
儲かっているのに「日本人の給料」が上がらないワケ…じつは経営者の「サラリーマン化」が原因だった
https://news.yahoo.co.jp/articles/22d9be775686c1a3dc0ad8f55a503820e35f03cc
世界中で愛飲されている『獺祭』。この日本酒の蔵元である旭酒造がこの春に入社する新入社員の初任給を10万円近くも上げたニュースが経済界で持ちきりになった。このタイミングで、なぜこんな大胆な給与改革を決断したのか、その理由は前編記事『ここにきて『獺祭』の旭酒造が、新入社員の給料を突然「10万円上げた」意外なワケ』でお伝えした通りだ。
じつはこの決断は「給料の安い国・ニッポン」から脱却する有力なモデルケースになると専門家は言う。インフレが進む日本で、中小企業がブラック化に陥らずに、生き残る戦略を引き続き明かそう。インフレはチャンスだ
今回の旭酒造の賃上げについて、経済評論家の加谷珪一氏は「日本がこれから目指すべき、最も有力なモデルケースだ」と評価する。
「経営者がきっちりと利益をあげられるビジネスモデルをつくり、収益を増やす。その結果として給料アップに踏み込んだ。生産性を上げて付加価値を高めることに成功しているのです。
このようなモデルはドイツの中小企業の戦略にも似ています。日本の中小企業のほとんどは大企業の下請けで、製品を買いたたかれている。
しかし、ドイツの中小企業は利益の出ない分野は捨てて、高付加価値な製品へとシフト、独自の販路を開発し、世界で高く売るというビジネスモデルがある。旭酒造はまさにこのモデルです。日本にもこのような中小企業が増えてくれば、給料も自然と上がってくると思います」
原油や小麦などの商品の高騰に加え、円安が進んでいることもあって、インフレの波が押し寄せている。考えようによっては、このような状況もデフレマインドから脱却するために好条件かもしれないと、経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏は言う。
「インフレによる値上げラッシュで、企業は値上げをしやすい状況にあります。原材料費だけでなく人件費のコストも価格に転嫁することができれば、企業も賃金を上げやすくなります。
逆にこのような状況でも値上げできない企業は最悪です。収益的にジリ貧になり、賃上げどころかこれまでの賃金水準も維持できずに人が次々と辞めていく、典型的なブラック企業になってしまいます」
賃上げができる企業になれるかどうかの分水嶺はどこにあるのか。まずは言うまでもなく、経営ビジョンの質に負うところが大きい。
「いまの日本経済は完全に縮み思考に陥っているのではないかと思います。当面の決算や今期、来期の黒字枠の確保ばかりに終始していて、長期的な視野で動いていない。
企業の経営者が悪い意味でサラリーマン化しているのかもしれません。長期的に見れば質が落ちてくるとわかっていても、とりあえず今を乗り切ればいい、帳面上の帳尻があっていればいいという考え方では、本当に良いモノなどつくれるとは思えません。
ほとんどの経営者は総務部や経理部、外部のコンサルなどの言うことを聞きすぎなのではないでしょうか」(旭酒造の桜井会長)
儲かっていても、給与を上げようとしない企業の姿勢について、マクロ経済学者の脇田成氏はこう分析する。
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