
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69958
厚生労働省が2019年12月24日に発表した2019年の人口動態統計の年間推計で、日本人の国内出生数は86万4000人となった。
前年比で5.92%減と急減し、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。2016年に100万人の大台を下回ってから、わずか3年で90万人を割る事態となっている。
厚生労働省の推計では、その後2021年に90万人を割り込むと予想していた。
それが2年前倒しで90万人割れを引き起こした。日本の人口減少に拍車がかかるのは、避けられない状況と言っていい。
未婚化・晩婚化をもたらす若者の貧困化
人口減少をもたらしたのは、日本社会の急速な未婚化・晩婚化・少子化である。
『国勢調査』によれば、たとえば30代前半(30歳〜34歳)の男性の未婚率は
、1985年の28.2%から2015年には47.1%に上昇した。また20代後半(25歳〜29歳)の女性の未婚率は、
1985年の30.6%から2015年には61.3%に上昇した。未婚化と晩婚化の進行は、少子化に拍車をかけている。
未婚化や晩婚化をもたらしたのは何といっても、若年層の貧困化であろう。
1990年代以降、非正規雇用労働者の増加は続いている。総務省「労働力調査」によれば、1990年に881万人だった非正規雇用者数は2019年に2189万人と2倍以上になった。
労働者全体の約4割が非正規雇用となっている。低賃金で雇用が不安定であれば、結婚することは容易ではない。また、近年では正規雇用であっても低処遇の周辺的正規労働者が増加している。
「家族マネー依存社会」の誕生
1990年代前半から急増した不安定雇用の若者を支えたのは、多くの場合その親や家族であった。
先ほどは若年と壮年の例を挙げたが、1990年前半の若者たちはすでに中高年世代となっている。当時の若者は2020年現在40代〜50代となっているが、
70代の親が40代の子どもを支えている「7040問題」、80代の親が50代の子どもを支えている「8050問題」が重大な社会問題となっている。
中高年の子どもを高齢の親が経済的に支えているが、周囲に助けを求めることができず、孤立している例が少なくない。
76歳で農林水産省元事務次官だった父親が44歳の長男を自宅で殺害した2019年の事件をはじめ、近年の家族内での悲惨な事件の続出は、現代日本の家族が追い込まれている状況を如実に示している。
2018年初頭に大きな話題となった「はれのひ」事件においても、新成人の晴れ着を購入する親あるいは祖父母が大勢いたことは記憶に新しい。
ここでの若者や40代〜50代の中高年世代を支えているのは「家族マネー」である。20代〜50代までが「家族マネー」に頼って生きる現代日本社会は、「家族マネー依存社会」になっていると言ってよいだろう。