて、お腹いっぱいだよ」
「違いない」
UFOみたいな形のモノから人間に近い形のモノまで。
世界中の海に現れた深海棲艦は、そのそれぞれが現代の最新鋭軍艦にも引けを取らない火力・防御力・機動性を
備えており、群れをなして手当たり次第に人類に襲い掛かる習性を持つ。そんな化物に、世界の海軍は瞬く間に粉砕された。
文字通りに、歯が立たなかった。
レーダーとミサイルを封印された従来の艦艇は、同等以上の戦闘能力を持ちながらより小型なヤツらにとってはただのデカい的でしかなかったのだ。海を制圧し、陸にもその侵略の魔手を伸ばしてくる化物を相手に、沿岸に
展開した戦車部隊で防衛ラインを形成するのが人類の精一杯だった。
そういった具合に暴れ回る詳細不明の深海棲艦だが、解っていることも確かにあり、そのうちの一つが電波障害との関連性である。
深海棲艦はその個々が特殊な電磁波を放出している。特に群れを統括するボスの放つ電磁波は強烈であり、近年の研究ではこの電磁波によって意思疎通をしていることが判明している。また、アメリカ海軍の決死の奮闘によ
り、ボスを失い解放された海域は電波障害からも解放されることも実証された。
磁場が乱れている海域には【敵】がいる。【深海棲艦】がいない海域の磁場は正常である。そして陸は人類の絶対生存圏なのだ。
存在する理由も侵略する理由も謎に包まれているが、その因果関係だけは確実なものであり、世界の常識となった。
「敵の特性が強化された線はどうだい?」
「どうも波長というか、性質というか、まぁいろいろ異なるらしい。そいつが新たな磁気異常を引き起こし、かつ敵を強化しているんじゃないかと。迷惑極まりないな」
そうして未知の脅威に晒され続けてきた人類が、敗北せず五年も生きながらえてきたことには理由がある。
【艦娘】という名の奇跡が、人類の味方をしたのだ。
かつて、第二次世界大戦の折りに活躍した軍艦の名と魂を受け継いだ、生まれながらにして戦う力を備えた超常の少女達。厳密には物理的な肉体を持たない、生まれてから死ぬまでずっと同じ姿形を保ち続ける霊的存在。
深海棲艦と同時期に世に生まれた彼女達こそが、現人類の最大戦力であり最後の希望だった。
彼女達は人間のような見た目でありながら、その元となった軍艦の能力をそのまま人間サイズに凝縮したような
性能を備えている。その点は深海棲艦と同様――水上を滑走し、特殊な電磁波を発し、圧倒的な火力・防御力・機動性を備える――だが、彼女達は人語を解し、人類に深い思い入れを持つ存在だった。故に彼女達は己の意思
で人類に味方し、深海棲艦と戦う道を選んだ。
何故生まれたのか、どのような生命体なのか、どこから来てどこに征くのか。その全てが不明であるヒトデナシ同士の戦争が始まった。
そうして五年、人類は艦娘を主力とした防衛戦や反攻作戦を決行、いくつかの海域を開放しながら戦争を継続して、今日に至る。
戦況は人類側の優勢に傾きつつあった。
「私達で対処できることかな」
「わからねぇ。わからねぇが、電波障害の影響を受けずにいられるオレ達でダメなら、人類は今度こそお終いだろう。ならやるしかない」
「うん……」
「なんだ、突撃隊長様が随分と弱気じゃないか。……まぁ、気持ちはわかるがな。あの隕石が原因だってんならオレだって正直お手上げさ」
優勢な筈だった。全世界的に。少なくとも、佐世保にとっては一週間前まで。
一週間前の『あの日』、台湾に突如謎の隕石群が落ちた。
大きいもので半径50mもある超巨大サイズの代物を中心に多数、どこの天文台にも観測されずにやってきたそれは、偶然目撃した者曰く「なにもない虚空からいきなり現れた」のだという。
まるで魔法、ワープのようであったと。
驚異的なサイズと数ではあったが、幸い出現位置が低空だったので落下エネルギーもたいしたものではなかったこと、台湾という土地自体がとうの昔に避難を終えて無人であったことから、隕石落下そのものによる被害は少
なかった。それでも高波は発生し、佐世保鎮守府を含む九州西部はまともに被害を受け、施設の大半がお釈迦になってしまったが。しかしそれもすぐに復旧できるレベルに収まっていた。
問題はその後だった。
隕石落下の二日後の、五日前から。
深海棲艦が隕石被害によって弱体化するどころか、むしろ強化されて佐世保を襲うようになったのだ。
今まででは考えられない程の頻度と戦力で繰り返される強襲爆撃を、もとより疲弊していた佐世保に止められる
はずもなかった。艤装の修理や艦娘の治療を行う施設をはじめ、宿舎や資源、補給路までを高波と爆撃で失っていた
同時に陸にまで発生した、従来の常識をひっくり返す広域磁気異常により応援を呼べず、航空機を使った輸送すらもできなくなっていた。体勢を立て直す暇もなく圧倒的攻勢に晒される佐世保は、近所の呉鎮守府と鹿屋基地
に傷ついた艦娘を避難させることを決意。死者こそ出ていないものの、総勢38人いた艦娘もいまや13人までに減っていた。
損耗率は既に50%を割っており、当然そのペースは加速度的に早くなっている。
救援が到着する予定の、明日の夜まではなんとか凌げる自信はある。
しかし、もし、来なければ。佐世保は陥落し、九州の地は深海棲艦に蹂躙されることになるだろう。
(それは……嫌だ)
確かにこの劣勢は、例の隕石が発端のように思える。
しかし、そんなことがありえるのか。ただの隕石でないことは確かだろうが、深海棲艦が強化された因果関係な
んてあるのだろうか。前までは後方支援がなくともやりあえていた相手に、こうも一方的に戦闘力で押し負け、追い込まれるなんてことが。
それこそ悪い宇宙人からの贈り物でもなければ。
「――時間だ、帰投するぞ。帰って飯だ」
「Да。……一つ、いいかな」
「あん?」
彼女達は敵の電磁波を中和して、限定的ながらレーダーの使用を可能とする能力を持つ。故に、彼女達の電探と目視がそのまま人類の目となる。こうした哨戒任務は、艦娘の大事な仕事の一つだ。
そのお務めを無事に果たした時、響はキラの言葉を思い出した。
昨日、第二艦隊として迎撃作戦に参加し、その途中行方知れずだった第一艦隊と合流して敵の主力を撃退できた
あの戦い。その時の討ち漏らしだったのであろう重巡リ級に襲われ大怪我を負ってしまった、護ると約束したあの男の言葉。
(……約束、守れなかったな)
彼は宇宙軍所属と言っていた。そして隕石とは言うまでもなく宇宙出身である。
昨夜ようやく帰ってきた二階堂少将は苦笑いしながら「未来人なのかもしれないなぁ」と言っていた。
ただの偶然なのか、それともなにか知っていることはあるのか。
なんとなく響は、なんの根拠もないが彼はこの騒動に関係あると感じていた。
本当に根拠がないのだが。
もしかして、彼が。
(いや、まさかな)
響は頭を振る。
疲れているんだ。馬鹿なこと考えてないでさっさと帰ろう。今帰れば、多分5時間は休めるはずだ。
不安だから、なにかを「分かりやすい何か」に仕立て上げたいだけなのだと自己分析する。そういう心理はよくない。むしろ自分は謝らなければならない立場なのだと、一瞬でも失礼なことを考えてしまった己を恥じる。
気持ちを切り替えなければ。
「……すまない、なんでもない」
「……なんなんだよ?」
もし、あのロボットと一緒にやってきた彼が、あの隕石の関係者だとしたら。みんなはどう思う?
そんな疑問を胸の内に隠した響は、深海棲艦が主力を失い攻撃再開に手間取っていることを確認。木曾と共に、交代要員の暁と多摩が待つポイントへ転進したのだった。
◇
(コーディネイターとナチュラル。宇宙に上がってまで人間同士の戦争か)
おおよそ二時間かけて、二階堂提督とキラ・ヒビキの事情聴取及び情報交換が終わった。
提督は一人、慣れない松葉杖を使ってえっちらおっちら廊下を進みながら、説明された彼の常識を思い返す。
その内容は思っていた以上に波瀾万丈なものだった。
コズミック・イラという、大三次世界大戦を経て制定された統一暦での出来事。なるだけ客観的になるよう四苦
八苦しながらと、どうにも説明が得意ではないようだが、それでも自分の世界を解ってもらう為に言葉を尽くしてくれた彼がいた世界。
そこでは。
人は宇宙に上がり、宇宙開拓時代を迎えたこと。
遺伝子操作技術が確立し、それが大きな人種間戦争に繋がってしまったこと。
モビルスーツという対艦用巨大人型機動兵器が台頭し、そのパイロットになったこと。
人類を地球側と宇宙側に二分した戦争が、二度も起きてしまったこと。多くの国が滅び、多くの人が死んだこと。
人類救済の為に、遺伝子によって全ての運命を支配しようとした指導者と、互いに互いの行動原理を認められぬからと戦わなければならなかったこと。
結果として殺してしまった彼の意思を継ぎ、崩壊し続けていく世界を維持する為の新地球統合政府の設立に尽力したこと。
そういった人間同士の戦争の歴史があったことを、その中で自分がやらかしてしまったことを、一時間かけて説明してくれた。
果たしてこの今の世界と、人間同士で第五次世界大戦までやってしまう世界と、どっちがマシなのかはひとまず考えないでおこう。
とにかく、ようやくこれで互いの知りたいことが知れたというわけだが、しかし謎は深まるばかりであった。
(異世界の地球からの来訪者。しかし、部分的とはいえ記憶喪失とは)
第二次世界大戦以降の歴史が少しずつ違っている彼の世界で、艦娘や深海棲艦といった特異的存在は確認されて
いないらしい。ならば彼が未来人という線は消えた。既にファンタジーに侵略されている我が世界とは、異なる地球から来たのだ。
想定の範囲内ではあったが、でも直接そうなのだと答えを示されてしまうとやはりショックは隠せない。提督は俯き思考に耽る。
これは大変なことになってしまったなと。
(ストライクという名のロボット兵器――モビルスーツといったか。彼は間違いなく、アレは人が搭乗して動かすものだと言っていた)
時間が差し迫りキラと別れた提督は、彼が発見された時を思い出す。
あれは例の隕石が落ちてから二日後のことだった。アレは浜辺で倒れており、あの青年はその内部から救出された。つまり、ストライクに乗ってこの世界にやって来たのだろう。
しかしキラは「それはおかしい」と疑問を投げかけた。
【GAT-X105 ストライク】は彼の世界での七年前に建造された試作機であり、キラの最初の機体であったらしい。
だが、新地球統合政府直属の設計局が開発した新たなMS群、ZGMFシリーズとGATシリーズに代わるGRMFシリーズの新型を受領した今、わざわざ今更乗るような機体ではないという。
なにか緊急の出撃があったのだとしても、納得できる要素がない。
だが、彼はその前後の記憶をどうしても思い出せないでいた。
彼は説明を続けている内に、己の記憶のところどころに穴が開いていることに気づいた。特に、直近の一週間か二週間ぐらいの記憶が、すっぽり抜け落ちていると。一ヶ月前のことはちゃんと憶えているのに、何か大変なこ
とがあったような気がするのに、おかしな話だと語っていた。結局、何故ストライクに乗っていたのかは分からずじまいだ。
この記憶喪失は、転移によるショックによるものではないかと提督は考えていた。幼き日々に読みふけった漫画小説では、それが定番だったこともある。事実は小説よりも奇なり。なにより現代はヒトデナシ同士の戦争をや
ってるファンタジー時空なので、異世界というトンデモがあるのなら、きっと定番だってあるのだろう。
記憶なんてものは酷くあやふやで儚いものだ。どんな大切なことも忘れるときは忘れるし、思い出すときはいつだって唐突だ。
いずれ時間が解決してくれるだろう。
(断じてモビルスーツとは、己が身に纏って戦うための鎧ではないのだと)
だが、正確な記憶が有ったとしても説明つかないことも、時間が解決してくれない問題も、世の中にはままあるものだ。
たとえ彼の記憶が戻り、関連があるのかもわからない例の隕石の真相が少しでも解明されたとしても。
彼の体質の謎が、誰かに解明されることはあるのだろうか。
キラ・ヒビキ。
彼の身体は、体質は。艦娘や深海棲艦のものと同様の、特殊なものに変貌していた。
厳密には物理的な肉体を持たない、生まれてから死ぬまでずっと同じ姿形を保ち続ける霊的存在。
人間のような見た目でありながら、人間よりもずっと優れた超常の身体と能力を備えるヒトデナシ。
特殊な電磁波を発し、ミニチュアのような砲塔から艦砲のものと同等の弾丸を放ち、人間用の鉄砲では傷一つ付かない、戦車と綱引きしたって勝てる、そんな化物。
キラ・ヒビキは、普通――と言っては語弊があるが――の人間だったはずなのに、いつの間にかそういう体質になっていた。少なくとも、この佐世保で発見された時点でそうなっていた。
昨夜に深海棲艦の重巡リ級に襲われても尚生き抜き、逆に艤装となったストライクのライフルで撃退したことが、なによりの証拠だった。おそらく、彼の怪我もあと数時間もすれば完治するだろう。
(普通の人間がそのような事になるとは、一体全体どういうことなのか)
そのような事例は、この世界でだって確認されていない。
これで彼が未来人で、その時代ではロボットが艤装になっているんだと言ってくれたら、こんな悩みを持つことはなかった。正直なところ提督は、キラは未来から来たものだと思い込んでいたのだ。
何故なら、異世界から来たというのに最初から「そういう体質」であったのならば、それでは地球はあまりにも
救われないじゃないかと。異世界の地球でまで艦娘と深海棲艦の戦争があるのだとしたら、それは悲しいことだった。地続きの未来なら、彼の体質にもある程度納得できるというものである。
たった一人の、あらゆる意味で例外の人物を保護するということは、誰にとってもストレスだ。
そもそも、彼はどのようなカテゴリーになるのだろうか。
(世界初の、男性の艦娘か……。まったくなんて日だ。なんて呼べばいいのか)
艦娘。艦の娘と書いて「かんむす」。
現人類最大の戦力でありながらも、軍にはとても似つかわしくない可愛らしい名称で呼ばれている彼女達。
軍の会議室で大の大人達が渋い顔で「うちの艦娘が云々」と、人類の今後に関わる大事な案件なのにまるで思春期の娘をどう扱うか困った父親のような格好で議論を交わす光景は、当初こそ滑稽なものであったとな思い出す。
今ではすっかり定着しているその名称は、彼女達を単なる兵器として扱いたくない派閥の努力が実を結んだ結果だった。今やその名は世界中に広まり、彼女達は一人の愛すべき存在として民衆に親しまれている。
しかしこれが男性となると、なかなか良い呼び名が見つからないのであった。報告書の作成には難儀することだろう。
それは追々考えていこうと思う。
(とにかく。普通から外れてしまった彼には、時間が必要だ)
この世界と己の身体の真実を知った彼は、しばらく一人にしてやらなければならないだろう。自分自身も考えを纏めなければならない。お互いに冷却期間が必要だった。
(だが、こちらはそう悠長なことは言ってられないな)
そう思い、一人医務室から撤退して執務室に向かった提督は、その思考を冷徹な軍人のものに切り替える。
実際問題、時間がほしいのはこちらの方だった。
佐世保鎮守府存続の為に、非情に徹して持てる戦力と技能をフル回転しなければならない局面であった。こちら
の採れる選択肢は多くない。人事を尽くして天命を待つしかない現状に陥ったことは、一将官として恥ずかしいものだったが。
「……二階堂だ。そちらに白露はいるか?」
<提督! お久しぶりデース! ご注文は白露ですカー?」
「ああ久しぶり。無事でなによりだ」
<えーっと……あ、Good timing! 今代わるからちょっと待っててネ。……HEY、白露ぅー。提督からのご指名ダヨっ!!>
執務室に到着するなり提督は、長らく使用していなかった有線通信機で格納庫と連絡を取る。
無線さえ使えればいいのだが、陸にまでやってきた磁気異常のせいで使い物にならない。煩わしいが背に腹はかえられないので、埃を被っていた固定電話を引っ張り出し酷使するしかなかった。
そんな通信事情と、宿舎や休憩室が更地になってしまった施設事情もあって、今や油臭い格納庫が艦娘達のたまり場となっていた。誰かしら通信機の近くにいるよう待機してもらっているのだ。
<――はい、代わりました白露です! どうなさいましたか?>
「今後の方針が決まったから、皆を執務室に集めてほしい。今どうしている?」
<んと、みんなでご飯食べてるの。10分もしたら行けると思うよ>
「わかった。よろしく頼む」
<うん! いっちばんお役立ちなあたしにお任せあれ!>
四年の付き合いになる秘書と短く連絡を取り合い、提督は愛用ソファーに深く沈み込む。
打てる手は全て打った。
救援が到着する予定は明日の20時頃……約30時間後のその時までに、いかに防衛ラインを維持し続けるかが鍵になる。いつもの半分にも満たない戦力で、いつもより手強い敵をどういなすか、ここが正念場だった。
現状の戦力を再確認する。
主力の第一艦隊所属の5隻と、遊撃の第二艦隊所属の4隻、哨戒兼補給隊の第三艦隊所属4隻。敵の攻撃再開と救援到着時刻がいつになるかは不明だが、24時間程度の戦闘行動なら全戦力を全力投入したうえで休憩なしで
いける。むしろ、下手に戦力の逐次投入などしては防衛ラインを割られる可能性が高い。問題は配置と補給タイミングか。
戦況を読み違えれば、そこからドミノ倒しのように全てが終わってしまう。だからこうして戦術を練る。
「……ギリギリ、いや少し足りないな、やはり」
せめてあと一人、戦力が欲しい。
時雨が戦力外になったのは痛かった。彼女さえ健在ならまだやりようがあったのだが。必要なのは火力よりも、
敵を攪乱できる機動性だった。無い物ねだりしても仕方がないとはいえ、ベストの陣形を組めないのは非常に痛い。
今から決行しようとするプランは所詮ベターなもので、しかも艦娘一人一人の負担がより大きくなるものだ。
作戦失敗の確率も大きくなる。けれどやり遂げてもらわなければならない、そんな苦痛がある。
彼女達をいかに安全に、楽に、確実に勝利に導くかを考えるのが提督の存在理由なのだ。
この時代の戦場で「人間」ができる数少ないことのうちの一つだ。
一端戦闘が始まれば、あとは少女達の頑張りと判断を信じて祈るしかないのだから。
だからこそ、せめてあと一人、戦力が在ればと。
「……、……本当のヒトデナシは我々人間なのかもしれない、か。確かにそうだな」
かつて、友人である呉鎮守府の提督が呟いた言葉が脳裏を掠める。
戦闘の現場に立てない「人間」である提督にできることは、こうしたバックアップまで。あとは圧倒的超常的能
力を持つとはいえ、年若い娘達に「化物と戦ってこい」と命令するしかない自分達こそが外道だと。結局人間とはなんなのだろうなと。
二階堂提督は、今自分が考えついたことに、これから自分がやろうとしていることに、若干の嫌悪感を覚えた。
だが手段は選んではいられない。そもそも採れる選択肢は多くない現状で、これは千載一遇の好機なのかもしれないのだ。故に開き直り、ヒトデナシの誹りも喜んで受け入れよう。
冷徹な軍人として、佐世保鎮守府存続の為に打てる手は全て打たなければ。
提督は再び有線通信機を手に取る。
「見せて貰おうか、異世界の機動兵器の性能とやらを」
しばらく一人にしてやらなければならないと思った直後に、申し訳ないことだが。
連絡先は、医務室だ。
以上です
キラには徹底的にボコボコになってもらいます
艦これは公式の世界観が公開されてないので、好き勝手に俺設定をでっち上げられるのが好きです
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第六話 裏ジャブロー
−ウゥゥゥゥゥーーーッ!ウゥゥゥゥゥーーーッ!−
−全戦闘員戦闘配置、各部署の隊長、艦長、および指揮官はブリーフィングルームへ至急集合のこと−
ルナツーに鳴り響く警報、全員が慌ただしく動く。特にメカニックは至急の出動に各兵装の準備に追われる。
エディは小隊長として会議室に行き、ジャックはメカニックの手伝いで自分のジムの最終チェックをする。
初出撃を迎える彼らのジム、しかし不安は無かった。
オハイオ小隊スペシャルのジム、見た目は普通のジムではあるが、その中身はCPUルーチンを徹底して組み直した
彼らだけの専用プログラム、幾多のテストを経てその動作性能を向上させ続けたジム。
そのシールドには、かつての雪辱を晴らすべくシャークペイントが施されていた。
願わくば、この戦闘であの青いやつと戦って勝ちたい、俺たちの顎であの高速のカジキをかみ砕いてやる!
やがてブリーフィングが終了し、各隊の長が部署に走る。ジャックの元にもエディが走ってくる。
「準備は!?」
「オールグリーンです、即行けますよ!」
「よし!」
それだけを話してサラミスに搭載されているジムのコックピットに乗り込む、詳しい話は乗ってからでも出来る。
「ジオンがジャブローを総攻撃?」
「ああ、ほんの少し前に掴んだ確かな情報だそうだ。本日15:00、ジオンの総攻撃があるってな。」
「それで、なんでこっち(宇宙)で出撃なんすか?しかもこんな突貫で総員出撃とか・・・」
確かに、今から出撃して地球降下しても戦闘には間に合わないだろう、そもそも全軍出撃しても
地上降下ができる舞台はほんの一握りのはずだが・・・
「ジオンにしてみりゃこれは天王山の一戦だ、地上に踏みとどまれるかどうかのな。これを阻止したら
奴等はもう地球から撤退せざるをえない。」
ひと呼吸おいてエディが続ける
「奴等にしたらまだ、負けても宇宙に撤退すればいい、って考えてるだろう。そんな奴等に、宇宙での連邦の
攻勢が始まった、つったらジオン兵はどう思う?」
「ケツに火が付きますね、ジャブロー攻撃どころじゃなくなるかも・・・」
「ご名答、つまりこれから地上にいるジオンに『嫌がらせ』の攻撃をするってことだ。」
理にかなっている、敵の後方を扼すのは戦術の基本だ、ということは・・・
「標的はジオンの小惑星基地、各隊がいくつかの敵基地を突いて敵を混乱させるのが目的だ、深入りするなよ。」
やはり、この戦闘はポーズでいいんだ。どうりで突貫の出撃になるわけだ。
「第6艦隊、サラミス級シルバー・シンプソン、出撃する!」
艦長の号令一下、二人を乗せたサラミスが発艦する。第6艦隊は彼らを含むマゼラン級1、サラミス級3、
ジム小隊6、ボール小隊4の中規模編成、目指すはソロモンの手前にあるジオンの小惑星基地、
敵要塞ソロモンの近場のため、長引けば援軍にこられて袋だたきに合う、かといって早期撤退すれば
地上のジオンへの牽制にならない、引き際の判断が作戦の成否を決める。
「ハロウィンのパーティでも始めるつもり、なのか?」
ひときわ不機嫌な表情で毒を吐くモニク・キャデラック特務大尉。後ろにいる士官、オリバー・マイ技術中尉は
言われると思った、という表情で首を振り、手持ちのタブレットを操作、詳細を表示する。
「MA-04X、モビルアーマー、ザクレロ。強力なスラスターと大出力の拡散レーザーを備えた機動型兵器です。」
ジオンの小惑星基地マドック、そこに603技術試験隊は停泊していた。試作兵器であるこのザクレロのテストの為に。
しかしそもそもこのザクレロという機体はすでに評価試験を終了している、不採用機体として。
同時期に開発されたモビルアーマー、ビグロとの正式化競争に破れ、テスト機のこれが残るのみだ、
ただ戦局逼迫のため、不採用であっても使える機体は使う、それは603が今まで何度も経験済みのことだった。
それだけにキャデラックはなおさら腹が立つ、603は兵器の乳母捨て山か、リサイクルセンターとでも思われているのか。
同時に試作兵器を受領した604技術試験隊は地球降下用の兵器を受領したらしい、それが何かは知らないが
少なくともこんな面白機体ではあるまい。
彼女のセリフ「ハロウィン」は言い得て妙だった。その機体の前面は、そのまんまハロウィンに登場する
カボチャのお化け「ジャックオーランタン」の顔にそっくりだった。
外見が戦争における心理を動かすこともあるとはいえ、あまりにチープなデザイン、これを見て
連邦軍兵士は笑うことはあっても戦意喪失して逃げ出すことはあるまい。
「トリック・オア・トリートってか?そりゃいいや。」
当のパイロット、デミトリー曹長は全く気にしていないようだ、若く、ハンサムではないが気骨ありそうな面構えの青年。
彼自身、ずっとこの機体のテストパイロットを続けてきて、この機体がビグロに及ばないことは痛感している
しかし彼は気にせず、淡々とこのザクレロと付き合ってきた。それは彼が生粋の軍人であるように思わせたが
実際に深いところでは別の理由があった。
士官学校からずっと世話になった先輩士官、トクワンがそのビグロのテストパイロットを担当していたからだ。
ジャックにサメジマがいるように、デミトリーにはトクワンがいる、尊敬し、手本にするべき先輩が。
だからザクレロがビグロに敗れたのは不満ではあったが、仕方ないとも感じていたし、何よりここに至っては
ザクレロも実戦配備されるのだからそれも論外だ、自分の部署で、自分の兵器で、ベストを尽くすのみ。
マドックの基地内の電源が全て赤に切り替わる、そしてけたたましく鳴り響くサイレン!
「敵襲!敵襲ーーーーっ!」
反射的に動き出す全要員、全ての艦艇が、モビルスーツが、発進に向けて動き出す、
モビルアーマー・ザクレロもその例外ではなかった。
「各艦は敵基地に向け一斉射撃後、モビルスーツを展開して反時計回りに後退、待機宙域にて援護射撃!
モビルスーツは一気に敵基地に肉薄せよ!」
連邦軍艦隊が一列になって突進、敵基地の前で弧を描きつつ砲撃、ジムやボールを展開し離脱していく。
完全に先手を取れたようだ、うまくいけば陥落までもっていける。
「こちらジョージ大隊長、敵の反応が遅い、一気に仕留めるぞ!」
ジム・ボールの全体指揮を執るジョージ中佐の激が飛ぶ、このまま敵モビルスーツが発進する前にたたければ理想だ。
基地に設置された主砲が反撃の雨を降らす、基地に詰めていた艦艇がゆっくりと動き出す、間に合うか・・・?
残念ながら一歩遅かった、直前でザク、そしてより重厚な体を持った紫色のモビルスーツが基地から次々と発進
玄関先でジム・ボールとの乱戦に突入する。
「ドムってやつか!」
「気をつけろ、火器や装甲はザク以上だ!」
「上等っすよ!」
エディとジャックのジムも乱戦に身を投じる、まずは動きを止めないこと、乱戦の鉄則。
無理に小隊編成の隊列を保つことは、相手にとっても狙いを定めやすくなる。バラバラに動く時は
いっそ徹底的にバラバラに動くべきだ、これもサメジマが残した戦法の一つ。
「エディさん、グッド・ラック!」
「生きて帰れよ、ジャック!」
声をかけると同時に2匹の鮫は逆方向に機動、エディはドムの小隊に突進、ジャックは基地とは逆方向から包囲
しようとするザク3機に向かって突撃、ビームサーベルを抜くと、すれ違いざまに一機のザクをなぎ払った。
連邦の部隊を包囲しようとしたザク3機には油断があった、また視界を広く持つ必要があったため、
自分たちに向かって単機で突進する相手にあまり気が向かない、誰かが倒すだろうという油断が仇となった。
すれ違ったジャックはサーベルを仕舞い、ビームガンを抜く。機動を止めずに弧を描いて残りのザク2機に迫る、
「くそったれえぇぇ!」
マシンガンとバズーカで反撃するザク、しかし二人とも遠距離兵器のため照準合わせに気がいって動けてない
足を止めることの愚かさを失念しているのだ。
ジャックはここでザクの頭部に向け起動する、兄貴によく聞かされていたザクの死角、それは上方向。
特に上方斜め後ろを取れば、ザクは方向転換に2アクションを必要とする、振り向いてる間に仕留める!
ジャックのジムが放ったスプレーガンは見事、1機のザクに命中。しかしもう1機は思い切った機動でビームを回避
そのまま弧を描いてジャックのジムに向かい、銃弾を浴びせる、ジムも懸命に起動してかわし、撃ち返す。
ザクのマシンガンはジムの大きな盾に阻まれる、シャークペイントが施されたその盾にすっぽり身を隠されてしまえば
ザクマシンガンではルナチタニウムの盾に穴をうがつのは困難だ、それがザクに腹を決めさせた。
弧を描く機動を止め、真っ直ぐジムに突進するザク、マシンガンを捨て、ヒートホークを抜く。
ジムは未だビームガンを持っている、サーベルを抜く前に接近して一撃を加えんと突撃!
しかし彼が相手にしているのは普通のジムではない、戦場での可能性を徹底的に検証し、新たな動作ルーチンを
書き加えたオハイオ小隊スペシャル・ジムなのだ。
ビームガンを持っていないと遠距離では戦えない、持っているとビームサーベルは使えない、ではガンを
持ってるときに敵に接近されたら?答えは明白。ビームサーベルだけが武器じゃない、左手には超硬度の鈍器。
突進してくるザクに真っ直ぐ盾を突き刺すジム、ルナチタニウムの板先を顔面に受けたザクは
そのまま頭部を胸まで埋め込まれ動きを止める、すかさずスプレーガンを至近距離から打ち込む!
「ぶはぁあっ!」
爆発するザクから離れ、大きく息をはき出すジャック。初の戦闘の緊張感から一瞬解放され、忘れてた息をつく。
いける、このジムなら俺でもジオンと互角の勝負が出来る、兄貴が残したスピリットで俺たちが育てたこのジムなら!
余勢を駆って次の標的を探す、彼がまず捕らえたのは基地から離脱しつつある大型輸送船、戦艦で無いなら
狙う勝ちは無い、と思った瞬間彼の目に入ったのは、その艦のハッチ付近に浮いているモビルス−ツ。
「青い・・・ヅダかっ!」
全身が熱くなる、何故輸送船にいたのかは分からない、はっきりしているのはアレが連邦軍にとって
脅威だと言うこと、そしてサメジマの兄貴を間接的とはいえ倒した機体であること。
−そん時は敵を褒めるんだよ、あのサメジマを倒すとはたいした敵だ、ってな−
兄貴の言葉が頭をよぎる、やってやる!アンタを褒めて、そして倒す!ヅダに向けて起動するジャックのジム。
その時だった、ヅダに引っ張り出されるようにして、黄色い機体が格納庫から引き出されてきたのは、
その異形の「顔」にジャックの背筋が凍り付く。
「なんだ・・・ありゃあ。」
第六話でした。そう、今回の主役機はジムです(今更
603の面々もようやく登場、今後の活躍にこうご期待・・・活躍できるのかなぁw
乙です
大きな口をもつ化物同士の戦いとなるといよいよハロウィンじみてますな
裏方の意地同士のぶつかり合いも見れていいと思います
感想があると速筆になりますね、調子にぼるともいいますがw
続き投下します。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第七話 鮫と怪物
「ありえないんじゃないっすかねぇ、こんな発艦って!」
試験支援艦ヨーツンヘイムのハッチ前、ヅダの操縦席でワシヤ中尉はひとりごちる。
彼は今、ハッチから巨大なモビルアーマーを引っ張り出す作業にかかっている。
「ぐちぐち言うな、戦闘中だぞ、急げ!」
後方からモビルアーマーを押し出しているヅダのコックピットから、キャデラック特務大尉の激が飛ぶ。
「へへっ!すいませんねぇ大尉、中尉。上官のお二方に手間かけさせちまって。」
特徴的な前歯を見せながら、ザクレロのコックピットでデミトリー曹長は苦笑いを浮かべる。
モビルアーマー・ザクレロ。タテ、ヨコ、高さ共に大型のそれは艦艇の中に収まるのには向いていない
だが、この手の機動兵器は、戦場の移動には燃料消費の観点から、どうしても艦に頼る必要があった。
牽引という手もあったが、試作兵器でありメンテやデータ収集が必要な都合上、無理矢理ヨーツンヘイムの
艦内に押し込められていたのが、急な戦闘では災いしてしまった。
モビルスーツなら架台の上に立ち、スラスターを受熱板に当てて反動で飛び出すのも可能だが
このザクレロを支える架台は無いし、スラスターの位置が低いので受熱板も当てられない、
結局、至急の発艦なら何らかの方法で引きずり出すしか無かった。
「そう思うなら戦果で示せ!」
キャデラックの注文に、デミトリーは目を光らせて答える。
「もちろんでさぁ、ここはまさに俺が、そしてコイツが望んだ戦場だ。」
艦から引きずり出されるザクレロ、その複眼のような切れ目が妖しく光り、スラスターが青い光を灯す。
そのコックピットのモニターには戦場の隅、連邦軍の艦隊が陣取る方向を捕らえている。
「ザクレロ発進!目標、敵機動艦隊!!」
そのスラスターが火を吹き上げ、巨大なモビルアーマーは急速発進する。初の、そして理想の戦場に。
「ま、待てっ!」
ジャックは反射的にその黄色い巨体を追跡に入った。何故ヅダを差し置いてそいつを追ったのかは分からない
ただ、アレが見た目以上に危険な機体であること、そんな予感が彼を動かしていた。
しかし、ジムの速力ではとうてい敵わなかった、黄色い化け物にみるみる置いて行かれるジム。
その進む先を見て、ジャックの嫌な予感は確信に変わった、あいつは・・・ヤバい!
「拡散ビーム砲クーベルメ、発射準備!」
膨大なGに耐えながらスイッチ操作するデミトリー、4隻の連邦軍艦隊との距離がみるみる詰まっていく。
「みんな、逃げろーっ!!」
通信に向かって叫ぶジャック、もう止められない、惨劇が目の前にあった。
「敵、単機で急速に接近してきます!」
サラミス級シルバー・シンプソンの艦橋に報告が飛ぶ、その言葉の意味を租借する前にコトは起こった。
「発射あーっ!」
ザクレロの口から前面に拡散ビームの花が咲く、それを照射したままザクレロは連邦軍艦隊のど真ん中を通り過ぎた。
5本のビーム杖は連邦軍艦隊の中を踊り、通過する。あっという間に離れていくモビルアーマー。
後に残ったのは、爆発するマゼラン級戦艦の艦橋、そして推進部、砲撃部・・・致命傷であった。
一瞬の閃光と共に、艦隊の中心で爆発する旗艦マゼラン、多くの兵士は何が起こったのか理解出来ないまま逝った。
それを最も理解したのは、ザクレロを追ってきたジムのパイロット、ジャックだったのかも知れない。
「全速で突っ切って・・・すれ違いざまに広範囲ビームで薙いでいきやがった、通り魔かアイツは!」
「うまく行ったぜ、減速、反転!」
ニヤリと笑うデミトリー、このザクレロの初の戦果がマゼラン一隻、上等だがまだまだ!
最高速と広範囲攻撃に特化したこのザクレロにとって、小回りがきくモビルスーツ戦は不向きだ。
しかし艦隊に対する突撃突破式のヒット・アンド・アウェイならこの機体は最適だ。
高速で機動中は照準もままならないが、戦艦なら的が大きいから照射しながら通過すれば運次第で命中する可能性大だ、
しかも今、連邦軍モビルスーツはこちらの基地に詰め寄ってきている。後方に控える艦隊がダメージを受けたとなれば
奴等も悠長に基地攻略に当たっているわけにもいかない、帰る船が無くなればいくら基地を陥落しても
ソロモンからの援軍に叩きつぶされるのみだ。事実、効果は絶大だった。
「マゼランが撃沈!?マジかよ」
「艦の防衛はどうなっていたんだ!」
「サラミスは無事なのか?」
「好機だ、連邦の犬どもを押し返せ!」
「603の試作兵器か?さすがオデッサの英雄!」
敵味方に飛びかう通信、戦場は攻勢が連邦からジオンに移りつつあった。
「いけぇっ!」
再度艦隊に突っ込むザクレロ、艦隊も応戦するが、戦艦に対して小さく、高速で起動するその的に命中弾は出ない
再び5本のビームが艦隊内を踊り、通過する。その姿を艦隊の真上で捉えるジャック。
通過したとき、1機のサラミスが爆発する、それは・・・ジャックの乗艦であるシルバー・シンプソン!
「野郎おおおおっ!」
すでに遙か向こうで光点になった黄色い悪魔を睨む、同じ艦の仲間が一瞬で消えた、またひとつ帰る場所を失った。
喪失感と怒りに満たされながら、しかしジャックは心の芯でひとつの言葉を思い出していた。
−相手を褒めるんだよ−
分かってる兄貴、やつだって単機で艦隊のど真ん中に特攻してるんだ、ひとつ間違えば認識もできない死だ。
勇敢さがあって初めて出来る戦法、なら俺は・・・
「敵機、再接近!うわあぁぁっ!」
残りのサラミスの艦内に悲鳴がこだまする、悪魔のようなモビルアーマーが三度、この艦に突っ込んでくる
すれ違いざまに放たれたビームは、今回は虚空を薙いだだけだった。もともと照準も付けずに撃っている、
残艦が少なくなれば命中率が下がるのも仕方ない、そんなことは折り込み済みだ。
機体を減速させて次の攻撃をアタマに描いた瞬間、デミトリーは妙なモノを見た、
自分の前を、同じ方向に飛んでいく機体、603の観測ポッドか?いや違う、こいつは・・・
相対的にまだそいつより速かったザクレロが「ソレ」を追い抜く、それは・・・
「連邦軍のモビルスーツ!なんでこんな所にっ!」
「いらっしゃい、待ってたぜ悪魔!」
相対速度がほぼ同じである以上、両者は併走状態になる、この間合いはモビルスーツの間合いだ!
「くたばりやがれっ!」
ザクレロの真上からビーム・スプレーガンを乱射するジム、全弾直撃し反射の火花が咲く、やったか!?
「何っ!?」
ザクレロの頭部は黒くすすけてはいたが、穴は開いていなかった。
「対ビームコーティングかっ!」
「マシンガンなら良かったんだがな、惜しかったなモビルスーツ!」
ジムに向き直り、右手のヒートナタを振りかざすザクレロ。
「くっ!」
盾でそれを受けるジム。通常の受け方では無く、下面から縦方向に受け止める、先のザクにも決めた打ち込み方、
エディとジャックがジムの操縦方法を研究する課程で、ルナチタニウムの盾の使い方は大きな研究材料だった。
これのみがガンダムと同じ強度を持つなら、その使い方次第で防御力も接近戦での戦力も非常に重要だ。
普通の盾の受け方をして早々に使用不能にならないようにする動きがオハイオ・ジムには組まれていたのだ。
しかしヒート・ナタも並みの武器では無い、刃の先端が盾に食い込んだ状態からナタを加熱し、ジムの盾を
溶かしながら斬り進んでいく。
ここでジャックは思い切った行動に出る。盾ごと左腕を回転させ、テコの原理でヒート・ナタを巻き込み、ひん曲げる。
薄刃な上に熱を通しているその刃は、横方向の力を受け折れ曲がり、熱を失う。内部で断線したのだろう。
宇宙の低温で急激に冷やされる両金属、特にルナチタニウムは加熱から冷却による固着が速い。
そのままヒート・ナタを取り込み、盾と鎌は溶接されたようにくっついてしまった。
刃がちょうど盾のシャークペイントの顎の根元で止まっているその姿は、まるで鮫がザクレロの腕に
食らいついているようだった。
「もらった!」
もう逃がさない、ビームサーベルを抜き、ザクレロに突き刺そうと振りかぶるジム。しかし次の瞬間大きく揺さぶられ、
木の葉のように振り回される。ザクレロがジムを振りほどくべく急激に方向転換したためだ。それでも両者は離れない。
「くそっ!ひっついてんじゃねぇ!!」
デミトリーも必死だ。ザクレロの機動力を持ってすればモビルスーツに取り付かれる心配などない。
しかしこういう形で食らいつかれてはやばい、あのサーベルで突き刺されたらコーティングも持たないだろう。
死にものぐるいで振りほどきにかかるザクレロ、必死に姿勢を直し、サーベルを刺そうともがくジム。
黄色い化け物とそれに食らいついた鮫、2匹はそのまま戦場を不格好なダンスで横断していく。
「曹長!」
ヨーツンヘイム付近からワシヤ中尉のジムが飛ぶ。
「あの、バカ!」
基地周辺からエディのジムが機動する。
幾度かのダンスの後、振り回されながらもついにサーベルを刺さんと姿勢を取るジム、しかしそれはザクレロの
真っ正面での体制だった。ザクレロも口内ビームをジムに向ける、外しっこない距離、どっちが速い!?
ジムのサーベルだ!しかしそれは命中直前で突っ込んできたヅダのシールドが受け止める、返す刀で発射される
ザクレローのビーム、直撃かと思われたが、別方向から高速機動してきた別のジムによって的をかっさらわれる
溶接された部分がちぎれ飛び、ジャックのジムを抱えて飛び去るエディのジム。
「ぐは、っ・・・エ、エディさん?」
「もう十分だ、撤退するぞ!」
「・・・え?」
分からない、もう少しであの悪魔を仕留められた。逃がせばまた脅威になる。しかも艦を半分失い形勢不利な
この状況で撤退は・・・
「あれを見ろ!」
ジオンの基地に目をやる、そこには小さな爆発の光芒が連鎖的に起こっていた。
「な・・・マドックが、沈む!?」
呆然と見やるデミトリーに、ワシヤが説明する。
「多分、内部に侵入されていたんだ、戦闘開始してすぐだろう、内側からやられたら手の打ちようが無い、
ここは引くぞ!」
「ぐっ・・・」
歯がみしながらもザクレロをヨーツンヘイムに向けるデミトリー。見ると基地に詰めていたムサイやパプアも数隻
離脱を開始している、残存するモビルスーツもそれに向かう、基地が無くなればそこを死守する意味は無い。
連邦軍もまた残った2艦のサラミスに撤収しつつあった。もともとポーズだけの小競り合いの予定だっただけに
基地を沈めたらそれ以上は望まないし、旗艦マゼランを沈められた以上、長期戦も出来ない、いい潮時だろう。
サラミスに取り付いて帰還の途に入る連邦軍、全員が戦死者に敬礼を送りつつ宙域を後にする。
ジャックはふと、自分のジムの盾に刺さったままの敵の刃を見やる。
同胞はこいつに殺された、憎むべき敵の刃。・・・いや、違うな。敬すべき勇者の牙の痕。
それを盾からもぎとり、その空間にそっと投げ落とす、その刃を見送って敬礼をし直す。
数時間後、ジャブロー攻防戦が連邦軍の勝利に終わった一報が入る、
ジャックもエディも、これから苛烈になる戦争の予感を感じていた。
第七話でした。ザクレロは前作でも出しましたが本当に好きな機体です。
しかし唯一の華がトゲだらけのバラというべきキャデラックさんとは、色気の無いSSだ。
そのへんは艦これの人に任せるか(失礼w
あ、致命的な誤字・・・
>>316 ×ワシヤ中尉のジム
○ワシヤ中尉のヅダ
・・・何やってんの俺orz
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第八話 ソロモンの時間、前編
「大隊長就任、おめでとうございます。」
ジャックがグラスを掲げそう言うと、周囲の30人ほどから拍手が起こる。まぁグラスの中身は全員ただの水ではあるが。
「ありがとう、みんな。隊長としての責任を痛感するよ。」
薄く笑いながらエディ・スコット大尉がグラスを上げ、言う。
ソロモン決戦の直前、部隊編成に際しエディは前回の戦闘の功績が認められ、ジム・ボール大部隊の
指揮官に抜擢されることとなった、その記念顔合わせパーティ。
「まぁ特進、抜擢も当然ですよ、ドム5機にザク3機撃破ですからね。今やルナツーのエースだし。」
「しかしお前は曹長のままか、貧乏くじだったな。」
エディ大隊、その末席にはジャックも加わることになる。しかしエディは功績と抜擢の都合上
一気に大尉まで抜擢されたのに比べ、ジャックは元々雇われ軍属であり、正式な軍教育を受けていないことから
階級、立場共に変化無しだった。
「別にいいですよ、出世したくて軍に入ったわけじゃなし。」
かつては復讐のため、しかし今は自分の居場所と、無き兄貴の意思を継ぐため、自分はここにいる。
「そういや聞いたか?お前がやり合ったあのモビルアーマー・・・」
「ええ、先日の戦闘であっけなく倒されたそうですね、あの「ガンダム」に。」
ジオン軍モビルアーマー、ザクレロ。先日の基地攻防戦において、ジャックと死闘を演じた悪魔。
その最後はあっけなかったものらしい、連邦軍のフラッグ・モビルスーツともいえるRX-78/2・ガンダムとの
遭遇戦で最後を迎えたそうだ、ものの30分もかからない戦闘で。
憎き敵ではあるが、敬意を払うべき強敵でもあった。それがいともあっさりと散ったことにジャックは
切なさを感じずにはいられない、そんなにも差があるのか、ジムとあの「ガンダム」には・・・
「そういやあのガンダムを乗せた戦艦も合流するらしいな、ホワイトベース、だったっけ?」
「ああ、指令も話してたよ。少年兵がほとんどのの部隊らしいが、各地で大活躍したらしいぞ。」
グラスの水をあおり、ひと呼吸置いてみんなを見回して言う。
「さぁ、俺たちも負けてられないぞ!そろそろ任務に戻ろう!」
「はいっ!」
全員が一斉に敬礼、散開する。ここは旗艦マゼランの中、本来は彼らも任務中だが、艦の指揮を執る
ワッケイン指令の計らいで設けた小休止の席、いつまでも浮かれてはいられない。
ルナツーおよび地球から出動した大艦隊、その中心に彼らはいた。いよいよ敵要塞ソロモン攻略「チェンバロ作戦」、
この決戦に際し、ルナツーをほぼカラにして出てきた。理由は一つ、ソロモンの陥落後、そこを前進基地にするため。
捕らぬ狸の何とかという者もいるが、連邦軍には確固たる勝算があった。
ソロモンの防壁は強固を極めている、中でも脅威なのが「ネズミ取り」と言われる自動選別攻撃装置。
無人のビーム砲台なのだが、基地表面や通路の各所に無数に配置されていて、しかも見えないように
カモフラージュされている。
識別信号を発していない機械が近づくと無条件で攻撃、撃滅されてしまう。戦闘がモビルスーツ戦に特化しつつあり
要塞攻略がモビルスーツによるアタックに準じるならば、このシステムは攻める側にとってまさに脅威だ、
基地に取り付いたジムは、敵モビルスーツと戦いながら、いつ別方向から狙撃されるか分からない恐怖にさらされる。
逆に敵はその場所を熟知している、誘い込んで十字砲火を浴びせるなど戦術はいくらでもある。
ジオンに潜入しているスパイから得たこの防壁を突破する方法、それに連邦軍はチェス盤を
ひっくり返すような方法を採用した。
−新兵器ソーラーシステム−
無数の集積ミラーを使い、ソロモンの外壁をネズミ取りごと焼き尽くし、そこから内部に突入しようというのだ。
敵がネズミ取りをあてにしているなら、敵部隊はソロモン表面からそうは出てこないだろう、それを逆手に取り
この新兵器で一気になぎ払ってソロモンを陥落させる腹だ。
「俺たち第三艦隊は時間稼ぎが目的だ、ただ手を抜いて敵さんにバレたら最悪、ソーラーシステムの展開前に
鏡を全部割られるってこともある、引っ越しの荷物を全部ルナツーに持って帰るハメになるぞ。」
エディ大隊のジム・ボールにエディの通信が飛ぶ、最終ミーティングは出撃前のコックピットでするのが恒例だ。
だが、エディの軽口にも笑う余裕のある者は少ない、各機体のモニターには、不気味な十字の要塞が映し出されている
猛将ドズル・ザビの守護する軍事要塞、さらに決戦ともなればジオンの名のあるエース達も出てくるだろう。
赤い彗星シャア、白狼マツナガ、深紅の稲妻ジョニー・ライデン、アナベル・ガトー・・・
現場の兵士にとって、この戦闘が上層部の思い描くような楽観的な戦闘では決してないのである
宇宙世紀0079:12月24日、ソロモン会戦が開始される。
連邦の先行部隊によりビーム攪乱幕を展開、要塞設置の主砲が無力化されたことにより、ジオンは艦隊を発進、
水際の戦力を分散させることに成功する。
第三艦隊のモビルスーツ部隊はいくつかに別れ要塞を襲撃、別働隊の第二艦隊がソーラシステムを展開するまで
時間を稼ぐのが任務だ。
「各人、時計合わせ。3・2・1・・・スタート!」
全員がシステムの、そして手持ちの時計のアラームを合わせる。今からきっかり一時間後、
ソーラーシステムが照射される。
それまで敵を要塞に釘付けし、時間直前に離脱する、時計を見ながらの戦いに緊張が走る。
その時に逃げ遅れると味方の武器で焼かれる羽目になる、かといって時間が来たからといって撤退する敵を
ジオンが放っておくはずも無い、敵との押し引きの間合いが鍵となる。
「エディ大隊、全機発進!」
大隊長の号令と共に、マゼラン1隻、サラミス5隻の艦隊からモビルスーツ・ジムとモビルポッド・ボールが
次々と発進、合計30機が隊列を組み、敵要塞の右上部分にむけて突進する。
他の艦からも次々にモビルスーツ等が発進している、遠目には特徴的な形状のペガサス級戦艦ホワイトベースの
姿も見える。彼らは別働隊、例のガンダムの活躍は見えないか、とジャックは思う。
「まぁいい、俺は俺の戦いをするまでだ!」
エディ大隊の先頭を切ってシャークシールドのジムが進む、その目標点の要塞部から、次々に光点が発進していく。
来た、敵モビルスーツ部隊、かなりの数、相手も大隊クラスか。
「フォーメーションα!攻撃開始!!」
ジャック含む前列の6機のジムが一斉にバズーカを放つ、クモの子を散らすように散開する敵モビルスーツ。
先行のジムはそこで分散、自分たちの隊列の中央に穴を開けると、二陣に控えていたボール6機が一斉に砲撃を開始する。
密集した状態での連続砲撃が次々とソロモン表面に着弾、そこでボールはブレーキをかけ停止、固定砲台としての
位置を確保する。
先行していたジムに続き、第三陣のジム・ボール部隊18機が突撃。ジムはマシンガン、ボールは近接戦闘型、
相手の懐に飛び込んで飽和攻撃そ仕掛ける算段だ。
だがジオンもしたたかだ、ボールの砲撃に動揺せず、散開したザク・リックドム部隊が小隊ごとに連携、
手近なモビルスーツを包囲して叩きにかかる。連邦の機動&飽和攻撃vsジオンの連携攻撃、戦闘の空間に
ひとつ、またひとつ、爆発の光芒が咲く。
ジャックはすでに要塞表面近くまで来ていた。ビーム攪乱幕が充満しているため、スプレーガンや
ビームサーベルは使えない。残弾の尽きたバズーカを捨て、モビルスーツ用のマシンガンを装着
敵モビルスーツに銃撃を浴びせる。だが敵も動きを止めず、直撃を盾で巧みに防ぐ、こいつら・・・強い!
先日の攻防戦とは明らかに敵の練度が違っていた。操縦するのが困難なジオン製モビルスーツを
まるで手足のように使い、小隊規模で囲んで倒しにくる。
ドムがバズーカを放ち、ザクがマシンガンの死角からヒートホークをかざして接近、彼らはここで
目標の破壊を確信しただろう、しかしそれはジャックが仕掛けた罠!
突っ込んでくるザクに盾を打ち込む、モノアイスリットを丸ごと破壊するジムの盾。次の瞬間には
ザクはマシンガンの銃撃を浴び、爆発する。その刹那、機動したジムを別のドムのヒートサーベルがかすめる。
油断も隙も無い、一瞬の油断も即、死につながる。考える暇すら惜しんで起動し、戦闘のワルツを踊るジム。
後詰めの部隊の援護砲撃によりなんとかドム2機の追撃を振り切るジャック、そこで振り返り、戦場を見る。
明らかに押されている、砲台の役目を担うボール部隊は敵に接近されると危険度が増す、それを逆手に取り
ボールを狙うと見せて、フォローに入るジムを囲んで倒す。遠距離射撃を防ぐべく閃光弾で有視照準を狂わせ
ボール部隊に切り込むドム。やはり要所で機動力に劣るボールがアキレス腱となり、的確にそこを突いてくる。
「要塞表面に集結しろ!」
エディ大隊長の檄が飛ぶ、広範囲空間の戦闘は敵に一日の長がある、だが要塞周辺に迫られれば敵も
戦闘のみでなく防衛も意識せざるをえない、時計を確認、あと25分!持つか・・・?
足の遅いボールを先行させ、敵の攻勢を食い止めるジム達、その動きにさすがに敵も焦りを見せる。
一斉にソロモン表面に殺到する敵味方モビルスーツ。
要塞表面で味方を待つジャック。しかしその時、彼は背中に冷たい気配を感じ、振り返る。
要塞のハッチから、一機のモビルスーツが姿を現す。銀色に輝く、見たことの無い機体、新型か!
嫌な予感を感じ、即そのモビルスーツに特攻するジム、マシンガンを放つが、レモンのような形の盾に蹴散らされる。
次の瞬間、猛烈な勢いで機動する銀のモビルスーツ。あっという間にジャックとの距離を潰し、体当たりを食らう。
「ぐわあっ!」
ぶちかましを受け、吹き飛ばされるジャック機、次の瞬間にはそのモビルスーツが抜いた両刃のビーム長刀が
ジムを胴薙ぎにしていた。
「ぬ、ビーム攪乱幕か、なるほど・・・」
銀色のモビルスーツ、ゲルググのコックピットで男が呟く。薙いだはずのジムの胴はまだつながっていた。
新型の機体、その性能に気がいって戦場の状況を把握しきれていなかった、攪乱幕がビーム長刀の
威力を弱めていたのだ。
しかし彼の目的はジム1機の破壊ではない、戦場が膠着しつつあるのを見て、彼は指揮から戦闘に仕事を変えた。
大隊長である自分が自ら敵をなぎ倒し、味方を鼓舞し、敵の戦意を潰すために。
ジャックのジムを無視し、連邦軍部隊のまっただ中に突き進むゲルググ、マシンガンを猛射し、
ボールを、ジムを討ち取る。
「カスペン大隊長!」
「俺たちがやります、無理をせずに指揮を!」
ジオン部隊に合流したモビルスーツが声をかける、カスペンがそれに返す。
「私に気を遣ってる暇など無いはずだ、攻勢をかける機会を見逃すな!」
突如現れた強力な新型モビルスーツ、その存在に連邦部隊は明らかに動揺していた。もしあの銀色の機体が
次々と要塞から出てきたら・・・
「させるかあっ!」
銀色の機体が脅威と感じ取り、すかさず突撃するエディ大隊長のジム。こいつが戦場にいるだけで味方は萎縮する
しかし今こいつを倒せば状況は変えられる、敵のモビルスーツとのわずかなやり取りから、この機体の主が
この大隊の指揮官であることをエディは読み取っていたのだ。
マシンガンを撃ち、敵に突進するジム、ゲルググも受けて立つとばかりに機動、盾を前面に構えマシンガンを蹴散らし
ヒートホークを打ち込む、盾で受け止めるエディのジム。、しかし出力の差がありすぎる、そのまま押し込まれる。
その接触を合図に周囲でも激しい軌道戦となる、しかし士気の差は歴然。一機、また一機と落とされていくジムとボール、
もともと撤退する予定だっただけに、不利になると逃げたい衝動がどうしても沸く。それは練達の部隊相手の戦闘で
致命傷になる隙だった。
ゲルググに押し込まれ、どんどん要塞から遠ざかるジム、目の前で自分の部下が次々に戦死していく。
「くっそおぉっ!」
食い込んだヒートホークごと盾を捨て、ゲルググをいなして戦場へ向かう、それは大隊長としての責任感、
しかし機動力で勝る敵に背中を向けることは自殺行為に等しかった。
追撃するゲルググはあっという間にジムに追いつき、とどめの一撃を加えんとす。
その時、カスペンは目の前のジムの陰から、勢いよく特攻してくるジムを発見した。
「野郎おぉぉぉっ!!」
ジャックがゲルググに吠える、エディを救うため、コイツにさっきの借りを返すため、戦場のど真ん中を突っ切ってきた。
ゲルググに体当たりを食らわすジャック・ジム。間に盾を挟み、サメの顔のペイントをゲルググのモノアイにたたきつける。
「すまん、ジャック!頼むぞっ!」
ゲルググをジャックに任せ、主戦場へと飛ぶエディ機。時計を確認、ソーラーシステム照射まであと3分!
間に合うか・・・?
第八話でした。
戦闘シーンは正直文章にするのが難しいです、頭の中で描いた戦闘を文章にしても
読んでる人がその光景を思い浮かべられるかというと・・・正直自信が無いです。
感想待ってます。
マリナがガンダムファイターだったら...という仮定のストーリーを今日書いた分だけですが投下します。
至らないところもあるかと思いますがよろしくお願いします。
簡単に言うと00にGガン的な要素を加えた感じです。また、マリナの設定が原作と違っている箇所もあります。
実を言いますと、ちょびっとだけHなシーンと、決してグロではないですが肉体的な痛みに関するシーンがありますので、もし行き過ぎと言うご意見がありましたら改善しますので教えて下さい。
皇女の戦い 第一話
西暦2307年......太古より続く戦争に終止符を打つ為人類は代理戦争を開始した。
兵器ではなく、MF(モビルファイター)による格闘...「ガンダムファイト」。
勝利した国は四年間地球における覇権を握ることができる。
ユニオン、AEU、人類革新連盟...これら強大な組織を構成している国々もこぞって参加している。
...そしてそれは中東の国家アザディスタンも例外ではなかった...
ここはアザディスタンの王宮にあるシャワールーム。
白い大理石でできたそこはある女性を中心に仄かな花の香りが漂う。
シャンプーでその細い肢体を洗うのは当国の皇女マリナ・イスマイール。
艶と深みを持った長い黒髪はシャンプーの香りを纏わせながらお湯に濡れ静かに揺れている。
清廉かつ雅な顔立ちは穏やかな時に浸りながらもどこか物憂げだ。
無理もない。彼女は皇女でありながらこの国を代表するガンダムファイターとなり、公務と同時にその訓練にも身をやつしているのだから...
「もうじき決勝...」訓練のみならずサバイバルイレブンという時期に挑戦してくる複数の国のファイター達を何とか倒し経験を積み、自信を持ち始めたとは言え不安が残る
やはり強豪達の戦力を全て把握することは当国の情報網をもってしても難しい。
音楽の道を自ら諦めてでも国を守りたくて正式に皇女となったマリナ。一見闘いなどとは無縁そうな彼女はいくら戦争ではないとはいえ身を以てしてでも国の為に尽くす為周囲の反対を強く押し切りガンダムファイターとなった。
まだファイトの制度が影も形もなかった時、命がけで戦っている軍人達や難民達のいる場所に直接慰問に行こうとしても大臣達から止められた。その歯痒さがあっての決心だった。
確かに国内での争いは終わったが、今度こそ、豊かな資源と高度な医療を手に入れて国を豊かにしたいと願っている。
(もっと強くならなければ......誰も守れない...)
小振りな胸に細い手をぎゅっと押し当てる。
彼女の身体は普段王宮にいる時や外交時の服からは少し想像できないかもしれないが、生来の華奢で綺麗な体型はそのままに訓練の成果もありほんのりとだが引き締まっている。
ファイターとしての最低限の動きをする為のトレーニングと、非力さを補う為の合気道と弓の訓練。
鉄球や斧と言った重い装備を扱う機体はやはり彼女には荷が重い。
ファイターの動きが機体に反映されるモビルトレースシステムにはそういう側面もあるが国を立て直す以上耐えなければならない。
非力な彼女には軽量の武器と相手の力を活かす合気道が必要不可欠だった。
「マリナ、また物思いに耽っているの?」
低く怜悧な馴染みのある声に振り替える皇女。
「シーリン?待って今上がるわ。」
今まで自分が考えていたことを悟られたかのような気がして気恥ずかしくなり、慌てて身体を拭くと就寝用の服に着替えて廊下に出ればそこには声の主が立っていた。
「あまり考えすぎると戦いに影響するわ。今のあなたは普通の皇女ではないのだから...」
そこに長年の関係故の優しさを感じて微笑を浮かべるマリナ。
「ありがとう。でも大丈夫よ。貴女やみんなの力があったからここまで来れたし...最初の時の私ではないわ...」
「だと良いのだけれど...」一瞬穏やかな笑みを浮かべたがどこか思案の色が残るシーリン。
彼女は知っていた、マリナには生まれ持っての甘さが多少残っていることを。
「お休みなさい、私達のガンダムファイター...」
ゆったりと、だが凛とした足取りで寝室に戻るマリナを淡々とした声で見送った。
今日書いた分はここまでです。
また時間のある時になるべくコンスタントに書けたら良いなと思います。
それでは。
すいません、トリップミスなので変えました。
失礼しました。
おやすみなさい。
お二方乙です。
三流(ry氏さん
個人的にですけれど、視点移動が目まぐるしくてちょっと混乱してしまうことがあります。
けれど、それが文章のスピード感に繋がっているとも思うので、上手い落としどころを見つけられればなと。
僭越ですが。
彰悟氏さん
まさかのマリナ様ファイター化に戸惑いが隠せませんでしたw
オービタルリングがプロレスリングになるんですかね
続きを待ってます。
ところで、自分の環境ではスレ容量が466KBになってます。
これはこのスレの頭の方で議論されていた通り、ワッチョイ導入で次スレを立てたほうが良いですか?
いかんせんこのスレを覗き始めたのは最近なので勝手がよく分かっていません。
誰かレスポンスお願いします。
こっちは432kb
ちょうど次のssが来たら十分な感じになるってかんじ
次投下する人が立てればいいんじゃないかね
ワッチョイいる?
ワッチョイは自分は特に要らないかなあ
読者の立場だけど、荒らしは内容ですぐ分るし、投下してくれる職人さんがワッチョイで基地外に他スレまで粘着されても申し訳ない
今のところ荒らしも現れてないし、要らないんじゃね
次で前みたいにあらしが酷くなったら再度検討ってことで
――艦これSEED 響応の星海――
「敵影発見! 攪乱酷くて数補足できないけど・・・・・・13時方向、距離15に敵の増援だよ!!」
「10時方向から魚雷接近、数9!」
「ト級砲撃! 直撃コース来るぞ!」
三日月陰る深夜3時。
曇天で光源に乏しい大海原。一寸先だってまともに視認できない暗闇で、佐世保の命運を賭けた防衛戦が開始されて早6時間、榛名率いる第二艦隊は敵侵攻部隊の第4波襲来を感知した。
現在、単縦陣にて同航戦。左舷は敵雷巡隊に、右舷は敵軽巡隊にと阻まれている格好にあり、このまま前進すれば敵増援に頭を抑えられる状況下にあった。早い話が、包囲寸前の絶体絶命である。
しかし、榛名の顔にはまだ余裕があった。
「取舵30、第一戦速で回避。木曾と瑞鳳はそのまま右舷ハ級群に火力を集中。響さん!」
「了解。響、突撃する」
状況だけを見れば確かに劣勢。だが、この程度ならまだまだ余裕で切り抜けられると確信していた。
敵第3波の生き残りも残り僅か、第4波到着前のこの攻防で片付けられるだろう。
「Урааааа!!!!」
響が吠え、単身最大戦速で左舷側、雷撃戦を仕掛けてきた深海棲艦の群れに突っ込んだ。
苦し紛れに魚雷を撃ってきた化物3体がターゲット。前衛に軽巡ホ級が2、後衛に雷巡チ級が1、そのどれもが手負いだ。
左腕に装備した12.7cm連装砲B型改二でホ級に牽制しながら、扇状に放たれた魚雷の隙間を勘と経験頼りにスルリと滑り抜けた響は、あっという間に中央のチ級に肉薄する。
「ギ、ギッ!?」
「無駄だね」
白い仮面で覆われた頭部と、右腕に装備した盾のようなパーツが特徴的な深海棲艦は甲高い呻き声を発し、後退して更に魚雷をバラまこうとした。
しかし、もう遅い。
艤装に備えられた超重量の錨(いかり)を投擲し、チ級を弾き飛ばし絶命させた響はそのまま速度を落とさず、
一息で防御態勢に入っていたホ級の間を抜ける。同時に反転、両脇に備えた61cm四連装酸素魚雷発射管から一発ずつ、無防備な背中めがけて魚雷を射出した。
直後、爆発。
「ガ、ア゛ァァァァッーー――・・・・・・・・・・・・」
まともに喰らえば戦艦だってただでは済まない一撃に、深海棲艦達は赤々とした爆炎に包まれる。更に、その光を頼りに標準を定めた榛名の35.6cm連装砲が火を噴き、左舷敵雷巡隊は完全に沈黙した。
その間わずか十秒。
速さだけが取り柄の駆逐艦の身でありながら、熟練の早業で格上の巡洋艦クラス3隻を手玉にとった響は、涼しい顔で錨を回収しながら木曾達に合流する。右舷ト級群はとっくに全滅していた。
どうやら全員が無傷のまま、第3波の撃退に成功したようだった。
「おつかれさま―。大丈夫? 怪我ない?」
「大丈夫だよ。全然」
「瑞鳳、敵増援はどうなっている?」
「あ、ええと・・・・・・うん視えた。こっちに向かってるのは・・・・・・戦艦ル級3、重巡リ級4、軽巡ヘ級6、駆逐ロ級6、駆逐ニ級10――かな、多いなぁ。方位0-3-5に向けて20ノットで進行中」
「松島方面か・・・・・・使えるな。榛名」
「十字砲火でいきましょう。榛名達はこのまま敵陣右翼後方につきます。木曾は信号弾を」
「応」
状況はそう悪いものではなかった。
長崎半島周辺を守備する第二艦隊は、開戦当初こそ敵侵攻部隊のあまりの数に泡食ったものの、後方火力支援隊の尽力もあって、迅速かつ安全に殲滅することができたのだ。
その後も第2波、第3波と大部隊が押し寄せてきたものの、長年のチームメイトでもある彼女達は今まで迎撃戦を主体にしてきたという経験もあって、苦もなく戦い続けることができていた。防衛ライン構築にあたり構成員
をシャッフルされた第一艦隊と第三艦隊と異なり、人数こそ減ってしまったものの「いつものメンバー」のまま据え置きで運用されることになったのも大きい。
阿吽の呼吸によるコンビネーション攻撃は、彼女らの一番の武器だ。
「しかし大盤振る舞いだね今夜は。なにか良いことあったのかな」
速力と防御力を活かした近接格闘戦を得意とする、特三型駆逐艦二番艦の響。
「借金取りにでも追われてるんじゃないか。なんにせよ、オレに勝負を挑む馬鹿は三枚おろしだ」
長距離雷撃戦と対空戦を本領とする参謀役の、球磨型重雷装巡洋艦五番艦の木曾。
「そうだ。今のうちにお弁当食べる? 私も大盤振る舞いして特製卵焼き、たくさん持ってきたんだから」
艦載機を使役して艦隊の「目」となる攻防の要、祥鳳型軽空母二番艦の瑞鳳。
「あら、いいですね。榛名はこの前のダシ巻きが気に入ったのですけど、ありますか?」
そして圧倒的な砲撃能力と継戦能力を備える、リーダーの金剛型戦艦三番艦の榛名。
佐世保の遊撃担当であった面々は、この現状では最も安定した戦力となっていた。
すいません。
本文中にNGワードがあるみたいなので、調べる為に投下を中断します
当然だ。この状況で不安にならない方がおかしい。明るく気丈に振る舞っていても、なにより瑞鳳は航空母艦で
ある身、艦載機を発艦できない闇夜では自衛すらままならない艦なのだ。辛うじて水上夜間偵察機は飛ばせるので「なにもできない」というわけではないが、その不安も一入だろう。
加えて、第二艦隊はここまでは思った以上に順調にきているのだ。その事実は他の艦隊を気にする余裕と、逆に「こんなに順調でいいのか」という焦燥感を醸しており、それを感じているのはなにも瑞鳳だけではない。
夜の海は気分を滅入らせるものだ。・・・・・・舞鶴には夜になるとテンションが上がる艦娘がいるらしいが。
「大丈夫ですよ」
榛名はしいて明るく前向きに応えた。
「まだ【Titan】が現れたという報告は来てないわ。大丈夫です。金剛お姉様達も、山城さん達も絶対に」
五島列島周辺を守備する第一艦隊――金剛、翔鶴、多摩、雷、電――からも、佐世保湾正面を守備する第三艦隊――山城、鳥海、暁、白露――からも、まだ誰かがやられたという報告も、強敵が現れたという報告もない。
軽傷者は何人か出ているが、皆健在の筈だ。
西に機動性に優れた第一を、東に同じく高機動な第二を前衛として展開し、北に火力に優れた第三を後衛として鎮座させるこの鶴翼の陣は、まだ崩れていない。これを維持できている限り自分達は大丈夫。
それに、と榛名は言う。今までは手ひどくやられっぱなしだったが、今回はしっかりバックアップを整えた陸を背にした防衛戦。いつもの孤立無援な沖とは違うのだと。
残りもたかが17時間。遠くインド洋で戦った時のことを思えば、これくらい。
「仮に現れたとしても、勝手は榛名が赦しません! 【Elite】だろうと【Flagship】だろうと【Titan】だろうと、要は先に叩けばいいんです。そして榛名達ならそれが可能です」
「流石は榛名。そうこなくっちゃな」
「現れないに越したことないけどね」
みんなが内心の恐怖とも戦っていることは重々承知。それが少し溢れたからって的外れな叱責なんてするわけないし、ここは率先して気持ちを共有して元気づける場面だ。
――たとえ空元気であろうと、Titan相手なら苦戦は免れないことを知っていても、皆を励ましてこそのリーダーである。
世話焼きたがりのお姉さん気質であるからこそリーダーに選ばれた榛名は、持ち前の明るさを発揮して叫ぶ。
「そしてなにより! 金剛お姉様は!! 無敵です!!!!」
「・・・・・・えぇー」
「そこで個人、なのかい・・・・・・」
盛大に滑った。
「え、ダメですか?」
「駄目だろ。お前達姉妹じゃなきゃ通じないだろ、そのまじないは」
「そうですか・・・・・・」
「そうだよ。・・・・・あぁしょげるなしょげるな頼むから」
金剛四姉妹はこれだから、と木曾は思わず頭を抱える。
基本的にみんな優秀でイイヤツなのだが、長女である英国生まれの帰国子女・金剛に心酔――もとい絶対の信頼を寄せていて、それはいいのだが「他者もきっとそうだろう」とナチュラルに思っちゃうところが玉に瑕。
金剛自身は紛れもなく人格者で凄いヤツなのは認めるが、台無しだよと叫びたい気分の木曾だった。
「――ふふ、ありがとみんな。元気でちゃった」
ただまぁ、それでも一定以上の効果はあったようで、瑞鳳の口元には若干の笑みが戻っていた。
響も木曾もつられて、苦笑じみた微笑みを浮かべる。
どうやらリーダー渾身の自爆によって、少女達の不安も道連れにシリアスな空気は轟沈したようだった。「不本意です。あそこはバッチリ決めたかったです」とは後の榛名の談。
「士気を落とすようなことを言って、ごめんなさい。もう大丈夫よ」
「そ、そう・・・・・・。それならよかったです。・・・・・・さて――」
響によしよしと頭を撫でられていた榛名も立ち直り、いつもの和気藹々とした雰囲気が復活した。
もう怖い物はなにもない気分だった。
「――所定の位置についたわ。面舵60、微速前進。総員砲雷撃戦用意。」
そうしてタイミング良く、第二艦隊は次の戦場に到着する。
おしゃべりの時間は終わり。
榛名の号令に従い、速やかに戦闘モードに切り替えた面々は深海棲艦の連中に鉛玉をブチ込むべく、主砲の照準を合わせていく。その瞳にはギラリと戦意が煌めく。
気分は上々。不安や恐怖に囚われることなく戦いに赴ける心持ちは、戦士にとっては一番に大事にしたいものだ。精神状態が生死に直結していることを身に持って理解している少女達は、先のやりとりに密かに感謝した。
「戦車隊発砲まで、残り10秒。同時に突っ込むぞ」
「了解」
目の前に広がる暗黒の海。
このわずか2マイル先に計29隻もの深海棲艦が、自分達に背を向け北進している筈だが、ここからでは視認できない。後ろに回り込むべく隠密行動で航行していたのだから、当然偵察機や探照灯は使用できず、
事前に計測した結果が正しいことを信じる他ない。
向こうも此方には気づいていないことと、進路と速度に変わりがないことを祈りつつ、戦闘開始の合図を待つ。
艦娘も深海棲艦も、暗視能力までは持ち合わせていない。これは賭けだった。
そして――
水平線の向こう、8マイル離れた東の地から、遠雷のように重い砲撃音が轟いた。
一拍置いて、2マイル先の海が文字通り火の海となる。
何十何百と打ち出された徹甲弾と焼夷弾が、木曾の信号弾によって指定されたポイントに雨霰と降り注ぐ。続けて照明弾。暗闇に閉ざされた海上に、辺り一帯を照らす小型の太陽が生まれた。
「ビンゴ!!」
「報告!」
「戦艦ル級――1隻小破。重巡リ級――1隻中破、3隻小破。軽巡ヘ級――全滅、駆逐ロ級――2隻撃沈。駆逐ニ級――全滅!!」
沿岸部にずらりと整列した対深海棲艦用の最新国産主力戦車、その主砲である40口径145mm滑腔砲から吐き出された弾丸の数々が、敵戦力を次々と削り取っていく様が浮かび上がる。
戦果も上々。先んじて偵察機を飛ばした瑞鳳からの報告に、賭けには勝ったと榛名は膝を打つ。
「全艦斉射後、分隊。一気に制圧します!」
「測敵良し!」
「照準良し!」
「――てぇーッ!!!!」
畳みかけるように、榛名達もそれぞれの主砲と魚雷を打ち込んだ。
東の八朗岳麓に待機していた戦車隊と、南の榛名達との十字砲火。奇襲を受けた深海棲艦は状況を正確に認識することもできないまま、あっという間にその頭数を半数以下にさせられる。残り、12隻。
ここまで減らせれば充分、むしろ予想以上の戦果だと、木曾は再び信号弾を撃つ。
撃ち方止め。
その要請に従って焼夷弾を最後に戦車砲は途切れ、木曾と響は更に魚雷を射出しながら接近する。この一連の連携こそが、佐世保の防衛がここまで上手くいっている要因であった。
国土防衛の要である戦車隊の後方火力支援によるバックアップ。
入院中の二階堂提督が、持てるコネクションと権力をフル活用して九州北西部に揃えた決戦用の布陣。いつもの孤立無援な沖での戦いとは異なり、陸を背にした防衛戦だからこそ採択できたもの。
これにより戦局を有利に進められるからこそ、佐世保守備軍は戦力の差をものともせず敵を撃退できるのだ。
誘い込んで一網打尽。古来より防衛側のほうが有利なものだ。
因みに、最新鋭の40口径145mm滑腔砲といっても深海棲艦を撃滅できる程の威力はない。
量産できる陸上戦車の主砲としては破格の威力だが、所詮は艦艇でいうところの軽巡の主砲に毛が生えたようなもので、敵の主力である重巡級、空母級、戦艦級を墜とすには少々心許ない。
その分多種多様な弾頭を速射することが可能で、これにより人類の主力である艦娘を援護することこそがコンセプトである。
「響、お前は右から回り込め。追い込むぞ!」
「Всё ништяк!!」
そうして打ち込まれた焼夷弾と照明弾によって轟々と照らされた目標に向かって、木曾と響は左右に散開。敵の混乱に乗じて挟撃し、釘付けにする算段だ。
しかし敵もさるもの、接近に気づいた個体が素早く戦闘態勢を整え、おぞましい奇声を上げながら反撃してきた。
「おおっと!」
「当たらないね」
山なりの軌道で降りかかってくる敵砲弾を、タイミングを計って小刻みに機動することで器用に回避。とにかく狙いを絞らせないように動きまわり、時には急制動・急加速して着弾位置をずらしていく。
二人は敵を中心に円を描くようにして対角線上から砲撃。
響は右肩の10cm連装高角砲を、木曾は左肩の25mm三連装機銃を速射しながら、徐々に距離を詰めていく。更には遠方の榛名が二門の41cm連装砲で追撃し、一隻一隻確実に撃破していった。
これで敵残存戦力は、戦艦ル級2、重巡リ級2、駆逐ロ級1、駆逐ニ級4。いずれも小破以上の損傷を負っている。
機動戦に持ち込まれて長引いては厄介だ。一気呵成に、一歩も動かさないまま決める。
だが物事はそう狙ったようにはいかない。
「――ッ!」
「!! おい!?」
ここでル級が動く。
両手に一つずつ携えた、巨大な甲羅のようなシールドから四門ずつ突き出された砲口が火を噴き、後衛の榛名と瑞鳳の至近距離に水柱が立ちのぼる。ちょこまかした響達前衛を無視して、鬱陶しい後衛から潰すつもりか。
他の深海棲艦達もそれに習い、火砲を榛名達に集中させる。
そうはさせじと、響が加速。
鋭角なターンで接近し、焼夷弾の影響で未だ燃え上がる海も、木曾の制止の声すらも無視して突撃。こっちを見ろとばかりに乱射する。
響が得意とする、超至近距離での機動戦で囮となり注意を引きつけるつもりだ。仕方なく、木曾もそれに乗じた。
二人で急接近と急離脱を繰り返し、後衛に対する砲撃を中断させる。
ここまでは少女の計算通りだ。
だが、そう、物事はそう狙ったようにはいかない。
「響!!??」
「・・・・・・この!!」
全ての砲がたった一人、響のみに集中する。
耳鳴りがする程に重なった砲撃音。幾十もの砲弾が、幼い少女を粉々にせんと降り注ぐ。対する響は艤装への負担を度外視して一気にトップスピードへ。防盾を構えながら45ノットで疾走しつつ弾幕を張り、魚雷で敵集団
をばらけさせようとする。はずみで幾つかの敵を撃墜しながらも、粘り強く砲撃圏内から逃れようとした。
しかし、ル級の砲弾が一つ、響の足下に着弾する。
最高の火力と最高の装甲、人類で言うところの戦艦の特徴に見事に合致するル級の一撃は、深海棲艦の中でもトップクラスの破壊力を秘めている。直撃こそ避けられたものの、あまりの衝撃により響の小さく軽い身体は、
大きな水柱を伴って空高く吹き飛ばされた。ふわりと、上空30mの高度で滞空する。
ル級が、無造作に無防備の響を狙う。当たれば駆逐艦の響はひとたまりもない。
「チィ!」
響は咄嗟に、錨を前方下側に投擲、左腕と右肩の砲を後方上側に向けて撃った。
直後にル級の砲撃。
「ぐぅうううう!!!!」
呻きながら、響は必死に錨と艤装を繋げる鎖を握る。
掌の皮をまるごと持って行かれそうになりながらも鎖をピンと張り詰めさせた、空中で踏ん張りのきかない少女の身体は、錨の重量と運動エネルギーに引っ張られてガクンと降下。
同時に放った砲の反動と、木曾の牽制射撃も手伝って、ル級の砲弾は響の黒帽子を道連れに虚空へと消えていった。
続けて、錨を再度投擲。
「――Урааааааа!!!!!!」
「!? 無茶だ、退け!! ・・・・・・クソッ!」
九死に一生を得た少女は、榛名と木曾の猛攻を受ける敵群に再度突撃する。
衝撃で軋む骨格を無視して投擲した錨はリ級に絡みつき、響は渾身の力で鎖をリリースして落下速度そのまま、『着地』がてらドロップキックをかました。
甲高い悲鳴と水しぶき。更に12.7cm連装砲と10cm連装高角砲を接射、此方に背を向けていたロ級もろとも蜂の巣にし、少女はようやく着水する。
残存、戦艦ル級2隻のみ。
しかしそこまで。
着水し、身を屈めたままの響の頭部にゴリッと、ル級の砲口が押しつけられる。
回避も防御も絶対不可能。誰が見ても「これは死んだな」と確信する状況。直後の未来を予測して、響は俯いた。
いや、正確には全体重を両手の指先に集めるようわずかに重心をずらした。
その様はまるで、クラウチングスタートでもするかのような。
「――おォッ、ラァ!!」
「・・・・・・ギィ!?」
スパリと湿った音を立てて、ル級の腕が切り落とされた。
振り抜かれた刀身が、炎を映してキラリと瞬く。それは、木曾の軍刀。背後から稲妻のように接近した、彼女の最後の切り札であった。青とも黒ともつかない液体をまき散らし、巨大な盾が海に没する。
洋風のサーベルで隻腕にされたル級は思わず後退、もう一方の盾を掲げて追撃の横一閃を防御する。
「・・・・・・?」
しかし、手応えがあまりにも軽い。更なる斬撃も来ず、一瞬、不自然なまでの静寂が海を支配した。
何か来るとル級達が身構えた、その時。
榛名の41cm連装砲と35.6cm連装砲が、背後からその胴体を真っ二つにした。
敵第4波、全滅。
榛名の砲撃を予期して一目散に離脱した響と木曾は、揃って安堵の溜息をつく。ギリギリではあったが、辛くも綱渡りは成功したのだ。
今回も全員無事である。
「Спасибо。助かったよ」
「こんの、馬鹿野郎が!! たまたま間に合ったから良かったものを!!」
安心するにはまだ早かった。
余韻もなにもなく、お折檻の時間が始まる。
「信じていたからさ。おかげでさっさと終わらせることができた」
「そういう問題じゃねぇ。いくら突撃癖があるっつってもな、それがいくら有効的だろうとな、此方は心臓が止まるかって思いなんだぞ、毎回」
響の反論をピシャリとシャットアウトして、木曾は正しく怒る。
今回ばかりは、怒鳴らざるをえなかった。
そう。別に響が囮になって危険な橋を渡らなくたって、この戦闘は無事に勝利することはできたのだ。
榛名も瑞鳳も、あんな砲撃に当たるほどノロマではなく、当初の予定通りに付かず離れずの砲撃戦をしていればそのまま終わらせられた戦いだった。
それを仲間が攻撃されたからってムキになって自らを危険に晒すなど、言語道断。確かに予定よりも早く戦い終わったが、それより安全な戦法を採択するほうが何百何千倍と重要だ。最近はなりを潜めていた後先考えない
無茶無謀な突撃戦法を目の当たりにして、それをなんとも思っていなさげな少女の態度を目の当たりにして、木曾はなんとも言えない気分になる。
木曾はこの目前の、しゅんとしていつもより小さく見える駆逐艦のコイツは、なんで突撃癖があるのだろうと思う。通常の砲雷撃戦でも並の駆逐艦よりずっと強いのに、どうも接近戦に拘っている節があるように感じるのだ。
それはいい。冷静であり、かつ軽巡級程度が相手ならまったく危なげなく処理できることは知っている。
だが、特に仲間が危機に陥ると暴走しがちだ。それはまるで特攻のようで、戦い方が乱暴になる。それでいて敵は確実に仕留めて、なにがなんでも生還するのだから、生きたいのか死にたいのかも判らない。
時たま「突撃隊長様」と揶揄することはあるが、なにも特攻しろとは言ってない。今後も絶対言わない。
実際、響が空に投げ出された時は心臓が凍るような思いだったのだ。もうあんなのはゴメンだと木曾は頭を振る。
「とにかく。あんま心配させてくれるな。突撃も結構だが、誰かに頼まれた時だけにしろ。もっと仲間を信じろ」
「っあぅ・・・・・・、ごめん」
木曾はデコピンして、この話はここまでだと少し焦げたマントを翻し水上を滑る。もっと何か言いたげなようだったが、榛名と瑞鳳と合流しなければならない。遠くで二人が手を振っているのが見えた。
響はあんまり痛くないおでこを抑えながら、その後に続く。
(・・・・・・そういえば、なんで私は接近戦に拘るんだろう)
そして密かに自問する。
自分で自分のことが解らないのはいつものことだが、木曾からのお叱りを受けてふと、響は自分の根源に疑問を持った。
接近戦には自信がある。
艦娘の戦法は独自の艤装と素質により決定づけられるもので、艤装は人それぞれの特徴があり形も装備もバラエ
ティ豊かだ。その点、特三型駆逐艦は艤装に防盾と錨が標準搭載されていて、持ち前の身軽さとスピードも相まって接近戦向けと言える。
自分には素養と適正がある。
姉妹の暁・雷・電も同様で、今は呉鎮守府にいる師匠からは格闘戦の手ほどきも受けたこともある。
だが師匠は、接近戦は護身用、最後の手段だと言っていた気がする。姉妹も師匠も、サーベルを持つ木曾だって、積極的に仕掛けることはしないのだ。
思い返せば、自分だけなのだ。日常的に積極的に接近戦を仕掛ける艦娘は。
(あいでんてぃてぃーってヤツなのかな、これは)
それは困った性質だなと、響は他人事のように分析した。
『本当の理由』を知っていながら、それを知らん振りをして。
確かに今回は無茶無謀だった。それは認めよう。自分自身、もうあんなのはゴメンだ。でも身体が勝手に動いてしまうのだ。これを制御するのはなかなか骨だなと思う。
もっともこの突撃癖はもう周知のもので、提督も榛名もそれを前提とした戦術を組むことは多々ある。敵が少数で駆逐級、軽巡級であれば殲滅してこいと送り出されるのが主だ。
そういえば戦艦級相手に立ち回ったのは久しぶりだっなと、今になって身震いがした。
本当にアレは、死ぬ一歩手前だ。それが二回連続で。
とりあえず当面は、木曾の言うとおり控えようと思った響だった。
「――なんですって!?」
「わっ! なに、どうしたんだい」
考え込んでいるうちに合流していたのだろう、気づけば目前にいた榛名が、珍しく大きな声で瑞鳳に食い掛かっていた。
全員無事に敵第4波を撃退したというのに、榛名は誰の目でみても明らかに焦っていた。信じられないという一心で、沈鬱な面持ちの瑞鳳の肩を掴む。
まさか、もう第5波が来たのか。だが、それにしては様子がおかしかった。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔の木曾と響は、なにごとだと戸惑うばかりだ。
「・・・・・・うん、間違いない。このスピード――どうしよう榛名。このままじゃ・・・・・・」
「なんだ。なにがあった」
「それは――」
瞬間。
一条の閃光が、煌々とまっすぐに。榛名達の頭上の空気を灼いた。
遅れて、ヴァシュウッ! と、特徴的な擦過音が耳を打つ。
それは、聞き慣れた実体弾とは異なる音。それは、最近になって聞くようになった音。
それが意味するものは。
「・・・・・・【Titan】」
「おいでなすったか・・・・・・!」
深海棲艦にはランクがある。
通常のものよりも強い個体を【Elite】、群を統括する個体を【Flagship】と呼称する。
更に上位種に【姫】や【鬼】が存在するが、長らくこの【Elite】と【Flagship】の二種が、全ての海域に複数生息する、あまりにも強い敵として提督達を悩ませたものだ。
そして。
例の隕石が落ちてから出没するようになった、佐世保がここまで追い込まれることになった一番の原因。
10mまで膨れ上がった巨体で、荷電粒子砲や高誘導高速ミサイルを自在に操る、新たなる強敵。未知の機械を取り込んで異常進化を遂げたコイツこそが、二階堂提督が暫定的に【Titan】と名付けた新種の深海棲艦だった。
コイツの為にいったいどれほどの犠牲があったか、考えるだけで腸が煮えくりかえるようだった。
「6時方向、距離10。・・・・・・すごいスピードでこっちに来てるよ」
「弾が足りないよ」
「速度も射程もヤツのほうが上だ。コンテナに戻る前に追いつかれる」
「でも、ここで待ち受けることもできないわ。第五戦速で後退します。木曾は信号弾を」
今のままでは到底勝ち目がない。
弾薬がない砲塔はただの鉄屑だ。
続けざまの戦闘、予想よりもずっと速い敵の襲撃、このまま戦艦よりも硬い巨人などできるはずもない。
そう即座に判断した榛名は東に舵をとる。目指すは8マイル離れた八朗岳麓だ。
「囮もなにも使わず皆でただ逃げる。そうだな」
「ええ。逆襲はその後です」
先ほど火力支援をしてくれた隊を頼るほかなかった。途中で追いつかれるだろうが、そこからは戦車隊の善戦に期待するしかない。まずは補給しなければ。
「行きます!」
榛名達にとっては二日ぶりの、三度目となる【Titan】との戦いは、撤退戦から始まった。
「くそ。なんて射程だよ」
「10mあるんだもん、私達よりずっと遠くまで視れるはずよ。・・・・・・羨ましいなぁ」
「ただでさえお前は小柄だもんな」
「ほ、ほっといてよぅ」
小柄な軽空母こと瑞鳳の最大速度である33ノットに準じた第五戦速(30ノット=約55km/h)で蛇行して、荷電粒子ビームを避けつつ愚痴を言い合う。
艦艇に準じた能力を持つ艦娘や深海棲艦といえども、通常の艦艇に明確に劣っているものがある。それは全高の低さに起因する、索敵能力の低さだ。
艦娘も深海棲艦も大体人間サイズ、つまり視認できる水平線は3マイル未満だし、電探も4〜5マイル程度に制限される。必然的に交戦距離は3マイル前後となり、これにもう慣れきっていたのだが、10mの巨人が相手とな
ると話は違ってくる。Titanなら目視で6マイルは見通せるだろう。
文字通りスケールが違う。索敵とは、高いところになければ性能を発揮できないものなのだ。
こちらからは見えないが、敵はもう自分達を完全に射程内に収めている。
夜目が利かない筈なのに、驚くべき精度だ。
今が夜でなければと、瑞鳳は歯がみした。
アウトレンジ攻撃は空母の華にして専売特許。それを踏みにじられた気分だった。
「追っかけてくるのは、あの一体だけみたい。やっぱり【Titan】は単独行動なんだわ」
「ならば打つ手はありますね。複数体ならどうしたものかと思ったのですが・・・・・・火力の限りフルボッコです。お姉様直伝のフルバースト、今こそお披露目です!」
「・・・・・・時々金剛さんが提督に怒られてたのって、まさかそういう?」
だが、今は自分のできることをできる限りやらなければ。
恐怖に押しつぶされそうな心を雑談で誤魔化しながら、瑞鳳は索敵と警戒に専念する。さっき泣き言を漏らしてしまったからこそ、全力で突破口を見出そうとよくよく目を凝らす。
偵察機のキャノピーを通じて飛び込んでくる視界には、鎧のような装甲やパイプ、謎のシリンダーを取り込んだ巨人の姿が確認できた。右手には大型のライフルが握られており、そこからビームが次々と射出される。
差し詰め、ビームライフルといったところか。
左肩にはミサイルポッド、背部には青白い炎を吐き出す推進ユニットを背負っていて、一目で今までの深海棲艦の装備とは趣が違うことがわかる。まるで、人類が造った機械をそのまま身につけているようだ。
「砲撃、来ます! カウント5。・・・・・・3、2、1、今!!」
「くぉ・・・・・・!」
「心臓に悪いね、これは・・・・・・」
瑞鳳が叫び、艦娘達は大きく進路を変えてビームを回避する。
超高熱のビームは海面に着弾すると同時に、小規模の水蒸気爆発を引き起こす。必要最低限の機動で回避、とはいかなかった。
急制動・急加速によって着弾位置をずらす常套手段も使えない。実弾相手なら、この遠距離なら、山なりに頭上
から落ちてくる砲弾の座標さえ避ければよかった。しかし、縦軸さえ合っていれば直進する光の矢は容赦なく背中から貫くだろう。どんなに遠距離であろうと、なにがなんでも横軸をずらさなければ回避できないのだ。
砲撃音を聞いてからでは間に合わない、いつもよりずっと体力を使う回避動作。
特徴的な擦過音がただ通り過ぎるのを祈るしかない。御札が欲しいと切実に思う。
「ミサイルも来るよ! 数は10!」
「対空用意!!」
そうして逃走劇を始めて、5分が経った。
実弾砲と魚雷による戦闘とはまるで勝手も次元も違う、ビームとミサイルによる猛攻に追い立てられた第二艦隊は、当初の予定からは相当外れた航路を進み、ついに追いつかれてしまった。
最大にして唯一の誤算は、巨人達の速度が予想よりもずっと速かったことに尽きる。
背部推進機関によって戦車砲さえも機敏に避ける巨体は、孤立無援となった第二艦隊の前に壁となって立ちはだかる。
「この・・・・・・!」
木曾が毒づいて、左肩の25mm三連装機銃を向けた。しかし、ミサイル迎撃に酷使されたそれは既にすっからかんの鉄屑である。
それでも、構えずにはいられなかった。まともに戦うことも許されずに敗北するなど、認められるものではなかった。
「ッ、みんなは! 榛名が!! 護ります!!!!」
「・・・・・・諦めるにはまだ早いさ!」
まだ弾薬に余裕があった榛名と響が腹をくくり、火力の有りっ丈を巨人の右腕に向けて放つ。ビームライフルさえ封じればまだ活路はある。今までもそうやって倒してきたのだ。
しかし。
「学習しているとでも言うの・・・・・・!?」
「まだだ!!」
【Titan】は左腕を突き出し、ライフルを庇った。
代わりに左腕はズタズタに引き裂かれ使い物にならなくなったがそんなもの、こちらにとっては何も嬉しくない。弾を無駄に使ってしまったショックのほうが断然大きかった。
当然そんなことで挫けちゃいられない。今度こそと二人は散開し狙いを定めるが、今度は【Titan】が背部推進機関を噴かして跳躍、巨体に見合わない俊敏さで上空へ回避するとともにライフルを榛名に向ける。
「――!!」
――避けられない!
榛名は直感する。いつも当たって欲しくない事ばかり当てる戦士としての直感は、お前はここで死ぬと耳元で囁いてきた。上空の巨大な砲口を見上げ、一拍思考が停止する。
音が遠くなる。後悔の念だけが押し寄せる。
瑞鳳が、夜であるにも関わらす弓に矢を番え、艦載機を出そうとした。
木曾が、思わず足を止めてしまった榛名を庇うべく走り出した。
響が、なんとかして狙いを逸らそうと錨を投擲した。
榛名は、そんなみんなを見て自失から醒め、最期まで抗おうと砲撃しようとした。
そして。
そのとき――
一筋の光条が天から降り注ぎ――
今にも発射されそうだった【Titan】のビームライフルに直撃し、小爆発を起こした。
今回は以上です
どうもNGワードを含んでいた箇所があるようですが、どうにも特定できなかったので
そのあたりをバッサリカットしてしまいました・・・こういう時ってどうすればいいんでしょう?
とりあえず今回の題は、第3話:闇夜の防衛戦になります。
まとめに載っけて頂く際にカットした部分を挿入してもらおうと思います。
自分も超感想欲しいです。
次スレですが、ちょっと外出しなくてはならなくなったので30分後ぐらいに
自分が建てようと思います。お待ちください。
テンプレ変更なし、ワッチョイなしでOKですよね?
・・・・・・すいません。
テンプレに「NGワード書きすぎです。」と出ちゃってスレ建てできませんでした
どなたか代わりにお願いしますorz
立ってるみたいよ
テンプレまだみたいだから案内出さないけど
前スレ378KB、このスレ357KBなのにもう次スレ立てるのか
私のPCじゃもう510KBなんですが・・・どっちに投稿すればいいのか。
ここか前スレに投稿すれば容量が十分に残ってることが分かるぜよ
こういう時は容量高い人に合わせた方がいいの? それとも低い人?
個々人の環境によって容量が変化するにしても、個人的には高い方に合わせたほうが安全だと思うけれど
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第九話 ソロモンの時間、後編
「てえぇぇぇいっ!」
盾を内から外に薙ぐジャックのジム、カスペンのゲルググの胸元を盾先がかすめる。
その反動をアンバックに振り分けて宙返り、スラスターの噴射を合わせて
一気にゲルググの背面に回り込む。
「ぬん!」
腕の振りで後ろに向き直り、ヒートホークを打ち下ろして反撃するゲルググ、
しかしそれもジャックに、いやオハイオ・ジムには織り込み済みだ。
サメ顔の盾で受け止めると、それをいなし捌きつつ反転して蹴りを入れる、かろうじて盾で受けるゲルググ。
「くっ!」
カスペン大佐にとっての誤算は3つあった。ひとつは最新型モビルスーツ、ゲルググの操縦にまだ馴染みが薄いこと。
操作自体はザクと同じだが、反応速度や操縦桿の遊び、取り回しはまるで別物であり、違和感はぬぐえない。
2つにはこの宙域にまき散らされたビーム攪乱膜、ゲルググの特徴であるビームライフルやビーム長刀などのビーム兵器が
軒並み使えなくなっていること、やむなくザクの武器を携帯して出てきたが、照準も握りの感覚も合わない。
しかし彼にとって、そんな戦場での不都合など論じるに足りないことだった。
3つめ、この目の前の連邦軍モビルスーツ・ジムの、そして操縦者の恐るべき技量、これこそが脅威だった。
先読みをし後の先を取る、いわゆるニュータイプとは違う。とにかく先に動いてこちらに何もさせずに制圧を狙ってくる
その為の動きのバリエーション、行動ルーチン、普段からの練度がうかがえるというものだ。
防戦一方になりながらも、カスペンは冷静に反撃の機会をうかがっていた。
「あの盾を振り回すのが行動の起点になっておるな・・・そこから次の行動を読み違えなければ!」
何度目かの盾の大振りから機動をかけるジム、その瞬間にゲルググも動く。読み違えなければ性能はこちらが上なのだ!
ゲルググをジャックに任せ、ソロモン表面で戦闘する仲間のもとに向かうエディのジム、もうソーラーシステム照射まで時間がない。
すでに味方は片手で数えるほどに撃ち減らされていた、敵のモビルスーツ部隊はいまだに20機ほど健在、このままでは全滅も
時間の問題だ。部下たちを助けなければ!ここでエディは思い切った行動に出る。
「全員退避!ソーラーシステムが来るぞーっ!」
通信に絶叫するエディ、「通常回線」を「開いた」状態で、つまり味方のみならず敵にも聞こえるように。
敵味方が一斉に反応する。しかし連邦とジオンでその解釈は全く違っていた。
かろうじて生き残っている連邦兵、つまりエディの部下たちは、このままここに留まって戦闘を続けることが
確実な死を意味することを知っている、味方の攻撃によって。
ジオン兵にとっては違っていた。彼らはソーラーシステムの詳細を知らない。聞きようによってはここに連邦の新手が
来るようにも取れる。何より彼らの任務はこの地点の防衛、何が来ようと迎え撃ち、阻止するのが任務。
一斉に離脱するジム3機とボール2機、ザクやリックドムの多くはその場にとどまり、周囲を警戒する。
しかし反射的に逃げる敵兵を追おうとする者もいる、ザク3機とドム1機、その真っただ中に特攻するエディのジム。
追撃をしようとしていた所に、カウンターの体当たりを食らい激しく弾けるジムとザク、その自殺行為にも見える体当たりに
異常な空気を感じ、動きを止めるほかの追跡者たち。
システムのいくつかに異常を感じながらも、盾を振り回して白兵戦の機動を始めようとするエディ・ジム
しかし思うようには動けなかった、肝心の盾をさっきのゲルググの戦闘で捨ててきていたために。
次の瞬間、ドムのヒートサーベルがジムの腹を貫く、それを引き抜いた瞬間、別のザクのマシンガンがジムに集中する。
爆発までの数舜の間、エディは部下を少しでも逃がせたことに、ささやかな満足感を感じていた。
「ここまでか・・・ジャック、生き延びろよ・・・」
ソロモンに小さな爆発の光芒が咲く。そしてそれがまるでマッチを擦ったように、ソロモンの一角が明るく照らされていく。
カスペン大隊の精鋭たちは、何が起こったのかも分からぬまま、発生した太陽に焼かれ、溶けていった。
ジャックが何度目かの機動を開始した瞬間、ゲルググは腰からあるモノを取り出し、背後に放り投げる。
激しく機動してきたジムが、ゲルググの背後を取った時、それと接触する。
ザク用の兵器、クラッカー。モビルスーツサイズの手榴弾。
「しまっ・・!」
言葉を紡ぐ暇もなく、至近距離で爆発するクラッカー、吹き飛ぶジムに追撃の斧を振り下ろすゲルググ、勝負あった。
システムに甚大な被害を受け、パイロットも衝撃のGで激しく揺さぶられ、意識を飛ばす。
「手ごわかったな、褒めてやろう。」
とどめの一撃を加えんと構えるゲルググ、しかしその時、妙な光が視界に入る。
思わずふりむくカスペンは、信じがたいものを見た。
「な・・・」
ソロモンが輝いている、要塞の一角が、まるで太陽のように。わが精鋭たちが死守している区域が。
その光にあてられるように、失神したジャックが一瞬、意識をともす。
「ソーラーシステム・・・」
その光が消え、宇宙が再び闇に包まれるのに引き込まれるように、再び意識を閉じるジャック。
彼が最後に聞いたのは、一般回線から聞こえる、野太い声の軍人が絶叫しながら部下の名を呼ぶ悲鳴だった・・・
「リック小隊長!フレーゲル中隊長!応答しろ!ザガート軍曹っ!どこだあぁぁぁっ・・・」
懐かしい顔を見た。
叔父や叔母、その周囲の面々。故郷シドニーでの気の合う仲間、旧友たち。
働きに出てたサイド2、アイランド・イフィッシュの工場の仲間、口うるさい上司、同い年の片思いの女学生、
そしてサメジマの兄貴、サラミス級シルバー・シンプソンの乗員たち、その傍らにはエディ・スコット。
そんな大勢の集団が無表情でこちらを見ている。
ふと、一人の男がジャックの横を通り過ぎ、その集団に向かって歩いていく。
背筋の伸びた、少しやせた金髪の軍人。堅苦しい面もあったが、深い情を持つ司令官。
「・・・ワッケイン指令、エディさん、どうして、そっちに・・・」
彼らは遠ざかり、光とも闇ともわからぬモヤに包まれ、そして、消えた。
ジャックは目を覚ます。涙はなかった、ただ深い深い喪失感だけが彼を包んでいた。
上半身を起こし、辺りを目にする。、周囲には無数のベッドとその上に寝る患者。
「おっ、目が覚めたか。」
医師が声をかける、枕もとのカルテを手に取り、言う。
「お前さんは外傷は無かったよ、意識さえはっきりしてればもう大丈夫だ。」
「・・・ここは?」
「ソロモン、改めコンペイトウ、つまり連邦軍の占領基地だよ、その医務室だ。
ああ、戦闘は連邦が勝ったのか、と思うジャック。しかし自分の部隊は・・・聞こうと思ったが、この医師が知るはずも無いだろう。
そのままベッドから起きだし、医務室を出るジャック。
医務室の外は各人が慌ただしく動いている。占領したばかりの敵基地、彼らにもやることはいくらでもある。
彷徨った末、コンソールルームを見つけ、個人情報を画面に出す。
『エディ大隊長、エディ・スコット:戦死』
『第三艦隊司令官 ワッケイン:任務中、テキサス・コロニー方面』
・・・え?
一瞬の驚きの後、悲しみと安堵の両方の感情が押し寄せる。
サメジマの兄貴の意思を共に継いできたエディさんの死、それはソロモンがソーラーシステムで焼かれたのを見た時から
覚悟はしていた。実直で責任感の強い彼なら、あの場に部下を残して生き残ったりはしないだろう。
きっと部下をかばって逝ったろう、その姿を想像して目頭が熱くなる、兄貴とは違った意味で立派な人だった・・・。
ただ、嫌な夢を見た後だけに、ワッケイン指令が健在なことに安堵していた。
思えばルナツーで自分がかかわってきた人物では、もう彼くらいしか印象に残る人物はいなかった。
戦場の後方でふんぞり返っている偉いさんなど知ったことではない、ただ彼だけには生き残ってほしい。
戦争が終わって後、上層部として活躍するのは、ああいう人であってほしかった。
そのまま部屋を出て、自分の部隊の待機室を探しに歩いていく。
後に残ったコンソールの画面が、自動更新され、表示が切り替わる。
『ー第三艦隊司令官 ワッケイン、戦死ー』
第九話でした。実はPCがぶっ壊れて、書いてた分全部トビました orz
>>331さん
感想ありがとうございます。なるほど、場面転換や視点切り替えにも気を使ったほうがよさそうですね・・・
お久しぶりです。
皇女の戦いの続きを書いたので投下しますね。
皇女の戦い 第二話 PART1
「みなさん、お待ちかね!ガンダムファイトに備えて各国の選手達が集まってきております!」
ここは今回のガンダムファイトの開催地イギリス・ロンドン。
荘厳かつ新しいコロシアムには幾多の観客達に見守られながら多くのガンダム達が姿を現している。
空気を裂くようにして突如姿を見せるステルス機能搭載機。
大地を強引に割ってくる一際巨大な機体。
時計塔を天高く飛び越えるジャンプ力重視の機体。皆各国の最新技術をアピールする登場を見せている。
アザディスタンの王宮のテレビにもその雄姿が映し出されている。
「これが今回の代表の機体......」青紫の正装をしたマリナは下ろしていた拳を握る。
以前戦ってドローになった機体、テレビや合法的なネットワークで知っていた機体もあるが、やはり繊細な顔立ちは緊張りつめた心を隠せない。
「......?」突然消えた画面に驚いて振り向けば、リモコンの主はシーリンだった。
「今から自分を緊張させてどうするの?」
首を横に振ると微笑んで「他国の機体を少しでも知っておいた方がむしろ緊張を解せると思って。」
「肩、強張ってるわよ?」言われると恥ずかしそうに苦笑いするマリナ。
「だめね、どうしても下調べみたいなことをしなきゃ気が済まないところがあって。」
一度はすくめた肩をゆっくり張る。
「ふう......それだけの自覚があるのは良いけど逆効果な時もあるわ。責任感に押し潰されたら戦う前に負けるわ。そうなれば傷つくのはあなただけじゃないでしょう?」
口をキュッと結びながら頷くマリナ。「そうね。国のみんなの将来がかかっているものね......」
「そろそろ時間ね。行きましょう、シーリン。」その表情は紛れもなく皇女にしてガンダムファイターのものだった。
皇女の戦い 第二話 PART2
「マリナ様!絶対に勝って!」「必ず我々に資源を!」「ご武運をお祈りします!」
首都に住む多くの人々が王宮に集まり出発前のマリナを出迎える。幼い子供含め老若男女あらゆる人々が皇女に声援を送り、そして望みを託している。公務やファイトの修行の合間を縫って首都内の孤児院や病院に慰問を重ねてきたマリナには顔なじみの子供も大勢いた。
マリナの傍にいるシーリンは彼らの気持ちはわかるものの先を急いでいるといった面持ちだが邪険にする態度は取らなかった。それはマリナも同じだ。
「皆さんの思いは必ず果たします。離れていても私の戦いを見ていて下さい......
私に力を授けて下さりますから...」
真摯に答えるマリナに5歳ほどの女の子が大切そうに抱えた袋を持って寄ってくる。孤児院で何度も言葉を交わした子なので皇女相手にもそれ程緊張した様子はないが、その瞳は真剣そのものだった。
「あら、こんにちは。」両膝をついて微笑むマリナ。「これを私にくれるの?」
袋を開けると中には白を中心に赤、、黄色といった小さな花が1つに繋がった花飾りが出てきた。
「ありがとう、こんなに素敵なものを私に......」綻びながら少女の髪を優しく撫でる。
「いっぱい探して集めてきたんだよ。」少女はにこやかに、そしてどこか誇らしい笑みを浮かべた。
「マリナ様、この子が院の近くの山から採ってきたのです。土に汚れながら毎日少しずつ集めて......」少女の後ろにいたシスターの言葉にハッとして少女をそっと抱いた。
「そうだったの......貴女の為にも必ず勝つわ。信じて。」
皇女の戦い 第二話 PART3
以下が会場到着までの過程。
アザディスタン軍の基地内にあるガンダム(といっても保護用の巨大な飛行船に収納されているのだが)に乗り込みそのまま会場に向かうというシンプルなものだ。
ガンダムもその飛行船も過去のあらゆる軍事兵器や工業製品よりも頑強に作られているが、最新の注意を払う必要がある......
基地に向かう車内にはドライバーの他にマリナ、シーリン、腕利きのSPが3名。
道路の左右には王宮前よりも更に多くの国民達が皇女の乗った車に声援を送っている。
中には病を押して必死に手を振っている人もいる。マリナは微笑みながら丁寧に手を振り返す。
「マリナ、良かったわね。」「ええ...私、もっと強くなれた気がする......」
少女からもらった花飾りの入った袋をそっと、だが大切に抱きながらシーリンに応える。
「必ず勝つわ、私を信じてくれたみんなの為に......」
ガンダムファイター......本来格闘に身をやつした者が進む道を政の頂点にいる彼女自らが反対を押し切り選んだのだ。
無様な結果を残せば飢えと貧困に苦しむ国民だけでなく、彼女の無理を受け入れてくれたシーリン達にも申し訳が立たない...
(絶対に、敗北は許されない...)
「......」旧知の仲故かその切実な思いを見逃さなかったシーリンは、しかしいつもの冷然とした声で告げた。
「見えたわ、マリナ。」目の前にはアザディスタン軍事基地が質実剛健と聳えていた。
皇女の戦い 第二話 PART4
「今日という日をずっと待っておりました。私が皆様の礎になれるよう務めを果たします。」基地にて彼女達を出迎えた軍のトップに深々と頭を下げるマリナ。
「皇女自ら我らの為に御尽力下さるとは誠に光栄であります。」
トップの言葉と敬礼と同時に軍の上層部のメンバーも敬礼した。
一人一人に皇女が向けた視線は真剣さだけでなく、悲しげでもあった。
争いを好まないマリナも戦時中に命を懸けてきた彼らを尊敬している。だからこそ殊更に切なかった。
今回の闘いで国が豊かになれば少しでも彼らの犠牲も報われる...その感情もファイトでの力になっていたのは紛れもない事実だった。
基地内の格納庫はいつもより張り詰めた空気を孕んでいるように思われるのはファイターの思い過ごしだろうか。
技術者と整備員達とて同じような面持ちで皇女を送り出す準備に励んでいた。
「機体の最終点検は既に終了しました。ユディータの力があれば必ず......」
「はい、期待に必ず応えて見せます。」ずっと彼女のファイトを物理的に支えてきた技師長と握手を交わすマリナ。
「シーリン、先に行ってるわね。また会いましょう。」「ええ、気を付けてね。途中には何があるかわからないから。ここからがすでに戦場よ。」
厳しいながらもずっと見守ってくれた旧友と握手を交わすと慣れた足取りでタラップに乗って眼前の巨人・ユディータへと入っていった。
皇女の戦い 第二話 PART5
ガンダムユディータ......他国の機体とは一線を画す華奢でしなやかなそれは雪のように白い...
脛や前腕は濃紺に塗られており、白さと引き立て合う色使いになっている。
顎の上にスリットはなく、小さく細い顔。
出来得る限り攻撃のダメージを受け流す為全体的にボディのめりはりが強調されているが、胸と肩幅は小さくて狭い。
本来は弓術専用の機体だが、マリナのファイター志願により合気道にも対応すべく尚も柔軟なフレームシステムへと進化を遂げた。
背部にマウントされたケースからは縮小された特殊金属性の矢が収納されている。
(ユディータ、私を導いて...)
サバイバルイレブンを共に駆け抜けてきたこの機体に思いを馳せながら、孤独な戦場ともいえるコクピットに入っていく。
内部には上下に二つのリングがある。
丁寧に脱いだ衣服を折り畳むとそれらは一時的に粒子となって消えていく......
締まりつつもファイターらしからぬ細い肢体は決心を固めながら祈るように胸の前で手を握り、片膝を着く。
上方のリングからスーツが優しい色合いに似つかわしくない圧力を伴いながらマリナの身体に張り付いていく。
身体は強張り現在の態勢を保つのが精一杯。
「......っ!」いつものように苦しみながらも必死で手足を動かしスーツを纏わせていく。
ゆっくりと腰を上げ、立ち上がる。
最初の時に比べれば圧倒的に装着時間を短縮している。
実戦未経験の時は、スーツを着た直後でも体に負担がかかり動きがおぼつかず、フラフラしていたのだ。
それを国によるスーツの調節、柔軟性と(他のファイターには負けるが)最低限の筋力や動きのトレーニング。
これらの甲斐あって時間と負荷を最小限に留めるに成功したのだ。
各国共通の肩、手首、足首についたイエローのセンサー
無駄のない細い胴体を包む水色の爽やかなスーツがほんのりした腹筋を浮かび上がらせている。
撫で肩と股を守るのはうっすらとした水色。そしてそれらから伸びる長い手足と小さな臀部はユディータ同様の純白。
一口で言うと、手足に向かうに連れて薄い色になっているスーツだった。
そして胸にはアザディスタンの誇りを象った国の証が描かれている。
ずっとこのスーツと機体で戦い続けてきたのだ。
天井のハッチが開けば中東の真っ青な空がマリナを祝福するように広がっていた。
シーリンや技術者に会釈をするとシンプルな形状の格納型飛行船に乗り込み大空を旅立っていった。
皇女と国民の願いを風と轟音に乗せどこまでも......
今日の投下は以上になります。
改行忘れてすいません。読み辛いですよね...orz
今度から気を付けます。
それではお休みなさい。
>>331さん、読んで下さってありがとうございます。
リロってなくてレス遅くなってしまいすいません。
自分でもちょい奇抜?と思ったのですが、あのマリナが...という感じのギャップを出せたらいいかなと思ってます。
敵ファイター達の設定も考えていますので、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。
>>355 遅れましたがありがとうございます。
昨日書き込んだ自分が言うのも何なのですが、容量の問題...しばらくはこのスレを使わせて頂いてもよろしいでしょうか?
自分のところでは534KBです。
すいません。リロって事情を把握すべきでした、気を付けます。
こんばんは。続きを書いたので投下します。
皇女の戦い 第三話 PART1
中東の乾いた風が吹きすさぶ大空。
ガンダムによる飛行訓練をしているといつも思う。
自分が住んでいる国に貧困やそれによる犯罪が溢れているなんて嘘のような気がする...と。
そんな思いが今戦いに向かうマリナの気持ちを少しでも和らげていた。
自身のスーツよりも青々とした空に少しずつ晴れた表情になっているのがわかる。
「......っ!?」コクピット内に警報が響き渡る。それだけでなく何かが近づいてくる感覚に息を飲む。
「誰?」しかし辺りを見回しても何もない......ただ青空とそこに浮く白い雲があるだけ。
この気配は決して空腹の猛禽類ではない...もっと強烈な意思......≪人間の殺気≫だ......
幼いころより周囲の貧困を見てきた彼女は人々の金品や食料の取り合いを全く見なかったわけではない。
皇女の座に着いてからは極度に不満の爆発した国民の怒りも目の当たりに、その度に心を痛めてきた。
しかし、この殺気はそれまでのものとは違う。もっと純粋な敵対心。絶対に避けることができないことを彼女は感づいていた。
「どなたです?姿を見せてください。」
できるだけ毅然と落ち着いた声色で呼びかけた次の瞬間……
皇女の戦い 第三話 PART2
「はっ!」一瞬捉えられないように思えた太く、龍のように長く紅い光が澄んだ空を駆けていく......
避けたは良いが飛行船は右半分が溶けて白い鋼は形を歪ませ、溶けていく。あくまでそれはガンダム専用、マリナ以外誰も入っていなかったのが幸いだった......
勿論ユディータの巨大な白い痩身は右半分程が露出してはいるものの傷はないのがせめてもの救いだった。
「一体、何なの?」混乱する感情をできるだけ落ち着かせるマリナ。ファイターとして精神を鎮めることも教わっていた。
今朝テレビで見たステルス機能搭載のガンダムを思い出した。尤も、あれは既に会場に到着しているので今の連中は全く別人。偶然類似した技術を用いていたか、はたまた盗用したのか。
それはともかく目先の「空気」に視線を冷静に這わせるよう努めた。
皇女の戦い 第三話 PART3
「ふふ、中々いい避け方だったぜ。ちょっと惜しかったが。」「随分綺麗な機体じゃねえか。やっぱ皇女様が乗るものは一味違うな。」
どこか人を喰った、荒くれたような喋り方の男の声が2名聞こえてきた。
「私にはこんなことに付き合っている時間はないのです。どいて下さい。」
すると周囲にあった青空の一部が少しずつ人のような形となり浮かび上がってきた。
......いや、正確にはそれまで空中に擬態して隠れていた。
その姿はモンスターではなく、人の手で作られた歴とした機械...MSだった。
黒く無骨なシルエットと不気味に紅く光るモノアイ。まるで獲物を見つけて喜々とした獣のように見える。まるで狩人のように銃を構えて狙い撃ちするのを楽しんでいるような雰囲気さえある。
(今ここでまともに相手をしている時間はないわ......こうなれば...)
機体内部のパージスイッチを押すと残りの飛行船が外れゆっくりと地上に落ちていく。
こうなればデッドウェイトでしかないそれは、マリナの定めた狙いのままにゆっくりと緑の乏しい山に向かっていく。
誰もいないのは明らかなので一番安全な場所と言える。
皇女の戦い 第三話 PART4
背中にマウントしていた弓を携え矢を構える。
精度が高く、硬度と柔軟性を併せ持ったアローは幾度もマリナの窮地を救ってきた。
それに時に迫られている彼女にとって頼みの綱になるのは遠方から相手を狙える弓術しかない。
堂々とした構えで敵機二体のライフルを一気に弾き落とす。
「ぐっ、こいつ!」「やりやがって!」
「......私はガンダムファイターの端くれです。殺し合いなんて望んでいません。
......これ以上は......早く帰ってください。」
ファイトと違い明確な悪意を持った敵、しかしそれでも命を奪わずにいられることに越したことはない、そんなマリナの気持ちを嘲笑うかのように二体は太めのサーベルを取り出し襲い掛かってきた!
「仕方がないわ!残念だけど...」訓練で培った相手の動きを読む技術......マリナは柔らかい動きで回避するとさらに素早く構えた矢で一体の右腕、頭部を狙った。
センサーであるモノアイは外したが、空中でバランスを崩しつつ何とか存在している。
「野郎!」向かってくるもう一体に一切逃げる素振りを見せず弓の準備をするマリナのガンダムユディータ。
あともう少しでサーベルが頭部に届くかという所で瞬時にかわし、相手の懐に飛び込んだ。
「もうこんなことさせないで...」切なそうな声と共に相手の両肩を至近距離の射撃で破壊する。
衝撃で両腕は脆くも地上に落下していく。
「どうする、あいつ中々の腕前だぜ?」パイロットの一人が呼びかけた空間には誰もいない
...いや、いるのだ。マリナは犇々と感じていた。この二人よりさらに強い殺気を持った何者かがその空間にいるのだ。
「......!」ファイターになってからまだ数年も経っていないマリナですら緊迫感でその相手に目を見張らざるを得なかった。
「相当やるみたいだね......皇女さん?」
冷たく挑戦的な声と共に堅牢な装甲の巨人が浮かび上がって......
今日は以上です。
脱線気味?に思われるかもしれませんが、これからの伏線(というか前置き)のような展開にしました。
それではまた。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十話 掌からこぼれる水のように
「諸君らの階級、所属は以上だ、なにか質問は?」
ソロモンのブリーフィングルームにて、壇上に上がっている指揮官から、部屋に座っている30名ほどの士官に通達がなされる。
ジオンとの最終決戦と目されるア・バオア・クー攻防戦、「星一号作戦」に備えた最終部隊編成、その会議場。
その一角にジャック・フィリップス「少尉」もいた。ほんの5分前から彼はこの階級と、自らの部隊の隊長を任じられた。
付く部下は5名、自分を合わせて6名の中隊クラス。彼に限らず、先のソロモン攻防戦の生き残りはほぼ全員が
先任として隊長クラスの地位に就くことになる。
それは連邦軍の如実な人材不足を示していた。もともとこの戦争は最近までジオン優位に進んでいた、それは
モビルスーツ等の兵器の差が主な原因であった。そこで連邦は兵器、特にモビルスーツの大量生産を重視してきた。
事実それは功を奏し、戦場をわずか数か月で地球から一気にジオン本国手前の月面周辺まで押し返した。
だがいくら兵器がたくさんあっても、それを動かす人間がいなければ意味がない。コロニー落としから初期の劣勢で
兵士の絶対数不足は軍にとって深刻な問題ではあった。そんな中、実戦経験者である彼らは連邦軍にとって
貴重な戦力であったのだ。
「質問がなければ、兵士の振り分けに入る、入ってきたまえ。」
後方のドアが開き、広くとられた部屋後ろのスペースにぞろぞろと人が入ってくる。会議のさ中、廊下で待機していたらしい。
しかし入ってきた彼らを見て、その部屋にいた先任パイロット達は驚きを隠せなかった。
あどけない顔、華奢な体、似合わない軍服、そう、子供だ。明らかに軍に所属し、戦争をする年齢には見えない。
100人以上が入室してきたが、おおよそ軍人らしい人間を探すのが難しいレベルだ。
「司令!こりゃ・・・なんの冗談ですか。」
年長の士官が壇上の人物に問う。無理もない、この士官の息子でももう少し年がいっているだろうから。
「彼らはみな、シュミレーションで上位の成績を収めた優秀者だ、志願兵だから意欲も高い。」
「そんな問題じゃねぇでしょうが!」
別の士官が吐き捨てる。なるほど、確かに若いと対応力も高いだろう。シミュレーションなら頭の固い大人より
彼らのような若者のほうが好成績をあげられるのも無理はない。
しかし戦争で部下として使うということは、彼らに「死んで来い」と言うことすらあるのだ。
まだ20年も生きていないような子供を戦火に放り込むというのか・・・
「彼らには志願した理由がある、ジオンを打倒したいという共通の認識が、な。」
指令の言葉に息をのむ士官たち。なるほど、彼らはジオンに恨みがある、つまり家族や友人、近しい人を
この戦争で亡くしているのだろう。
だが、だからといってやはり前途有望な彼らを前線に出すのは気が引ける。そんな空気を読み取ってか、こう続ける指令。
「決戦での戦力比は10対1と想定されている、とにかく数で圧倒する必要がある以上、人員は必要なのだよ。」
戦力差10対1、それはもう戦闘にもならないほどの圧倒的大差である。この物量作戦をもってすれば
敵の戦意を削ぎ、ろくに戦闘にならずに勝つことも十分ありえるだろう。
ただ、それにはまがいなりにもモビルスーツが動いてなければ意味がない、無人操作で戦闘できるような
機体は今の連邦にはないのだから。
「では、振り分けに入る、名前を呼ばれた士官は起立、そのあと呼ばれた新兵は起立した士官のもとに行くこと。」
「「はいっ!」」
「リチャード・アイン大隊長!所属兵、ニック・ノーマン一等兵、アルフ・リキッド軍曹・・・」
次々と名前が呼ばれ、起立した士官の机に少年たちが集まってくる。
「次、ジャック・フィリップス中隊長!所属兵ビル・ブライアント軍曹、キム・チャン一等兵、サーラ・チーバー一等兵・・・
振り分けが終わり、それぞれの隊が個室に移動してブリーフィングを始める。
「ジャック・フィリップス少尉だ、30分前からな。じゃあ、時計回りに自己紹介を。」
ジャックに促され、順に紹介を始めていく。
「ビル・ブライアント軍曹です、ジム搭乗。隊長もずいぶん若いっすねぇ、俺19ですけど、いくつ?」
5人の中では比較的、軍人に見える長身の青年、とはいえ軍人を基準にすると単なるチンピラにしか見えないが。
「キム・チャン一等兵、ボール搭乗、17歳です。」
眼鏡をかけた、背の低い少年兵、色白で少し小太りな、戦うイメージが全く見えない。
「サーラ・チーバー、ジムのパイロットです。18ですけど、ご不満ですか?」
ブロンドの髪を目の前でかき分け、見下ろす長身の少女。これまた生意気そうな、そして扱いにくそうな娘だ。
「マリオ・サンタナ一等兵、ジム、17!」
それだけ言うと着席する、浅黒い肌の少年。礼儀正しいのか緊張しているのか・・・
「・・・あの、ツバサ・ミナドリ二等兵・・・ボール搭乗、16歳です・・・。」
最後におずおずと挨拶をする内気そうな東洋系の少女、なんとも頼りないこのメンバーの中でも一際頼りない・・・
「ちなみに俺は18だ、同じ世代だが、不満があるか?」
全員の紹介が終わってから、最初のビルの質問に答えるジャック。彼の意図は見え見えだ、かつて俺が最初サメジマの兄貴に感じた
頼りなさを感じ取っているのだろう、あえて挑発を向けてみる。
「年下っすかぁ!ま、いいや。戦場では己の腕ひとつですからね。」
「そうね、自分の身は自分で守らないと、ね。」
ビルとサーラが返す。暗にお前の指揮に従って命を落とすのは御免だ、と言っているのだろう、頼もしい限りだ。
だが2人に勝手をさせれば、他の3人がどうするか困るだろう。彼らを死なせないためにも統率は必要だ。
思えばサメジマの兄貴やエディさんもこんな苦労をしていたんだろうなぁ、彼らなりのやり方で。
ソロモンから艦隊が発進する、いよいよ星一号作戦の開始だ。一列に並べればソロモンからア・バオア・クーまで
繋がるのではと思うほどの大艦隊、搭載されているジムやボールの数もすさまじいものだ。
そんな中、ジャック中隊は突貫訓練を行っていた。艦隊速度が安定した時点で艦を出て、実戦形式の戦いをする。
6名の中隊なら、うち3名を率いる小隊長も必要だし、自分が戦死した時の指揮官代理も決めておく必要がある。
その資質を実戦練習で見極め、また彼らにもシュミレーションではない実機の操作を決戦までに身につけねばならない。
最初はジャックがキム、サーラ、マリオの3人と対戦。
もちろん結果はジャックの圧勝だった。3人とも少しは搭乗経験もあるようだが、まだまだ戦場に出せるレベルではない。
サーラもマリオもまだまだジムの基本ルーチンすら使いこなせていない、特別ルーチンを開発、搭載し、実戦で鍛えてきた
ジャックのジムとは比較のしようもなかった。キムの機体はボールだが、練度はそこそこの線に行っていた、小隊長候補かな。。
彼らが母艦に補給に行くと入れ替わりに、ビルとツバサがやってくる。ジャックは気が付かなかったが、ツバサにはすれ違う時に
ビルとサーラが軽くコンタクトを交わしたように見えた。
「あ、あの二人、もしかして・・・」
「さて、お手並み拝見と行きますよ、中隊長殿。」
ビルは自信満々だ、性格からくるのだろう。ただ戦場という場においてこの性格がうまくハマれば伸びる可能性は十分ある
対戦をこの組み合わせにしたのも、ビルの自信家っぷりの影響を気弱そうなツバサにも受けてほしかったから。
ジャックはいつの間にか、彼らの隊長であることを自覚し始めていた。ルナツーからこっち、周りはみんな先輩で
誰かに何かを教えることなどなかったから。
この訓練が終わったら、サメジマの兄貴に教わった大事なことを5人に教えてやろう。
敵は恨むものじゃなく褒めるものだということ、殺しあう相手だからこそ、それは大切なこと、自分の人生を後悔しないために。
なるほど言うだけのことはある、ビルのジムの練度は5人の中でも飛びぬけていた。基本ルーチンをうまく使いジムをぶん回す、
これでサポートのツバサがうまく動けばジャックも不覚を取りかねないだろう、それを見越して接近戦に持ち込むジャック。
こうなるとさすがに練度の差が出る、ダイナミックなアンバックを駆使してのトリッキーな動きでビルを翻弄、彼の背中に
ペイント弾を打ち込む。
「くっ、くそおっ!」
「自分一人で何とかしようとするからだ、援護砲撃できるボールがいるんだから、たまに距離をとってその機会を作れ。
あとツバサはもっと動け、戦場では静止してると的になるだけだ。」
「は、はいっ・・・」
「じゃあ、もう一回いくぞ、お前らの機体がペイントで真っ赤になる前に一本取って見せろ。」
「イエッサー!」「はいっ!」
たった一回の訓練で、ビルは少し従順になり、ツバサは強い返事ができるほどにはなった。そう、1の実戦は時に
100のシュミレーションを上回る価値がある、ジャックは今まで感じたことのない充実感を覚えていた。
―そしてその時、宇宙が輝いた―
その恐るべき野太い光の筒は、連邦軍艦隊のど真ん中を通過していく、恐るべき破壊と殺戮を伴って。
直径数キロ、長さ100キロにも及ぶ超巨大レーザーが、艦隊のど真ん中を焼き払って行った。
その光景にジャックも、ビルも、ツバサも、言葉を失った。確実なことは一つ、連邦軍艦隊の大部分が
壊滅したということだけだった。
突然、高速でその艦隊に起動するビル。
「うわあぁぁぁーっ!サーラ、サーラあああっ!」
絶叫しながら艦隊に向かうビル、明らかに取り乱している。その態度が逆にジャックを落ち着かせた。
「おい、待てっ!」
消滅した艦はともかく、ダメージを負った艦に不用意に近づくのは危険だ。止めに走るジャック。
「やっぱり・・・あの二人・・・」
ツバサは冷静に、しかし悲しい声で二人を見送る。
「サーラ!どこだ、返事しろおぉぉっ!」
爆風の熱波が残る空間で、サーラの姿を探すビル、しかし当然ながらどこにも見えない。
無理もない、彼らの母艦は艦隊のほぼ中央、つまり巨大レーザーのど真ん中あたりにいたのだ。
「落ち着けビル!この空間は危険だ、避難しろっ!」
すぐ右に半分吹き飛んだサラミスがいる、いつ大爆発してもおかしくない。ビルのジムの腕をとり、その場を離れるジャックのジム。
「離せ、離してくれっ!サーラが!サーラが・・・うわあぁぁぁぁーっ」
爆発するサラミス、その余波で少し前までいた空間が炎に嘗め尽くされる、まさに間一髪だった。
ツバサと合流する二人、ビルは未だに嗚咽を洩らしている。強気な彼にもこんなに脆い一面があったのか。
もっとも彼の態度を見れば、ビルとサーラの関係は容易に想像がつく。恋人同士か、それに近い関係だったのだろう。
それが戦争、愛しい者が簡単に消え去るからこそ・・・
「あ、あれ・・・?」
ジャックは自分が泣いていることに気づいていなかった。過去に故郷の仲間や兄貴が死んだ時にも涙はあった。
しかし今回は違う、彼らは自分が守るべき、そして大切なコトを伝えるべき部下だったのだ。
サーラ、キム、マリオ、この3人を失った事実、それはまるで掌ですくった大切な水が手の隙間からこぼれていくように
止めようのない悲劇を悲しむ感情だった、覆水を止められない自分の無力さを噛みしめる涙・・・
ジャックはソロモンで聞いた、銀色のモビルスーツ乗りの指揮官の絶叫を思い出していた。
あれほどの軍人でも部下が死ぬのは身を切られるように辛いのだ。
ジャックは声を上げずに、黙祷してさめざめと泣いた。短い間だったが、決して忘れたくない俺の初めての部下。
彼らを失った喪失感、それは「過去」ではなく「未来」の自分の居場所を削り取られたようだった・・・。
第十話でした。
部下から上官へ、最終決戦を前にジャック君の立場も変わりつつあります。
物語も終盤、上手くまとめられるか不安なところですので感想、アドバイス頼みます。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十一話 光芒の星々をすり抜けて
―ソーラレイ―
ジオンの最終兵器、コロニーそのものを砲身とした超巨大レーザー。
ジオン公王デギン・ザビを乗せたグレート・デギンもろとも連邦軍艦隊を薙ぎ払ったその一撃は
連邦主力の4割をもぎ取っていくという大戦果を、そして悲劇をもたらした。
圧勝のはずの星一号作戦は一転、どちらに転ぶかわからないほどの戦力の拮抗を招いた、未だ数的には連邦有利とはいえ。
しかし、ギレン・ザビ以下、ジオン首脳は正しく理解していなかった。このソーラレイで数的不利を覆したツケが
連邦軍全体に憎悪となって刻み込まれたことを。
数で圧倒し、降伏したものには寛大な処置をしえた思考から、憎しみに塗りつぶされた復讐戦と化したことを。
上は指揮官から下は前線の兵士まで、ジオン憎しの意識を燃え上がらせたことが、のちの悲劇につながることを。
戦艦マゼランの兵士待機室、その一角に座り込み、俯いて床を見つめる兵士がいた。涙は枯れ果て、その瞳は憎悪に燃える。
「ジオン・・・許さねぇ。皆殺しにしてやる。ぶっ殺してやる、一人残らず・・・」
ビル・ブライアントが最愛の人を亡くしたのはほんの十数時間前、最後に交わした言葉は、ジムの訓練中、隊長ジャックに
こてんぱんにノされたサーラに「カタキはとってやるぜ」と冗談めかして送った通信だった。
返信はなかったが、彼女のジムが親指を立てて合図したそのポーズが、その奥のコックピットにいる彼女の表情を
浮かび上がらせる、がんばって、と。
そのサーラは見ていただろう、彼が結局ジャックに及ばなかったこと、そしてそれを決して残念には思わなかったことを。
無事に帰ったなら、「やるじゃない、ウチの隊長クンも。」などとウインクを投げて言われただろうことを・・・
ジャックはそんなビルの前に立ち、かける言葉を探していた。ジャック自身アイランド・イフィッシュの仲間、
シドニーの家族、尊敬する兄貴、先輩、そしてつい先日には長く世話になった司令官さえ失ってきた。
しかしただひとつ、恋人を亡くした経験はなかった。その悲しみがいかほどか、それを推し量ることはできなかった。
あるいはそっとしておくべきかもしれない。戦場において彼の憎しみがプラスに働くこともまた否定はできない、
赤く燃え盛る憎悪は破滅しか招かないが、青く静かに燃える憎悪の炎は戦果と生還につながる可能性がある。
兄貴は俺をぶん殴って目を覚まさせた。しかし彼を今殴っても憎悪の質を赤い炎にするだけかもしれない。
彼は一言、ビルにこう告げた。
「サーラは、きっと見てるよ、お前を。だから・・・死ぬなよ。生きて彼女をまた思い出してやれ。」
部屋を出るジャックを追いかけて、ツバサが部屋から出てきた。
「あの・・・ジャック中隊長、その、お願いがあるのですが・・・」
「何だい?」
自分でも信じられないほど優しい声で返すジャック。先のビルとのやりとりの余韻もあっただろうが、最終決戦を前に
ただ二人残った自分の部下、しかも少女となれば自然と語句も柔らかくなる。
「その・・・コックピットで、音楽、かけてもいいですか?」
「んあ?」
「そ、その、同期の人に聞いたんです。彼の所属の隊長が、出撃時に音楽をかけるって。だから、私も・・・ダメですか?」
「・・・どこの隊、それ?」
「えっと、部隊名は忘れましたけど、確かイオ・フレミング隊長とかいう・・・」
有名どころだ。激戦区であるサンダーボルト宙域を戦い抜いてきた猛者、連邦でも数少ないフラッグ・モビルスーツ
「ガンダム」を乗りこなし、数々の戦果を挙げてきた英雄。しかし音楽を聴きながら戦闘してたというのは初耳だった。
「私、音楽を聴くと落ち着くんです、そうすれば戦場でもきっと冷静になれると思うんです、だから・・・」
「・・・通信は聞き逃すなよ。」
「え、いいん、ですか・・・?」
「好きにするといい。」
それだけを言って背中を向けるジャック。正直、彼女の技量では最終決戦を生き延びれる可能性は少ない。
その確率を少しでも上げられるなら、多少のワガママにも目をつぶれる。
背中で「ありがとうございます」の言葉と、深々と首を垂れる彼女を感じながら、ジャックは愛機の待つハンガーに向かった。
ハンガーに格納された彼のジム、その中身は兄貴のスピリットを受け継ぎ、エディさんとの研鑽の結晶が詰まっている。
そしてその盾には、その象徴である精悍なサメの顔が映っていた。
「ねぇサメジマの兄貴、それにエディさん、俺にも部下ができたんだぜ・・・」
シャークペイントに向かって語る。まるでそこに二人がいるように感じられたから。
「これで最後だよ、長いようで短かったけど、今回で最後にする、きっと!だから、見ててくれ。」
獲物をかみ砕く顎(あぎと)、兄貴のお気に入りであり、エディさんが苦笑いで受け入れた勇敢の証。
その牙に誓う。これを最後にすること、彼らから自分につながれた命を、必ず部下の二人に託すことを・・・
―宇宙世紀0079、12/31、星一号作戦、開始―
攻撃目標ア・バオア・クーを上方から見て4つのフィールド、東西南北を示すE、W、S、Nに区切り
うち3方向から一気に制圧を目指す。主力をNフィールド、搦め手をSフィールドに振り分け、Eフィールドには
牽制部隊が送り込まれる。とはいえどの戦場でも、戦力は連邦のほうが圧倒的に優位だ。
しかしソーラレイでの戦力減退が、安易な降伏や停戦を許さないほどには戦力を拮抗させたことは否めない、
つまりどの空間でも剝き出しの殺し合いになることは確実だ。
ジャックの所属する部隊は牽制のEフィールド、しかしその配置は敵索部隊によって敵にも知られている。
本命のSフィールドやNフィールドに比べ、ジオンの戦力の振り分けが少ないのは確実だろう。
となれば最初に敵の防衛線を突破し、ア・バオア・クーに取りつくのがこのEフィールドの部隊であっても
なんら不思議ではない。
マゼラン1、サラミス6艦から吐き出された大量のジム・ボール部隊がEフィールドに展開する。迎え撃つは数隻のムサイと
そこから発進するザクを中心としたモビルスーツ部隊。双方の戦艦は対に位置し、その間の宇宙でモビルスーツが激突する。
例えるなら艦隊はサッカーの両ゴールで、フィールド内のモビルスーツは選手といったところか。
モビルスーツの勝敗が決すれば、大量のシュートが敗れた方のゴールに打ち込まれるだろう、そしてそこでの勝敗が決する。
モビルスーツという巨人の群れ同士の殺し合いが始まった。
「ビル!ツバサ!絶対に動きを止めるなよ!」
激しく機動しながらジャックが叫ぶ。こうも敵味方が密集していると、狙いをつけるだけでも大きな隙となる
攻撃は適当でいい、味方を誤射さえしなければ。3機で離れすぎないように飛び回り、戦場のフィールドを横切る。
密集地を抜けたところで終結し、わずかな時間を射撃に費やし、そしてまたフィールドに飛び込む。
ジャックにとって意外だったのは、ビルが思ったより冷静だったことだ。突出して身を危険にさらすことを
心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。
爆発の光芒の中を両陣営のモビルスーツが飛び交う。そして優越が徐々に偏っていく。押しているのは連邦だ。
一度優劣がつくと、そこからは早かった。1機のザクに複数のジム、ボールが殺到し仕留めていく。
もともと数で劣勢なジオンにとって、負け始めると崩れていくのは加速を増す。やがてザク部隊はムサイ周囲まで下がり
母艦を逃がすための殿(しんがり)として最後の抵抗をする。そこに殺到するジム・ボール。
その側面に、大量のミサイルが降り注ぐ。正面にしか注意が行ってなかった連邦軍はこの不意打ちに大きなダメージを受けた。
ミサイルの後に来たのはモビルスーツではなかった。円筒形の、ドラム缶を横倒しにしたようなモビルポッドだった。
その数約30機、思わぬ新手に連邦の攻勢が止まる。再び戦場は互角の攻防になるかと思われた。
しかし連邦も押し返されてばかりではない。攻勢に便乗しようとしたサラミスやマゼランの艦砲射撃がザクやその後ろの
ムサイに殺到する。次々に撃沈していくムサイ。そしてザクに代わりムサイの前に立ちはだかるジオンのモビルポッド。
「オッゴってやつか!気を付けろ、先日月軌道上でボール2個小隊がこいつに食われているぞ!」
大隊長が叫ぶ。モビルポッドでもボールとは違い、アタッチメントを使用してザクのマシンガンやバズーカを搭載
動きもモビルポッドとは思えないくらい速く、なおかつ3機1組で編隊飛行しているために、今しがたまでの
対モビルスーツ戦闘とは毛色の違う戦いを強いられてしまう、頭の切り替えの遅いジムやボールが仕留められていく。
とはいえ艦砲射撃によりムサイはほぼ轟沈、残った最後の一艦もたまらず退避を始める。これによりオッゴが
補給を受けるべき母艦はなくなった。マゼランやサラミスは健在、数は互角、ボールはともかくジムは性能が上位、
未だに連邦の優位は動かなかった。
ここで連邦は部隊を2つに分ける。居残って戦闘を続ける者と、一度母艦に帰艦して補給を受ける者に。
一時期戦場は不利になるが、その行動自体を罠と思わせるような巧みな全体機動で敵に警戒させる、これが功を奏した。
連邦側は知らなかったが、実はジオンのオッゴ部隊は学徒兵の部隊だった、戦場において攻勢をかけるべきタイミングを
つかむためのカンが働かなかったのだ。
一度両サイドに分かれる連邦とジオン、素早い着艦で補給を済ませ、再出撃するジムやボール。
この判断をした連邦軍の大隊長は自分の判断の成功に思わず舌なめずりをする、彼は勝ちを確信した。
その時、その大隊長のジムを含む補給を終えた数機が、突如飛んできた光に飲み込まれた。
戦場を走るその光線は、そのままサラミス1隻を薙ぎ払い、爆発させる。
敵味方が一斉にその方面に目をやる。そのビームを放ったのは戦艦ほどもある、巨大な赤い影に。
「また新型かっ!」
ジャックが叫ぶ。地球軌道でヅダ、基地攻防戦でザクレロ、ソロモンで銀のゲルググ、そしてこのア・バオア・クーでの
この赤い巨大モビルアーマー、ジオンの開発の速度は一体どこまですさまじいというのか・・・。
「なんだ、アイツは!」
「隊長・・・」
ビルとツバサが動揺を隠せずに発する。彼らはこれが戦場デビュー、次々変化する展開に付いてこられるか不安は尽きない。
だからジャックは機動する、その赤いモビルアーマーに向かって。部下を委縮させないために。
「お前らは離れて他との戦闘に集中しろっ!」
二人にそう言い捨てて、怪物モビルアーマーに突撃する鮫の顎。そのほかにも判断の早い者、つまり戦場の急変に動じない
パイロットたちがそれに突撃する。コイツを仕留めればもうジオンに後はないだろう、と。
十一話でした。
いよいよ書きたかった青葉区の攻防、イグルーのチンピラ連邦軍が
ここで何を考え、どういう意思で行動したのか、それをフォローするのが
このSSのテーマの一つでしたから。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十二話 赤の無双
突如現れたその巨大な赤いモビルアーマー、いきなりサラミス1隻を沈めたその巨体に連邦のジムが殺到する、
次々と発射されるビーム・スプレーガンがモビルアーマーの表面に花火を咲かせる。
だがその巨体に致命傷を与えるにはエネルギーが不足していた。おそらくメガ粒子砲クラスでないと
その装甲に穴をあけることは敵わないだろう、だがそれでいい、牽制射撃から近距離まで切り込めば
ビームサーベルで本体を切断することは可能なはずだ、ソロモンでガンダムがビグ・ザムにしたように。
だが、その目論見は外れた。巨体の側面に設置された発射口から無数のランチャーが発射される。
それはジムには向かわず、モビルアーマーの周辺で起爆、爆発は小さく、代わりに粒子がまき散らされる。
切り込んだ1機のジムがビームサーベルを抜くが、刀身部分はゆらぎ、形を成さずに消える。
「ビーム攪乱膜!」
ジャックが叫ぶ。ソロモンで連邦軍が使用したビーム兵器霧散システム、ビーム兵器の効力を著しく
減少する効力がある。この瞬間から火器を持たないジムはこいつに対して無力になった。
すでに戦闘が始まって相当時間がたっている、戦闘開始時にはバズーカやマシンガンを持っている
ジムも多数いたが、すでに皆使い切り、無尽蔵に使えるビーム兵器に頼る情況になっていた。
「みんな、離れろっ!」
そう叫んでモビルアーマーから離れるジャックのジム、しかし遅かった。切り込んだジムたちは、ことごとく
モビルアーマーの大型バルカン、または周囲を飛ぶオッゴの十字砲火によって爆散していく。
後退し、再び中隊と合流するジャック。ビルとツバサに叫ぶ。
「ビル、あいつに近づくな!ビーム攪乱膜だ、何をやっても効かないぞ!ツバサ、残弾はあるか?」
「すいません!たった今、使い切りました・・・」
無理もない、これが戦場デビューの、しかも気弱なツバサであれば、弾を使い切る前に戦死しなかった
だけでも上出来だ。
「母艦で補給してこい!皮肉だがこの戦場ではボールの砲撃が頼りだ!」
「はいっ!」
反転して母艦マゼランに向かうツバサのボール、ジャックとビルは追撃を防ぐべく援護に入り、オッゴを狙い撃つ。
他の隊も同じ判断だった。ビーム攪乱膜を使われた以上、あの化け物の周辺ではボールの砲撃が頼りだ。
いくつもの部隊が合流し、オッゴに対するジムと、モビルアーマーに攻撃を加えるボールの群れに分かれる。
幸いあのデカブツ、さすがに機敏さは無いようだ、ボールの機動力でも十分にとらえられるだろう。
事実、ほどなくボールはモビルアーマーを包囲しつつあった。
が、バルカンの砲門を開いたモビルアーマーは、意外ともいえる細かな弾幕で次々とボールを打ち落とす。
それでも巧みな機動で、一機のボールがモビルアーマーの側面を確保し、砲撃を加えんとコックピットを狙う。
その瞬間、信じがたい事が起きた。
モビルアーマーはその左腕を動かし、そのボールをわし掴みにする、動いてるボールを、だ。
そして球技の投球のように振りかぶり、そのボールを投げ捨てる。吹き飛んだボールは何と、
側にいた別のボール部隊に次々に激突、まるでビリヤードのように跳ね返り、当たったボールすべてが爆発した。
その信じがたい行動を目の当たりにした誰かが、通信で呟く。
「ニ・・・ニュータイプ、かっ!」
予知能力やテレパシーを有し、目で見ずとも周囲の状況を把握、念動力さえ使うと言われるエスパー、
もしそんなものが存在するなら、今の神業も十分に説明がつく。
そして、そのモビルアーマーは、そんな悪い予感を確信させるように無双を始める。
ボール部隊が苦戦とみるや、そのフォローに入ろうと突っ込んできたのは2隻のサラミス。
モビルスーツと違い、これだけの巨体なら戦艦や巡洋艦の砲撃でも命中は容易だ、艦砲のエネルギーなら
ビーム攪乱膜を貫いて撃沈も可能と判断したのだろう。
だが甘かった、モビルアーマーから先手を打ってミサイルランチャーが発射される。3発放たれたその弾は
曲線を描き、正面から突進するサラミスの横腹に食らいついた、瞬く間に爆発する2隻のサラミス。
遅れて突撃するのは旗艦であるマゼランだった、サラミスが瞬く間に散った以上、もう後戻りはできなかった。
殺られる前に殺る、戦艦の火力で撃たれる前に沈める、メガ粒子砲を赤い悪魔に向けて放つ。当たれ、当たってくれ!
願いむなしく特大ビームはモビルアーマーの頭をかすめる。ビーム攪乱膜の影響もあっただろうが
サラミスが撃つ前に撃たれた焦りが、砲手の照準を狂わせた事実もあった。
その返礼とばかりに、モビルアーマーのクチバシが開く。黄金の光が灯り、瞬時に強力なレーザーが吐き出される。
その咆哮は周囲のビーム攪乱膜を薙ぎ払い、マゼランの甲板から上を嘗め尽くし、吹き飛ばす。
あわや体当たりかというほどの近距離を、炎上したサラミスとモビルアーマーが交錯する。
操縦者も指揮官も焼き尽くされた戦艦はそのまま横を向いて爆発、炎上する。
わずか10分ほどの間に多数のジムやボール、巡洋艦2隻、そして旗艦の戦艦1隻がこの戦場から消滅した。
その恐るべき破壊力、パイロットの技量に、連邦軍の戦士たち全員がほぼ凍り付いていた。
例外のうちの一人が通信に向けて絶叫する。
「ツバサ!ツバサ・ミナドリ二等兵!応答しろーっ!!」
ジャックが叫ぶ。先ほど吹き飛んだマゼランは、その直前にツバサが補給に向かった戦艦だった。
どうか無事でいてくれ、その願いに対する通信は・・・無言。またひとり部下を失ったのか・・・
「ニュータイプ、赤いモビルアーマー・・・まさか、こんな戦場に!?」
誰かが発したその通信に、連邦兵の多くがひとつの事実を認識する。赤い機体を扱うことで有名な
ジオンのエースパイロット、この手薄なEフィールドに、なんという恐るべき配置を敷いたのか!
「一時後退して、部隊を再編するっ!」
戦死した隊長に代わる隊長代理が撤退を命令する。一斉に撤収するジムやボール。艦もすでにサラミス3隻しかない
全員が補給し、部隊を再編するまで多少の時間は要するだろう。
しかしそもそも敵がビーム攪乱膜を使う以上、実弾兵器の装備は不可欠だった。バズーカやマシンガンを持ってこないと
冗談抜きであの赤い悪魔に全滅させられる危険すらあった、撤収の判断は大正解だったのだ。
「ビル、俺の分も頼む!」
「隊長は?」
「奴を見張っている、待っているぞ。」
そう告げると、ジャックは先ほどマゼランが爆発した地点に向かう。戦艦が爆発したなら破片も多く、
身を隠すには最適だろう。しかしビルはもうひとつの目的にも気が付いていた、だから短くこう答える。
「アイ、サー!」
撤収する仲間を追うビルのジム。後ろに赤い悪魔を感じながら、待っていろ、と闘志を燃やして。
手ごろな破片の後ろに隠れたジャックは声をかけ続ける。
「ツバサ、応答しろっ!誰か、生存者はいないかっ!・・・」
返信はない。マゼランは完全に爆発したのだ。そのエネルギーは戦艦全体を包んで余るエネルギーを発して散った。
生存者がいると考えるほうが不自然だろう。ジャックはヘルメットを上げ、ぼやく視界を直すべく目を拭った。
やるべきことはある、敵の行動を注視し、駆けつける仲間に報告する。この短いインターバルに、
敵が罠を仕掛ける可能性は十分にある。
しかしジャックが見たのは、それとは別の意味での敵の脅威となる行動だった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
過呼吸にあえぎながら、赤いモビルアーマー、ビグ・ラングのコックピットで、オリバー・マイ技術中尉は
自らの仕事、試作兵器の評価をしていた。
「ビーム攪乱膜は極めて有効、しかし、ジェネレーターの出力にふらつきを認む。これはひとえに
パイロットの技量不足に起因するものと思われる・・・」
初めての実戦、殺すか殺されるかの戦場に、戦力としての参戦。それでも彼の本文は評価試験なのだ。
たとえ最終決戦でも、のちに生かすデータがなくても、彼は実戦の中で得たデータを言葉で記録する。
同時に彼は、このビグ・ラング本来の任務を遂行する。下部の巨大な格納庫にオッゴを収納し、兵装を補給、
負傷した部分を溶接し修理、次々と船内に収納し、補給、修理して船外に出す。
そう、このビグ・ラング本来の目的はオッゴの補助兵器なのだ。ただ完成間近で開発が断念され、
最終決戦用にビグロを連結、牽引させることで一応の兵器の体を取った、まさに急造兵器だった。
それを考えれば、彼のここまでの戦果は大健闘と言えた。母艦ヨーツンヘイムを守るべく3隻の敵艦を
破壊したのを皮切りに、この戦場に到着してからも多数の戦艦やモビルスーツを仕留めてきた。
巨大な格納庫をもつビグ・ラングは、エネルギーや格納空間のキャパシティが非常に高い。それを兵器に転用すれば
超強力なメガ粒子砲を発することも、高性能なランチャーやミサイルを多数搭載することも可能だ。
その火力と攪乱膜に助けられ、戦場初心者の彼がここまで戦い抜くことができた。
しかし幸運は長くは続くまい、とも確信していた。おそらく敵は実弾兵器を補充してくるに違いない。
そうなればこのビグ・ラングは巨大な的でしかない、撃沈されるのは火を見るより明らかだ。
それでも彼に迷いはない、彼の周りにいるのは紙装甲のモビルポッドを操る少年兵なのだ。
彼らに比べて、強力な装甲と兵器を持つ機体に乗る自分は何と幸運なことか。
ならせめて彼らを支援する、それがこのビグ・ラングの役目なのだから。彼らを一人でも多く生還させる、
その為にたとえ自分が散ることになっても・・・幾人ものテストパイロットの死を見てきた彼は、
いま自分がその立場にあり、その覚悟さえも備えつつあった。
補給工場となったモビルアーマーを見て、ジャックが呟く。
「なんてこった、移動補給基地だったのか、あの化け物が!」
この空間にジオンの艦艇はいない、オッゴがもう補給を受けられないだろうという連邦軍の思惑すら、
この赤いモビルアーマーに破壊されてしまった。
だが出来ることはある、こっちはその事実をつかんだ、再決戦の前に仲間にそれを伝えれば、油断や慢心からの
死と敗北を減らすことができる。ジャックは味方を待ちながら、通信の準備をする、言葉を決める、勝つために。
やがて連邦軍の部隊が光の点となり見え始めた。一気に距離を縮める彼らに通信をすべく、言葉を発しようとしたその時
別の回線から通信が飛び込んできた。
「一般回線」に。
―こちらア・バオア・クー司令部、すでに我に指揮能力なし、残存の艦艇は直ちに戦闘を中止し、各個の判断で行動すべし―
12話でした。いやぁマイさんすっかりニュータイプ扱いです。まぁあの戦果じゃぬべなるかな(プロホノウ風)
なんか私だけになってしまった・・・みんなどこ行ったんだよー
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十三話 叫ぶ宇宙
―繰り返す。こちらア・バオア・クー司令部、すでに我に指揮能力なし、
残存の艦艇は直ちに戦闘を中止し、各個の判断で行動すべし―
敵も味方も固まっていた。通常回線から聞こえるその通信が意味するところを、信じられないがゆえに。
停戦命令。このア・バオア・クーでの戦争終結を示唆する、そしてこのジオン独立戦争そのものの
終結を意味する宣言。この戦場はジオンにとって、総力を結集した最終防衛線であったことは
連邦、ジオン共によく理解している。そこが墜ちた、つまり向かう先は、終戦―
このEフィールドにおいて、その事実に対する受け止め方は、連邦、ジオンで全く違っていた。
ジオン兵にとって、敗戦の足音はここ最近、日々大きくなっていた。その時がついに
来てしまったのか。覚悟はしていたが、やはり無念ではある。
が、これで戦争は終わる。どうにかこうにか自分たちは生き延びたのだ、との安堵感もある。
対する連邦軍は違っていた。自分たちは戦争に勝っていない、このEフィールドにおいて。
戦闘艦4隻を含む多数の仲間が散っていった、その敵を討つために武器弾薬を補充してきたのに
自分たちの知らないところで勝手に戦争が終わってしまっていたのだ。
ましてやこのEフィールドに投入された新兵たちは、その誰もがこの戦争で肉親や友人を亡くしてきた。
全てジオンの都合だ。コロニーを落としたのも、地球に侵略して略奪されたのも、今さっきまでこの戦場で
多くの仲間を焼き尽くされたのも、すべてジオンの独立したいというワガママのもとに実行された非道、
この上戦争終結までジオンによって決めつけられてしまうのか・・・誰もがやるせない思いにとらわれていた。
それはジャックも同じだった。故郷を滅ぼされ、居場所を消され、兄貴を、エディさんを、指令を殺され
はじめての部下3人をソーラレイで焼かれ、ついさっき、もう一人の部下もいなくなった。
それで都合が悪くなったら降伏か!どこまでジオンのワガママで俺たちを踏みにじれば気が済むんだ!
合流したビルからマシンガンを受け取ると、ジャックは憎しみに満ちた目で、赤いモビルアーマーを睨む。
―敵を褒めるんだよ―
はっと我に返る、尊敬している兄貴からの言葉を思い出し、その言葉を心に染み渡らせるジャック。
ヅダは実弾を携行していない状態で、ボール部隊に果敢に向かってきた。
基地攻略でのザクレロは勇敢だった、艦隊に身ひとつで特攻し戦果を挙げた。
ソロモンの銀のゲルググは、己の部隊を鍛え上げ、それが全滅した時に悲痛な叫びをあげた。
そして目の前の赤いモビルアーマー。火力はすさまじく、ビーム攪乱膜もある。
しかし冷静に考えれば、一度連邦部隊が撤収した時点で、実弾兵器にさらされることくらい理解しているはずだ。
それでもアイツは逃げない、オッゴを修理し、彼らをかばうべくこの戦場に中心に居座っている。
彼の心から、敵愾心がすっと消えるのが理解できた。停戦命令が出た以上、戦いは終わったのだ。
「くっくっく・・・」
「へへへへへ、へっ、へへへっ!」
通信から聞こえる笑い声にジャックはそのとき気付いた、下卑た、憎しみに満ちた笑い声。
それは連邦軍兵士の憎悪を音にした、つい先ほどまでジャック自身も心に湧き上がっていた感情の音。
それは一人や二人ではなかった、対峙する連邦軍のジムから、ボールから、その全てから敵に向かって
刺すような殺気が向けられていた。
「おい、ビル・・・」
部下を制しようとしたその瞬間、ビルのジムは機動をかけ、飛ぶ。敵の鼻先にいるオッゴの目前に。
ジャックは理解した、彼は赤く燃えさかる憎悪にとらわれている、恋人を殺された悲しみが
行き場を失ったことが、彼を狂気に駆り立てる。ビームガンを抜き、目の前のオッゴに向ける。
「ノーサイド、ってか!?」
ラグビーの試合終了を意味する用語。ホイッスルが鳴ったら、その時点でサイド(陣営)は無くなる。
共に同じフィールドで戦った相手をたたえる時を迎える。
しかしこれはスポーツではない、戦争だ、ましてや連邦兵にとって、これは復讐戦、敵討ちなのだ。
「レフェリーは、ここにゃいねぇよおぉっ!!!」
口上を述べたのは、ビルの最後の良心だったのかも知れない。最初に銃を向けたのだからさっさと逃げるか
反撃でもすれば、自分が無抵抗の相手を殺すことは無い、だが彼の希望は叶わなかった。
無抵抗の相手に引き金を引き、それがオッゴに直撃し爆発、ひとりの少年兵が終戦後に命を落とした。
それを合図に、連邦軍が一斉に攻撃を開始する。ボールがオッゴを打ち抜き、ビグ・ラングに弾丸が集中する。
「ああっ!待ってくれ、停船命令だ、撃つなーっ!」
敵兵の声が通常回線から響く、その発信源はすぐに分かった。目の前の赤いモビルアーマー。
「何が停戦だ!さんざん俺たちの仲間を、焼き殺しておいてーーっ!!」
憎しみと悲しみに満ちた返信が返ってくる、もう理性は働かなかった。ただ殺戮の意思だけが連邦軍を支配する。
ジャックは皆を止められなかった、元々そんな権限もない、しかも戦端を開いたのは自分の部下、言い訳は効かない
開始された戦闘の責任をとる必要ができてしまった。機動をかけ、悲しい戦闘に突入する。
「どうしてだーーーーっ!」
モビルアーマーのパイロット、オリバー・マイの絶叫が通信に響く。ビグ・ラングは再び砲門を開き、
ランチャーを連射する、そのひとつがまっすぐビルのジムに向かっていく。
ビルは動けなかった。自分がしでかしてしまった事への後悔と、自分が打ち抜いたオッゴのパイロットの悲鳴が
通常回線からはっきりと聞こえていたから。あれは・・・子供の声だった。その行為に対する罰が、
ランチャーの弾丸に姿を変え、ビルのジムを爆発に包んだ。
「バカ野郎・・・っ!」
ビルの無抵抗な死を見てジャックは悟った、彼が似合わないことをして後悔していたことを。
それが恋人サーラが望んだ復讐ではなかったことを。
「あの世で、幸せに・・・なりやがれっ!」
涙を振り払いジャックのジムが飛ぶ。初めてできた5人の部下はすべていなくなってしまった。
もう何もない、あるのは後始末だけ。この戦場を支配してきたあのモビルアーマー、あれさえ破壊すれば
連邦兵の復讐心も和らぐかもしれない、もう他に方法は考えられなかった。
戦場は、地獄と化していた。
停船命令が出た時点から、すべての機体の通信はすべて開かれる。敵味方の報告や指示を聞き逃さないために。
だが戦闘継続中に開かれた通常回線からは、敵味方の絶叫が、悲鳴が、断末魔が、泣き叫ぶ声が
否応なしに飛び込んでくる、ほぼ全て少年の声で。
「助けて、死にたくないー・・・」ブッ
「お母さん、お父さーーーんっ!」
「墜ちろ、墜ちろ、おちろおぉぉぉっ!」
「嫌あぁぁぁぁぁっ!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁー」ブツン
「ははは・・・あははははははは」ザッ、ザー・・・
「なんでだよ、もう終わったじゃないか、もう嫌だ、いやだイヤダ嫌だいやだ・・・」
「死ね!死ね死ね死ねえーーっ!」ブツン!
幼い少年たちの、狂気に満ちた声が響く戦場、それが尚更狂気を呼ぶ。彼らは死を目と耳で感じながら
泣き叫び、生存のための戦いに身を投じていた。理性も戦術もフォーメーションもない、
味方同士激突して四散する機体すらあったのだ。
ジャックはそんな中、赤いモビルアーマーに狙いを定めていた。向かってくるオッゴをいなし、銃撃をかわし
下を取るべく機動をかけていた。あの機体は下部がオッゴの収納庫であることを知っている、
そこがおそらく奴の弱点だろう。簡単にはいかないが、そこに辿り着ければ・・・
だが、それは彼以外のジムが先に実行する。バズーカを構え、モビルアーマーの腹を狙う。
「スカートの下!」
他とは違う、平静さを保った女性の声が通信に入る。その瞬間、ジムは銃撃を食らい爆発する。
「大尉、大佐!」
戦場外から2機のモビルスーツが突入してくる、青い機体ヅダと銀色のゲルググ!
「世話を焼くのは慣れていても、焼かれるのは慣れていないか。」
女性の声を発するヅダはモビルアーマーの横で止まり、ゲルググはそのままオッゴの前まで飛び出す。
「待たせたな、ヒヨッコ共!」
そう言うとビームライフルを2連発する、その先にいた2機のボールが爆散する。
「友軍の脱出まで、このEフィールドを維持する!」
ジャックは反射的にゲルググに突進していた。あの声、間違いない。ソロモンで戦ったあの指揮官!
速度を止めずにゲルググに向かい、シャークペイントの盾を叩きつける。
「貴様!この盾はソロモンの・・・」
「連邦軍、ジャック・フィリップス少尉だ!」
「ヘルベルト・フォン・カスペン大佐である!」
戦場では珍しい口上を述べ、2機のモビルスーツの戦いが始まった。盾を起点としたアンバックから
縦横無尽に動くジャックのジムと、ビーム長刀を自在に振り回し応戦するカスペンのゲルググ。
何度も打ち合い、離れ、そしてまた接近。モビルスーツ戦の集大成のような激しい機動戦と
その前の二人の名乗りは、戦場での決闘をイメージさせた。
戦場から悲鳴が消えていた。二人の堂々とした戦いぶりに感化され、冷静さを取り戻し
少年から戦士に戻っていく両陣営のパイロット達。
それと入れ替わるように、戦場に似つかわしくない「歌」が、通常回線から流れ始めていた。
―夢放つ遠き空に、君の春は散った。最果てのこの地に、響き渡った―
13話でした。少年兵の悲鳴を書いていて自分で鬱になってしまった・・・
で、また夢轍です。この戦闘にこの曲は絶対外せません。
すいません、専ブラ?の方に四話目は書いたのですが、非専ブラには反映されてなかったので念のためここでも書かせてください。
皇女の戦い 第四話
それは全身がダークグレーの装甲に包まれたMSだった。
僚機同様にステルス機能を宿していたその正体は強靭としか言いようのない姿をしていた。
全身に緑色の小型・板状スラスターが埋め込まれているのも相俟ってどこか冷ややかな印象を与える。
肩と太腿には太めのマッシブな装甲、身の丈程もあるバスターを軽々と持つ腕と脛は程良い太さなのが体型的なアクセントになっている。
兜のような頭部は簡単に貫かせてはくれないような硬さを持っていた。
「流石ガンダムファイターの端くれだな。皇女が参戦するというからお飾りと思っていたら......国を背負って立つだけのことはあるか...」
どこか中性的な声はまるで獲物を狙うかのような響き......
MF内のマリナには音声通信だけで相手の姿こそ見えないが...
冷たく蒼いバイザー状の頭部メインカメラ、中東の太陽に照らされて艶を見せる装甲はパイロットの威圧感を伝えるには十分な外観だ。
「引いて下さい...あなた達との戦いは決して望むものではありません...
私が行くべき場所は知っているのでしょう?」
マリナが感情を訴えるように下げたままの両腕を広げれば、華奢な機体も同じ動作をする。しかし...
「ふふふ、そんな温いことを言っても無駄さ。......お前達、絶対に手出しはするんじゃないよ。」
釘を刺すような声に僚機二体はじっとして動く気配を見せない。
荒くれ者達を従わせる辺りかなりの手練れだと悟ったマリナは口をきっと結ぶ。
埋め立てですか、という表記のエラーが出たのでここでのレス(専ブラではない場所の)は一旦中断します。
スレ汚し失礼しました。
>>400さん
あ、それ連投規制です。
他の誰かが書き込むと続きが投稿できますよ。
私は1レス投稿したあと自分のガラケーで割り込ませていますw
教えて頂いてありがとうございます。
規制だったのですね。
不勉強なものでw
自分でももっと色々2chのこと調べてみます
裏技もメモさせて頂きましたw
僕の場合、ここに書くと専ブラの方のスレで僕の文がダブってしまうのでここに書くのは止めようと思います。
重ね重ね失礼しました。
専ブラではない場所とか専ブラの方とか一体どこの話なんだ…
ちょっとわからんな
ひょっとしたらなんだったっけ、一昔前にできた2chのそっくりさんサイトと二重投稿になってるってことなんだろうか?
だとしたらだけど普通に専ブラ1本で投稿すりゃいいだけではないのか
違ってたらすまん、そして職人氏方投稿乙
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
第十四話 心の青山
戦場は整然とした機動戦へと変貌しつつあった。オッゴが小隊単位で編隊を組み、
ジムはボールと連携して狙撃と格闘戦を入れ替える。他の戦場から駆けつけたザクやリックドムは
オッゴの隙間から彼らを支援し、巨大なモビルアーマー、ビグ・ラングを守る。
その戦場の最中心で、激しく機動し、戦う2機のモビルスーツ。
鮫の顔が描かれた盾を持つジャックのジムと、ジオン軍カスペン大佐の銀のゲルググ。
その激しい戦いに、誰もが横槍を入れることはできなかった。誤射して味方を討つ危険もあるし
なにより見惚れるほどの見事な機動戦、彼らはちょっかいを出すのではなく、二人に負けない
戦いをしたいと思い、他の敵と対峙する。
「やるな小僧!、だがそれだけの研鑽を経ていながら、何故だ!」
寡黙なカスペンが珍しく敵に問う。通常回線が開いている現在、間近で戦うジャックの存在は
息遣いまで感じられる。
「何がだ!」
ビームサーベルとビーム長刀で鍔迫り合いをしながらジャックが返す。
「停戦命令は聞いているはずだ、貴様ほどの技量を身につけていながら何故戦う、道理はわきまえぬか!」
それは説教のようでもあり、現在の状況にいたる経緯を説明させる質問でもあった。それを察してジャックが返す。
「道理?俺たちの居場所を、大切な人を奪い続けたお前たちがそれを言うか!」
自分の意見より、むしろ戦場の味方の本音を代弁するつもりで返し、続ける。
「コロニー落とし、地球侵略、各所の戦争、お前らの独立のためにどれだけの人が居場所を失ったと思ってやがる!」
鍔迫り合いを打ち払い、ゲルググの盾を蹴って距離を取る。しばし対峙し、カスペンが返す。
「青臭いな、小僧。」
思わぬ返答に顔がこわばる。反省や謝罪など期待してはいなかったが、その言葉には黙っていられない。
「なんだと!?」
「居場所とは作るものだ・・・我らスペースノイドが、常にそうしてきたようにな。」
「作る・・・?」
その言葉を咀嚼するのには、ジャックにはしばらくの時間を要した。
「人生至る所に青山あり、我々スペースノイドの指針となる、東洋の言葉のひとつだ。」
骨を埋める場所はどこにでもある、生まれ故郷にこだわらず、どこにでも行って活躍しなさい、という意味の諺。
「宇宙という過酷な環境、真空の恐怖、衣食住の確保、そんな敵と戦い続けて、我々はジオンという
『居場所』を築きあげてきたのだ、先祖から与えられたのではない、自分たちで作り上げたな。
その居場所の独立を願って、なにが悪いというのだ?」
カスペンの口調は、いつのまにか年少者を諭すものに代わっていた。素晴らしい技量を持つ若者なればこそ。
「我々が殺戮をしていないとは言わん、恨まれるのもぬべなきこと。だが、それに溺れて未来を見ぬなら
貴様もそれまでの男でしかないぞ。」
言葉を聞くジャックは、それが憎むべき敵の建前でないことを感じ取っていた。それは目上の人の言葉、
かつての兄貴に教えられた言葉を聞く感情と、すごく似ていた。
「居場所がなくなったのなら探せばよい、作ればよい。失ったことを嘆くばかりでは何も変わらぬ!」
「・・・余計なお世話だ!」
盾を振って機動、スラスターを噴射し、ゲルググの右下を取り、サーベルを振る。
憎しみはもともと消えている。ただ、彼の言葉を連邦の兵士はどう取っただろうか、聞く余裕はあっただろうか。
そのサーベルを盾で止めるゲルググ。
「今は戦っても構わぬ、だがそうするならその恨み、決して未来に持ち込むな、貴様は貴様の先を見ろ!」
ビーム長刀を回転させ、ジムに切りかかる、ジムは盾で受ける、シャークペイントの横面が焼け、傷つく鮫。
もう言葉はいらない、言いたいこと、言うべきことは言った。あとは戦いが未来を決めるだろう。
―果て無き夢轍、照らす我が運命、燃え尽きること知らず、どこへ向かうのか―
回線から流れる歌が、少年戦士たちの心に染みる。生きたい、自分たちの向かうところを知るために。
それでも戦闘を止めることはできない、ここは戦場であり、彼らは未熟なれども職業軍人なのだ。
停戦命令の後でも、味方が危険なら身を呈して戦う、それが兵装を持つ国家軍人の業。
「ぬぅっ!」
カスペンが左腕を操縦桿からすべらせ、離す。彼は左手が義手であり、激しい操縦を繰り返す実戦において
それが操作ミスを引き起こす可能性は常にあった。普段はともかく、目の前の若者はこのスキを
逃しはしないだろう。
「もらった!」
ジャックがマシンガンを向ける。その時1機のオッゴが、スキを見せたカスペンのゲルググを庇う様に立ちはだかる。
「大隊長殿ーっ!」
芯の通った少年の声を聴き、一瞬ジャックは引き金を引くことをためらった。
2機を仕留める絶好のチャンスだというのに・・・。刹那を置いて意を決し、引き金に手をかけるジャック。
「馬鹿者おっ!」
その時、カスペンのゲルググがオッゴを掴み、反転して自分の後ろに回す。その勢いでさらに反転し、
両手を広げてオッゴを庇うゲルググ、そこに殺到するジムのマシンガン。
「ジーク・ジオ・・・」
マシンガンを全身に受け、最後に主の絶叫を放ち、爆発する銀のゲルググ。
ジャックは常から狂信的に聞いてきたその言葉が、今回だけは全く違った意味に聞こえていた。
ジオン、彼らにとってそれは『無から懸命に築いてきた彼らの居場所』だったのだ。だからジーク(万歳)と唱える。
―悲しみの地図なら、あまた風に散って、故なき日々の地図も、瞬く彼方よ―
彼を悼むようなフレーズの歌が、回線から流れる。ジャックは心に染みる感情を押し殺して、ビグ・ラングに向かう。
14話・・・あああ寡黙なカスペン大佐をおしゃべりなキャラにしてしまった。
たぶんあと2話、最終話とエピローグを残すのみとなってしまいました。彼らの戦争の結末がどうなるか
見てる人がいたらお楽しみに・・・いるのかなぁw
お二方乙です。
久しぶりに覗いたらえらく更新してて驚きです。
自分も投下します。
――艦これSEED 響応の星海――
夢。
夢を見た。
それは紅く、鮮やかな夢。真っ赤に染まった視界の中で、燃えるソラに囚われている自分が、誰かの夢と誰かの命が終わることを知った。それはきっと抗えないことだったのだと諦めて瞳を閉じる、そんな夢。
そんな夢を見たと思い出し、これは記憶なのだと感覚的に理解して、それでも今はそんなことにかまけている暇はないと、キラは考えないことにした。
行かなければ。
それは自発的な欲求、決意。思い耽り、考える時間はいくらでもあって、たくさん迷って、これで良いのかと何度も問うた。
相変わらず成すべきことは判らないけど、やりたいこととできることがあるから、その心のままに戦う道を選んだ。
眼を開く。
確固とした意識に、確固とした意志を入力する。
変わっていく明日を生きる覚悟を、変わらず示し続ける為にも。
夢で見た情景に畏れを抱きつつ、しっかり心に留めて道を征く。そうできるだけの支えが、今の彼にはあった。
「あたれぇ!!」
立て続けに3発、キラの右手に握り込まれたライフルから荷電粒子ビームが射出された。
ストライク用57mm高エネルギービームライフル。モビルスーツ用携帯式荷電粒子砲塔としては最初期のモデルにあたり、
後に【GAT-X102 デュエル】のものと並び地球圏全勢力の火器事情に多大なる影響を与えた名銃であるそれは、今や人間用サイズにまでミニチュア化していた。
ただし吐き出されるビームそのものは本物で、ザフトのローラシア級航宙フリゲート艦の外装をも一撃で貫く威力は健在だ。直撃すれば 深海棲艦にだって通用するだろう。
原理原則など知ったことではない。
「――チッ!」
もっとも、万全であればの話だが。
背部に装備したエールストライカーパック――大型可変翼と4基の高出力スラスター、大型バッテリーパックで構成された高機動戦闘用装備――で最大加速をかけながら敢行した超長距離狙撃は、
ひとまず成功したと言ってもいい。しかし、予想に反してその戦果は芳しいものではなかった。
高度500mの上空から放たれた三条のビームは、そのどれもが約3km先にまで迫ったターゲット、第二艦隊を襲っていた巨人【Titan】に吸い込まれるようにして命中。
一発は今にも発射されそうであった敵のライフルに、遅れて残り二発は頭部に当たり小爆発を引き起こす。
だがどれも、敵の表面をわずかに削っただけで終わった。
威力不足。
ビームの減衰の激しい大気圏内といえどギリギリ射程内である筈なのに、期待された破壊力は発揮されなかった。
(思った以上に硬い。でもそれよりこっちのパワー不足が深刻だ)
動力系にエラーを抱える今のストライクでは、この距離で戦えない。
出力が低く、パワーが上がらない。エンジンを始めとした主要パーツは最新式のものに換装されて近代化改修が施されているが、それでも今のストライクの性能は初期型のものにすら劣っている。
ライフルに供給できるエネルギーも通常時の半分を割っており、その威力は泣きたくなるほど低下しているようだ。
接近するしかない。
そう見切りをつけたキラは高度を落としつつ、注意を引く為に更にビームを射かけながらホロキーボードを展開する。
(ぶっつけ本番でと思ってたけど・・・・・・思ったよりあちこちガタがきてる。下手したらフレームも死ぬ)
暗視モードの視界の中で、ようやく此方を敵性存在と認識した【Titan】は、醜くおぞましい巨体の表面で幾つもの火花を散らせながら対抗するようにビームを連射。
五条の閃光が瞬く。
サイドスラスターを噴かして避けようとした。だが瞬時に思い直し、まっすぐ飛行しながら左腕大型シールドで受け止める。まだまだ機体が重い。シールド耐久値も危険域にあるが、避けきれるものではなかった。
外見では判らなかったが『前任者』がよっぽど無理させたらしいストライクの内装はボロボロだ。修理どころかシステムチェックする間も惜しんで戦場にやってきたキラは、中断していたOSの調整を急ぐ。
やっと傷が癒えたのだ。遅れた分は結果で取り戻す。
非我の距離はもう1kmまでに縮まっている。のんびりやってられないなと、衝撃に呻きながら虚空に顕れたキーボードを荒々しくも正確に叩いた。
(ライフルの出力は短射程設定で補う。長時間戦闘ならスラスターは――持続と瞬間加速力を優先、他は軒並み低出力でバランスを取ればいい。駆動系はレスポンス落として延命するしかない)
ベストには程遠いが、現状では限りなくベターな修正案。
後は自分の操縦技術でフォローすると割り切った青年は、新たにやってきたビームの雨をバレルロールでかいくぐり急降下、ついで真っ黒な海面を蹴ってミサイルを飛び越える。
海面に激突して自爆するミサイルの爆風に乗って、更に加速した。
次々と機体のパラメータを書き換えて最適化し、一部スペックを落としながらも動きのキレを増していくストライクと同様に、キラもどんどん己の身体が軽くなっていくように思えた。
接触まであと500m、300m。
またNGワード?
一体なんで・・・・・・なにが引っかかるんだろう
ちょっと細かく分割して投稿してみます
「これなら!」
ビームライフルを一射。
ザフトの白服を纏い、【GAT-X105 ストライク】を取り込み同化したキラは、生身のまま57mm高エネルギービームライフルのトリガーを引き絞る。
人間の銃撃戦のレンジまで接近してからようやく放たれた光の矢は、先までのものよりずっと細く、速く、漆黒の空を駆け抜けて。
庇うように突き出された【Titan】のボロボロの左腕を貫通して、その奥のライフルのセンサーサイトを破壊した。
《第4話:旧き翼》
「やった!?」
「まだよ! まだアイツは!」
思わぬ援軍の出現とその戦果に、つい瑞鳳は歓喜の声を上げかけるが、それを榛名が制する。
援軍の最初の一射で【Titan】の狙いが逸れた結果、水蒸気爆発に吹き飛ばされるだけの被害に留まって窮地を脱した榛名は、木曾に肩を貸してもらいながら指摘する。
衝撃で口内を切ったのか、鉄の味がひどい。
まだ照準装置を破壊しただけ、無力化できたとは言いがたい。それに飛んでくるビームも派手な割には威力不足みたいだ。有効打であることには違いないが致命傷には遠い。
状況は巨人と援軍の一対一。
危機的状況から脱し、さっきまでの騒々しさが嘘のように状況に取り残された第二艦隊。しかしだからといって、ここで黙って戦局を見守っていられるほど脳天気の集まりではない。
「此方も仕掛けます! 響さん!」
「Всё ништяк!!」
「てぇッ!!」
愚かにも此方に背を向けた【Titan】に向けての全力攻撃。
今こそが勝機。
残り僅かな弾ぜんぶ持ってけと、無駄にデカい背中に主砲をしこたま撃ち込んだ。
「ゴォヲヲォァァァァアアアーーーー!!!!??」
前後からの執拗な砲火にたまらず、巨人が耳を覆いたくなる程の甲高い雄叫びをあげる。
戦艦よりも硬い装甲を持つといってもこれは効くだろう。だが、それでも火力が足りなかったのか、全身を穴だらけにされようとも巨人の活動は止まらない。驚異的な耐久性だ。
怒り狂ったかのように巨人が、デタラメにライフルを乱射した。目眩ましにでもするかのように周囲に幾つもの水柱が上がり、榛名達は後退を余儀なくされる。
すると、ゴキャリと嫌な音が響き、巨人の腰部から一対の大型ガトリング砲が跳ね上がった。
そんなものまで隠し持っていたのかと驚く間もなく吐き出された弾丸の嵐は、天空からやってきたたった一人の援軍――いや、第二艦隊に合流しようと駆けつけてきたキラを飲み込まんと殺到した。
「危ない!」
「そんなもので!」
青年は空中で両足を忙しなく動かしつつ、ただのブーツにしか見えない黒い軍靴のいたる所からスラスター炎を吐き出した。
重心移動とスラスターを併用した姿勢制御で、必要最低限のエネルギー消費でガトリング砲の掃射をやり過ごす。
鮮やかに弾幕から躍り出た青年は、素早くビームを一射。左腰のガトリング砲を射貫く。
「本体」に比べて柔かったのだろう砲身がグシャリと溶けて、機関部が爆発。左半身がごっそり抉れた。
「オ゛ォォォォ・・・・・・!!??」
ついに、巨人の動きが止まる。
だが次の瞬間、背部推進機関からは爆発でもしたかのように盛大に、青白い炎が轟々と噴き出された。
逃げるつもりか!
「やらせない!」
榛名と瑞鳳にガッチリ固定された響が、すかさず錨を投擲した。
弧を描いて飛翔するそれは【Titan】の右足に巻きつき、その逃走を妨害する。更にサーベルを抜き放った木曾が鎖の上を猛スピードで駆け上がり、跳躍。
同時に目と鼻の先までに肉薄していたキラが、その意図を察してビームサーベルを抜刀。腰だめに構えて最後の加速をかけた。
「これで!!」
「仕舞いだぁ!!」
洋風の実体剣と、荷電粒子を収束させた光刃による斬撃。
前後から振り抜かれた二つの刃が、鎖を振り解かんと藻掻いていた巨人の首を見事に切り裂いた。
断末魔もなにもなく、身体と頭を切断された巨人はゆっくりと崩れ折れる。
【Titan】、討滅完了。
佐世保にとって通算四度目となる巨人との戦闘は、第二艦隊フルメンバーの即興連携攻撃によって、ただの一人の犠牲者を出すことなくその幕を閉じたのだった。
だが、状況はまだ終わらない。
「・・・・・・なんだ、あれ――戦闘機? まだ来る!!」
「え、あ、ちょっと!?」
キラが上空で何事かを呟き、背中のスラスターを噴かす。そのまま加速していずこかへと飛び去っていった。
響は手を伸ばし呼び止めようとしたが、背後から上がった瑞鳳の悲鳴のような声に、思わず振り返る。
「ッ! 南西から接近する機影! ――なにこれ、さっきの【Titan】より速い!?」
「新手ですか!?」
「反応と形状は航空機タイプだけど・・・・・・数は1、高度200、速度600! サイズ・・・・・・約13m!?」
「なんだ、次から次へと!」
強敵を倒した喜びさえも凍りつかせる、絶望的な報告。
速度600マイル、つまり約1100km/hで迫る影。まだまだ夜は明けずレーダーも使えない状況下、それだけの速度で低空飛行できるのはまず深海棲艦の艦載機しかあり得ない。
(敵の航空戦力が単機で突っ込んできた? それにしたって)
でかすぎるし、速すぎる。
今までに確認されてきた敵の航空機は、大きくて2m前後、速度も大体350マイル程度だ。まったくもって規格外だ。あの巨人のように異常進化した個体なのか。
なんの冗談だ、それは。
弾薬も今度こそみんなスッカラカンで、逃げるにしたってあと1分足らずで追いつかれてしまうだろう。こうなってしまっては自分達にできることはない。
響達は、先程キラが飛んでいった方角を見つめた。
それは、新たな敵が飛来してくる方角でもあった。
いち早く危機を察知して、単身戦いに赴いた彼に任せるしかなかった。
「アイツ一人でやろうっていうのか」
サーベルを抜いたままの木曾が、呆然と言う。
遠くの空で、数条のビーム同士が交錯し、幾つかが衝突しては爆発した。
自分達のあずかり知らぬ場所で、また自分達が置いてきぼりにされて戦闘が始まったのだ。
「くそ、なんてザマだ」
「木曾・・・・・・」
提督から説明は受けたものの、まだ自己紹介どころかまともに会話すらもしていない男に間一髪救ってもらったばかりか、あの敵の対応までも任せっきりにしなくてはいけない事に不甲斐なさを感じているのか、
ギリっと握り拳を固めた。
そう、あの男と会話したことあるのは、このメンツではまだ響だけ。その実力は確かだとしても、プロフィールを知るだけで他人を全面的に信じることは難しいだろう。
ましてや、【Titan】と同一の力を使役する男のことなど。
そんな彼女に榛名は労るように声をかけ、静かに首を振った。
「仕方ありません、今は彼に任せましょう。・・・・・・榛名達も今は、できることをしなくては。瑞鳳?」
「うん。他に敵は見当たらないよ。動くなら今しかないと思う」
「・・・・・・わかった。借りを返すにしても、まずは生き残らないとな」
パッと、いろとりどりの光が空に瞬いた。
木曾が打ち上げた信号弾と照明弾だ。また無事に合流できることを信じて、キラへと発信したメッセージ。今は自分にできることをしなくては。
そうして第二艦隊は粛々と移動を始める。
目指すは補給コンテナ。今度こそたどり着かなければ、自分達が何のためにここにいるのか分らなくなる。
まだこの海は戦場なのだ。
ならば一瞬たりとも呆けている時間はない。
「単縦陣、面舵40! 第四戦速でこの戦域から離脱します!」
榛名の号令に従い、一同は縦一列になって進行する。先頭が榛名、次に瑞鳳、木曾と続く。
艦隊最後尾についた響は無言で、自然と戦闘が始まった空域を注目していた。
目を見開いて、男の一挙手一投足を観測する。
同時に思い出すのは、二日前の彼の言葉と、先の戦闘行為だった。
知っているのが当然といったニュアンスで発せられた、どこぞのアニメ漫画でしか出てこないであろうキーワードの羅列がまったく嘘偽りでなかったことを、確信する。
(あれが、宇宙軍第一機動部隊の隊長の戦い。宇宙に上がった人類が得た力)
僅かに白みはじめた空で、木曾の照明弾に照らされた敵の姿が、ぼんやり浮かび上がる。
それはT字型の戦闘機だった。
勿論、ただの戦闘機ではない。深海棲艦のように真っ黒でどこか有機的、よくは見えないがコクピットには真っ白な肌の人――これもまた勿論、深海棲艦だ――が乗っている・・・・・・というより一体化しているようだ。
いずれにせよ、やはり初めて目にする敵だ。あれもまた一種の【Titan】なのか。
戦闘機型深海棲艦は、空戦の教本に則ったような単調な機動で旋回し、上面部に搭載された旋回砲塔から荷電粒子の光を迸らせた。
対するキラは鮮やかな宙返りをうってそれを回避。お返しとばかりに頭部の機銃で敵の垂直尾翼を射貫く。
バランスを崩した戦闘機とすれ違った――直後にキラはすぐさま両足を前に向けて逆噴射、一気に減速しつつ振り向いて、すかさず両手でグリップしたライフルで追撃した。
あの【Titan】と同じように空を飛んで、ビームを撃つ。スパイなんてイカしたものじゃないと判っているからこそ思うが、味方になればなんて頼もしいことだろう。
人間と戦闘機による高機動空中戦。目まぐるしく空を駆ける両者にしばし、少女は目を奪われた。
(人が空を飛べば、あんなことができるんだ)
人型が単身空を飛ぶ。揚力に頼らず、自由に「浮遊」して「飛行」する。
その様はまさに異質としか言いようのないものだった。
水上を駆ける艦娘達も初めて目にする、史上類を見ないもの。
背部、胸部、脚部、肩部。全身いたる所に搭載された高出力スラスターを操って実現するソレは、飛行機ともヘリコプターとも異なる人型のモビルスーツ特有のものとして、
また機動兵器たるモビルスーツが人型である理由の一つとしてC.E. 世界に浸透した飛行様式だ。
実際、C.E.の宇宙では【ZGMF-1017 ジン】が、大気圏内では【AMF-101 ディン】が旧来の戦闘機相手にその運動性で圧倒的優位に立ち、
以降モビルスーツ開発はスラスターの性能と配置が最重要視されるようになったという経緯もある。
特に脚部の複合推進器は、モビルスーツの総合運動性能の4割から5割を占めるとまで言われており、背部のものと並びメインスラスターとして扱われる。
18mの人型ロボットの重量と空気抵抗すらも問題としない高性能小型スラスターの登場が、C.E.の未来を決定付けたと言ってもいい。
そんな背景を持つ「人型の浮遊」を生身の人間が、それも男がやっているのだから、誰にとっても驚くべきことであった。
艦娘と同じように、兵器と同化してその力を振るう、ヒトデナシ。
それが彼だ。
「よし!」
「わぁ!」
小さな主翼に懸架されたミサイルポッドが吹き飛ばされて、響と瑞鳳は揃って小さく喝采を上げた。
2分も待たずして、早くも雌雄が決しようとしている。
圧倒的な旋回能力と、機首方向に依存しない広々とした射界を備えるキラがほぼ一方的に、戦闘機にダメージを与えていた。
敵の速度はなんのアドバンテージにもなっておらず、浮遊と回避機動をうまく使い分けるキラにいいようにいなされていた。
ストライクを駆るキラは今にも止まってしまいそうな程ゆったりと空を舞い、時には倒れ込むようにして撃ちかけられた機銃を躱す。
と思いきや急加速して敵の死角に飛び込み、矢のようにすっ飛んでいく戦闘機めがけて射撃する。
いうなれば通常艦艇と艦娘の戦い、その空戦バージョンといったところか。普段意識しないので忘れがちだが、自分達艦娘も人の形の利点を最大限発揮させて戦っているのだ。
縦長の生き物である人間が、他の横長の生き物・乗り物よりずっと優れている運動性能は、もう無くてはならない大事なパラメーターだ。
人間はもともと水上に立てないし、空だって飛べない。だが、そんなステージで発揮される人型の汎用性は、人間が思っている以上の力を秘めているのだろう。
(しかし・・・・・・それにしたってこれは一方的過ぎないか?)
キラの高い実力と相性の問題もあるが、些か戦闘機が弱すぎるような気がした。でかい図体して、戦い方は素人のそれだ。
こと船の化身である艦娘であるからして飛行機のことはよく分らないが、あれではレシプロ機とだって良い勝負をするんじゃないか。あり得ないスピードだとビビってたのがバカみたいだ。
そこに響は強い違和感を覚えた。
敵は弱いに越したことはないが、しかし深海棲艦というのは総じて戦闘のスペシャリストみたいなものだ。おそらく、生まれながらにして戦い方を熟知・習得している艦娘と同じように。
では、あの戦闘機は一体なんなのだ?
「はぁ!」
戦闘している内に随分と、こちらに接近していたらしい。潮風に乗って微かにキラの声が響き、みな一様に空を仰いだ。
ここで勝負を決めるつもりか、右肩からビームサーベルを抜き放って、急激な旋回行動で失速しかけていた戦闘機に真っ正面から肉薄した。
ライフルの直撃には耐えるようだがサーベルは防げまい。その切れ味は対【Titan】戦で証明済み、あの凄まじいエネルギーの塊はどんな敵だって真っ二つにできるだろう。
戦闘機はなんとか殺傷圏から逃れようと、体勢を立て直そうとする。
だがそれよりもずっと早く、キラは大きく振りかぶったサーベルを、ついに振り下ろした。光の刃は寸分の狂いもなく機首を断ち切らんとして――
――寸前、キラの身体が不自然に一瞬、ギクリと止まった。
「え?」
次の瞬間、二つのことが同時に起こった。
まずキラのサーベルが、タイミングを逸脱した為に狙いが逸れて、戦闘機の翼端を斬り飛ばした。
その時、意図しないカウンターのように、キラの身体と戦闘機の機首とがまともに衝突したのだ。
「な!?」
「ちょ、マジか!?」
体格差もあってか青年が弾かれ、重力に引かれてくるくる回りながら落下した。
気を失ったのか身動き一つしないままどんどん高度を落としていく。その隙に、完全に戦闘能力を奪われた戦闘機は、黒煙の尾を引きながらフラフラと逃げていった。
だが今はそんなことはどうでもいい。
あの高さから落ちればただではすまない。
思いもよらないアクシデントに呆気にとられた第二艦隊の面々は、しかし流石の反応で駆け出す。受け止めなければマズいと悟ったのだ。
――けど、この距離じゃ!
「キラ!!」
「っ!」
咄嗟に、響がその名を叫んだ。
少女に似つかわしくない大声で、精一杯の力を込めて。
その声に反応したのか、キラはすんでのところでスラスターを噴かし、なんとか海面との激突を回避しようとした。
それでも勢いは完全には殺せず、キラな半ば尻餅をつくような格好で着水した。
高く水しぶきが舞って、青年が海に没する。
けど、それだけだ。
すぐに彼の頭が海面に出てきた。
大きく咳き込んでいるが、溺れているわけでもなくて存外平気そうだった。
「・・・・・・ふぅ」
最悪の事態を回避できて、みんな一斉に安堵の溜息をつく。
ピンチに次ぐピンチの連続、それを切り抜けた矢先に仲間を喪うなんて事態は御免だ。ある意味、戦艦級の大軍と戦うより心臓に悪い。同一のものではないのだ、戦闘とドッキリに対する覚悟は。
まぁなんにせよ早く救助しなければ。
波は穏やかでも、いつ高波が来るかは分らない。いつまでも立ち泳ぎは危険だ。
(そういえば、初めて名前を呼んだな)
咄嗟のこととはいえ、それも大声で。普段はそんなこと気にもとめないが、何故か今回に限っては気恥ずかしい気がした。なんでだろう?
そんなことをぼんやり考えながら、少女は速度を徐々に落としていく。戦闘機が去った方向をいつまでも見つめ続けるキラの頭は、もうすぐそこだ。
このメンツでは一番速い響が、やはり一番に彼のもとに辿り着いた、その時。
立ち泳ぎをしていたキラが、ぽつりと。呆然と呟いた。
自分が目にしたものが信じられないといった面持ちで。
「――スカイグラスパー・・・・・・トール? いや、まさかそんなわけ――」
「・・・・・・え?」
その声は波音にかき消され、ついぞ響の耳に届きはしなかった。
キラが戦った戦闘機は、そのパイロットは。
かつてキラを救わんと空を駆け、そしていなくなったモノと、どこか似通っていたのだった。
キラはただ、その直感を否定することに精一杯になった。
◇
「じゃあ、かなりギリギリだったんだ。よかった、間に合って」
「うん。本当に助かった・・・・・・Спасибо。おかげでみんな元気だ」
「そっか・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
通算四度目、榛名達にとっては三度目となる対【Titan】戦を乗り越え、さらにその後の【謎の戦闘機】を追っ払った第二艦隊。
へろへろになりながらも遅れに遅れた自己紹介を済ませて、海上に浮かぶ補給コンテナに辿り着いた彼女達は、ようやっと弾薬と燃料の補充にありついていた。
念願の補給だ。照明に満たされた室内に入ってホッと一息つく。
更に良いことに、虎の子の【Titan】が倒されたからか侵攻の手が緩まっていた。敵も戦力を再編する必要がでたのか、それとも単に品切れなのか、他の海域でも戦闘が止まっているという。
できることならこのまま深海棲艦が諦めてくれれば良いのだが、まぁ、そう都合良くいくはずもないだろう。
兎にも角にも、落ち着いて休憩できる時間も勝ち取れたのは僥倖だった。
「うーん。こんなことならお弁当とっとくべきだったかなぁ」
「急いで食べちゃったのは勿体なかったですね」
「食える時に食っとかなきゃな、仕方ないさ。・・・・・・お、間宮印の羊羹があるぞ」
「ほんと!? 食べるー!」
「折角ですし頂きましょうか」
コンテナ内のチェストを漁ってきゃいきゃい姦しくはしゃぐ三人を背に、すっかり濡れねずみになったキラは、いち早く補給を終えた響と会話する機会を得ていた。
こうしてちゃんと顔を合わせるのはこれで二度目。最初に目覚めた時以来だった。
あの時からまだ二日しか経っていないが、随分と昔のように思える。なにせ、あの時はまだ何も知らなかったのだ。
あれから天地がひっくり返るような事実に何度も打ちのめされて、一日が何千時間とあるような気さえしたのだ。
あの時間濃度は、かつてアークエンジェルがクルーゼ隊から逃げまわっていた時のものに匹敵する。
あんな思いはもう、金輪際御免蒙りたい。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何はともあれ、こうして再会できたのは嬉しくて、ちょっとこそばゆい感じだった。なにか色々と話したいことがあったのだが、こうしてみるとなかなか言葉がでない。
キラと第二艦隊が合流するまでのアレコレについて、特に対【Titan】についてのことを話し終わったら、なんとなく会話が途切れる。
お互いのお互いに対する認識が、出会った当初よりずっと異なってしまったからだろうか。まさか、この白い少女と轡を並べて戦うことになるとは思いもよらなかったキラであった。
だが、いつかの親友との再会とは違って、悪い気はしなかった。
「・・・・・・怪我はもう大丈夫なのかい?」
ふと、響が深呼吸して、こちらを伺うように切り出してきた。
そういえば自分は病み上がりで、しかもさっき戦闘機とぶつかったのだ。そりゃ心配もするだろう。
もっともフェイズシフト装甲のおかげでなんともないが。
「あ、うん。僕はもう平気。・・・・・・君こそ無理してない? ずっと戦いっぱなしだって聞いたから・・・・・・」
「・・・・・・ごめんなさい」
「え?」
「あなたを護ると、ちゃんと司令官を紹介すると約束したのに・・・・・・結局守れなかった」
俯いた少女の右手が頭の付近で彷徨い、所在なげに揺れる。
帽子の鍔をつまもうとしたのだろう、いつの間にか無くしていたことを気づいた小さな手は、誤魔化すように長いもみあげをくるくる弄ぶ。
突然の謝罪に面食らったキラは、そういえばそんな約束もあったなと、懐かしい気分になって思い出した。
響が出撃する際に交わした約束だ。
思えばあれは、ただ焦り恐怖するばかりで混乱していた自分を落ち着かせる為の言葉だったのだろう。しかしその響きは真摯的で、決して口から出任せの、その場凌ぎの言葉ではないということはちゃんと伝わってきた。
たとえ絶望的な状況であっても、彼女はちゃんと約束を果たすつもりでいた。
でも結果的に、仕方ないこととはいえキラは大怪我を負った。それどころか、討ち漏らした敵を撃退するといった尻ぬぐいまでさせてしまった。
それが彼女の負い目になっていたのだろうか。
俯いて、こうして謝って、そんなの、彼女達は全然悪くないのに。
みんなはもう一杯一杯だというのに、どうしてそれを責められるだろうか。
(そんなこと、気にしなくていいのに。君達が最善を尽くしてくれたことは、よくわかっているから)
律儀だなと思った。
その在りようはとても眩しく感じられた。
とある赤毛の少女が脳裏に蘇り、胸がチクリと痛む。口から出任せの、その場凌ぎの言葉で少女を傷つけた自分には、とても眩しい。
これは曇らせてはいけないものだ。
「大丈夫だよ。君はちゃんと約束、果たしてくれたよ」
「そう、かな?」
「そうだよ。だからこうして、ここにいられる。君にまた会えて嬉しいから」
「・・・・・・うん」
気づけば、くしゃりとその無防備な頭を撫でていた。
一瞬「しまった」と後悔したが、ええいままよと、そのままゆっくり労るように撫でてやることにする。
無事にまた会えた。それだけで充分。
それ以上はいらないと想いを込める。
すると強張っていた少女の肩から力が抜けて、くすぐったそうにしながらもされるがままになった。
そうして汗と潮風でぱさついた髪の毛を梳いていると、瑞鳳から声をかけられる。
「響ー、キラさーん。羊羹あるよ。今のうちに食べちゃお?」
「Спасибо。頂こう」
「ヨーカン?」
「日本のお菓子よ。小豆は平気?」
「えと、大丈夫。甘いのは好きなんだ・・・・・・ありがとう」
ついで三切れの黒々とした長方形を盛った小皿が手渡された。
初めて見るそれは、小豆を主原料とした餡を寒天で固めた伝統菓子だそうな。
昔カガリがお土産として持ってきたお饅頭の中身みたいなものかなと思い、フォークもないのにどう食べたものかとキラはうっすら透明感のある艶やかなブツを眺めた。
すると響が、セットで渡された小さな木ベラみたいなものの使い方を教えてくれて、それを真似て一口大に。
・・・・・・うむ、美味しい。この羊羹とやら、なかなかデキるやつのようだ。
控えめで上品な甘さ、滑らかで上質な舌触り。これは個人的甘味ランキングのベスト5に食い込むかもしれない。
見てみれば榛名達も美味しそうに食べ進めていて、それはまさに平和そのものといった雰囲気だった。
(こうしているとホント、普通の女の子だよね)
二人並んで羊羹を食しつつキラはつい、さっきまで響の頭を撫でていた掌を見つめる。
さて、まったくファンタジー極まりない話だが、彼女達は艦艇の生まれ変わりで、艦艇だった時の記憶があるらしい。つまりは人間ではない、人在らざるモノ。霊的存在。
コーディネイターとナチュラルの違いなんて些細なものに思えるほど、根本的に異なる生命体。
自己紹介も『特三型駆逐艦二番艦の響』とか『金剛型戦艦三番艦の榛名』とか変な言い方だと思ったけど、船そのものなのだとしたら納得できる話だ。
それが本当なら彼女達は、自分よりずっとずっと長く戦い続けた戦士ということになる。
あまりに認めがたいことだが、今のキラにそれを否定する材料はなかった。むしろ、今の自分の存在そのものがエヴィデンスになっている。
(兵器として生まれ、一度は死に・・・・・・そして再び戦うために産まれた彼女達は、一体どんな気持ちでこの海を眺めているのだろう。既に決定付けられた自分の『運命』に、なんて思っているんだろう)
そう考えるとなんだか複雑な気分になってしまうが、微笑を浮かべて羊羹に齧りつく響の姿を見ると、それもまた些細な事のように思えた。彼女らも血の通った一人の人間であることに変わりはないらしい。
少なくとも我が姉よりもずっと女の子女の子してるし。
ありのままを受け入れようと思う。
「そういえば、その服はどうしたんだい? 見たところ軍服のようだけど」
「・・・・・・え、ああ。これ? これは借り物で・・・・・・ストライクの中にあったんだ。軍服だよ」
「へぇ。――なかなかいいデザインだね。白と黒で、私好みだな」
すっかり上機嫌になって早くも完食した響の興味が、キラの纏うザフト白服に移ったようだ。
クールな蒼い瞳をキラリと煌めかせ、まじまじと観察してきた。どこか大人っぽい立ち振る舞いの少女だが、こうしていると見た目の歳相応に子どもっぽい。それが何故か嬉しく思えて、キラは微笑んだ。
差し色の金もいいねと呟く少女に、結構バリエーションあるんだよと教える。
今となっては笑い話にできることだが、様々な陣営の軍服に袖を通してきたキラとしては、この白服が一番お気に入りだったりする。一番長く使用したということもあるし、なにより色使いがいい。
好みが一緒というのは何気に気分が高揚する。
「こういうの好きなの?」
「Да」
しかし実際のところ、今着ているこの白服を入手した経過は、決して笑い話にできるものではなかった。
この服は出撃の間際にストライクのコクピット、そのストレージボックスから回収・拝借したものだ。それ自体に問題はない。未使用であることを示す、しっかりパッケージされた予備用を貰ったのだ。
問題は、コクピットシートにべったりと、大量の血糊が付着していたことだ。
コクピットは文字通り血の海になっていて、驚きのあまりにコクピットハッチから転げ落ちそうになったものだ。
あれが大人一人分のものだとしたら、間違いなく致死量。
つまり誰かが、ストライクの中で死んだのかもしれないのだ。この白服は、その人の遺品なのかもしれない。
(ホント、謎ばかり増えてくな・・・・・・。はやく記憶戻らないかな)
今の自分は曲がりなりにでも生きているのだから、あの血はきっとこのストライクに乗ってた『前任者』のものだろう。
その『前任者』といい、酷使された機体といい、それに乗ってた自分といい、ストライク一つだけでも不明なことばかり。
もはやこの世界は謎しかないというのは過言だろうか。いや、過言ではない。
早急に謎が解明されることを祈って、キラは最後の一口を飲み込む。
それを見計らったようなタイミングで、榛名がポンと手を打った。
「さぁ、そろそろ休憩は終わりです。出撃しましょう」
「あと一踏ん張り! やっちゃうよー!」
けど、少しだけ。
戦場に出てみて、【Titan】と戦ってみて幾つかわかったこともあった。
少しずつだけど確実に、今この海域で起こっているという異変、その謎は解明されつつある。
「・・・・・・すいません、みなさん。少しいいですか?」
「キラ?」
「移動しながらでもいい。でも戦う前に。・・・・・・僕は、みなさんに話さなきゃいけないことがあります」
それは自分とストライクがここに転移した理由というか、その原因を内包する謎でもある。
なにもかも不明なことばかりで殆どが憶測の域を出ないものだが、それでもだいたいの当たりがついているのも事実。
キラは、自分は気づいたこと、もしかしたらということを第二艦隊の面々に説明すべく、その口を開いたのだった。
以上です。
自分のこそ見てくれる人がいるかどうか・・・・・・でも続けますが。
種世界出身のキャラはあと一人ぐらい出る予定です。
次スレのURLが見落とされないよう、貼っておきます。
新人職人がSSを書いてみる 34ページ目
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いけるトコまで、このスレでいきますか。
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
最終話 顎(あぎと)朽ちるとき
「ヨーツンヘイム!聞こえるか、これより、我々の最後の映像を送ります。
記録願います・・・願います!」
巨大なモビルアーマー、ビグ・ラングは今や連邦軍の的と化していた。全身に砲火を浴びながらも
それでも装甲の厚さと、懸命の操縦と、オッゴやモビルスーツの援護により未だ健在だった。
その必死の抵抗を、周囲に漂う観測ポッドが記録し、母艦ヨーツンヘイムに通信する。
603技術試験隊、その最後の映像が今、記録されようとしていた。
カスペンを下したジャックのジムがそこに到着した時、出迎えたのは青いモビルスーツ・ヅダだった。
「させないっ!」
そのパイロット、モニク・キャデラック特務大尉の張り詰めた叫びが通信に響く。
盾のピックを立て、ジムを突き刺しにかかるヅダ。それを盾で受け止めるジム、盾と盾の激突。
ピックがシャークペイントの目の部分を刺し貫く。ジムはそのまま左腕を回転させ、相手を左腕ごとひねりにかかる。
「ふんっ!」
ビームサーベル一閃、ヅダの左手を肩口から切り落とす。ジャックは盾を振り、刺さっていたヅダの腕を
宇宙空間に捨て飛ばす。
「くっ・・・さすがだな、あの大佐を倒しただけのことはある。」
彼女はカスペンの最後を見ていた。彼を仕留めたジムがこちらに機動してきたのを見たとき、彼女は
真っ先にそのジムに向かっていった。アイツは強い、危険だと。
ジャックは機動をかけ、ヅダを振り切りにかかる。目標はヅダではない、巨大なモビルアーマーだ。
この戦場を支配してきたこいつを沈めることが、この戦闘の終わりを告げるきっかけになるだろうから。
思えばこのヅダこそがジャックの戦場での最初の相手、そして兄貴が死に至る因縁の相手でもあった。
だが、もうそれもどうでもいい。今はこの戦闘を終わらせること、それだけだ。
ビグ・ラングを狙撃する位置に回り込み、マシンガンを構える。が、追撃してきたヅダはヒートホークを
打ち下ろす。盾で受けるジム、シャークペイントの頭の部分が焼け付き、絵の一部が消える。
「くそっ!さすがに速い、しつこい奴だ!」
ヅダに向き直るジム、ヅダの向こうには赤い巨体が見える。その片腕のヅダはビグ・ラングを庇い
守ろうとしているようにも見えた。あのゲルググがオッゴを守ったように・・・
「どけ!」
「どくものか!」
ヒートホークを振るうヅダ、一歩後退し、盾を振ってアンバックからの動きを作り、
曲線軌道でヅダをすり抜けるジャックのジム。ビグ・ラングはもう目の前だ。
が、上から機動してきたオッゴの砲撃がジムの行く手を阻む、やむなく減速したジャックのジムに
特攻してきたヅダがタックルを食らわし、そのまま片腕でヅダに抱き着いてビグ・ラングから引き離す。
自分がこのビグ・ラングを何が何でも沈めたいように、このヅダの女パイロットは
何としてもこのビグ・ラングを守りたいようだ。
戦闘しているのは彼らだけではない、ビグ・ラングの周辺ではジムが機動し、ザクが戦い、ボールが舞い、
オッゴが飛ぶ。砲火の応酬は熾烈を極めるが、犠牲を示す光芒はほぼ見えなくなっていた。
戦闘自体がビグ・ラングを沈めにかかる連邦軍と、守ろうとするジオン軍の動きへと偏っていたから。
その肩代わりのように、ひとつ、また一つ、ビグ・ラングは被弾し巨体を揺らす。
きしみ、ゆらぎ、塗料を剥離させながらもビグ・ラングは吠える。さすがにもう弾丸もビームも弱弱しいが
最後まで戦い抜く意思だけは失っていない。
ヅダによって遠方まで運ばれたジャックのジム。しかし遠目から見ても、ビグ・ラング陥落は
もう時間の問題だった。
「行かせるか・・・やらせは、しない!」
ジムから離れ、立ちはだかるヅダ。
「やめろ、もう・・・終わるぞ。」
ジャックは相手に伝える。背中を向けている彼女からは見えないだろう、ビグ・ラングの下側に
連邦軍のジムが位置し、バズーカを構えている様子が・・・チェックメイトは目の前だ。
「はっ!」
ヅダが振り向く。その瞬間にバズーカが放たれ、ビグ・ラングの急所であるモビルポッド格納庫に
吸い込まれる。爆発が上がり、内部からの火炎が巨体を嘗め包んでいく。
「ああっ・・・!」
ヅダは戦闘を忘れ、一瞬固まる。ジャックもまたこれ以上の戦闘をする意思はない、これで・・・
「マイーーーーーっ!!!」
悲痛な叫びと共にヅダが機動する、爆散しつつあるビグ・ラングに向けて。
その声、どこかで聞いた。音声の質ではない、愛しい人を無くす瞬間の悲鳴。
反射的にヅダを追うジャックのジム。そう、この戦闘の少し前、自分の部下であるビルが
サーラを失った時の悲痛な声、それが目の前で再現されていた。
ヅダは間に合わなかった。あと少しのところでビグ・ラングは炎に包まれ、大爆発を起こす。
至近距離の爆風に晒されながら、呆然と立ち尽くす片腕の青い機体。
しかし、それを追いかけていたジャックには見えていた、より遠方からの視点ゆえに。
爆発したビグ・ラングは後部から崩壊していき、前部にあるビグロ部分が弾かれる様に連結を外され
爆発する直前にそのコックピットからパイロットが弾き出されるのを。
ジャックはその先に飛ぶ。ああ、そうか。彼女には帰るところがあったのか、このパイロットと共に。
戦闘は止んでいた。この戦場の支配者であった赤い巨体の爆発は、連邦、ジオン共に決着の花火に写ったから。
全ての機体が起動を止め、銃を下す。
その爆発の鼻先で、ジャックのジムが止まっていた。両手で小さな何かを大事そうに抱えて。
その手の中には、ノーマルスーツを着た一人の人物。ビグ・ラングのパイロット、オリバー・マイ技術中尉。
―あてどなくさまよえる愛しさよ、この胸を射抜く光となれ―
通信の歌を聴きながらジャックは待つ。その人の迎えを。
通信の歌に導かれキャデラックは向かう、その人を迎えに。
ジムの目の前まで近づき、停止するヅダ。向かい合う敵機同士だが、そこには殺気も殺意も無い。
穏やかな声で、表情で、手の中の人物をヅダに差し出すジャック。
「ほら。」
ヅダが右手を出し、パイロットを受け取る。それを愛おしそうに胸に包む青い機体。
「行けよ・・・お前たちには、帰るところがあるんだろ。」
「・・・礼を言う。」
ゆるやかに距離を取るヅダ、そして反転すると、ジオンの脱出部隊が連なる艦隊に向けて機動する。
それにオッゴやザク、ゲルググが続く。彼らは戦闘を終え、独立の夢から覚め、帰るべき場所に帰っていく。
彼らにとっての一年戦争が、他より一時間ほど遅れて、終わった。
―終わらぬ夢轍に、君の影揺れた―
通信の歌が静かに終わる。残された連邦軍兵士たちはそれを聞き届け、終わりの虚無感を感じていた。
―夢放つ遠き空に、君の春は散った―
意表を突かれた。終わったと思った曲がまた最初からリピートされる、思わずコックピットで
ずっこけそうになる者、苦笑いをする者が続出、しまらねぇなぁ・・・誰だまったく。
『その・・・コックピットで、音楽、かけてもいいですか?』
ジャックは雷に打たれたようなショックを感じた、何故気が付かなかった、この戦場で音楽が流れる不自然さを、
それを希望した自分の部下がいたことを!こんな間抜けな上司がどこにいるか!
音声を複数のセンサーで拾い、発信源を探す、あっちだ。反転して全力で機動をかけるジム。
その瞬間、彼のジムの腕に付いていた盾が外れる。構わず飛び、叫ぶジャック。
「ツバサ!ツバサ・ミナドリ二等兵!どこだ、返事をしろーっ!」
破片の隙間に挟まるようにして、そのボールは生きていた。砲塔は吹き飛んでいたが、残弾が無かったのが幸いして
本体は大破することなく原形をとどめていた。そこに到着するジャックのジム。
「ツバサ、大丈夫か!?返事をしろ、生きているかっ!」
目の前のボールに向けて叫ぶジャック、返事は無い。歌だけが聞こえている。
コックピットから飛び出し、ボールのハッチをこじ開けにかかる、素手では無理だ。ジムに戻り緊急脱出用の
バールを取って戻る。ハッチの隙間に差し込み、こじる。隙間ができたことで中の空気が抜け、それが
ハッチを押し開ける。
少女はノーマルスーツを着ていた。動きを見せずに横たわってる。彼女を抱きかかえるジャック。
そして、彼女の寝息を感じ取った時、ジャックは安堵した、よかった、本当に良かった。
ジャックは自分が大泣きしていることに気づかなかった。兄貴に救われたこの命、その俺が今度は
次の誰かを救いえた。命の連鎖、上官から部下に、守るべきものをひとつだけ、守り切った。
―気にするな、責任は誰かがとらにゃならねぇ、いつかお前にもその番が来る―
そんなサメジマの言葉を思い出すジャック。
「兄貴、俺・・・やったよ、4人を死なせちまったけど、せめて彼女だけでも・・・」
戦闘のあった宙域に残されたジャックのジムの盾、シャークペイントはこすれ、顎の部分は無くなっていた。
もう顎(あぎと)は必要ない、自らの帰る場所へ帰る、または帰る場所を「作る」ために―
最終話でした。でも、もうちょっとだけ続きますw
投下乙であります!
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容量チキンレース!最後まで入るかな?
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
エピローグ 彼の青山
「お疲れ様ですお客様、当機は○○空港に到着いたしました、降りる準備をなさって下さいませ。」
キャビンアテンダントに起こされ、ジャック・フィリップスはアイマスクを上げる。
「ん?ああ、ありがとう。」
やっと着いたか、まったく、サメジマの兄貴もえらいトコに住んでたもんだ。
地球、日本国の国内線の空港、トクシマと呼ばれる地方都市。
まったく、どうせ日本ならトーキョーに住めばいいのに、乗り継ぎ乗り継ぎでこんな片田舎まで・・・
―あれから半年―
あの戦争のあと、ジャックは軍に退役を申し出る。しかしそう簡単にはいかなかった。
彼のア・バオア・クーでの活躍は映像記録として軍に提出され、しかもその戦いぶりから
件のニュータイプでは無いという認識から、彼は軍から強烈なラブコールを受けていたからだ。
モビルスーツ、ジムの部隊長、教官、指揮官から動作ルーチンの開発者として、彼は引く手あまただったのだ。
しかし彼は決めていた、軍に身を置くということは、仕事として殺し合いを続けることであり
その生き方を自分は選ばないということを。
山のように積まれた、軍の引き止め工作&嫌がらせという名の書類を5か月かけて片付け、
わずかな退職金を得てお役御免となった。
その過程で、彼はルナツーにサメジマの兄貴の遺品が保管されていることを知る。
遺品と言ってもなんの事は無い、スケジュール手帳が1冊とそれに付いているウイスキーのボトルの
形をしたキーホルダーにすぎなかったのだが。
だが、それはキッカケにはなった。この遺品を彼の家族に届けよう、と。
軍法会議で処刑された兄貴の家族は、ひょっとして肩身の狭い思いをしているかもしれない、
これを届けるのを口実に、ヒデキ・サメジマがいかに魅力的な人間だったか、その死がいかに不運で
不合理なものであったか、自分がいかに彼を尊敬し、彼の言葉によってどれほど救われたか
彼の家族に伝えたかった。
同時に地球へ降りるのだから、これからの人生の居場所を探すのも悪くない。地球は未だコロニー落としの
被害から完全に回復はしていない。メカニックとして働けるところはいくらでもあるだろう。
あの銀のゲルググの軍人の言葉が浮かぶ、人生至る所に青山あり。
そうだ、踏み出せば自分の居場所はきっとある、アイランド・イフィッシュは既に無く、シドニーは
巨大なクレーターと化してはいるが、それはもう過去のことだ。
自分は軍人としてジオンと戦い、敵を殺してきた、味方の死を見てきた。そんな俺が恨み言を言うのは
筋違いだ、それも兄貴の教え。俺が歩んできた足跡をいつまでも見ていても仕方ないんだ。
それを夢の轍にして、さらに歩いていく、死が訪れるその時まで―
鉄道もろくに走っていない田舎を、タブレットの地図を頼りにバスや歩きで彷徨う。
季節は夏、緑濃く青山が太陽に映える大地、頬に汗をかきながらも乾いた風に心地よさを感じていた。
セミと言うらしい虫の声、たまにすれ違う元気な子供達、大空で弧を描く鳥、平和な光景。
「このあたりだな・・・」
タブレットとにらめっこしながら、一軒の家に続く道に入る。平屋ではあるが広い庭のある家。
庭の一角では少女らしき人物が、ホースで花に水をやっている。
彼はその家の門柱に埋め込まれた表札を確認する、サメジマは日本語表記で「鮫島」こんな漢字だった。
「水鳥」
あちゃー・・・どこかで間違えたか、なんて読むのかは知らないが明らかに違う文字。
しかしおかしい、ちゃんと道筋に沿ってここに来たはずだ、最悪引っ越してしまったか・・・
仕方ない、あの少女に聞いてみよう。いきなり外人が声をかけて引かれなきゃいいんだが。
「すいませんお嬢さん、このあたりにサメジマさんというお宅は・・・」
「はい?」
振り向く少女。そして両者が固まる。
彼の目の前にいたのは、かつての彼の部下、ツバサ・ミナドリ元二等兵その人だった。
「え、ジャック中隊長・・・ですよね。まさか私を訪ねてくださったんですか?」
呆然と口を開けて固まるジャックに、ツバサは少しはにかみながらそう答える。
「あ・・・いやいやいや、このあたりにいたヒデキ・サメジマって人を訪ねてきたんだが」
わたわたしながら答えるジャック、そんな風に笑顔を向けてそう言われるとこっちも対処に困る。
「・・・兄です、それ。」
「え、えええーっ!?」
もはや中隊長の威厳など皆無な表情で驚くジャック、かつての部下にクスクスと笑われる。
ありえない確率の偶然、兄貴がツバサの兄貴でツバサが兄貴の弟子の俺の部下で
何億という人口を抱えるこの地球でこんな片田舎でばったりと再会してしかも兄貴とツバサが兄妹で
えーとえーと・・・
「や、やぁ久しぶり、元気?」
思考停止してそれだけを絞り出す、固まった表情のままで。
「ぷっ・・・あははははははははは」
腹を抱え、涙を流して大笑いするツバサ、落としたホースのシャワーが二人の間に虹を作る。
「水鳥」、は母方の性らしい、やはり「サメジマ」は軍において不祥事を起こした名前として
疎まれるのを恐れた家の者が、表札を挿げ替え、苗字を「ミナドリ」に変えたようだ。
ツバサはもともと、連邦軍の福利厚生施設で軍属として働いていたが、兄を知る彼女は、
その不祥事が信じられずに軍に身を投じたらしい、自ら事実を知るために。
もっともボールのシュミレーションやら軍隊教育やれでそんな暇は当然なかったのだが。
終戦後すぐに退役し、実家に帰って暮らしていたところに上官であり、命の恩人でもある
ジャックが訪ねてきたことに感激してくれた、そしてサメジマの名を知っていてくれたことにも。
「教えてください、兄のこと。」
本当は両親が帰ってきてから話すつもりだったが、まぁいい、話してやろう。
俺が兄貴から受け取った大切な言葉、そのおかげで自分の命があること、お前を救えたこと、
そして戦場で出会ったさまざまな人の言葉、敵と味方の戦場にもあった人を思う心、
部下を案じ、恋人を、思い人を守りたいと願う心を。
「ああ、長い話になるぞ。」
「はいっ!」
地球の片田舎、空は抜けるように青く、雲は湧き上がるように立ち、青山はどこまでも深かったー
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
―おわりー
無事に最後まで入ったー、よかったよかった。
妄想垂れ流しの駄文の数々、失礼しました。
夏だぜ。
まぁ、おまえら、少し気分転換しろ!
お山のオカルト置いとく。
ちょっと気色悪いけど・・・
★山霧の巻くとき(山岳ホラー)★
http://slib.net/71604 上松煌 作
(プロフィール)
http://slib.net/a/21610/ 最後のほう、グロ注意?
w
13 名前:ユーラシア兵 ◆fhWVlI7Zkg [] 投稿日:2017/08/02(水) 00:14:11.96 ID:nW3T+6Hv0 [1/13]
10 名前:三流(ry[sage] 投稿日:2017/07/29(土) 21:58:34.60 ID:zpY24ern0 [1/3]
すいません駄文に蛇足しますね・・・
MS IGLOO外伝
「顎(あぎと)朽ちるまで」
あとがき
最後まで読んでくれた方・・・なんているのかおいw
まぁ素人丸出し、誤字多発なSSなんてとっくに見限られてるとは思いますが
それでも気分だけはラノベ作家のつもりで、あとがきなど書いてみようかと思います。
まぁ見ての通り、私はIGLOOが好きです、ええもうガンダム作品の中ではぶっちぎりに、
アニメ全体から見ても私の心をこれほど揺さぶった作品はまぁ稀でしょう。
なんでここまで好きかというと、IGLOO内のプロホノウ艦長の一言に集約されます。
「脇役は毎度のことだ」
そう、脇役が好きなんですよ、モブややられ役や日陰者や背景キャラの物語が。
伝説の英雄やら薄幸のプリンセスやらニュータイプやら運命の人やら
そんな人には興味ありません、少なくとも自分が描く物語には。
だって自分がそうですから。
ええ、ただの凡人ですよ、普通のオッサンですよ、ヒガミ入ってますよ、悪いか?ええおい。
でもそんな人にも物語あるでしょう、長い人生の中、少しくらいは。輝く時間が。
だけどガンダムはじめ一般のアニメでそんな人が輝くのはたいてい爆死する瞬間くらいでしょう
スレンダーが、クラウンが、トクワンが、デミトリーが、ジャブローの名もなきジムのパイロットが。
でもMS IGLOOは違います。時代遅れの大砲屋や戦車兵の、蹴散らされるだけのモビルポッドの少年たちの、
欠陥品を懸命にゴーストファイターに仕立てようとする悲しいピエロの、そして閑職に配属された
603技術試験隊の人たちの懸命のドラマがそこにはありました。
こんなアニメがあるのか、いや、こんなアニメを作ってくれる人たちがいるのか・・・もう一目惚れですわこんなん。
11 名前:三流(ry[sage] 投稿日:2017/07/29(土) 21:59:50.30 ID:zpY24ern0 [2/3]
前作の「GBFsideB」にも多数のIGLOO機体が登場しました、やっぱ好きな機体に活躍してほしいし
GBFという素材なら脇役メカが活躍してもなんらおかしくはない、という思いがありましたから。
ただ、GBFという作品が好きかというと、正直そうでもなかったんです。
だってそうでしょ、サザキ君「お前ごときに!」で一蹴されるわ、カトーさん次回予告で敗北決定だわ
警備員たちは子供一人にノされるわ、どんだけレイジとメイジン贔屓の物語なんだよ、と。
sideBにはそんな作品へのアンチテーゼの意味も強く込められていました、だから主人公はボールだったんです。
それから約二年、新人SSスレは物凄い勢いで過疎ってしまいました。
ユーラシア兵さんが頑張ってくれてはいましたが、ほかの方の投稿も全然なく、なんか私の作品が
スレを終わらせたみたいで気が引けていました。もうSSは書かないと思っていましたが・・・
しかし最近になってミート氏の艦これとのコラボ作品が掲載され、
これは便乗して盛り上げねば、と思って駄文垂れ流しを決意しました。
やはり書くならIGLOOと思いましたが、同作品を「嫌い」と一蹴する人も結構多いです。
その原因のひとつが「連邦軍がチンピラすぎる!」というもの。
それならばそのチンピラたちの物語を描いてみよう、という発想に行きつき、
以前から妄想していた二つのSSネタ「シドニーとアイランド・イフィッシュで遠距離恋愛するカップル」と
「もしも603にザクレロが配備されたら」を取り込んで作品の骨子が決まりました。
主人公のジャック君は正直「薄いキャラ」です。透明なと言い換えてもいいかもしれません。
彼には「悲劇」と「尊敬する人物」「戦争」「部下」によって成長という色がついていくのを表現したかったんです。
そのための一番の色、それがサメジマの兄貴でした。実は彼にはモデルとなるキャラがいます、
某相撲漫画の準ラスボスで、王者でありながら相撲を愛し、研鑽を愛し、工夫、研究を楽しみ、
仲間の個性を大切に思う、作品内でもアニキと呼ばれる、そんなカリスマ性を持ったたくましい背中の漢。
12 名前:三流(ry[sage] 投稿日:2017/07/29(土) 22:01:12.05 ID:zpY24ern0 [3/3]
ジャックの悲劇に釣り合うだけのポジティブさと説得力を持った人物、彼がいなくてはこの作品は
成立しなかったでしょう、事実最初の案ではジャックはア・バオア・クーでノーサイドってか?のセリフを吐き
戦死する予定でした。兄貴の言葉を支えに成長してきたからこそ、作品として曲がりなりにも
完走できたんだと思っています。。
また、最初の連邦のチンピラであるオハイオ小隊の隊長に彼を充てることで、連邦=チンピラではない、という
作品の前提を立てたかったんです。
話が進むにつれて、ジャック君以上に成長したのはこのSSそのものでした。
サメジマの兄貴の言葉が、ジャック君の成長が、ファーストガンダムやIGLOOの流れに沿った
単なるドキュメントから、彼の成長物語に引き上げてくれた、と言っていいでしょう。
それでも彼は仮にアムロと戦ったら「そこ!」の一撃で爆死でしたし、シャアと戦えば「邪魔だ」で
四散していたでしょう、それでいいんです。彼はあくまで普通の人ですから。
逆に言えば普通の人はどんだけ頑張ってもアムロにはなれませんが、
ジャック君くらいのレベルにはなれるよきっと、というメッセージでもあります。
エピローグで最後に彼がツバサちゃんと会えたのは、作者からの彼へのご褒美です
普通の人でも少々のロマンスくらいあってもいいじゃないかぁー!という願望ともいいますがw
このSSで粗末に扱ったキャラはいないと思ってます、ソーラレイで焼かれた部下3名は例外ですが
オハイオ小隊、デミトリー、カスペン、オリバー・マイ、ワシヤ、オッゴの学徒兵たち、
ワッケイン、エディ、ビル、ツバサ、最終決戦の少年兵たち・・・
だって彼らはシャアでもアムロでもなく、私の愛する脇役ですから。
駄文に駄文を足したあとがきでスレ汚して失礼しました、
脇役に幸あれ。
このスレももう一つ前のスレも放置して次スレに移行していることから分かるように
このスレの住人はスレ使い切る気ないです
34ページ目も使い切らずに35ページ目に移行しそう
新人職人がSSを書いてみる 32ページ目 [転載禁止](c)2ch.net
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役に立つかもしれません
グーグル検索『金持ちになりたい 鎌野介メソッド』
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・すし職人が電車内で包丁落とし、驚いた乗客が非常用ドア開ける 緊急停止の騒ぎに
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・自分史を書いてみるスレ
・取り敢えず懐かしい事を書いてみるスレ
・ラップにわかでもリリック書いてみるのあり?
・譜久村聖「アンジュルムの楽屋からいっつも喚き声が聴こえてくる 聞いてみると全部かななんの声」中西香菜「すみません!」
・俺の書いてる小説が面白すぎてやばいんだが。たぶん新人賞は余裕
・【嫌儲ワナビ部】声優と結婚する現実的な方法考えた ライトノベルを書いてアニメ化させればいいんじゃね?取りやすい新人賞教えてくれ
・【笑報】アンジュ ビヨーンズ に入った新人がブスすぎてやばい
・垂れ目で音痴なオッサン(笑)「♪もっとデカくしたかったピラミッド職人がいたはずさ〜」何様だよコイツ…
・【首里城火災】当時の瓦職人が他界したため再現は不可能。瓦職人の組合「焼け残った瓦を可能な限り再利用するしかない」 ★6
・ホリエモンさん「寿司職人が何年も修行するのなんてただのバカ。半年でプロになれる専門学校も出来てるんだからそっち行けばいいだろ」
・ワンダーランドウォーズ 愚痴スレ 9ページ目
・ワンダーランドウォーズ 愚痴スレ 8ページ目
・ワンダーランドウォーズ 愚痴スレ 11ページ目
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