https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10833-cepr-b11529-4.html オミクロン株においては、抗原性の変化により、感染回復者やワクチン接種者の血清による中和能の低下が懸念されており、オミクロン株の分離ウイルスを用いたワクチン接種者血清による中和試験の暫定結果が複数の国の研究機関等から報告されている。
実験系によって値にはばらつきがあるものの、アルファ株以前に主流であったD614G変異を持つ株やデルタ株と比較して、オミクロン株に対するファイザー社製のワクチン2回接種で誘導される中和抗体価は1/10-1/40程度であり、抗体価が測定感度以下のものも一定程度認められた(Cele, et al., Wilhelm, et al., Roessler, et al., UKHSA Technical Briefing 31)。
ファイザー社製のワクチンによる3回(ブースター)接種後においての報告もあり、ブースター接種2週間後では1/37、3ヶ月後では測定感度以下のものが多く、測定可能な検体では1/24.5であった(Wilhelm, et al.)。
また、南アフリカからの報告では、横並びではないが(オミクロン株以前の分離株でワクチン株から最も抗原性が離れていると考えられる)ベータ株の中和試験においては中和抗体価が1/3であったのに対して、同じ実験系を用いて行われたオミクロン株の中和抗体価では1/41であった(Cele, et al.)。
さらに、オミクロン株で認めるスパイクタンパクの変異を持つシュードタイプウイルスを用いた中和試験でも類似の結果が報告されているが、実験系の違いや使用された血清の採取時期(感染やワクチン接種から採血までの期間)の違い等により結果に大きく幅があり、中和抗体価の低下の程度は回復期血清で1/8.4-1/58(Zhang et al., Schmidt et al.)、2回接種後で武漢株と比較して1/5-1/127(Schmidt et al., BioNTech)、ブースター接種後1ヶ月で1/2.5-1/18(Schmidt et al., BioNTech)であった。
これらの結果は中和抗体のin vitro(試験管内)での評価であり、解釈に注意が必要である。