「キャリアに傷ついてもいいのか」「時短言い出せない」 育休男性が直面する「パタハラ」
パワハラ防止を初めて企業に義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法が5月末、参院本会議で成立した。
義務化は2020年春にも大企業で始まる見通しだが、兵庫県内では労働組合へのパワハラ相談が後を絶たない。
最近では、育児休暇を取得した父親が嫌がらせを受ける「パタニティー(父性)ハラスメント(パタハラ)」も目立ち始めている。(末永陽子)
兵庫県尼崎市に住む30代男性は、妻と共働きで3人の子どもを育てる。3人目が生まれた昨年、勤務先に育休を申し出たところ、上司に強い口調で責められた。
「キャリアに傷がついてもいいのか。仕事の担当を変えざるを得ない」
上司の言葉に二の足を踏んだが、人事部や同僚らの後押しもあり、約1カ月の育休を取得した。「1人目、2人目の時は妻に育児を押しつける『ワンオペ育児』状態だった。
妻の苦労も分かり、充実した日々を送れた」と振り返る。
ただ、諦めたこともある。職場への復帰後、定時より早く退社できる時短制度を使うつもりだったが、「上司にとても言い出せなかった」と男性。
「『育児は女性に任せる』という認識が一部では根強く残っている。制度が整っても、理解が広がらなければ意味がない」とつぶやく。
最近ではほかにも、化学メーカーのカネカに勤めていた男性の妻が、ツイッターに「夫が育休から復帰した直後に転勤を命じられた」という内容を投稿。
カネカ側が「対応に問題はない」とのコメントを出すなど波紋を広げた。
厚生労働省が4日に発表した「18年度雇用均等基本調査」(速報版)によると、男性の育休取得率は6・16%で、前年度比1・02ポイントアップ。
上昇傾向にあるが、国が掲げる「妻が出産した直後の男性の休暇取得率を、20年までに80%」という目標には遠く及ばない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、3歳未満の子どもを持つ20〜40歳代の男性社員のうち、「育休を利用したかったが利用できなかった人」は3割を占めた。
理由としては職場の人手不足や理解不足が挙がった。
■暴言やセクハラ 働く人の4割がハラスメント経験
厚生労働省によると、2017年度に全国の労働局に寄せられた労働相談のうち、パワハラなどの「いじめ・嫌がらせ」は約7万2千件に上った。
件数は15年連続で増え、相談内容別でも6年連続トップだった。
また連合が5月下旬に発表した実態調査では、職場でハラスメントを受けた経験のある人が全体の約4割を占めた。
被害内容では上司や同僚からの暴言、取引先からのセクハラが多かった。就活中のセクハラは、対象者835人中、1割超の88人が受けていた。
20代男性の割合が最も高く、5人に1人が被害を訴えた。
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