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ヤンキーのルール「嘘はつかない」ママたちに正直に話してみた結果…
子育てって孤独だ」。そう感じているママは今、日本中にどれぐらいいるだろう。子育てをサポートしてくれる親が近くにいなかったり、夫が育児に協力的じゃなかったり、相談できる友達がいなかったり。
やっかいなことにその孤独感は「愛する我が子のために、自分が……」と頑張れば頑張るほど募っていく。
都心の企業に勤めるサラリーマンの妻・アッコさん(26)も、孤独を感じている一人だ。中部の地方都市で夫と出会い、結婚。その後、夫の転勤で、誰一人友達がいない都会で子育てをすることになった。
しかも、彼女には、娘のためにも、都会のママ友には絶対に知られたくない過去がある。実は彼女、全身タトゥーだらけの、ゴリゴリの元ヤンキーなのだ。
読売新聞オンラインで今月からスタートする「元ヤン子育て日記@TOKYO」。孤独な大都会で子育てに挑む「元ヤン」ママの等身大の気持ちをつづっていく。
私は専業主婦だ。
夫の転勤を機に地元を離れ、縁もゆかりもない東京へ越してきて、はや1年半。1歳になる娘と夫と3人で慣れない都会暮らしに悪戦苦闘している。
そして私は元ヤンだ。
中学の頃どうにも周りに馴染なじめず、気づけばヤンキーになっていた。
勉強はもちろん、集団行動はしたことがなく、いまだに協調性もない。
中学校の時の成績はオール1(マンガや小説の世界だけではなく、本当に世の中には存在する)。
中学卒業後に入ったド底辺の専修学校でも、授業なんてろくに出ず、地元の仲間とつるんで、遊び回る日々を送っていた。
そんな私だけど、娘が生まれたとき、心の中にちょっとした変化が生まれた。
「娘には選択肢の多い人生を送ってほしい。娘のために、“ちゃんとした親”にならなきゃ」って。
◆
右も左も分からない東京での子育ては想像していた以上に孤独だ。
私は娘と週に3回ほど、児童館へ遊びに行く。
自分に協調性を付けようという安易な考えから始まった習慣だ。
何度か顔を出し、私にも何人かママ友ができた。東京に来て初めての知り合いだった。
とある日のランチ会。ご飯を食べ終え、子育てについて一通り話をし、会話がなくなってきた頃、一人のママが口を開いた。
「部活何していましたかー? 私、水泳しててー、だから娘にも水泳させたくて」
聞いた本人はそんなに興味がなさそう。でも私にとっては居心地の悪い話だった。
それぞれが何部だったか答えていき、ついに自分の順番がやってきた。
中学の時に入ったテニス部はたった3か月で退部した
「テニス部でした」
「ヘぇー! 高校も?」。
私は中学1年の時、テニス部に入った。だけど、買ってもらったラケットを早く使いたいのに、夏休みに入ってもまだ素振り。おまけにくそ暑い中、球拾いをさせられたことにイラつき、先輩にボールを投げつけ、たった3か月で退部した。
ここで一つ。私は嘘うそをつくことができない。
それは地元でヤンキーをしていたころからのルールみたいなもの。嘘はつかない。仲間は裏切らない。
「3か月で辞めて、そこからは帰宅部でした」
一瞬、空気が止まったように感じた。
あぁ、真面目ママキャラでいきたかったのに。
覚悟を決めた瞬間――
「帰宅部いいな〜」
みんな口をそろえて言った。
私はまだ、元ヤンキーだという過去を彼女たちに話していない。嘘をつくのもイヤだし、気を使わせるのもイヤ。そして、浮くのはやっぱり怖い。話さないのが一番の解決策だと、そこで気づいた。
コンプレックスってこういうことなのかもしれない。少なくとも今の私には、ママ友との間で話題になってほしくないことがたくさんある。
そんな時、私は地元の仲間がどうしようもなく、恋しくなる。