イスラエル人入植者はまるで兵士だ。パレスチナ人への襲撃作戦を遂行しようと、軍服姿で家々に夜襲をかける。白昼堂々と来ることもある。私たちを殴り、暴力行為が記録されないようにスマホを取り上げ、踏みつぶし、金品を奪う。そして最後には決まってこう脅す。「24時間以内に出ていかなければ撃ち殺す」
彼らは既に6つの村から、全住民を力ずくで退去させた。
私は生まれたときから西岸C地区のスシヤ村で暮らしている。パレスチナ人の小さな村だ。世界の目がガザに向いているのをいいことに、入植者たちはテロと暴力でC地区を支配し、土地を乗っ取ろうとしている。彼らは逮捕されるべき犯罪者だが、今では彼らが法律と化している。
3年前から暴力は日に日に増えてきた。入植地の近くで暮らしていれば、乱暴な連中の顔は分かる。4日前の夜、彼らは私の近所の家を襲い、男の住人4人を銃で脅して外に追い立てた。そして家の所有者の頭にM16自動小銃を突き付け、「死にたくなければ出ていけ」と恫喝した。
これほど恐ろしい思いをするのは初めてだ。イスラエルの警察に助けを求めたが、今は戦時だから何もできないとあしらわれた。戦争が起きてから増えたのは確かだが、暴力自体はイスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲を仕掛けた10月7日の前から存在していた。
10月16日、1人の入植者がブルドーザーで私たちの村に押し入り、その様子をイスラエル軍の兵士たちはただ見ていた。以来、村は完全に包囲されている。水も医療も物資もなく、薬も手に入らない。入植者が道路を封鎖しテロ行為を行うので、子供は学校にも行けない。
彼らは道路を破壊し、オリーブ畑の木々を根こそぎにし、井戸とソーラーパネルを壊した。こうした狼藉を働く入植者をイスラエル軍は保護し、警察は見て見ぬふりをする。
パレスチナ人の命は軽いから、反撃どころか抗議すらできない。文句を言えば、その場で撃たれる。
数日前も近くの村である家が略奪に遭い、放火された。殺されたパレスチナ人も大勢いる。罪に問われないと分かっているから、入植者はこんなまねをするのだ。
私たちに逃げ場はない。パレスチナ自治政府は無力で、自分たちの領土でさえ入植者に手出しができない。
オスロ合意から30年がたっても西岸の60%は事実上イスラエルの占領下にあり、自治政府は関与できない。こうした地域で法を執行するのは、占領しているイスラエル当局の責任だ。市民を保護し平穏な生活を保障するのは彼らの役目だ。だが当局は国際法を破り、入植者がパレスチナ人を追い出すのを助けている。
私たちにはなすすべがない。現状に照らして考えるなら、パレスチナ人の未来は暗い。暗いどころか、私には未来が見えない。それでも自由主義世界の良心がこの状況を変え一筋の希望の光を見せてくれると信じ、どうにか私たちは生きている。
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