震度6弱を観測した大阪府北部・箕面市に住む会社員の女性(31)は、地震発生の瞬間をこう振り返った。
「阪神大震災に比べれば体感的には15秒ほどの短い揺れでしたが、身動きできない強い揺れでした。だけど、突っ張り棒を準備していたお蔭で、背の高い大きな家具も倒れずに済みました。あれがなければ家具の下敷きになり、怪我をしていたかもしれません」
女性は阪神大震災をきっかけに、家具に転倒防止の突っ張り棒を使用するようになったという。ただ、女性のようなケースは少数派と言えるだろう。
震度6弱を観測し、死者も出た大阪府北部・茨木市の主婦(49)はこう話す。
「大阪の被害は少なかったとは言え、阪神大震災を経験しているから、もう一生のうちに大地震を受けることはないだろうと思っていた。南海トラフ地震が予測されていることは知っているが、被害を受けるのは大阪の南側と言うか、関西では和歌山のイメージ。危機感はなく、特別に地震に対して準備しているものはなかった」
なぜ、大地震が大阪に?
今後30年以内の地震発生確率が60%とも70%とも言われ、大きな被害が予想される「南海トラフ大地震」や「首都直下地震」の震源地となっているわけではない。「なぜ、ここに?」で思い出すのは2016年の熊本地震だ。
政府の地震調査研究推進本部はハザードマップと海溝型地震と主要活断層帯の長期評価を公開しているが、熊本地震を起こした布田川断層帯で30年以内に地震が起こる確率を「ほぼ0〜0・9%」とし、30年以内に震度6弱以上に見舞われる確率が7・6%と公表していた。地震リスクの低さから企業誘致も積極的に行っていた熊本が、大地震に見舞われることになった。
今回の大阪大地震の原因についての専門家の解説も出始めている。
地震学の総本山とも呼ばれる東京大学地震研究所の古村孝志教授はTBSの取材に対し、「有馬―高槻断層帯で起きた活断層の地震ではないかと思う」と発言している。
高槻市が地震調査研究推進本部の資料から作成した防災資料「ゆれやすさマップ」では、有馬―高槻断層帯による30年以内の地震発生確率は「ほぼ0%〜0.02%」だ。
「政府のハザードマップが安心情報になってしまっている」
そう、強い危機感を見せるのは、武蔵野学院大学の島村英紀(地震学)特任教授だ。
「東大大学名誉教授で地震学者のロバート・ゲラー氏がハザードマップのことを外れマップ≠ニ揶揄しましたが、近年の大地震をハザードマップ上に置くと、発生確率の低い黄色のエリアに集まります。政府は活断層調査を行っていますが、まだ確認されていない活断層が4000ほどあり、すべてを把握できているわけではありません」
島村さんは続ける。
「2011年の東日本大震災以降、地震も火山も活発になっている。日本列島の基盤をなす基盤岩は本来、プレートの動きに従って年間8~10センチ動いていた。それが東日本大震災で仙台の近くの牡鹿半島で5・4メートル、首都圏でも一年間でほぼ30~40センチ動いた。その結果、日本列島のあちこちに歪みがたまり、内陸直下型地震が起こっている」
なかでも、2013年には兵庫県の淡路島、2015年には徳島県と、関西地方で浅い直下型地震が起こっている。南海トラフ地震の先駆けになっている可能性もあると島村さんは指摘する。
「地震がきてからでは遅い。被害を最小化するために、自分が住んでいるエリアは大丈夫ではなく、地震について家族や職場でまずは話し合うことが大事です」
想定外エリアで立て続けに起こる大地震。世界で発生する約20%の地震が日本という地震大国に住む以上、安全な場所はないと心得て、日ごろの防災意識を高めたい。準備することに遅過ぎるということはない。
(AERA編集部・澤田晃宏)
※AERA オンライン限定記事
おにぎりやパンは午前中の内に売り切れたという=茨木市内のコンビニで
茨木神社の塀が倒れていた=18日夜、茨木市
JR新大阪駅で列車の運行再開を待つ人たち
2018.6.19 09:05AERA
https://dot.asahi.com/aera/2018061900004.html?page=1
「阪神大震災に比べれば体感的には15秒ほどの短い揺れでしたが、身動きできない強い揺れでした。だけど、突っ張り棒を準備していたお蔭で、背の高い大きな家具も倒れずに済みました。あれがなければ家具の下敷きになり、怪我をしていたかもしれません」
女性は阪神大震災をきっかけに、家具に転倒防止の突っ張り棒を使用するようになったという。ただ、女性のようなケースは少数派と言えるだろう。
震度6弱を観測し、死者も出た大阪府北部・茨木市の主婦(49)はこう話す。
「大阪の被害は少なかったとは言え、阪神大震災を経験しているから、もう一生のうちに大地震を受けることはないだろうと思っていた。南海トラフ地震が予測されていることは知っているが、被害を受けるのは大阪の南側と言うか、関西では和歌山のイメージ。危機感はなく、特別に地震に対して準備しているものはなかった」
なぜ、大地震が大阪に?
今後30年以内の地震発生確率が60%とも70%とも言われ、大きな被害が予想される「南海トラフ大地震」や「首都直下地震」の震源地となっているわけではない。「なぜ、ここに?」で思い出すのは2016年の熊本地震だ。
政府の地震調査研究推進本部はハザードマップと海溝型地震と主要活断層帯の長期評価を公開しているが、熊本地震を起こした布田川断層帯で30年以内に地震が起こる確率を「ほぼ0〜0・9%」とし、30年以内に震度6弱以上に見舞われる確率が7・6%と公表していた。地震リスクの低さから企業誘致も積極的に行っていた熊本が、大地震に見舞われることになった。
今回の大阪大地震の原因についての専門家の解説も出始めている。
地震学の総本山とも呼ばれる東京大学地震研究所の古村孝志教授はTBSの取材に対し、「有馬―高槻断層帯で起きた活断層の地震ではないかと思う」と発言している。
高槻市が地震調査研究推進本部の資料から作成した防災資料「ゆれやすさマップ」では、有馬―高槻断層帯による30年以内の地震発生確率は「ほぼ0%〜0.02%」だ。
「政府のハザードマップが安心情報になってしまっている」
そう、強い危機感を見せるのは、武蔵野学院大学の島村英紀(地震学)特任教授だ。
「東大大学名誉教授で地震学者のロバート・ゲラー氏がハザードマップのことを外れマップ≠ニ揶揄しましたが、近年の大地震をハザードマップ上に置くと、発生確率の低い黄色のエリアに集まります。政府は活断層調査を行っていますが、まだ確認されていない活断層が4000ほどあり、すべてを把握できているわけではありません」
島村さんは続ける。
「2011年の東日本大震災以降、地震も火山も活発になっている。日本列島の基盤をなす基盤岩は本来、プレートの動きに従って年間8~10センチ動いていた。それが東日本大震災で仙台の近くの牡鹿半島で5・4メートル、首都圏でも一年間でほぼ30~40センチ動いた。その結果、日本列島のあちこちに歪みがたまり、内陸直下型地震が起こっている」
なかでも、2013年には兵庫県の淡路島、2015年には徳島県と、関西地方で浅い直下型地震が起こっている。南海トラフ地震の先駆けになっている可能性もあると島村さんは指摘する。
「地震がきてからでは遅い。被害を最小化するために、自分が住んでいるエリアは大丈夫ではなく、地震について家族や職場でまずは話し合うことが大事です」
想定外エリアで立て続けに起こる大地震。世界で発生する約20%の地震が日本という地震大国に住む以上、安全な場所はないと心得て、日ごろの防災意識を高めたい。準備することに遅過ぎるということはない。
(AERA編集部・澤田晃宏)
※AERA オンライン限定記事
おにぎりやパンは午前中の内に売り切れたという=茨木市内のコンビニで
茨木神社の塀が倒れていた=18日夜、茨木市
JR新大阪駅で列車の運行再開を待つ人たち
2018.6.19 09:05AERA
https://dot.asahi.com/aera/2018061900004.html?page=1