★★★★★ 最近の三角縁神獣鏡研究が明らかにした新事実 平成27年(2015)11月1日
http://www.bell.jp/pancho/k_diary-16/2015_11_03.htm ~ 三次元計測を応用した最近の三角縁神獣鏡研究 ~
奈良県立橿原考古学研究所(以下、橿考研)の公開講演会 タイトル「三角縁神獣鏡研究の最前線」 サブタイトル「精密計測から浮かび上がる制作地」
■ 橿考研は、平成9年(1997)から翌年にかけて黒塚古墳から三角縁神獣鏡33面と画文帯神獣鏡1面を発掘したのを契機に、レーザー走査式三次元計測による銅鏡の精密な計測システムを導入した。
■ これらの計測機によって、測定対象に触れることなくその表面寸法を測定し、400万点前後の点群を取得でき、対象物の形状の三次元データの作成が可能になった。
三次元計測を応用した最近の三角縁神獣鏡研究
■ 同一文様の鏡を量産する方法としては、「同笵技法」と「同型技法」がある。同笵技法とは、一つの鋳型(笵)で鋳造を複数回行い、同一の鋳物を製作する技法をいう。一つの鋳型から複数面鋳造する場合、鋳造ごとに鋳型に傷が増えて行く傾向にある。
■ 一方、同型技法では、青銅鏡で初めに制作した一面を原鏡とし、これを真土(まつち)とよぶ粘土で文様を写し取り鋳型を複数作り、この2次鋳型から同一文様の子鏡を制作する方法である。
■ 永野敏典研究員は、鏡に残る鋳型の傷などを分析された。
永野氏は、銅鏡に残された鋳型の傷から舶載鏡一面と彷製鏡3面が同じ鋳型で作られていることを突き止められた。類例は他にもあるという。
■ 永野氏の研究成果が意味するところは大きい。
従来は文様の出来・不出来で「舶載鏡」と「彷製鏡」を分類してきたが、そうした分類はもはや意味をなさないことになる。そのため、制作地は「すべてが中国製か日本製となる可能性がある」ことを指摘された。
■ 清水康二・主任研究員も、同じ鋳型を再利用したと考えられる例があることを指摘された。
「舶載鏡から彷製鏡まで同じような工人が作っていた可能性が高い」とされた。最後に講演された菅谷文則所長も、中国では出土しておらず、日本で約560面見つかっている以上、三角縁神獣鏡は国産とみる考えを披露された。