理化学研究所と東レは世界で初めて、薄さわずか3マイクロメートル(=ミクロン)で、アイロンが掛けられるほど耐熱性にも優れた超薄型の太陽電池を開発した。新しい半導体ポリマーを使用することで、ガラス基板を使った従来の太陽電池とほぼ同じエネルギー効率を持つという。今後は衣服貼り付け型の電源として「早ければ2020年代の初めにも量産」(東レ)を目指す。ウエアをITなどの最先端のテクノロジーと融合する“スマートアパレル”は電源の確保が課題とされており、この薄型太陽電池の開発で大きく前進しそうだ。
この極薄太陽電池は3マイクロメートル、太陽電池素材の実用化の目安と言われる10%のエネルギー変換効率があり、髪の毛の太さ(50〜100マイクロメートル)の約30分の1の薄さなのでシャツに貼り付けてもほとんど違和感がない。耐熱性は100度で、アイロンによる貼り付けも可能になった。
低コストでフレキシブルな有機太陽電池の研究で世界をリードしてきた理研の染谷隆夫・主任研究員のチームは、材料面で東レと連携。新たに開発した半導体ポリマーを使うことで、熱にも強い新電池の開発に成功した。染谷主任研究員は「この新電池を使えば、スマホや音楽プレイヤーなどの携帯型のガジェットも電池を気にせず使えるようになる。さらに言えば、今後ウエアは “着るコンピューター”になる。この貼付け型の太陽電池は、その実用化の大きな後押しになる」と語った。すでに国内外のアパレル企業と接触しており、「かなり大きな関心を持っている」と語る。
一方、東レは自社開発のスマートテキスタイルを使ったスマートアパレルプロジェクト「ヒトエ(HITOE)」と連携させることも検討しており、「ヒトエ」で培ったノウハウを使い、電源とウエアを一体化した開発も急ぐ。
同研究は米国の研究誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」にも掲載予定。
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