アルゼンチンはこれまで何度もデフォルト(債務不履行)を起こしており、経済破
綻の代名詞のようになっている。前回(2001年)のデフォルトでは、債務を返済で
きなくなった国債を新しい国債に交換する債務再編を実施。危機の原因のひとつと
された固定相場制を見直し、変動相場制に移行した。通貨ペソを切り下げることで
国際競争力を回復しようという試みである。
当初はこうした施策が功を奏し、経済は順調な回復を見せたが、2010年頃からフェ
ルナンデス前政権のバラマキ体質や経済介入の影響が顕著となり、再び経済が停滞
し始めた。2010年から2015年の間に政府債務は4.7倍に拡大し、政府債務のGDP比が
50%を超えるなど、一度は健全化した財政も再び悪化してきた。
GDPの200%という巨額の政府債務を抱える日本の感覚からすると、GDPの半分の債務
で経済が不安定化するというのは意外に思うかもしれないが、先進国でも政府債務の
GDP比は100%以下が望ましいとされており、米国は100%、ドイツは65%程度に収ま
っている(EUは60%以下が目安)。アルゼンチンのように経済の基礎体力が小さい
国の場合、GDPの50%程度でも不安定化することがある。
財政赤字の拡大に伴って通貨ペソが再び下落を始めたが、フェルナンデス政権はこ
れに対して為替介入を実施。国民の外貨保有を制限するとともに、海外旅行への支
出に対して課税するなど露骨な経済統制を実施した。その結果、アルゼンチン国内
では米ドルベースの闇市が拡大してインフレが加速。公定レートと実勢レートの乖
離はひどくなるばかりであった。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2018/05/post-49.php