
水着モデルの胸を……手術後わいせつ事件で医師無罪判決に至るまで | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/10894
女性は「性的幻覚」を体験していた可能性がある――。
胸の手術をした女性患者にわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた医師の男性(43)に、東京地裁は2月20日、無罪(求刑・懲役3年)を言い渡した。
男性は東京都足立区の病院勤務の外科医。2016年5月に女性患者の乳腺腫瘍摘出手術を担当した後、
手術室から移った病室で酸素マスクをしたままの女性の左胸の乳首をなめるなどしたとして起訴された。
初公判で医師は「病室は4人部屋。隣のベッドと近く、カーテンで仕切られていても(犯行は)不可能」などと起訴事実を否認していた。
司法記者が解説する。
「この事件では、男性の逮捕後に所属病院がホームページで『不当逮捕だ』と猛抗議し、危機感を抱いた一部医療界も
『患者が麻酔手術直後に幻覚などを見る“せん妄”だ』として、被告の無罪を訴えてきました」
■女性は水着モデル。胸は商売道具だった
公判では「女性がせん妄状態だったか」が焦点となり、地裁は「術後の17分間、せん妄状態だった可能性がある」と認定。
検察側は「女性の胸に唾液が付着し、DNA型鑑定で被告のものと確認された」と主張したが、男性がマスクをしていなかったことなどから、
地裁は「会話中に唾液のしぶきが飛んで付着した可能性が否めない」と退けた。また、DNAの鑑定担当者が試料を廃棄していたことも分かり、「検査者としての誠実さに疑念がある」と批判した。
「女性は水着モデルをしていたといい、胸はいわば商売道具。医師は形を崩さないよう慎重に施術したようです。
そうした直後に犯行はあったのか、病室内の防犯カメラ映像があるわけでもなく、地裁は難しい判断を迫られました。
女性は判決後に記者会見し、『どうしたら信じてもらえたのか』などと涙ながらに訴えました」(前出・記者)
男性は妻と3人の子を抱える一家の大黒柱。逮捕で100日超も勾留され、生活や仕事に深刻な影響を受けたという。
一方、せん妄が原因とすれば、被害を訴えた女性にも落ち度はない。実際に、今回の判決は「女性の証言自体は信用できる」と判断している。
無罪判決が出た以上、警察や検察による捜査の検証は不可欠だ。警察には証拠の扱い方をさらに慎重にし、医療に関する専門知識を十分に備えた上での捜査が求められる。
(おわり)