
離れて住む家族を助けられますか?
あなたには遠く離れて住む高齢のご両親がいますか?
大きな災害が起きても、手を取って一緒に避難することができない…。
そんな時、どうやったら大切な家族を守れるのか。
ぜひ考えてもらいたい、大切なテーマです。
岡山市に住む樋口明さん(63)は去年7月の西日本豪雨で父親の卓男さん(89)を亡くしました。
卓男さんは岡山市から車で1時間ほど離れた倉敷市真備町で1人で暮らしていました。
西日本豪雨が発生した去年の7月6日の午後11時半過ぎ。
樋口さんはテレビを見て避難勧告が出ているのに気づき、父親の卓男さんの自宅に電話しました。
自宅は川沿いにあり、大雨で増水していないか心配だったからです。
樋口さん「親父、避難した方がいいんじゃない」
卓男さん「水は来とらん。大丈夫じゃ」
樋口さんは、離れた真備町の様子が分からず、卓男さんの言葉を聞いて安心しました。
実は、卓男さんは脳梗塞の後遺症で左半身に麻痺があり、杖を使わないと歩けなかったのです。
妻は2年前ごろから介護施設に入っていたため、自宅には卓男さんしかいませんでした。
それでも、ふだん2キロほど離れた妻の暮らす施設に通っていたことから、
いざという時は何とか自力で避難できるのではないかと樋口さんは思っていました。
ところが事態は大きく変わります。日付が変わった7日の午前1時ごろ、
今度は父親の卓男さんの携帯電話から電話がかかってきました。
卓男さん「寝室まで水が来ている。電気も消えた」
樋口さん「とりあえず2階に上がれ!携帯は持っておいて!」
そこで電話は切れました。
しばらくして、樋口さんは卓男さんが2階に上がることができたのか確認しようと電話をかけました。
しかし、電話に出ることはありませんでした。
樋口さんは、警察にも電話をして救助を求めましたが、警察や消防には、ほかにも救助要請の電話が殺到し、
卓男さんを助けることはできませんでした。
夜が明けて、樋口さんは真備町の実家に向かいましたが、町全体が水没。
実家に入ることができたのは2日後でした。
卓男さんは、自宅1階の寝室で亡くなっていました。
左半身に麻痺があり、足が不自由でしたが、ふだんは自宅の階段を使って2階に移動することができていました。
しかし当時は川からあふれた大量の水が押し寄せ、2階に上がることができなかったと見られています。
樋口さんはこう振り返ります。
「離れて暮らしているので、父親がどんな状況にいるのか分からなかった…」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190329/k10011864771000.html